超ハイスペック家族に生まれた一般人が、なんやかんやあって頭の中に月人をインストールした結果、なんやかんやあって
「酒寄博士、お許しください!」
と言うまで。
の、プロローグ。続きません。
なお、本二次創作のテーマは「カルマ」です。
カチカチ、カチカチという音が、仄暗い部屋の中に反響していた。
「──けふっ」
ぐいっと生ぬるいエナジードリンクを煽り、吐息を一つ。缶を乱暴に机に叩きつけた。
これで飲み干したエナドリは3本。少ないお小遣いでやりくりしている身ではあるものの、今は火急のため仕方がないと割り切って、パソコンに向かう。
時間は午前1時。私は今、シューティングゲームをやっている。
仄暗い部屋を微かに照らすパソコンに映るのは、なんとも言い難い、珍妙な生物。
黄色い触手をうねうねと動かしながら、紫色のタコを画面上にばら撒きまくる、いわゆるヒョウモンダコモチーフのボスキャラ。
毒々しい斑模様からデフォルメしたタコが降ってくる様はなんとも、我ながら若干気色悪いとは思うが、そこはご愛嬌。
対する私はメンダコをモチーフにした自機を操り、敵の弾を避け、着実にボスにダメージを蓄積させていく。
難易度は“
その名に相応しく、容赦ない弾の数に加え──ボスの配下がフラフラと自機の後ろから迎撃してくる。
だが、仕様は分かりきっている。降り注ぐ弾を避けながら、避けること30秒ほど。ボスの
ボスにはよくあるソレを前に、私は
モーション後、即行動に移るボスは、先ほどよりも明らかに増えた弾数。ホーミングしてくるそれに、
ミスではない、それが狙いであるからして。
膨大な量の攻撃に、無抵抗なメンダコはすぐさま消し飛んだ。
『げ〜むお〜ば〜』
些か緊張感のない敗北の文字。それが出るや否や、私はエンターキーを連打した。
すると出てくるのはメニュー画面。迷わず難易度選択を選び、次は
ローディングも短く、ゲームは再開された。
見慣れた
画面下から現れた
『げ〜むお〜ば〜』
────、
──まてまて、まだ終わってない。
大丈夫だ、問題ない。まだあわてるような時間じゃない──っ!
カチカチカチカチカチカチカチカチッ!
メニュー画面が出ることを切に願いながら、エンターキーを連打する様は、側から見れば滑稽に映っただろう。だが許して欲しい。かなり切実なので。
数十年前のとある名人もかくやの数秒の連打のあと、メニュー画面がポップした、瞬間。
画面に映される簡素な待ち受け画面に、私は絶句した。
淡い願いを込めて、マウスを右へ左へ。しかしそんな願いを打ち砕くように、カーソルはびくともしない。
そんな画面を見て、深呼吸を一つして。
「何だよぉもおおおまたかよぉぉぉおおおお‼︎」
そう、絶叫した。
「なんでクラッシュするんや、何回デバッグしてもなんでここだけぇっ!」
カシュッ! と新しくエナドリを開けて、勢いよく喉に流し込んだ。
ごっごっと音を立てながら飲み干されていくエナドリは今日これで4本目。近年の炎天下のせいか、とても生ぬるいそれは、うまくいかない現状を表しているようで。
とてつもない勢いで消費される
深夜1時という時間ではあるが問題はない。今、家族は全員家にいないので。
私はゲームクリエイターである。
とはいっても趣味でフリーゲームを作っている、というかけ出しもいいところのペーペーではあるのだけれど。
今やっていたのは『タコ'sシューター』と名付けた自作ゲームである。
名前の通りタコを打った跳ねたをするゲーム。世に出す直前、お試しで兄にやらせたところ、最高難易度でゲームオーバーしてから難易度選択をするとなぜかラスボスがポップし即轢き潰された上、クラッシュするバグを発見。至急デバッグ作業に至ったわけなのだが──いかんせん、うまくいかない。
