ワームにすべてを奪われ、全身の半分以上をサイボーグ化して生き延びた男・黎明凱(れいめい がい)は、漆黒の戦士『仮面ライダーファズマ』となり地の底から復讐を誓う。
だが、かつて自分を襲った「偽物の自分」が本物以上の愛情で家族を守る姿を目の当たりにし、凱の心は激しく揺れ動く。
「天の道」を行く男・天道総司と出会う時、光と影の運命が交錯する――。
渋谷の夜は、文字通り「死んでいた」。
七年前、突如として天空から降り注いだ巨大な隕石。それがすべてのはじまりだった。激しい衝撃波とともに都市の中央は文字通り消滅し、巨大なクレーターが穿たれた。
その後、驚異的な速度で復興を遂げたこの大都市の裏側には、人々の平和な日常を根底から揺るがす恐るべき闇が、確実に、そして深く巣食っている。
宇宙生命体――『ワーム』。
奴らは突如として人間の前に現れ、その命を容赦なく奪う。それだけに留まらず、被害者の記憶、外見、声、癖、衣服に至るまでを寸分違わずにコピーし、その人間に「成り代わる」のだ。
昨日まで確かにそこにいたはずの愛する人が、今日微笑みかけているその存在が、中身は全く別の化け物かもしれないという、底なしの恐怖。
喧騒の溢れるスクランブル交差点を、一人の男が遥か頭上から見下ろしていた。ひび割れたコンクリートが露出したビルの屋上。吹き抜ける冷たい夜風に、漆黒のロングコートが生き物のように激しく翻る。
男の名は、黎明 凱(れいめい がい)。
「……笑わせるな」
凱の視線の先。ネオンの光に照らされながら、楽しげに笑いながら歩く、一組の男女がいた。男のほうの顔を凝視した瞬間、凱の右手が自らの顔を痛々しいほど深く覆う。前髪の隙間から覗く瞳には、地獄の底から湧き上がるような底なしの憎悪と、決して消えない悔恨の炎がドス黒く燃え盛っていた。
階下にいるあの男の顔は、黎明 凱。そう、他ならぬ、凱自身の顔だった。
七年前、まだ世界が辛うじて平和の残滓を留めていた頃、凱は路地裏でワームに襲われ、その身を無残に奪われた。心臓を貫かれ、冷たいコンクリートの上に転がった時、彼の人生は終わるはずだった。通常ならそこで物語は途絶える。だが、凱という男の執念は、生物としての常識を超えていた。
ドブ川に投げ捨てられ、ネズミに肉を齧られながらも、彼は生への異常な執念だけで心臓を動かし続けた。
通りかかったZECTの過激派「プロジェクト・ファントム」の実験部隊に拾われたのは、奇跡か、あるいはさらなる地獄の始まりか。彼は全身の半分以上を機械化する、生存率数パーセントの過酷なサイボーグ手術を、ただワームへの呪いだけで耐え抜いたのだ。
手術の記憶は今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。麻酔が全く効かない金属のベッドの上で、骨をチタン合金に削られ、筋肉を不気味な青い人工繊維に植え替えられる恐怖。医師たちが「もう生きていない、ただの動く死体だ」と囁く声を、彼は意識の混濁の中で確かに聞いていた。だが、彼は生きることを選択した。生き延びて、あの自分の顔をした化け物の息の根を止めるために。
『本物』が死に底ないのサイボーグとなり、闇に隠れて生きている。一方で『偽物』が本物の顔をして、本物の家族と、本物の恋人と、温かい日々を過ごしている。これ以上の悪夢が、この世にあるだろうか。自分の名前を呼ばれ、自分ではない何かが返事をする。自分が愛した人々に、化け物がその手で触れている。
「俺の場所を、俺の時間を……あいつらが貪っている。許さない……一匹残らず、この手で引き裂いてやる」
凱はコートの懐から、鈍い銀色に光る無骨な真鍮製のベルト――『ネイルバックル』を取り出し、腰へと装着した。鋭い金属音が夜の静寂に響き渡る。バックルが彼の皮膚の下にあるサイボーグ組織と直結し、微弱な電流が全身を駆け巡った。それは彼の神経を狂わせるような激痛を伴うが、今の凱にとってはそれすらも自分が生きている証明に過ぎなかった。
その時、眼下の交差点で劇的な異変が起きた。凱の偽物と一緒に歩いていた女性が、突然、男の異変に気づいて悲鳴を上げてへたり込む。偽物の男の顔が、熱で溶けた蝋細工のように融解し、歪んでいく。皮膚がべりべりと音を立てて剥がれ落ち、緑色の不気味な節足動物のような外骨格が露出する。ワームの第一形態――サナギ体への変貌だった。
「始まったか。化け物のメッキが剥がれる時間が」
