「助けを呼んだってわけか!」
頭の上部にある耳を持ち上げられバックパックに乗せられた[[rb:イアス > アキラ]]がそう言う。実際その通りなのだろう。先の断末魔を聞きつけた施設内のエーテリアスが集合中だ。
「右!そして左で真っ直ぐ!」
通路を曲がるその前に振り返り小銃の引き金を引く。約十〜十五発ほど射撃すれば何体か撃破したがその後ろからおかわりお言わんばかりにエーテリアスが抜け走る。
安全装置をSの方向へと掛けポーチへ手を突っ込む。破片手榴弾を取り出した。
「手榴弾を使う!!」
「了解!」
ネームドの行動を
五秒。辿り着くと思われるその時間は見事炸裂し爆風と破片が何体かのエーテリアスを吹き飛ばす。完全にやった個体もいれば四肢の一部が壊されモゾモゾと芋虫のように地面を這う個体もいた。通路すでに曲がり、エーテリアスによる壁ができていたため手榴弾による破片が飛んでくるとはなかった。
とはいえ一時凌ぎにしかならない。しかしそれがよい。
再度振り返り仲間の屍を超えてくるエーテリアスへと
歩きの速度ではあるが早足で下がりながら撃ち続ける。
コッキングレバーが後退したまま固定される。走りながら弾倉を外しダンプポーチへ入れれば弾納から新しい弾倉を取り出し入れ込む、が走っているためうまく入れることができない。
挿入口に入りそうで何度も露出している銃弾と挿入口が擦れ、形容しがたいイラつきが頭に来るものだがようやく入り込んだ。リリースボタンを押し薬室に弾を送る。
「僕に考えがある!11号、ルートを端末に送るからその通りに進んでくれ!」
既に送られているルートが緑の線にて表せれており、それは非常出口まではかなりと遠回りとなる道のりだった。
本当にこれでよいのだろうか。一瞬の迷いが生じるが、あの男が作ったルートだ。
前回の盗聴機を仕掛ける手順といい、ルートを作る速さ、化け物の蔓延るホロウ内にも関わらずすぐさま状況を理解し改善策を作る。あれは長らくの経験がなくてはできないものであると11号自身も評価している。
それこそ【モグラさん】の敬愛する伝説のプロキシ【パエトーン】のように。
足を動かし腕を振りエーテリアスとの距離を度々確認し非常用電灯が点いているとはいえ暗い通路の先までエーテリアスが来ないか確認し頭に叩き込んだルートを思い出しながら、端末に写っているルートを覚える。これほど多忙なことはそうそうあるまい。
多忙と言えば、文字を書くことのできない
───彼らが惹きつけてるの?
見れば見るほど、進めば進むほど本来進むはずだったルートから逸脱する。後ろからついてくるエーテリアスはいるが先ほどよりも明らかに少なくなっている。
銃声は度々聞こえている。遅い感覚で聞こえているものは散弾銃だろうか。あれほどの量相手にその距離で交戦をしていることに驚く。
そもまま進めば何かが破壊されている防火戸のようなものを通り過ぎる。上から下ろされたそれは何かに突破されたような破壊の形があった。この施設が襲撃された際。侵入阻止のため下ろされたであろうが、役目を果たすことはできなかったらしい。
床に落ちている埃被った何か、それは防衛軍兵士に支給されている装備のそれだ。相変わらず死体は不可思議なほどなかったが、そこに確かにいて敵を迎撃するため戦っていたことを示している。
走る速度を緩めることなく進んでいれば見飽きた通路から一気に広い場所へと出る。なんらかの中継地点と思わしき場所で一度立ち止まる。理由はどの通路に入るのか分からなくなってしまったからだ。
端末をもう一度開きルートを確認───しようとしたところで何者かが開けた場所へと辿り着いたためだ。
大型ナタに手をかけ音の方向を警戒する。二階の奥から聞こえた何者かの足音が”彼ら”だと気づけばすぐに安堵の息を漏らす。
「まっすぐ進め!もうすぐそこまで来ている!!」
バックパックにに乗っている【01 Eous】と書かれたスカーフを巻いたボンプがそう叫ぶ。それに続けてネームドがそのまま転落防止の柵を乗り越え一階へと飛び降りた。手には散弾銃が握られている。
落下の衝撃に悶えることなくそのまますぐに走り出す。身を纏っている装備に加えバックパックに詰めた弾薬の数々に加え一体のボンプ。かなりの重さが自分に伸し掛かったはずだが、膝を痛めないものなのだろうか。
