「反応が早いわね。間違えたとしても、これから気を付ければいい。」
耳の位置を間違えつつも、11号の素早いフォローによって爆音が
「実験兵器は侵食されていたけど、まだ制御を失うほどではなかったわ。」
「機密データを取得して、水ら鹵獲対策機構をアクティベート、自爆した。」
先ほどの爆発が発生したことにより周囲の敵が近づいて来るかもしれない。一番の可能性はエーテリアス。
地面が揺れのノイズキャンセリング越しでも【五月蝿い】を感じるほどの爆発は確実に2km以上に気づかれる。そしてここはホロウ。エーテリアスの巣。
施設の時のように鬼ごっこが始まってしまうかもしれないと考えたネームドが急いで移動しようと、荒くれ者どもが落とした何らかの装置とモリを回収すれば二人を急かした。
「気掛かりなのは敵だけじゃないわ。」
「私が所属する部隊は実験兵器の後始末を任されている。もし隊員の誰かが爆発の音を聞きつけて、引き返す私たちと遭遇してしまったら、私の中世を疑われる事態にも発展しかねない。」
11号は防衛軍を裏切る手立てとして反乱軍に協力。それは表としてだが裏では防衛軍のスパイだ。そのスパイである情報は一部の人間しか知らない。
事情を知らない人間が裏切り行為をしている防衛軍の兵士を見つければそれは敵として認識されざるを得ないことだ。
「既に別のルートを捜索済みだ。来た道を戻るのが一番楽だけど、今回はそうじゃない。」
駆け足で進むネームドのバックパックと連動し揺れている
《精密測定の進歩:61.35%。言い換えれば、全体のおよそ六割程度であればガイドが可能です。》
「検討はついてる。」
「では行きましょ───止まって、兵士がいる。」
声をかけると同時にネームドが後ろにいた11号を下がらせる。近くの遮蔽物へと身を隠していれば三人組の兵士が駅のホーム内を歩いていた。
「回り道は?」
「別の兵士も他の場所にはいる。一番少ない人数はあいつらだ。」
「できるなら交戦は避けたいわ。彼らは防衛軍よ。」
二人は銃持ち、残り一人は小型のナタを持ち周囲を警戒している。ナタ持ちが突撃し二人が援護する構成だろう。相変わらず
殺してしまおうかと考えるが、
「ネームド、とりあえず撃ってから考えようとしてないかい?」
足と腕の関節部脱臼でもしようかと考えていた所へ
「ここはカモフラージュで行くよ。ネームド。固まって。」
手招きされ近づけばしゃがむよう言われ言う通りにする。11号とネームドが[[rb:イアス > アキラ]]を囲うようにしゃがめば今度は妙な動きを
体を揺らしているが正しいだろうか。とにかくそんな感じの動きをし始めた。
「…それは何?」
「カモフラージュ技術の起動儀式。変なようにも見えるけど、ちゃんとし───これは、一体!?」
いつもの真ん丸な目、ボンプの目を示すそれがシャットダウンされ、大量のエラーが液晶画面に映し出された。
「───これは、一体!?」
Random Playのスタッフルーム。何層にも積み上げられたブラウン管テレビと、H.D.Dシステムコマンドを映していたモニターが大量のエラーメッセージに埋め尽くされる。
《──スター──危──ィルス───量のエラーコマン───》
様子がおかしくなった、それと同時にFairyの様子もおかしくなり始めたのだ。青を基調とした目のアバターは現在ブロックノイズで邪魔されブツ切りを繰り返している。
「一体何が起きて……」
カモフラージュが原因かもと考えたが、イアスの装備はいつも点検を必ず欠かさなかった。他のボンプより内部には新エリー都にて本当に一つしかない装置を組み込んでいるためだ。
カモフラージュ機能を起動、対象の認識を開始、11号をチェックし、ネームドのチェックも済まそうと始めた時からだ。エラーを吐き出したのは。
視界がエラーで埋め尽くされ強制的に感覚同期が解除されてしまった。
「は、、、?」
モニターに突如表示されたその文。警告文であることをはっきりと示している。
しかし表示されたのはたった一瞬。すぐに消えればいつもの”目”が画面上に現れた。
《───通知:防御プログラムのバックグラウンド修復が完了。異常プロセス除去モード及び、クリーンアップ終了。エラーメッセージとウィルスの消去が完了しました。》
