前腕に装着していたプロテクターでエーテリアスの斬撃を受け止める。力と力が衝突し合い力点が0になった瞬間一方的な力がエーテリアスを押し返し地面へと倒れさせた。
攻撃を受け止めた前腕の先にある手に握っていた自動拳銃が火を吹き何発かコアへと撃ち込まれた。先ほどから幾度も攻撃を受けていたため四発と少ない銃弾で消滅する。
包まれるようにコアがドーム型のエーテル結晶に覆われている脚が四本。蜘蛛を彷彿とさせるブラストスパイダーが飛び込み自爆攻撃を展開させようとするがハードナックルグローブを着た手がコアを直接掴み敵へと投げつけた。
前から、右から、左から、後ろから。四方八方から攻めてくるエーテリアスが雄叫びを上げながら突撃してくるのを認めたネームドは斧を両手で握り構えた。
先ほどの戦闘から筋肉が張っており、表面の皮膚にビキビキと浮き出た血管は力が込められているのを意味している。
足を大きく開きどっしりと地面に根を張る。四股立ちのまま体を拗らせ、エーテリアスが距離1mとなった瞬間に斧を振るった。
抑え込められていたバネのように体が反対側へと急速に曲がり、円を描く斧の軌道はナイフのような腕を貫こうとしていた
斬るのではなく、当てる。刃物というのは上下に動かし斬るのが普通だ。日本刀などの鋭いものは自分の方向へと引く。しかしこの攻撃は単縦な当て。
戦闘により摩耗しつつあるがあの様子のおかしい商人たちの技術力は中々にいいものらしい。これほど乱雑に使っているのにまだ刃こぼれは一切していない。
透き通るように遠っていく斧は勢いを失うことなくエーテリアスを断頭しコアが攻撃されずとも撃破して見せた。そのまま負い紐で背中に吊るしていた散弾銃を構えショットシェルホルダーから散弾を2本ずつ2列の四発を手に持ち
後ろに早歩きで下がりながら先台を前に押しもう一度二発装填すれば何十ものエーテリアスの一体一体に向けて打ち尽くた。
ファアエンドを何度も引くたびに引き金を引く。バックショットのペレットが空気中を突き抜けコアへと幾度も当たり撃破もできたがやはり数が多い。
雄叫びを上げながら突撃する一体のエーテリアス。鋭い腕を振り上げながら突撃するが急に動きが止まる。何かにぶつかったかのように。
困惑しただろう。固まっているエーテリアスのコアが───ネームドを見たような気がした。
上腕を掴んでいるネームドの手。どれほどの握力かミシミシと音を立て指が深々と沈んでいっている。
痛いとでも言っているのか体をのたうちまわっているエーテリアスの身体が反転した。宙を描き下にあったはずの手は今や上空へと向いていた。
ネームドが力任せに投げたエーテリアスはビルを登り切った他個体のエーテリアアスへと向かいぶつかる。二体そのまま地面へと墜落していった。
ナイフを鞘から抜き逆手に持つ。斧を持ち両手に武器を持てば向かってくるエーテリアスの相手をした。複数体から繰り出される斬撃、あるいかアルペカの液化エーテル。それを全て流し切る。
一秒も逃げる隙を与えない攻撃の連続を全て受け流し攻撃を加える。一体を前蹴りで、二体目を体を捩らせ戻る際に肘打ちをコアへ。三体目の足を払い倒れさせた。
小銃を構え再装填する。リリースボタンを押し弾倉を拾うことなく地面に落とす。弾納から取り出し装填すれば乱暴にボルトリリースボタンを押す。この再装填にかかった時間は一秒も経っていない。
起き上がった三体のエーテリアスに向けてフルオートの連続射撃を食らわせた。至近距離からコアへ直接撃ち込まれたエーテリアス共は瞬く間に消滅した。
ここでようやく自分が全てのエーテリアスを撃退したことに気づく。先ほどの三体が最後だったらしい。
「今ので最後だ!」
「彼の元へ向かいましょう。」
自動拳銃の弾倉を一度出しポーチから何発か9mm弾を取り出す。単列弾倉に入れ満了となればまた自走拳銃へと装填した11号がビル内部へと入っていった。
数年も前にホロウに飲み込まれたこの場所もすでに廃墟となっている。明かりは一切ついておらずエレベーターも当然機能していない。