「はあ……難易度下げたらクラッシュて、我がゲームながら私へのあてつけかね」
逃げるなて、自分の作ったゲームから言われるとは思わんかったわ。
そう一人ごちて、ちびちびとエナドリを啜るついでにぐぐっと背伸びをした。
妹は中学の勉強合宿で2泊3日。母は仕事で今頃東京に。ついでに兄は東京に住んでいるから家に一人、自由に過ごしているつもりではあるものの──いい加減、自由にしすぎたかもしれない。
あと6、7時間もすれば高校生の時分である私は学校に行かねばならず……さもありなん。少しでも睡眠を取らねば、また明日から母の“私はできましたがお宅は?” 語録が飛んでくるというもの。
「──まあ、ええか」
パソコンをそのままに、ベッドの上へダイブする。柔らかいマットが眠りへ誘ってくれるのを期待したけれど、エナドリを飲みすぎた。
乃依にも小言を言われそうだから、風呂にも入ってしまいたいし、正直、バグ潰しも全て終わらせてしまいたいが、今日も学校がある。流石に無理……は怠け者の言い訳、とは母の言葉だったっけ。
はいはい、うっさいうっさい。
唐突に思い出した母語録に唾を吐いて、ベッドから立ち上がった時だった。
ドォンッ‼︎
「──っ! なんやなんや何っ!?」
──衝撃音。
瞬間、カーテンで締め切った窓が、何故か七色に輝いた。
あまりに不可思議な現象に、何事か理解するよりも早く、反射的にベッドから立ち上がった、が。
「──へ?」
足に何かがひっかかり、思いっきりバランスを崩した。当然、私の身体は逆らうこともできず。スローモーションのように傾いていく視界の先には、なぜか足に絡まって踊る延長コードが伸びていて。
それはなぜか奇妙なことに、
「──いッ!?」
あまりの痛みに、延長コードに頭突きを喰らわせたことを理解して。自分の意識は闇に落ちた。
◇
『───おはようございます』
「い、てて……おはよう」
声が聞こえて、目が覚めた。若干痛む額をさすりながら、体を起こす。どうやら、私はあのまま気絶してしまったらしい。凹んでないだろうな、私のおでこ。
あの光は一体……?
と、痛む頭で考えても、どうにも頭が回らない。
ふと視線を向ければ、カーテン越しに部屋に差し込む光──なるほど、既に夜は明けてしまったようで。
『──体調はいかがですか?』
「まあ、おでこが痛いくらいだし、大丈夫」
時間を確認すれば、朝の6時を指していた。この時間ならまだ風呂くらいには入れるだろうか?
そう考えながら、立ち上がる──
『それは結構。であれば、確認したいことがあるのですが──』
──待て、誰だ。
今、家には私一人しかいない。ならば、この女性の声は……?
どこからか聞こえてくる声に、私は周囲を見渡したが、そこには誰もいない。だが以前と、女性の声は聞こえていて。
『聞こえていないふりはやめてください』
「いや、聞こえていなふりやなくて、現状の把握を……」
『聞こえているのならば結構です。ところで、この現状についてお聞きしたいのですが』
なんだこいつ、マイペースだな。私も知らん。
そう思うも、答えてくれる人は誰もいない。そんな私を知ってか知らずか、彼女は続ける。
『貴女が気絶してから──』
「いやあんたは誰でどこから話しかけてきてはる──きてるのか教えてほしいんですが……」
──今何が起きてる?
どこからか女性が話しかけてきている。
──どこから?
知らへんわ、そんなもん。いくら考えたとて、自分以外にこの部屋に人はいないゆえに──!
『──端的に言えば、
「は──」
『私は貴女方から月と呼ばれる星より、この星の異常現象の調査のために来た、所謂宇宙人というものです。
ですが──
────、
「なんて?」
『述べたとおりです』
は、宇宙人? 精神内に入り込んだ? どゆこと?