警告文が姿を消し代わりにFairyが合わられる。さすがは自称新エリー都1優秀なAI、ブロックノイズで邪魔されていたアバターを元通りとなっていた。
「Fairy、今のは一体?」
《回答:不明です。》
「…Fairyでも分からないのかい?」
《Fairyに対する挑発と受けます。》
───そういうわけではないんだけど。
Fairyでも分からないのか、と言いかけたところで早口に反論したFairyが訝しむような”目”でマスターであるアキラを見る。本人にとってはただの独り言のようなものであったのだが。
「回答:以前変わらず不明ですが、予想する限りでは、助手
「ネームドが?」
あり得ない、がアキラの思うところだ。ただ人を認識しただけで感覚同期が強制解除されるなど経験がないためだ。
しかし、心当たりは一つある。
「まさか、あのスナイパーベール?」
《おそらく。》
幾分か前。感覚同期を開始、イアスと接続し機械の体になった状態でネームドを見た時、”眼”を疑った。ブロックノイズで覆われた人間が隣に立っていたためだ。
それが何か質問をしようとはしたが、それよりもやるべき事があり、それを優先し終えた後もホロウデータの解析に追われ、終わった頃には聞こうとしていた事を忘れる。それが繰り返し起き、いつしか疑問に思わなくなった。
取り敢えず、だ。
「感覚同期を再開してくれ。」
《肯定:H.D.Dシステムを再起動、助手一号との再接続を開始。》
眼部インプラントが起動し瞳に蒼いリングが浮かぶ。ホロウの特殊シグナルをH.D.Dが取得しイアスと再接続した。視界に映るのは星がキラキラと光る夜の空。
すぐさまボディチェックを開始、幸い損傷は起きていないようだ。それに戦闘音も聞こえていない。
気づかれずやり過ごしたのだろうか。夜空を見たままの視界に見慣れたか顔が映る。
「起きた?」
「すまない、問題が起きて……状況は?」
首を横へと振り、端正な顔立ちが向いた先を見れば戦闘中ではなく、既に終わった後らしい。感覚同期が解除される前は三人の兵士がいたはずだがそのうち二人が地面へと伏せ、残り一人はヘルメットを脱がされネームドに胸ぐらを掴まれている。地面には銃で撃たれ破壊されたと思われる防衛軍のエーテルエネルギー銃が散らばっていた。
ヘルメットを触り、内部をフェイスガード越しに覗く───獲物を観察するように見ていたネームドの目の色が変わった。まるで興味を失ったかのように。
胸ぐらから手を離せば力なく落ちていく兵士。その頭部、正確には顎に膝蹴りを食らわせれば兵士は重力に従うまま地面に伏せた。
「あなたから大きな音が鳴り始めて防衛軍兵士に気づかれた。彼が片付けたけど。」
完全勝利。といった様子だ。ナタは真っ二つに折られ、銃弾で破壊したであろうエーテリエネルギー銃をネームドが持てば鑑定するように触れる。
銃床、銃把、ハンドガードや照準器、レーザー投射機を触り、時には耳や目を近づければじっくりと観察する。
鑑定の結果───1から10で言えば1か2だろうか。エーテルエネルギー銃をそこら辺へと投げ捨てた。
彼が銃に対してそのような事をする事は11号、そしてアキラも見た事がなかった。銃の安全管理や危険な代物を扱う際の行動は彼が一番気をつけることである。その上【銃】という一つの武器に対する敬意と知識、熱は本物だ。
「それほど気に入らなかったかしら?」
11号が後ろから質問すれば彼は見事なまでのバットマークを作る。親指を下に向け、それ以外の指を折りたたむそれは「不満」「反対」「低評価」を表すもの。
次にメモとペンを取り出し文字を書き連ね始めた。随分と伝えたいことがあるらしい。凄まじい速度でペンを書いている。
『
『
「……」
「…そうね。」
自分に言われても、と言った表情をする11号の顔前に出した二枚のメモ紙。いつもの癖字ではあるが、所々文字の跳ねが荒々しく一所懸命が伝わって来るものだ。
「とりあえず、目標地点に移動しよう。モグラさんに渡しにいくんだろう?」
「その通り、行きましょう。」
モグラさんへと資料を引き渡し、車を駐留させた地点へと戻り、現在六分街。鬼ごっこで随分走ったおかげでクソ暑い装備を脱ぐ。久しぶりの気流がTシャツと肌の間を駆けていく感覚に気持ちよさを覚えるものだ。
次にお楽しみの時間。車内で数えたくもあったが帰ってからのお楽しみとして取っておいた弾薬箱だ。内部の弾がどれほどあるのかを数える単純な作業であるが、それがいい。