「歩きで行くしかないわね。」
「辛いな、、、」
何十のも質量に押されたかのように地面に倒れている非常階段へと続く扉。屋上ともなればかなりの回数を登る必要があるだろう。
アキラが二階、三階、四階、五階となってからは数えるのをやめた。これ以上数えてもどれほど登ればいいと気が滅入ってしまうからだ。
イアスの足を動かし一個一個段差を登っていく。イアスと体を共有しているためイアスの疲労をアキラも感じている。しかしアキラの体の方は心臓が早く鼓動しているわけでも運動状態に入っているわけでもない。
嫌がらせかと思うほど一つ一つが長い階段を登るたびに感じるこの
まだ残っている足の踏み場を丸に近いボンプの体を細めながら進む。
「あなたそんなこともできたのね。」
「そうなんだ、ある日裏道へと逃げた時に取得、したも、のなんだけど、、、ちょ、ちょっと、待って、、、」
「彼の状態が心配よ、先に行くわ。」
ようやく半壊した足場を通り抜け広がる箇所。外側へと凹んでいる鉄扉にはいくつもの破片が刺さっていた。
「手榴弾かしら。扉が凹んでいるし階段も壊れてる。」
何があったのか、もしや自爆でもしたのかと一瞬考えたが
11号がドアハンドルを回し開けようにも開くことはない。歪んでいるおかげで開かないのだ。こうなることを想定して対爆仕様にしておいて欲しいものである。
「戦闘音も聞こえない、エーテリアスの気配も。突破するわ。」
左足を前に、右足を後ろに戻せばつま先で地面を蹴る。靴の裏が鉄扉に向ければ思い切り蹴り飛ばした。
蹴りによるドアブリーチングが一度で成功することは難しい。本人の度量によるが今回はうまくいったようだ。蝶番ごと外れた扉が向こう側へと倒れ月明かりが非常階段を照らす。
「スナ───ッ!?」
屋上へと出た瞬間、急に体が何者かに取り押さえられる。
激しい白兵戦があったであろう痕跡のある屋上へ踏み入れた第一歩の左足、何者かに関節部を押し蹴られ体勢が崩れた。左腕を掴まれ胸中央を強く押される、構えておらずそのまま壁に押し当てられれば眼前には銃口があった。
「、、、落ち着いて、私よ。」
一瞬、銃口の先が震える。屋上に来た何かが11号であると認識したネームドは親指で
ダクトテープで止めていた鉄扉は凹んでおり静かだ。白兵戦の途中、ガンガンとエーテリアスが扉を叩きいていたのををネームドが鬱陶しいと思い側で開きかけていた扉の隙間から手榴弾を入れ込んだのだ。二個入れ込み二回爆音が鳴り衝撃波で扉がボコボコの形で留まっている。そのおかげで侵入を食い止めていたダクトテープは完全に千切れている。
息を整えながら周囲を見渡す。敵の気配がしなくなったのを認識すればようやく一息ついた。
ネームドが親指で目をぐりぐりと押す。視界がおかしかったからだ。
瞳孔が広がり光、色彩がいつもより濃くなっている。視野角も広くなり世界が何かゆっくりと見えるのだ。耳をいつもより研ぎ澄まされ風の音が大きく聞こえる。ブーツが地面の小石を踏む音すらも。
あのドローンが飛んでいる音もこちらまで聞こえてくる。
撃ち落としてやろうか、戦闘の後だからか穏やかではないことも考えるがそれよりも11号と
地面に落としていた弾倉と拾い上げ弾頭がなくなり黒ずんでいる薬莢を弾倉へと込める。四十発入るのと薬莢がかなりあるため時間がかかる。
薬莢がすべて入り切った弾倉とダンプポーチへと入れる。この薬莢、弾薬を新しく購入する際に売り手へと渡せば値段が安くなるのだ。
資金がそこまでない今の状況ではかなり節約するしかない。もう一つの弾倉に薬莢を入れ込んでいれば何かが階段を登る音が聞こえた。
弾けるように振り返りチェストプレートから滑らかな動作で自動拳銃を抜く。構えながら移動していればドアハンドルがガチャガチャと音を立てる。
ドアの端側に位置し待機する。周囲を照らしている月明かりはネームドとは反対方向にあり陰で気取られることはないだろう。