理解のできない言葉の羅列に、私のキャパは超えたらしい。口からはえ、は、という変な単語しか漏れ出てこない。
そんな私を置いて、彼女は抑揚のない声で続ける。
『信じられませんか?』
「信じるも何も……頭の中で声が響いてるのもそうやけど、宇宙人て。信じる方が難しいと思わへん?」
『そうですか、ならば
「はっ……?」
その瞬間、私の視界がブレた。
何事かを理解するより早く、
真っ暗な画面を覗き込むと、自分の額を撫でる。それは全て私の意思に反していて。
『なるほど、怪我もないようで何よりです』
そう頭の中で響くと同時、私の腕はパソコンのキーボードを叩き始めた。
『これは、何をしようとしていたのですか?』
「い、いや。ゲームのバグとりやけど、というか何が起こって」
『──なるほど、わかりました』
どうやら、喋ることだけはできるらしい。
自分の意思に反して、指はゲームのプログラムを開くと、迷いなくキーボードの上を滑っていく。そして。
『──バグを修正しました』
「────へっ!?」
『
どうやら、身体の制御権は戻ってきたらしい。自由に動く身体を確認するように、私はゲームをスタートさせた。
──そして、たっぷり30分。
「直って、る……」
バグは、発生しなかった。
難易度選択を終えても突然ゲームオーバーになるバグは発生せず、その他の細かいグリッチも、全て。
自分が徹夜して修正を繰り返していたはずのゲームは、たった数分で──
『ご理解いただけましたか?』
その言葉を、理解するには十分だった。
いつでも身体を奪える、たった一目見ただけで、ゲームのプログラムを理解した
あまりに現実離れした現象に、冷や汗が流れた。
『身体は主に5分ほどしか借りられませんが、この程度であれば、問題ないようですね』
この程度、か。なるほど。
この人も、
はぁ、と息を吐き、席を立った。
『何処へ?』
「お風呂だよ、今から学校だから」
『風呂に入るには遅いように思いますが』
「宇宙人のくせに、学校が何かは知ってるんだ。せいぜい30分くらいで出られるし大丈夫だよ」
そんな言葉を交わしながら脱衣所へ。頭の中に他人がいるというのは気味が悪いが、致し方なし。
宇宙人だのなんだのは深く考えたら負けだ。諦めは早い方がいい。
そう考えながら、服を脱ぎ、風呂場へ行こうとした時だった。
『──、──、貴方、男だったんですか』
「ほお、人が気にしてることをさらっと言うとはええ度胸してはんな。しばくぞ」
──私の名前は酒寄
今年17歳になる高校二年生である。
なお、よくちっちゃいだの、かわいいだの、妹の彩葉と合わせて美人姉妹だの言われるが──っ!
私は! 歴とした! 男であり!
末っ子とも間違えられるが、次男である──ッ!
というか、宇宙人からも女に見られるって……
まさかの宇宙人からの“お前は女だ”宣言に、がっくりと肩を落とした。
・酒寄瞬花
現時点では原作開始三年前で17歳。
ゲーム作りが趣味の一般男の娘。なお、17歳時点で原作超担当より背が低い。せめて名前がもっと男っぽくあればっ……! とか考えてたりする。あわれ。
ちなみにゲーム作りは好きなものの、ゲームをプレイすることはそこまで好きじゃなかったりする。
この度、強制月人インストールにより、高性能なデバッガーを獲得した。あまり嬉しくないとは本人の談。
余談として、乃依とは兄経由でリア友。瞬花のファッションセンスが壊滅的なため、よく怒られているそう。
名前の元ネタは「朝顔」。
京都弁は得意ではないため、イメージです。申し訳ない……
・一般憑依月人
何か地球で月関係の異常を発見し、地球にやってきたものの……何かしらが起こり、男の娘に憑依した。
スペックはかぐやのちょっと下くらい?の想定。
彼女は月人であり、名前はまだない。
ハッピーエンドがすきです!
でも感情薄めの女の子が大切な人の出会いや友人とのふれあいを経て感情豊かに笑うようになっていったものの、大切な人が自分のために犠牲になって「ち、違っ……そんなつもりじゃ……!」ってなるのがもーっと好きです!
二次創作のくせに本編キャラが名前しか出てこないとか本当ですか?
ゲーム等の設定はふわふわです。
続きません、悪しからず。