凱は躊躇なく、ビルの屋上から虚空へとその身を投げ出した。重力に従い、高高度から自由落下する肉体。風を激しく切り裂きながら、凱は右手を天に向けて掲げた。その手が求めたのは、天の道などという生ぬるいものではない。地の底から這い上がるための、泥に塗れた絶対的な力。
空間がガラスのように激しく歪み、時空の裂け目から「それ」は現れた。キィィィィンという、鼓膜を突き刺すような激しい金属的な羽音。タキオン粒子を周囲に撒き散らしながら飛来したのは、漆黒の装甲とインディゴパープルの鋭いハサミを持つ、巨大なハサミムシ型の自律メカ――『ファズマゼクター』。
「来い、ファズマ。俺の渇きを潤せ」
凱の右手にゼクターが吸い込まれるように収まる。着地の瞬間、サイボーグの脚部が地面を爆砕し、衝撃波でアスファルトがクモの巣状に激しく割れた。サナギ体へと変貌し、怯える女性にその鋭い爪を突き立てようとしていたワームが、乱入した凱の放つただならぬ気配に気づいて動きを止める。
凱は迷うことなく、ファズマゼクターを腰のバックルへと激しく叩き込んだ。
『HENSHIN』
重厚な機械的な電子音声。同時に、凱の全身から噴き出した闇のようなエネルギーが実体化し、彼を覆っていく。組み上がったのは、重厚な黒銀の装甲。両腕には、あらゆる攻撃を拒絶し、あるいはすべてを圧殺するような一対の巨大な盾――シザーシールド。
『仮面ライダーファズマ・マスクドフォーム』
「ギィィィィッ!」
ワームが不快な鳴き声を上げ、その鋭い爪をファズマの胸へと叩きつける。ガキィィンと火花が激しく飛び散るが、ファズマの超重装甲は微動だにしない。
「その顔で、その手で、俺の思い出に気安く触るな!」
ファズマは両腕のシザーシールドを前方へと突き出し、ワームの胴体をがっちりと挟み込んだ。ギチギチと強力な油圧プレスのような音が響き渡り、ワームの強固な外骨格が悲鳴を上げて軋む。そのまま凄まじい怪力で引き剥がし、背後のビルのコンクリート壁へと叩きつけた。壁が大きく陥没し、破片が降り注ぐ。
だが、戦場はそれだけでは終わらなかった。周囲の薄暗い路地裏から、凱の放つエネルギーに引き寄せられるように、さらに三体のサナギ体が姿を現す。カサカサと不気味な足音を立てて囲んでくる化け物たち。
それだけではない。最初に凱が投げ飛ばしたワームの身体が、緑色の体液を滴らせながら、激しい熱を帯びて真っ赤に燃え上がり始めた。
「……脱皮(キャストオフ)か」
サナギの殻が爆弾のように激しく弾け飛ぶ。爆風の中から現れたのは、全身が鋭利な刃物の集合体のようになった、カミキリムシ型の成虫体(ワーム・アラクネア)。成虫となったワームは、人間には視認不可能な超高速移動能力――『クロックアップ』の資格を得る。この状態の敵には、並の人間では傷一つ付けることすら叶わない。
「ヒャハハハハ! 遅い、遅いぞ人間! お前の動きなど、止まっているも同然だ!」
超高速の世界へ移行し、ファズマの首を瞬時に刎ねようとするワーム。だが、ファズマの変身者、黎明 凱は装甲の奥で冷酷に笑った。
「遅いのは――お前らだ」
ファズマゼクターの尾部にある巨大なハサミを、限界まで左右に開き、速度を乗せて一気に閉じ合わせた。
「キャストオフ」
『CAST OFF... CHANGE SCISSORS』
パァン! と、空間そのものを破裂させるような凄まじい爆音が響いた。ファズマを覆っていた重厚な外装甲が四方八方へと激しく弾け飛び、迫り持っていたサナギ体三体を肉塊へと変えながら粉砕する。
爆煙の中から現れたのは、極限までシェイプアップされた漆黒とインディゴパープルのスタイリッシュなボディ。頭部には、ハサミムシのハサミを模した二本の禍々しくも美しいホーンが、満月を抱くようなV字型となって天を睨んでいた。
『仮面ライダーファズマ・ライダーフォーム』
成虫体ワームが完全に超高速の世界へと突入する。彼らの主観時間では、周囲の雨粒が空間に真珠のように静止し、風に舞う木の葉が宙でピタリと止まる。その絶対的な速度の中で、カミキリムシ型ワームは勝利を確信し、ファズマの喉元へ向けて音速を超える爪を突き出した。
だが、ファズマは一歩も動かない。逃げる素振りすら見せない。ただ、ゼクターの側面に配置された、鈍く光るスイッチを静かに押し込んだ。
「凍りつけ、世界。お前たちの時間ごと」
『SHADOW CLOCK UP』
