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「第一種目終了! 続いての第二種目は……これ!!」
ミッドナイトがムチを振るい、スクリーンに『騎馬戦』の文字がデカデカと映し出された。
2〜4人で馬を組み、第一種目の順位に応じて割り振られた
そして──。
「第一種目、1位のポイントは……1000万!!」
その宣告が響いた瞬間、スタジアムの空気が一変した。
参加者全員のギラついた視線が、トップでゴールした出久へと一斉に突き刺さる。出久は「ひぃっ!?」と情けない声を上げ、顔面を蒼白にして震え上がっていた。
オレは静かに視線を巡らせる。
(……出久から1000万を奪えば、その時点で1位が確定する。だが、全員がそこを狙うなら、あえて乱戦を避け、他のハチマキを狩り尽くすのも手だ。……いや)
オレの視線の先で、出久が震える足に力を込め、グッと顔を上げた。その目には、標的にされる恐怖を押し殺し、1000万を守り抜くという強烈な覚悟が宿っていた。
(オレがトップになる。出久から1000万を奪い、他のハチマキも根こそぎ奪い取って、完全な勝利を収める)
そのためには、オレの魔法を最大限に活かし、なおかつ他の騎馬を圧倒できるチームが必要だ。
オレが振り返ると、ちょうど同じタイミングでこちらへ向かって歩いてくる三つの影があった。
「ユノさん。もしよろしければ、私と組んでいただけませんか?」
「……ん」
「ユノ、俺と組もうぜ!」
八百万、小大、そして瀬呂だった。
「……お前ら」
「図書室でユノさんに教えていただいた、個性のイメージ……この戦いで、必ず証明してみせますわ」
八百万が、かつての迷いを完全に払拭したような、凛とした笑みを浮かべる。小大もまた、「……ん。負けない」と静かに闘志を燃やしていた。瀬呂も両腕をぐるぐると回しながら準備万端といった様子だ。
「 モモとユイ! 足を引っ張ったら許さないわよ! セロ、お前はしっかりユノの盾になりなさいよね!」
オレの肩の上で、ベルが偉そうに腕を組んで指示を飛ばす。
「妖精ちゃん、俺の扱い雑じゃね!? まぁいいけどよ!」
「……ふふっ。ベルさんのご期待にも、しっかり応えさせていただきますわ」
八百万の『創造』、小大の『サイズ』、瀬呂の『テープ』。
機動力と搦め手。オレの風魔法を主軸に置けば、この編成のポテンシャルは計り知れない。
周囲を見渡すと、他の連中も続々と陣形を固めていた。
【轟チーム】
轟(騎手)、飯田(前衛)、障子(後衛)の鉄壁のフォーメーション。
【爆豪チーム】
爆豪(騎手)、切島(前衛)、芦戸と青山の2人を後衛とした攻撃特化の爆走騎馬。
【緑谷チーム】
出久(騎手)、常闇(前衛)、麗日……さらに、奇妙な
【蛙吹チーム】
梅雨ちゃん(騎手)、葉隠(前衛)、耳郎(後衛)のA組女子で組んだ女子チーム。
【峰田チーム】
女子にフラれて涙目の峰田(騎手)、個性のせいで上位陣からあぶれた上鳴(前衛)と、自ら声をかける事が出来なかった口田(後衛)を馬として組まれた悲しきチーム。
【心操チーム】
体育祭開始前に会った気怠げな男……心操人使が、虚ろな目をした尾白と、B組の庄田、凡土を馬として跨っている。
(あいつら、知り合いだったのか?……いや、様子を見るに洗脳の類の個性を使われたと見るべきか)
その他、B組からも続々とチームが出来上がっていく。
「……いいだろう。オレ達はただ勝つだけじゃない。全てを圧倒して一番になるぞ」
「「「はい(おう/ん)!」」」
瀬呂を前衛、八百万と小大を左右の土台とし、オレが騎手として上に乗る。
準備時間が終わり、ミッドナイトの声がスタジアムに響き渡った。
「さぁ、地獄のサバイバル……スタートォォ!!」
開始の合図と共に、グラウンドの砂煙が舞い上がる。ほぼ全ての騎馬が、1000万を持つ出久の騎馬へと一直線に殺到した。
だが、オレたち『チーム・ユノ』は出久を追わず、群がる他の騎馬たちの側面へと一気に回り込んだ。
「瀬呂、八百万、小大、やるぞ!」
オレの合図と共に、八百万が『捕縛用のネット』と『極太のゴムバンド』を瞬時に創り出す。
それを受け取った瀬呂は、前衛として前に出している自身の左腕と右腕の間にそのゴムバンドを渡し、両肘からテープを射出した。
すかさずオレが上から身を乗り出し、ゴムが外れないようにそのテープで瀬呂の両手首をグルグル巻きにして固定する。
これで、瀬呂の両腕そのものが巨大なパチンコの枠組みとなる。
そこへ、小大が八百万の創った捕縛ネットに触れた。
「……『サイズ』、最小」
バサァッと広がっていた大きなネットが、一瞬にして小石ほどのサイズにまで縮小される。