いや、
疲れはしないのだろうか。横を走る男からは走るための息遣いは聞こえるが長く走り乱す息の類は聞こえなかった。よろめくほどの重量を体に纏い背負っているにも関わらず。
「この先別れ道がある!11号、またルートを送ったからその通りに!」
言う通りもう一度別れ端末に確認する。今非常出口までの道のりが記されているがより一層複雑となっている。そのまま言う通りにすれば右へ、左へ、まっすぐ進めばまた右へ。まるで迷路を進むような道のりはやがてネームド達とバッタリ合流にまで至った。
「本当にこの道のりでいいのかしら!?」
「これでいい!!後ろを見てみてくれ!」
走りながらも後ろを見る。非常用電灯の照らされた廊下の奥。ちょうど合流した場所。多くの別れ道がある所を通ろうと各通路から多くのエーテリアスが行くがすぐさま様子がおかしくなった。”詰まり始めた”のだ。
「奴らが来れなくなってる、、、」
「よし上手く行った!蛇をがんじがらめにしてやったぞ!!」
大量のエーテリアスによって出ようにも出れない。一点に集中させ大蛇の如く押し寄せる大群を結び目のようにがんじがらめに。それがあの一瞬で建てたアキラの計画。
あとはこのまま走るだけだ。それだけ──────
のはずなに。走る二人を睨む一つ目が廊下の横から現れる。
「───はっ、、、?」
「こんな時に!!」
目を凝らせば見える四足歩行の何か。口の中に見えるエーテリアス特有のコア。ハティが現れたのだ。
迷惑なアンコール。それに応えている暇はない。
振り返れば100m以上離れたところでエーテリアスが詰まっているものの何体かが抜け出した様子だ。しかし前方にはハティ。対処していれば次々と別のエーテリアスが来る。
覚悟を決めるしかない。
───上等だ、突っ切ってやる。
全ての銃をバックパックへと収めコンバットナイフと手斧を鞘に収める。次に
『
咳き込み、潰れ掠れたような声で小さく毒づけばバックパックが軽くなり走りやすくなったのを認め
「ッ!?何をしているの!」
「ネームド!?」
しかし走る速度は落とさず、むしろ上がり始めたではないか。
遠くハティも駆け出し一気に距離が小さくなくなっていく。牙と爪を尖らせ飛び襲いかかられるがネームドが腰を落としボールを両腕で何かを持っている体勢となった。その両腕には11号が抱かれていた。
ネームド自身無意識であったが、その抱き方はブライダルキャリー。俗にいうならお姫様抱っこである。
体重は違えど人間二人文。バックパックの内容物に加えボンプ一体とボディアーマー、そして四丁の銃。すべての質量がハティと正面衝突する。単純な体当たり。それがハティを吹き飛ばした。
質量の差、そして加速で負けたハティが随分と遠くへ吹っ飛び壁に当たった。見事命中したのかよろめいている様子。その隙を逃さんとネームドは足に力を込め走りだした。
「つくづく、君の筋肉と体力には驚かされるな!!」
ハティも逃すまいと追いかけるもすでに数メートル先には非常出口だ。勢いを落とすことなくネームドが足を前に向ければ鉄扉を蹴り飛ばす。久々の月明かりが全員を歓迎するように照らした。
ゴールに辿りつき喜ぶところだろうが後ろではハティとかなりの量のエーテリアスがきている。すぐに扉を閉めれば近くに鎮座していたなんらかの装置を倒した。
すぐさま扉をたたきつける音が響くも数秒すれば収まった、諦めたのだろう。死の鬼ごっこがようやく終われば全員が安堵と疲れの息を吐いた。
「死ぬかと思った、、、」
「どれほど、走った、かしら。」
膝に手を着き方を上下させる11号。ほぼ全力疾走に近い走りでずっと逃走を続けていたのだ。軍のトレーニングで何キロと、日によっては自ら伸ばす時もあるとははいえ、駆け足以上に走り続ければ体力の消耗は一気に激しくなる。
───それだというのに。
それだというのに、横に立っている人間は肩を上下に止まり息をすぐでに整えられている。しかし人間を担いぎ、重いバックパックをずっと背負い走り続けた疲労はあるのか腕と肩をストレッチしていた。