世界から、すべての音が消え去った。いや、消えたのは音だけではない。ストリートを彩る派手なネオンの光が、飛び散る火花が、大気の熱量が、一瞬にしてすべて剥ぎ取られた。
通常のクロックアップが、タキオン粒子を利用した「超高速の移動」であるならば、ファズマの有する『シャドウ・クロックアップ』は、その完成度の低さと高出力ゆえに発生する「空間そのものの時間を完全に凍結させる」絶対拒絶の結界。夜の渋谷が、一瞬にして完全な白黒(モノクロ)の世界へと変貌する。
超高速で動いていたはずのカミキリムシ型ワームは、ファズマの喉元に爪を突き立てる、あと数ミリという絶望的な姿勢のまま、精密な石像のように完全に静止していた。その複眼には、自らに何が起きたのかすら理解できない驚愕の表情が張り付いている。
「通常のクロックアップ程度で、この深淵の速度に追いつけると思うな」
色の消えたモノクロの世界の中を、ファズマだけが冷徹な足音を響かせて歩く。一歩進むごとに、装着者である凱の全身の人工細胞が千切れるような悲鳴を上げ、脳に沸騰するほどの強烈な負荷が突き抜ける。プロトタイプゆえの暴走特性。肉体が内側から崩壊していく感覚。
だが、この男の胸に燻る怨念は、肉体の限界などとうに超越していた。静止したワームの真ん前に立ち、ファズマはゼクターのハサミを静かに、確実に、三回閉じ合わせた。
カチ。カチ。カチ。
『ONE... TWO... THREE... RIDER SCISSORS』
「終わりだ、偽物。我が身と共に消え失せろ」
ファズマの右腕に、禍々しい闇紫色のタキオン粒子が奔流となって収束していく。それは空中に、空間そのものを切り裂く巨大なハサミの幻影を結び、最凶の刃と化した。
『CHARGE』
ファズマが右腕を大きく振り下ろす。モノクロの世界の空気が、その一閃によって物理的に両断され、真空の裂け目が走る。闇紫の軌跡が、ワームの胴体を正確に捉え、へし折る。
「はさみ、切れ」
シャドウ・クロックアップの制限時間が切れ、結界が解除された。世界に瞬時に鮮やかな色彩が戻り、豪雨のような環境音と車のクラクションが激しく鼓膜を打つ。
「ガ、アァァァァッ!?」
カミキリムシ型ワームは、自分がいつ、どのように攻撃されたことすら理解していなかった。次の瞬間、その巨体が斜めに美しくスライドし、真っ二つに分断される。ワームの身体は、緑色の炎を上げて爆発する猶予すら実質与えられず、黒い粒子となって夜風に霧散した。
「ハァ……ハァ……ガハッ!」
変身を解除した凱は、激しい吐血とともにアスファルトに膝を突いた。シャドウ・クロックアップの凄まじい代償。心臓が壊れた時計のように早鐘を打ち、全身のサイボーグパーツからパチパチと不気味な火花が散る。視界が真っ赤に染まり、意識が遠のきかける。
「ずいぶん派手にやってるな。だが、お前の戦い方はスマートじゃない」
静まり返った交差点の向こうから、この地獄絵図に不釣り合いなほど、穏やかで優雅な声が響いた。一切の汚れを感じさせない男。天道 総司(てんどう そうじ)が、そこに立っていた。
天道はゆっくりと右手を挙げ、人差し指を天に向けて高く掲げた。
「おばあちゃんは言っていた。天の道を行き、すべてを司る男……俺の名は天道総司。お前がどんな闇を抱えていようと、俺の輝きがそれをかき消すだけだ」
凱は口元の血を乱暴に拭い、鋭い殺気を含んだ視線を天道に向ける。
「貴様は……何者だ」
「お前が天の道を邪魔をするなら、誰であっても倒す。ただそれだけだ」
「天の道だと……?」
凱の瞳に、激しい嫌悪と憎悪が宿る。
「ふざけるな。世界が光で満ちていると思うなよ、天道総司。お前のような綺麗な男の綺麗事など、反吐が出る。俺はあいつらを一匹残らず地獄に引きずり落とし、俺のすべてを取り戻す」
天道はふっと不敵な笑みを浮かべた。凱の持つ、本物の「飢えた獣」の目を、真っ正面から見据えていた。その眼差しは、哀れみでも拒絶でもなく、ただただ絶対的な己への自信に満ちている。
「俺からすべてを奪うことは、誰にもできない。お前の戦いがただの復讐なら、俺の歩む道を邪魔することは許さない」
「なら、試してみるか……?」
「お前の相手をしている暇はない。……俺は、最高の食材を買いに行かなければならないからな」
天道はそれ以上言葉を交わすことなく、優雅に背を向けた。凱は悔しげに奥歯を噛み締め、コートを激しく翻し、路地裏の夜の闇へと消えていった。
凱はその後、激しい飢餓感と肉体の軋みに耐えかね、場違いな洋食店の暖簾をくぐっていた。
