貴女が"私"と出会う前の”私”だけの大切な思い出。
それは相思相愛の夢物語――。

[ヤチヨが彩葉に"睡眠学習"をさせる話]
※彩葉がヤチヨを推す理由、好きな理由はきっとこういう理由もあるはず……

1 / 1
[L]earning [O]f the [V]irtual to [E]ternal wanderer [YACHIYO]

 私が雑談配信の時と同じように他愛もない話をしていると、画面の向こうから規則正しい寝息が聞こえてきた。

 

「あらら~……彩葉、寝落ちしちゃったか」

 

 東大の現役合格を目指しながら、自分で学費も稼いでいる彩葉。

 毎日めちゃ頑張っていて本当に大変そうな彼女も、超ムリ限界ギリな時が来る。

 そんな時は決まってヤチヨ()の相談室にメッセージが届く。

 まさにそういう日が今日だったようで『ヤチヨと話したい』と、いつもと同じ誘い文句が書いてあった。

 私は跳ねる心を抑えながら、いつも通り『待ってるよ、彩葉』とすぐに返信する。

 

 こうして始まった宵の逢瀬は、私だけの大切な時間。

 モニターを通してじゃないと彩葉とお話出来なくなっちゃったけど、それでも本当に嬉しい。

 この瞬間だけはAIという設定を忘れ、色んな話をした。

 触れられないのは残念だけど、これだけで……こうやって話せるだけでも、充分幸せなんだから。

 そうやってささやかな幸せを噛み締めていた日の事。

 

 日付を越えて少し経った頃だ。

 なんとその日は珍しい事に、彩葉が机に突っ伏して居眠りを始めてしまった。

 私と話をしている時から既にうとうとし始めていたので、何度か「もうお眠りなさいよ」と促していた。

 けれども彩葉は「まだノルマが終わってないから」と聞く耳を持たず、落ちてくる瞼を必死に持ち上げていたのだ。

 そんな悪い子の彩葉が、ついぞ寝落ちという良くない結果に行き着いたのはさもありなん。

 せめて布団で寝てほしかった私は、何とか起こそうと声を掛ける。

 

「彩葉、彩葉。こんなとこで寝たら風邪引いちゃう。ほら起きて」

 

 私の声が届いていないみたいで、可愛らしい寝顔を見せてくれている。

 あぁ、いとかわゆし……。

 ――って、ダメダメ!

 このままだと疲れも取れないし、彩葉はただでさえ睡眠時間が短いんだから。

 ちゃんと寝かせてあげないと。

 そう思った私は諦めずに声を掛け続ける。

 

「ほーら。起きて? 彩葉、おはようだよ~」

「むにゃ……おは……よぉ」

 

 むにゃ、だって~!

 彩葉はいつも気を張っているので、こんなに無防備になる事はかなり珍しい。

 今日は本当にお疲れだったみたい。

 あ、そうだ! 今の内に寝顔保存しちゃお~!

 そう思った私は、スクショを八枚ほど撮って即保存した。

 ――って、そうじゃなくて。

 

 何とか意識を戻した私は、目の前の難題にまた取り掛かる。

 全然起きる気配のない彩葉に困る、というよりも心配が勝ってしまう。

 実体のない今の私では揺らして起こす事も、肩に布団を掛けてあげる事も出来ないのが本当に歯痒い。

 でも、声を掛けたら反応はあるんだけどなぁ……。

 

「彩葉ー、お布団で寝なさいよ~」

「んぅ……ふと、ん……」

 

 ダメかぁ~! やっぱり起きないなぁ。

 その後も何度か声は掛けてみたけど、彩葉は一向に目を覚まさない。

 ――そんな時だ。

 本当にふと、ちょっとしたイタズラ心が芽を出した。出てしまった。

 

 今の彩葉は、寝言ながらも私の言った事を復唱してくれている。

 つまり、もしかして今ならなんでも言わせられるのでは……?

 

 ………………彩葉ごめん!

 天使のヤチヨと悪魔のヤッチョの戦いは一瞬で決着が付いた。

 形式上は謝った私の心はもう、止まれなかった。

 ヤッチョは今から好きなように動きます!

 

「彩葉は、ヤチヨが、だ~い好き」

「ろ、やちょ……だ……」

 

 全然ダメだ……。

 ちょっと長いのかな。

 

「ヤ・チ・ヨ」

「や……ち、よ」

 

 うんうん、良い感じ!

 

「ヤチヨが、好き」

 

 好きだよ彩葉。

 だから彩葉も、私を好きになって。

 

「やち、よ……きぃ……」

 

 あぁ惜しい!

 もうちょっと……!