「随分と楽しそうね、彼。」
「諸事情でうちの家計が火車なんだ。依頼が立て込む量にもよるけど…弾薬費に頭を悩まさずに済みそうだ。」
大量の銃弾を鹵獲し、楽しさと喜怒哀楽の嬉を感じるなど、ネームドか、ツケを滞納している邪兎屋の社長とビリーぐらいだろう。横にいる猫たちと一緒にドラム缶の上に設置した弾薬箱から片手いっぱいに掴み取り一つ一つ数えてはプラスチック製の箱へとそれを放り込む。
時々リローディングプレスに銃弾を嵌めてはブレットプーラーダイで弾頭を抜き、火薬の状態を確認していた。
その時、アキラの目には───ネームドが笑ったようにも見えた。スナイパーベールを被っており顔が見えないが、なんとなく、そう感じた。
火薬を薬莢に入れ弾頭を固定、箱に放り投げる。軍事規格というのもあり、火薬の湿気や[[rb:サビ弾丸 > ラスティバレット]]は混ざっていないようだ。
「じきに反乱軍支部の用心と接触して、私の使命を全うできる。あなた達のサポートがなければ成し遂げられなかった。感謝するわ。」
「───ブラッドレッド・メロディーズ」
───
相変わらずの何の関係性があるのか分からない名前の構成、伏せ名前だろうが、中々に聞いたことのない名前にアキラは目を点にしてしまう。
ニャー
そこへ、聞きなれない猫の鳴き声が全員の耳に届く。その方向は全員の後ろだ。銃弾を数え検品していたネームドの手は止まり、後ろを振り返る。
そこにいたのは、夜のように影を同化するような毛先の色をし、水玉模様のような目を持っている猫である。
「”クロ”じゃないか!」
名前、というより見た目通りの言葉が定着し、自然とそうなった呼び名がアキラの口からでると同時に、Random playの飼い猫たちが駆け寄った。
それぞれが鳴き声を出し近づけば頭同士をぶつけ、体を擦り付け合う。イアスも近づけば同様に仲間と認識しているようである。その様子を逃さまいとアキラは撮影機を取り出し連射の限りを尽くした。
恐ろしく早い、撮影機を抜き、電源を入れ、ボタンに指を置く。その速度は稲妻の如く。そんな所へ忘れないようにと11号が忠告を始める、が。
「忘れていそうだから言っておくわ、次は反乱軍支部の要人と接触して拘束、次に雑兵を包囲するつもりよ。」
「あぁ。」
「防衛軍の精鋭部隊が集結し、ホロウ各地に設置される。」
「あぁ。」
「その時には私の所属する部隊の仲間も、遠くから支援する手筈になっている。」
「、、、あぁ。」
「だから、【パエトーン】のフリはしなくて良くなるわ。ホロウの案内役を買ってくれたあなたと、戦闘に参加してくれた彼には感謝している。」
「、、、」
────話を聞いていないわね。
無視しているわけではない。ただ集中しすぎているだけだろう。アキラは写真を撮りまくっている。唯一聞いているのは実弾片手に数えているネームドだ。
話を聞いていないからと行って叱責などすることはない。戦場でならば話は別だが、今は平穏な場所だ。何より自身は軍人。市民の邪魔をしてはならないと職業軍人である自分自身がよく分かっている。
「大量のエーテリアスを惹きつけ、ハティにも対抗してくれたことに、感謝するわ。」
11号がそう言えばネームドは言葉の代わりに親指を立てる。ハンドジェスチャーが彼なりのコミュニケーショなのだろう、そう考えつつ11号も親指を立てて見せた。
「では、また会うその日まで。次の行動で、包囲を完了できるでしょう。」
フロントドアを開き、運転席へ乗り込む。エンジンを掛けパーキングブレーキ解除。シフトレバーをDへと移動させ、ブレーキから足を離しアクセルを踏む。防衛軍の武装車両がゆっくりと前進すればRandom Play駐車場から一台の車が姿を消す。
猫たちとイアス、アキラが見送れば今度は横で弾丸を数えているネームドへ視線を移した。すでに小銃弾分は数え終えたらしく、9mm弾を数えていた。
「数はどうだい?」
ネームドは振り返る。両手の親指が立てられていた。
温度差が……温度差がスゴいっピ!
媚びるつもりではないのですが、評価は今後書くに当たって励みへとなります。是非ともお願いします。
追記
・めっちゃルビ振りミスしてました。すみません・
なんでスマホとPCじゃ違いが生まれるんだ。