ひっそりとした佇みのその店で、彼はただ肉体を維持するためのカロリーを求めていた。
しかし、目の前に差し出された一皿のサバの味噌煮を口にした瞬間、凱の箸が止まる。それは、サイボーグ化されて以来、すべての食べ物が砂を噛むようだった彼の味覚に、鮮烈な記憶を呼び起こすものだった。
あまりにも完璧な味付け、生臭さを一切消し去った絶妙な生姜の風味。これを作ったのは誰だ、と凱が顔を上げると、厨房から出てきたのは、あの天道総司だった。
「おばあちゃんは言っていた。美味いものを食べるのは楽しいが、美味いものを創るのはもっと楽しい……と。お前の冷え切った身体には、この味が一番よく効くはずだ」
天道は当然のように言いのけた。
「なぜ、俺がここにいると分かった」
「俺がすべてを司る男だからだ。お前の歩く道も、その飢えも、すべて俺の手のひらの上にある」
凱は無言で皿を空にし、叩きつけるように小銭を置いて店を出た。天道の底知れなさが、復讐に燃える彼の心を奇妙に逆撫でしていた。
数日の間、凱は潜伏を続けながら、自らの肉体の調整に追われていた。暗い地下室、スポットライトの下で、彼は自らの皮膚をめくり、露出したチタン合金の骨格と人工筋肉にオイルを注す。火花が散るたびに、あの交差点で見た、自分と同じ顔をしたワームの笑顔が脳裏に焼き付いて離れなかった。
その頃、ZECTの精鋭部隊『シャドウ』が、郊外の廃棄エリア、エリアZにて未曾有の危機に陥っていた。現れたのは、一体や二体ではない。集団で統率された、複数の成虫体ワームによる計画的な奇襲。
見習いでありながら、その実力を認められて仮面ライダーガタックの資格者となった加賀美 新(かがみ あらた)は、傷だらけになりながらも必死に戦っていた。
「くそっ……! 動きが早すぎる! クロックアップしても、敵の連携に追いつけない!」
ガタックがクロックアップを発動し、青い光の軌跡を残しながら応戦するが、敵は三体の成虫体。死角からの容赦ない一撃の前に、ガタックの頑強な装甲が次々と切り裂かれ、火花を散らして地面を転がる。加賀美の息は絶え絶えで、ガタックカリバーを握る手も震えていた。
そこへ、空間を切り裂くようにして赤い光弾が飛び込む。天道総司――仮面ライダーカブトの参戦だった。
「加賀美、下がっていろ。お前の戦い方は、いつも泥臭すぎる」
カブトはカブトクナイガンを鮮やかに扱い、ワームたちの超高速の死闘へと身を投じる。カブトの動きには一切の無駄がない。まるで敵の攻撃の軌跡をはじめから知っているかのように、最小限の動きでかわし、鋭い一撃を叩き込んでいく。
完璧な体術で二体のワームを同時に圧倒するカブト。しかし、残る一体のワームが、戦いの衝撃で壁が崩落しかけた廃ビルの陰に目をつけた。そこには、運悪く戦闘に巻き込まれ、恐怖で身をすくませている一般市民の姿があった。
「危ない……っ!」
加賀美が叫ぶが、その身体はダメージで動かない。カブトも別の敵に阻まれ、一瞬、対応が遅れる。ワームの鋭い鉤爪が、市民の頭部を引き裂こうと迫る。
その時、空間を切り裂く不快な羽音とともに、黒銀の影が凄まじい速度で乱入した。
「ギガァッ!?」
市民へ向かって飛びかかろうとしたワームの顔面に、骨が砕けるような凄まじい威力の回し蹴りが炸裂する。重い金属音とともにワームを遥か彼方へと蹴り飛ばしたのは、仮面ライダーファズマ・ライダーフォーム。
「ファズマ……! なんでお前がここに!?」
加賀美が驚愕の声を上げるが、ファズマは一瞥もくれない。凱は答えない。彼の装甲の奥にある瞳は、今助けた市民の中にいた、一人の男に完全にロックされていた。
その男の顔は――やはり、黎明 凱。あの夜、渋谷のスクランブル交差点で仕留め損ねた、凱のすべてを奪い去った「擬態ワーム」の本体だった。
擬態された男(ワーム)は、ファズマの姿を見ると、怯えるどころか、その唇を吊り上げて不敵な笑みを浮かべた。その顔は、かつて凱が鏡の中で毎日見ていた、自分自身の最も醜悪な、歪んだ笑顔そのものだった。
「見つけたぞ、偽物……! よくも俺の前にのこのこと現れてくれたな!」
ファズマの全身から、怒りと憎悪のタキオン粒子が暴風のように吹き荒れる。だが、その殺気に危機感を覚えた周囲の成虫体ワームたちが、仲間を守るために一斉に方向転換し、ファズマへと襲いかかった。
三位一体の容赦ない超高速攻撃が、ファズマのボディを次々と切り裂き、黒銀の破片が宙を舞う。