安全装置を親指で解除すればドアが蹴破られた。先に出た脚関節部を押し蹴り体勢が崩れたところで左腕を持ち上げ壁へと押せば自動拳銃を押し付けた。
頭部へと向けたがあのブラックホールのような頭は見えない。銀寄りの白髪。赤いヘアゴムで止めたハイポニーテール。
───こいつ
「、、、落ち着いて、私よ。」
『
「問題ないわ、、、だいぶ戦ったのね。」
屋上の周りを見渡した11号がそう言う。かなり荒れている状態だ。
元の形が想像できないほど歪んでいる鉄パイプ。地面に突き刺さっているハンガリーバール。砕けている地面。割れたタイル。弾頭を押し出すため発火した火薬により黒ずんでいる何十もの薬莢。三桁は優に超えているだろう。
また弾倉の中に薬莢を詰め始めたネームド。何をしているのか11号が尋ねるとネームドは手の平を上に向け人差し指を親指で丸を作った。伝えたいことは【金が安くなる】だが11号にとっては【金になる】というように見える。
「確かに空薬莢を拾うのはリサイクル面でいいことね。手伝うわ。」
落ちている弾倉を拾い上げ11号も空薬莢も入れ始める。しかし数秒も経たないうちに忘れかけていたあいつから通信が入り始めた。
「、、、あのエーテリアスの量を全部やり切った?だと?あの実力、身のこなし、乱暴性、、、」
「
急に大きくなった声量がヘッドセットのハウジング奥から聞こえる。どれも称賛であるあまりの大きさに眉間に皺がよった。先ほどからそうだが。
「まさか戦闘員のパエトーンもいたとはぁ、ぁああ!今すぐ画面の向こう側に行ってパエトーンがした戦闘跡の大地に全方位に向けて敬礼をしたいッ!!!」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁあ、落ち着け、落ち着け、、、事は重大なのだ。それに気の所為かどことなく不自然な臭いがするのも事実、う〜ん、クンクン、、、」
───気持ち悪いな
まるで本当に嗅がれているような不快な音。思わず顔が歪む。
「聞こえているよ。」
「ギュイィー!!?」
───今の音はなんだ?
「変な音が聞こえたような、、、通信設備の故障?」
もしくは特殊な鳴き声の類か。
「まぁそういうことにしておこう、これで僕のことを信じてもらえたかい?」
いつの間にかに屋上へと来ていた
「ゆ、夢じゃないあよな?俺は、本当にパエトーンと手を組めるのか?」
長年の夢が叶ったかのような声色。すっかり油断しているのか随分と長い自説を語り始めた。
「俺の人生は日々空しく闇の中を掘り進めるだけだった。そして今日そこにようやく一筋の光が差し込んだ、、、あぁあ!!なんっっって眩しぃぃんだ!!」
「落ち着いてくださいモグラさん。確証を得た今、そろそろ本来の仕事に取り掛かるべきでは?」
「あぁこちらとしてもなるべく事を進めたい。進展があればまたすぐに連絡する!軍人さんの夢は俺に任せてくれ!」
小銃を再装填しコッキングレバーを僅かに引く。薬室に装填されているのを確認すれば負い紐でプレートキャリア前に吊るした。
散弾銃のキャリアーに一発の散弾を込める。フォアエンドを前に押せば五発散弾を込めた。戦闘で少し弾不足が目立った。敵が大量に来る状況じゃあれでは足らない。
「と、その前に、、、一つだけささやかなお願いが、次回はぁ、そのぉ、サインなんか頂けないだろうか?ふひ、あるいはこのモグラめに、ぐふ、目覚ましボイス的なものを、、、ぐふ、ぐふふふ、ふひふははは──
気持ちの悪い笑い声がしている途中で通信終了を告げるビープ音が三人の耳に聞こえる。自分ではないとネームドが一人と一体を見ていれば11号がイヤホンを操作していた。
「切ってしまったか、容赦ないね。」
「やかましかったわね、警戒を解いた途端にあんな饒舌になるとは思わなかったわ。」
11号の行動にはネームドの賛同した。気持ちの悪い──直接的に言い換えればキモいと思っていたからである。