周囲を見回せばなんらかの拠点らしき場所であることが分かった。それは軍人である11号には見覚えのあるものだ。軍が緊急時や一時的な拠点を建てる際に作る検問ゲートである。
「あなた、一体どんなトレーニングしてるの?」
周囲の状況を観察し安全だと理解し、気になっていたことを聞き出す。
是非とも参考にしたい、と11号が問いかけるネームドの反応は、両腕を前に出し
軍で使われるハンドサインを11号は全て頭に叩き込んでいる。しかし知らない類のものが目の前で口広げられ何を言おうとしているのか把握できない。
「バックパックに何かを詰め込んでランニングしてるらしい。」
「どうやってその言葉を読み取ったのか疑問でしかないわ。」
手を乱雑に動かしていたようにしか見えない。それなのに当の本人は親指を立て、合っていると11号に示した。
あまりにもおかしなコミュニケーション方法。それに───
「───ふふっ。」
少しばかり、笑ってしまう。
それを見たアキラとネームド。意外か、予想と違ったのか疑いの目を向ける。
「君が笑ったところ、初めて見た。」
「えぇ、あまりにも変だから。」
余韻でまた笑ってしまうが、今は作戦中だ。予想外の緊急事態が発生したがすぐに本来の目的を果たすべく遠くを見る。記憶の正しい限りではあの遠くで実験兵器があるはずだ。
「とにかく、目的地に到達した。スパイが要求した実験兵器の資料はこの先にある。」
「よし、ならば───
「待って。」
我先にと走るボンプを両手で掴み停止させる。その後しばらく、ボンプの目が映る液晶画面をまじまじと凝視、何かを確かめるような、迷うような思いが込められた瞳が今度はネームドへと向けられた。見られていることに気づいたネームドは警戒していた周囲から11号を見る。
数秒見つめ合い、どうしたのかと尋ねようとした所で11号が口が開く。
「反乱軍が欲している実験兵器は、防衛軍が極秘にしているデータよ。」
「兵器の本体は事故による破損が原因でこのホロウに取り残されてる。」
「、、、あぁ、そういうことか。」
極秘、ホロウに残っている。このワードを聞いただけでアキラは察しがついてしまう。
つまりは、【見るな】と言うことだ。
「たとえ破損した機体でも、最高機密であることに変わりはない。あなたたちのような部外者に見られた場合、機密漏洩極秘として24時間365日、こちらの監視下に置かないといけない。」
「僕は見ていない、見ようともしてないよ。」
ね?と
「───あなたは私の協力者だから、極力見せたくないの。これはあなた自身を守ることと同じ。しばらくここで待っていて。」
11号が指示を残せばまた駆け足で移動を開始した。あれほど走り回ったと言うのに体力はすぐ回復したらしい。置かれた設備やテントによってすぐに姿が見えなくなれば近くに置かれていた椅子へと腰掛ける。ずっと立ってては疲れるためだ。
「お疲れ様、まだ終わってはいないが、僕たちは休憩しておこうか。」
ン”、と喉を唸り賛成したネームドがバックパックを机の上へと起き息を吐く。
───もう鬼ごっこはしたくない。
もう四箱、バックパックへと詰められていたがそれは死の鬼ごっこ会場にて落として来た。逃げ切るため、11号を担ぐため重量を落とすために。
「かなり、落としたな。」
惜しそうにヘルメットを被った頭を抱えるネームドに対し
「
アキラの妹、もといリンが作成した【重要なものリスト】第三位にランクインされている【銃弾】。それがしばらくの間外れるかと思われたが、そんな日は来ないのだろうか。ネームドがため息を出しているところに、
「さて、僕は深夜の食事タイムとしよう。咀嚼音を聞かせないためにもミュートするよ。」
そう言えば
自分も何か持って来ればよかっただろうか。そう考えていれば何か音がするのに気づく。奇襲かとも思ったがそれではないだろう。なぜなら音の発生源は目の前のボンプだ。
ミュートしたのではなかったのか。そう思っていれば明らかにおかしい音が聞こえ始めたではないか。
ガリガリガリガリ!!!
『,,,!?』
何の音だ。そう考えるネームドへ立て続けに”音”が鳴り続ける。
ゴクゴクゴクゴク!!!フーフー、ズゾッ!!ズゾゾゾゾゾゾゾ!!!モグモグモグゴックン!!!!