「邪魔をするなァッ! 俺の邪魔をすることは、誰であろうと許さん!」
ファズマは狂ったようにゼクターのレバーを引き絞り、その限界を超えて出力を引き上げた。
『SHADOW CLOCK UP』
ふたたび、世界から鮮やかな色が強引に剥ぎ取られていく。完璧な黒と白、そして灰色の世界。カブトの燃えるような赤い装甲も、ガタックの深い青いボディも、すべてが死んだような灰色に染まり、その場でピタリと静止する。
飛び散った火花も、空気中のチリも、すべてが時間を止められて宙に浮いている。その絶対停止の世界の中で、ファズマだけが強引に四肢を動かし、擬態ワームへと一歩一歩歩み寄った。
右腕のシザーシールドを最大まで展開し、鋭利な刃を剥き出しにする。この一撃で、自分の顔をした化け物の首を、その傲慢な笑顔ごと刎ねる。そうすれば、長かった俺の復讐は終わる。俺の時間を取り戻せる。
そう信じて、刃を振り下ろそうとしたその時。極限の静止世界の中で、あってはならない異変が起きた。バチ、バチバチ、と、灰色の空間に「赤い火花」が鮮烈に散ったのだ。
「何……!?」
ファズマが驚愕して振り返る。静止しているはずの灰色の世界の中で、カブト――天道総司が、ギチギチと骨の軋むような音を立てながら、人間の領域を遥かに超えた力で、ゆっくりと首を動かしたのだ。
カブトの大きな中心の複眼が、ゆっくりと、だが確実にファズマの動きを捉える。天道は、自身の『カブトゼクター』の限界を遥かに超えてタキオン粒子を暴走させ、ファズマの展開するシャドウ・クロックアップの領域に、力づくで自らの時間を同期させ、割り込んできたのだ。
「黎明 凱……」
天道の声が、歪んだ空間の波紋を通じて、重低音となって響く。
「お前の怒りは本物だ。だが、その怒りに完全に呑まれれば、お前は本当にただの化け物になるぞ。……それでいいのか」
「黙れ! こいつは俺のすべてを奪ったんだ! 俺の人生を、俺の家族を! こいつを殺して、俺は俺の存在を取り戻す! 化け物になって何が悪い!」
「なら、その眼で、現実をよく見るんだな」
天道がカブトクナイガンを指し示した先。静止した擬態ワームのすぐ背後。恐怖に顔を歪ませ、お互いを抱きしめるようにして縮こまっている老夫婦がいた。
それは、他でもない。黎明 凱の「本物の両親」だった。
擬態ワームは、逃げるためではなく、その背後にいる凱の両親を他のワームの攻撃から庇うようにして、その前に両手を広げて立ちはだかる姿勢のまま、固まっていたのだ。
「……何だと? なぜ、こいつが親父とお袋を……」
ファズマの動きが、完全に凍りついた。
「あのワームは、お前の記憶を完全にコピーした。コピーしすぎたあまり、お前の心の奥底にあった『家族を守りたい』という強い意志、その本能まで完璧に擬態してしまったらしい。皮肉なものだな。偽物が、本物以上に本物であろうとしている」
「ふざけるな……そんなことが、あってたまるか! 化け物が、俺の代わりに親孝行をしているとでも言うのか! 冗談じゃない!」
凱の絶叫が、静止した世界に木霊する。彼が今日まで生き延び、泥を啜り、肉体を機械に変えてまで戦ってきた理由は、すべてを「奪われたから」だ。正義のためではない、復讐のためだ。
だが、もしもその偽物が、本物以上の愛情を持って家族を守っているとしたら。自分という、傷だらけで呪いに満ちた本物の存在意義は、一体どこにあるというのか。自分こそが、彼らの平穏を壊す不必要な化け物なのではないか。
その一瞬の、精神の致命的な動揺。ファズマの肉体に限界以上の負荷を強いていたシャドウ・クロックアップが、臨界点を迎えて強制的に解除された。
「ガハッッ!!」
世界に一瞬にして鮮烈な色彩が戻ると同時に、凱の口から大量の血が噴き出す。ファズマの黒銀の装甲が維持できなくなり、光の粒子となって霧散していく。変身が解け、凱は地面に激しく崩れ落ちた。指一本動かすことができない。
「ハハハ、見つけたぞ、出来損ないの本物め。お前が消えれば、俺が完全な黎明凱になれるんだよ」
動けるようになった擬態ワームが、本物の凱を見下ろして醜く嘲笑う。周囲の成虫体ワームたちが、一斉に牙を剥き、無防備な凱を貪り食おうと飛びかかった。
「ここまで、か……俺の人生は、何だったんだ……」
死を覚悟し、静かに目を閉じようとした凱の視界を、強烈な「赤」が遮った。仮面ライダーカブト。その頑強な背中が、凱の前に立ちはだかっていた。