ねっとりと絡みつくような嬉々とした声色が聞こえなくなりすっきりとしたネームドがバックパックを持つ。軽く汚れや小石を払えば右腕から通して背負った。
腹前と胸前のストラップをキツく閉めれば準備完了と先ほどの行動に対するグットマークを出した。
「ならば移動しましょう、行くわよ。」
階段を全て降り終え亀裂がいくつも先へと走っている道路を歩く。特に会話はない。
「、、、シーキュービー・ファイト・シーキューシー。」
「僕のことではないだろうな。」
───俺のことだろうな。
「よく耐え切ったわね。私も引きつけたけど数体だけ、あの量を全てやり切ったのはさすがとしか言えないわ。」
今度はネームドではなく11号が親指を立てる。ネームドも親指を立てればまた周囲を警戒し始めた。
かなり少なくなった弾薬に気を惹かれながら。
エーテル活性を乗り切ったためか道中で遭遇する事はなかった。おかげで弾薬を消費することなく軍用盗聴器を仕掛けホロウから脱出できたネームドは少しばかりの安心、それから焦燥を感じている。
リンからのお疲れ様と言葉と共に渡された温かい飲み物。黒い大豆のようなものとドロっとした甘い液体の入った缶を車上ルーフに置きバックパックをトランクに入れる。見たくはない──そう思っていたが現実に向き合うことにした。
バックパック内部の弾薬やら手榴弾を入れているスペース。ホロウへと入る前にはそれなりに入っていたそこはほぼ空になっている。二つ満了に入っている小銃弾倉計八十発。一つずつの
ため息をつきながらもチャックを閉めヘルメットを脱ぐ。スナイパーベールを頭の位置に保留したまま流れるように脱ぎ頭に被る。前腕のアーマー、ショルダー、ネック、プレートキャリアの順に脱いでトランクへと詰めていれば前腕にそれなりに流血していることに気がついた。
三日前、というよりすでに0時を超えているため四日前に零号ホロウで追った傷の部位だ。縫合され前哨基地の医療テントにいた
かなり戦ったうえエーテリアスの攻撃を受け止めた前腕。小型水筒の水をかけて血を流した。
「あなた、怪我していたの?」
見せるよう言われ水に濡れた前腕を見せればまじまじと観察される。問題ないと判断したのか何かの素ぶりは見せることなく離れる。
「私は医療用器具をいくつか持ってるし、車で六分街まで戻るまでに私が締め直す。」
了解の頷きをし肩を少し回しながらルーフに置いていたままの飲み物を飲む。車に乗ろうとすれば後ろでナタが取り出される金属音がした。
振り返れば夜中で暗いためよく見える赤くなったナタが11号の手にある。赤くなっているのは背中に背負っている装備から充填したエーテルエネルギーによって温度が上昇しているためだ。
「もしよかったら、こういうのもあるわ。」
少しばかり口角を上げた11号と何を言っているのか理解がまだ理解できていないネームド。数秒の沈黙が流れ
首を素早く何度も横にふれば11号が素直にナタを収める。
「冗談よ、軍人ジョーク。」
される側にとっては気が気ではないジョークに苦笑しながらもネームドが車に乗り込む。11号も乗り込めばエンジン始動を伝える振動が車内に伝わり前進した。
六分街に着けば
「今回は本当にお疲れ様ネームド。」
アキラの言葉を無視しているわけではない。バックパックの内部を先ほどから見ているネームドに対しての慰めに近い言葉をかけられたネームドはため息を出す。
「また銃弾やら手榴弾やら、色々買わないとだな。」
ン”、とネームドは小さく頷いた。
11号の言った「こういうの。」というのは焼灼止血法です。11号の音動機であるブリムストーンの説明欄にそう言う記載があり書きました。
どうでもいい話ですが焼灼止血法を知ったのは「約束のネバーランド」という作品で知りました。主人公であるエマという人物が重症を追う場面がありまして、そこで傷口を焼き止血するという応急処置がされました。
通常通りアニメ化されれば絶対めちゃめちゃいいアニメになっただったろうに、、、大人の事情でしょうか。ユウゴとか見たかった。個人的に好きなキャラはユウゴです。