『,,,』
驚愕、困惑、存外、さまざまな感情がネームドの頭に襲い掛かってくる。不快ではないが、突如始まる咀嚼音ASMRに嬉しいと感じる人間はいないだろう。かなりな過激ファンでもない限り。
「、、、ネームド?どうしたんだい。」
不思議そうに尋ねる
「、、、すまない。またミュートを忘れた。」
理解はしていたが自分のアホ振りに呆れていたらしい。
《マスター、今度から筆頭助手である私、Fairyがミュート担当を致します。マスターの致命的な好感度下降対策です、ご理解ください。》
「是非ともお願いする。Fairy。」
《、、、それからマスター。角砂糖はコーヒーや紅茶に入れるものです。口に直接摂取にコーヒーを飲まれるのは推奨されません。》
『
ボンプの動かす腕と手の動き。何かを冷やすため息を吹きかけ、啜る。食事と言っていたためカップラーメンだろうと予測したネームドが作り置きした料理を思い出す。
それは今日のように深夜にプロキシ業をした時、もしくは夜中腹が減り食べる人間がいるだろうと考え余分に作って置いたのだ。兄妹の目に埋め込まれている眼部インプラントは燃費が悪いとアキラから聞いていたため量は多めにしていたはずである。
「リンが食べ尽くした。」
ため息混じりの苦笑がネームドから漏れる。想定が的中したためだろう。 兄妹の胃袋を既にがっしりと掌握しているネームドの手料理は随分と気に入られているようだ。
「───随分とうまそうなもん食ってるじゃねぇか。」
そこへ何者かが、後ろから声をかけた。悪らしい落書きがされたヘルメットを被っている三人組がモリのような物を片手に現れた。下品気味な笑い声も漏らしながらネームドに近づく。
「金目のものを───
一所懸命に手を振り、ネームドの後ろを指さす
三人のうち一人がモリのスイッチを押す。電気が充電され、過充電された分が外に漏れ出すビリビリとした音が周囲に響く。それを振り上げネームドに当てようとしたところ、一発の銃声が響き渡った。
ボンプを目を映す液晶画面。反射しているガラスから三人組のうち攻撃しようとした人間を自動拳銃を撃ち抜いた。既に声をかけられる前からネームドはチェストホルスターから自動拳銃を抜いていたのだ。
こいつらの敗因はわざわざ声を掛け存在を知らせたこと、そして相手が悪かった事。
狙っていないため当たったのは脇腹。そこまで致命的でもないが放置していれば失血死するだろう。それ以前に撃たれたことによる痛みが荒くれ者の脳が認識し叫び声を上げた。
それが戦いのゴングとなり一瞬で立ち上がる。先まで座っていた椅子を唖然としていた一人に投げ飛ばせば三人目に狙いを定める。帯電しており電気が漏れ出ているモリを突こうとしている者にも平等に弾をプレゼントした。
肩を抑える者から椅子を投げつけた相手には前蹴りで吹っ飛ばせば声を上げ始めた。
「まっ待て待て待て!!降参だ!!手ぇ引くから勘弁して来れ頼む!こっちのモンも全部くれてやる!!」
手を上げ
「イテェッ、、、イテェよぉ、、!」
「ほら動け、足は撃たれてねぇだろ!?動けって!!」
悶えている二人を重ね手首と足を持てば肩に担ぎすたこらと退散していく。足をカートゥーンのように回しまくりすぐに彼方へと消えていった。
逃げていく背中を見届けるネームドの視線が自然と頭に移行していく。
───逃げられてなんらかの不都合が発生するのも面倒だ。
掛けたばかりの
見開かれていた深緑の瞳が向いた先には
「見逃してあげよう。」
小さく引っ張っているだけであり、必死に頼んでいるわけではない。アキラも考えた結果【見逃す】という結論だろう。
安全装置を掛けチェストホルスターに自動拳銃を仕舞う。
言う通りにしたのではない。【弾の無駄】と考え直し、そう結論に至ったからだ。
地面に散らばった椅子を立て直し、もう一度座ろうとしたところにまたしても何かが接近する音が聞こえたネームドが小銃を構える。しかしその主は11号だ。
「伏せて、耳を塞ぐのよ。」
何事かと思えば突然の命令。言う通りネームドが両手でボンプの耳、と思わしき場所を塞ぐ。
「そこじゃないわ、ここよ。」
───は?
ネームドが耳を当てた位置、それはボンプの頭頂部にある兎耳を連想させる耳の付け根であった。
11号がボンプの頭部。横を両手で塞げば大きな爆発音が周囲に響き渡り地面が揺れた。
Q. 今回ネームドが『
A. ネームド、喋ることはできるにはできます。しかし喉が痛み出し咳き込むためほとんど無理なんです。しかし声帯の負担が少ない発音ならちょっといける。しかしそれも痛むし咳き込む。それ以外のセリフは全部メモに言葉を書いています。
追記
ルビ振りにて、スマホ版では正しく表示されていない箇所がありました。現在すでに修正しています。