「天道……なぜ守る……俺はお前を否定したはずだ……」
カブトはカブトクナイガンを構え、背後の凱を振り返ることなく、凛とした声で言った。
「おばあちゃんは言っていた。刃物を握る手で人を幸せにできるのは、料理人だけだ……と。だが、この手でお前を守ることはできる。俺の目の前で命が消えるのを黙って見ている趣味はない」
カブトは腰のカブトゼクターのスイッチを、流れるような動作で順に押していく。
『ONE... TWO... THREE』
「加賀美、行くぞ」
「ああ、俺だって……これ以上、誰も死なせやしない!」
ボロボロのガタックもまた、気力を振り絞って立ち上がり、両腕のダブルカリバーを構えてカブトの隣に並び立つ。
『RIDER KICK』
カブトの右脚に、眩いばかりの青白い電気エネルギーが、バチバチと音を立てて収束していく。太陽のような輝き。それは、地の底の闇で凍えかけていた凱の心を、強烈に焦がすほどの、圧倒的な光だった。
「お前は生きろ、黎明 凱。俺の行く天の道は、お前がここで簡単に諦めていいほど、狭くはない」
カブトが反転し、空中に向けて放った超高速のカウンターキックが、襲いかかるワームの脳頭殻を正確に撃ち抜く。同時に、ガタックの凄まじい一閃が残りの敵の胴体を一刀両断した。
大爆発の激しい炎と煙の中、直立するカブトの姿は神々しいまでに輝いていた。擬態ワームは、形勢不利と見て、凱の両親を連れて瞬時にその場から逃走した。
「待て……親父……お袋……」
手を伸ばし、追おうとする凱だったが、全身のサイボーグパーツが限界を迎え、内部回路がショートする。彼はそのまま意識を失い、冷たいアスファルトへと倒れ込んだ。
凱が次に目を覚ましたのは、ZECTの厳重な監視下にある地下医療カプセルの中だった。全身を駆け巡る液体が、焼き切れた回路を強引に修復していく。
カプセルのガラス越しに、冷徹な目で彼を見下ろす影があった。ZECTの幹部であり、仮面ライダーサソードの資格者でもある神代 剣(かみしろ つるぎ)だった。
神代は自らのディスカリバーを引き抜き、カプセルの前に立った。
「ワームに擬態され、生きながら機械となった哀れな男か。だが、我が神代家はすべてのワームを白一匹残らず駆逐する名門。お前がワームの仲間でないという証拠はどこにある」
神代の言葉には、かつて姉をワームに殺された深い絶望と、歪んだ貴族としてのプライドが満ちていた。
「俺は……奴らを殺す。それだけだ」
凱はカプセルの内側から拳を叩きつけた。神代はその鋭い眼光を見て、ゆっくりと剣を収めた。
「フン、いい目だ。だが、神に代わって剣を振るうのはこの俺、神代剣だ。お前の出る幕などない」
そう言い残して去っていく神代の後ろ姿を見ながら、凱は己の内に眠るファズマの力を再び呼び覚まし、カプセルを力任せに破壊して脱出した。彼の戦いは、まだ誰にも邪魔されるわけにはいかないのだ。
数日後。街の喧騒から完全に隔離された臨海地区の廃棄エリア、エリアXの広大な廃工場。ついに、すべての決着をつける決戦の時が訪れた。
ZECTの医療施設から強引に脱走していた凱は、全身の激痛をアドレナリンと執念だけで抑え込み、単身で擬態ワームのタキオン粒子の痕跡を追い、この場所に辿り着いたのだ。
工場の最深部、錆びついた巨大なボイラータンクの前。そこには、凱の顔をしたワームと、椅子に縛り付けられた両親がいた。いや、よく見ると縄は緩い。ワームは、工場の天井から差し込む不気味な影を警戒し、恐怖に怯える両親を、必死に自分の背中に隠すようにして立っていた。
「来いよ、本物! お前が俺を殺せば、この老人たちは悲しむぞ! お前はもう、この人たちにとって、七年前に死んだはずの『他人』なんだからな! 今のこの人たちの息子は、俺なんだ!」
擬態ワームが、凱と全く同じ声で、狂ったように歪んだ声を上げて叫ぶ。
凱は、その言葉を聞いても怒らなかった。ただ静かに、ネイルバックルを自らの腰へと当てた。その表情には、かつて彼を支配していたドス黒い、周囲のすべてを巻き込んで自滅するような怨念は消え去っていた。
あるのは、ただ一つの、クリスタルのように透き通った決意。
「ああ、その通りだ。お前の言う通り、俺の居場所なんて、この世界にはもうどこにもない。俺の席は、七年前にあの路地裏で無くなったんだ」
凱は静かに右手を差し出す。空間を裂いて飛来したファズマゼクターを、しっかりと握りしめる。