 

「ヤチヨが、好き」

「ヤチヨ……すき……」

 

 好きだって! えっへへ、嬉しいなぁ……。

 私は彩葉の言葉をしっかりと反芻する。

 想い人に『好き』と言われるだけで、こんなにも心が温かくなる。

 単純だなぁ、私って……。

 

 ただこんなやり方でしか伝えられない、言わせられないのはズルいかなとも思う。

 でもしょうがないよ。嬉しくなっちゃったんだから。

 抑えていた想いは、もっと零れてもっと欲深くなっていくのを感じる。

 まだまだ、もっとハッキリ言わせるんだから!

 

「彩葉は、ヤチヨが、だ~い好き」

「ヤチ、ヨ……だ~……」

 

 頑張って彩葉!

 

「ヤチヨ、だ~い好き」

「ヤィヨ、ら~い好ぃ……」

 

 今度は全体的にちょっと惜しい!

 後ちょっとなのに!

 

「ヤチヨ、だ~い好き」

「ヤ、チヨ……だ~い、好きぃ……」

 

 やったやったっ! ついに言わせた!

 幸福感と達成感。そしてやり遂げた感動で、電子の世界なのに私の目からじわりと涙が溢れる。

 

 彩葉、もっともっと好きになって。

 そして私の事、世界一好きになっちゃってもいいよ。

 私の想いが彩葉へ沁み込むように、何度も何度も愛を伝える。

 大好き。大好き。大好き。

 

「ヤチヨ、だ~い……好きぃ」

「えへへ。私も……彩葉の事、だ~い好きだよ」

 

 これは今だけの夢物語だと分かっているのに。

 少しでも彩葉の心にを刷り込みたくて。

 

 そうして彩葉が夢から覚める瞬間まで、私たちは愛を伝えあっていた――。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

超かぐや姫R! ~彩葉が二周目チートで超ハッピーエンドに至る話~(作者:そうすけVR)(原作:超かぐや姫!)

これは、彩葉が過去へ「二周目チート」で殴り込み、ハッピーエンドのその先――超ハッピーエンドに至る物語。▼映画・文庫版・楽曲などをできるだけ検証・整理しながら、勝手に続編を書いています。▼ ▼※映画本編・文庫版・楽曲等の重大なネタバレを含みます。※本作はpixivにも投稿しています。


総合評価:296/評価:9.17/連載:11話/更新日時:2026年08月11日(火) 20:03 小説情報

Ex-Pancake Party!!(作者:お竹)(原作:超かぐや姫! )

超かぐや姫に脳を焼かれたので初投稿です。▼ツクヨミでパンケーキを食べられるようにする話。いろヤチ。▼*追話しました。時系列ごった煮短編集になります。また念のためガールズラブタグを付与しました。


総合評価:447/評価:8.88/短編:8話/更新日時:2026年07月12日(日) 19:58 小説情報

ホンモノで失敗作のかぐや姫(作者:一般先生)(原作:超かぐや姫!)

▼『竹取物語の二次創作のかぐや姫』の失敗作だったカグヤは本物のかぐや姫へとなった。そして、『竹取物語』を終えた平安時代でカグヤが出会ったのは『かぐや』を名乗るウミウシだった。▼これは、物語を書き換えて本物へと至った失敗作が混ざったことで輪廻(シナリオ)をぶち壊す話である。▼※本作品はビジュアルアーツ様の偽りのアリスとのクロス作品となっています。▼


総合評価:20/評価:-.--/短編:3話/更新日時:2026年07月20日(月) 00:37 小説情報

ヤチヨ「ヤッチョがハッピーエンドに連れてっちゃうよー!」(作者:片倉の推しの子Bです)(原作:超かぐや姫!)

卒業ライブが終わり、かぐやが月へと帰る。▼だけどいろははその事実を受け入れられず、月へと手を伸ばした。▼「私は、かぐやを月から取り戻す」▼月に帰ったかぐやを彩葉が取り戻そうとする話です。▼連載小説にしてますが、一作目だけで完結してます。▼かぐやみたいにもう一回!って思って頂けたら二作目以降も読んでくれるとありがたいです。▼pixivにも同様のタイトルで投稿し…


総合評価:25/評価:-.--/完結:3話/更新日時:2026年06月22日(月) 20:00 小説情報

かぐやがいろはに耳かきをする話(作者:白魔術師)(原作:超かぐや姫!)

超かぐや姫のストーリーの中でこんなことあったかもしれないなの妄想をつらつらと書き連ねる場所。不定期。1話完結型を想定。▼まずはいろはがかぐやに耳かきされて壊れかけるお話。▼pixivにも投稿しています


総合評価:145/評価:9/連載:3話/更新日時:2026年06月21日(日) 20:17 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>