「だがな、偽物。お前が本当に俺の記憶を持って、俺の代わりにあの優しかった家族を愛しているというなら――お前は、化け物としてではなく、一人の人間として、あの方たちの手を引いて、光の中を歩き続けろ。俺の代わりに、長生きして、親孝行をしろ」
「何……? お前、何を言っている……?」
擬態ワームの顔が、生まれて初めて本当の驚愕に染まる。復讐に狂った獣が、自分を許すような言葉を口にするとは夢にも思わなかったのだ。
「俺は影だ。地の底の這い泥だ。日の当たる場所には二度と戻れない。だがな、影だからこそ……その光を守るために、すべての毒を、お前たちの代わりに喰らって死んでやる!」
凱の叫びとともに、ファズマゼクターがバックルに激しく収まる。
「変身!!」
『HENSHIN』
『CAST OFF... CHANGE SCISSORS』
一瞬にして重装甲を爆散させ、ライダーフォームへとキャストオフしたファズマ。その瞬間、工場の老朽化した天井が凄まじい音を立てて崩落し、二体の巨大な成虫体ワームが姿を現した。
それは、ただの成虫ではない。かつて数々の仮面ライダーを葬ってきた、スコルピオワームの直属の眷属。最初から、生き残りの本物である凱をおびき寄せ、一網打尽にして抹殺するための、ZECT上層部の過激派とワームが結託した罠だったのだ。
「ギガァァァッ!」
最強の敵二体が、空気を引き裂く凄まじい速度のクロックアップで、ファズマへと一斉に襲いかかる。
「来い……! 俺のこの命、お前たちの道連れにくれてやる!」
ファズマは一歩も退かず、両腕のシザーシールドを振るって応戦する。しかし、敵のパワーと速度はこれまでとは桁違いだった。一撃を食らうたびに黒銀の装甲が大きく割れ、内部の人工筋肉が断裂し、激しい火花とオイルが周囲に飛び散る。膝が折れかけ、視界が完全にブラックアウトしそうになる。
その時、工場の肉厚な鉄製の入り口の扉が、凄まじい衝撃波とともに豪快に吹き飛んだ。
「自分の命を安売りするな。お前のその命は、俺が預かっている」
まばゆい白い逆光を背負って、ゆっくりと歩みを進めてくる男――天道総司。その右手には、すべてのライダーゼクターを統べる、選ばれし最強の者しか持つことを許されない究極の武器――『パーフェクトゼクター』が握られていた。
天道は迷いのない足取りでファズマの隣へと歩み寄る。
「天道……お前、いつもいいところに現れやがって……」
「行くぞ、凱。光と影、二つの道が交わる時、不可能なことなど何一つない。……俺とお前で、すべてを司る」
天道は瞬時にカブトへと変身し、パーフェクトゼクターのグリップにあるスイッチを押し込んだ。空間が歪み、ザビー、ドレイク、サソードのすべてのゼクターが引き寄せられ、パーフェクトゼクターへと完全に合体する。
『ALL ZECTER COMBINE』
「ハァァァァッ!」
カブトが鋭い気合とともに前線へと弾け飛ぶ。パーフェクトモードの圧倒的なタキオン粒子の出力の前に、一体の最強ワームの動きが完全に狂い、カブトの放つ大剣の一撃によって強固な外骨格が次々と爆砕していく。
その背中を守るように、ファズマが残るもう一体のワームの必殺の突撃を、両腕のシザーシールドを交差させて完璧に受け止めた。金属と爪が激しく擦れ合い、キィィィンと耳を劈く高音が工場内に響き渡る。
「天道! 俺の肉体はもう限界だ! 次のシャドウ・クロックアップ、時間凍結は――あと三秒しか持たない!」
「三分もいらない。三秒あれば十分だ。お前の影で、俺の光を最大に増幅させろ!」
ファズマは、自らの命の灯火をすべて燃やし尽くす覚補で、ゼクターのハサミを力強く閉じ合わせた。
「シャドウ・クロックアップ……ッ!!」
『SHADOW CLOCK UP』
世界が三度、完全なモノクロの深淵へと沈んでいく。音が消え、熱が消え、光が止まる。完全停止した白黒の世界。だが、その絶対静止の空間の中で、カブトの掲げるパーフェクトゼクターだけが、世界の法則を完全に無視し、限界を超えた七色のまばゆい光を放って脈動していた。
ファズマは自らのサイボーグ組織が内側から千切れ飛ぶ苦痛に絶叫しながら、残る一体の最強ワームの胴体を、両腕のシザーシールドで完全にロックし、その場に縫い付けた。
「今だ、天道ォォォッ!! 撃てぇぇぇ!!」
カブトが、静止したモノクロの世界の中を、すべてを切り裂く光の矢となって一直線に突き進む。パーフェクトゼクターの刃に、すべてのライダーのエネルギーが完全に一本の巨大な光刃となって収束していく。
『MAXIMUM RIDER POWER』
『PERFECT RIDER KICK』
限界まで引き絞られた空間の歪みがついに臨界点を突破し、モノクロの世界がガラス細工のように激しく音を立てて粉砕された。世界に一瞬にして現実の色彩が戻ると同時に、カブトの放った究極の一撃が、ファズマが完全に固定していたワームの胸核を、そして背後にいたもう一体のワームを、まとめて直線上に撃ち抜いた。
「ガアァァァァッッ!?」
最強のワーム二体は、断末魔の叫びを上げる暇すら与えられず、同時に太陽の誕生を思わせる巨大な火柱を上げて爆発、完全にこの宇宙から消滅した。
激しい爆風が工場内を吹き抜け、古い埃や煤煙をすべて洗い流していく。戦いは、完全に終わった。
崩壊しかけた工場の中、変身を解除した凱は、錆びついた鉄柱に背中を預け、血混じりの荒い息を吐いていた。全身のサイボーグ組織の基盤は完全に焼き切れ、人工皮膚の隙間から青白い火花が弱々しく散っている。もはや自らの命の灯火が、数分も持たないことを、彼の冷徹な本能が悟っていた。
彼の前には、腰を抜かした両親の前に、人間の姿に戻った「擬態ワーム」が立っていた。ワームは凱の顔のまま、言葉にできない複雑な表情で、血塗れの本物を見つめている。
凱は震える右手で、コートのポケットから、一枚の古びた、端が擦り切れた写真を、擬態ワームの足元へと静かに放り投げた。それは、七年前のあの隕石が降る前、家族三人で旅行に行った時に撮った、最後の、そして唯一の家族写真だった。
「……行け」
凱は掠れた、今にも消え入りそうな声で言った。
「あの人たちを、二度と泣かせるな。もし、お前が一度でもあの人たちに涙を流させたら……俺のこの魂が、いつでも地獄の底からお前を切り裂きに、引きずり落としに行くからな。分かったら、さっさとその写真を持って、連れて行ってやれ」
擬態ワームは、震える手でその写真をそっと拾い上げた。そこに写る、若き日の凱の笑顔と、今の目の前にいる傷だらけの本物の顔を交互に見つめる。
そして、ワームは本物の凱に向けて、人間としての深い、深い敬意を込めて、頭を下げた。
「……ありがとう、本物の俺。あなたの名前と命、生涯を懸けて守り抜く」
それは、ワームとしての単なる擬態やコピーを超えた、一つの奇跡の「人間の意志」の誕生だったのかもしれない。ワームは優しく両親の肩を抱き、彼らの手を引いて、工場の外の、眩しい朝日の光の中へと歩いていった。両親は何度も後ろを振り返ろうとしたが、ワームは「大丈夫ですよ、帰りましょう」と、凱と全く同じ優しい声で彼らを促した。
「……これで、いいんだ。俺の戦いは、終わった」
凱は満足げに、重い目蓋を閉じようとした。心地よい静寂が彼を包み込もうとする。
「勝手に人生の幕を引くな。まだお前の物語は終わっていない」
聞き慣れた、あのどこまでも傲岸不遜で、しかし確固たる自信に満ちた声。天道総司が、腕を組んで凱を見下ろしていた。天道の背後には、最新の医療用カプセルと、蘇生設備を持ったZECTの特別回収班が控えている。
「無駄だ、天道……俺の身体はもう終わりだ。メインフレームも、人工心臓も、すべて焼き切れてる。お前のお節介も、ここまでだ」
「なら、新しいパーツに取り替えるだけだ。お前は俺の影として、これからも生き続ける義務がある」
天道はフッと口元を不敵に歪めて笑い、右手を高く掲げて天を指差した。
「おばあちゃんは言っていた。太陽が素晴らしいのは、泥にまみれた影をも等しく照らし出すからだ……と。お前がどんなに地の底へ落ちようと、俺が天の道まで引っ張り上げてやる。世界は、お前が一人で勝手に諦めていいほど狭くはない」
凱はしばらく天道の顔を呆然と見つめていたが、やがて観念したように、乾いた、しかしどこか晴れやかな笑い声を上げた。
「どこまでも……傲慢で、癪に障る男だ。天の道、か……悪くない」
ひび割れた工場の天井の隙間から、夜明けの、眩しいばかりの黄金の朝日の光が真っ直ぐに差し込み、凱の漆黒のコートを白く、純白に染め上げていく。
カブト(太陽)の光は強く、気高く世界を照らす。しかし、その光が強ければ強いほど、ファズマ(影)の存在が消えることは決してない。二人のライダーは、背中合わせのまま、それぞれの意志を胸に、新たなる戦いへの道を力強く歩み始めるのだった。
続きません。