小大はその後ろから極小サイズのネットを瀬呂のゴムバンドにセットし、限界までギリギリと引き絞った。狙うは、出久を追っていたB組の鉄哲チームの背後。
「行くぜ! 必殺・ヒューマン・スリングショット!」
小大がパッと指を離し、極限まで引っ張られたゴムが弾ける。
瀬呂の腕の間から打ち出された小石サイズのネットは、目にも留まらぬ速さで鉄哲たちの頭上へと飛んでいく。そしてオレは、風を操りその軌道をコントロールする。
「なんだあれ、小石か……!?」
「……ん。『サイズ』、解除」
軌道を見切っていた小大が、絶妙なタイミングで指を鳴らす。
鉄哲たちの頭上で、小石サイズだったネットが元の巨大な姿へと一気に膨張し、バサァッ! と彼らの騎馬を完全に覆い尽くした。
「なッ!? ネットが急にデカく……ぐわぁっ、身動きが取れねェ! なんだこの硬ぇ糸!」
「今よユノ!」
「ああ」
混乱する鉄哲チームの横を通り過ぎ、すれ違いざまに彼らの首に巻かれたハチマキを奪い取った。
『おおっとォ! チーム・ユノ、圧倒的な連携コンボで瞬く間にポイントを獲得していくゥ!』
その頃、オレ達の背後では、各所で激しいポイントの奪い合いが起きていた。
出久は発目のホバー機器を駆使して空へ逃げ、群がる敵を必死に凌いでいる。
一方、爆豪の騎馬は足を止めていた。B組の物間寧人に、正面からハチマキを奪われたのだ。
「……A組ってどんなもんかと思ったけど、案外大したことないね。特に君、随分と頭に血が上りやすいみたいだ。ヒーローに向いてないんじゃない?」
「てめェ……!! ぶっ殺す!! 待てコラァァ!!」
物間の挑発に完全にブチ切れた爆豪が、切島たちに「追え!!」と怒鳴り散らしながらB組チームとの乱戦に突入していく。
グラウンドの反対側では、轟チームが障子の巨大な腕で周囲を索敵・防御しつつ、近づく敵を轟の氷結で無効化するという凶悪な戦法で着実にポイントを集めていた。
「ユノさん、右から三馬身、来ますわ! B組の拳藤さん達のチームです! さらに左側からは、蛙吹さん達のチームも挟み撃ちを狙ってきていますわ!」
「悪いねグリンベリオール! その大量に稼いだポイント、少し分けてもらうよ!」
八百万の索敵報告と同時、右側から急接近してきたB組の拳藤が、自身の個性である『大拳』で両手を巨大化させ、オレたちのハチマキを強引に毟り取ろうと腕を振るう。
「ケロ。拳藤ちゃんたちの攻撃に気を取られている今がチャンスよ、耳郎ちゃん」
「了解! 貰うよ、ユノ!」
「ごめんねユノくん!」
間髪入れず左側からは、A組女子チームによる、舌とイヤホンジャックが鋭く伸びてきた。
A組とB組の、息の合った見事な挟撃。
──だが。
「八百万、小大!」
「ええ! 無力化いたしますわ!」
オレの短い指示に即座に反応した八百万の腕から、小さなゴム製のブロックが射出される。
「ん。『サイズ』最大」
それに小大が触れて指を鳴らした瞬間、手のひらサイズだったそれは一気に巨大で分厚いクッションへと変貌した。
ボヨォンッ!!
「ケロ!?」
「うわっ、弾かれた!?」
突如として展開された巨大なゴムクッションの防壁が、死角から伸びてきた蛙吹の舌と耳郎のイヤホンジャックを弾き返し、その攻撃をあっけなく無効化する。
仲間たちによる、安全かつ完璧な防御網の展開。それと同時に──。
「風創成魔法──『天つ風の方舟』」
オレは騎馬の足元に風の舟を創成する。
「なっ、馬ごと浮いた!?」
右側から強襲を仕掛けようとしていた拳藤が驚愕で目を見開く。
そして──。
「……
そう呟くや否や、オレは騎馬の土台である瀬呂たちの腕を軽く蹴り、宙へと舞い上がる。
「はあッ!? 騎手が馬から離れた!?」
拳藤が信じられないものを見るように上を見上げる。騎馬戦のルール上、騎手が地面に足をついてしまえばその時点で失格だ。だが、オレには関係ない。
オレは風を纏い、空中を舞う様に飛翔し、唖然としている拳藤チームの頭上を通過。すれ違いざまに、彼女の首元からあっさりとハチマキを奪い取った。
「嘘でしょ……!?」
拳藤の声が響く中、オレはそのまま空中で鋭く軌道を変え、そのまま女子チームの元へ。
「ケロ!? 上から来るわ!」
「マジかよ、あいつ飛んでんじゃん!」
「え……うそうそ!?」
反応した蛙吹が舌を伸ばそうとするが、オレの風のスピードに追いつけるはずもない。彼女たちの死角へ風のように滑り込み、二本目のハチマキを指先でかすめ取った。
そして、まるで重力など存在しないかのように、オレは再び仲間たちが支える『天つ風の方舟』の騎馬の上へとふわりと舞い戻り、音もなく定位置に着地した。
『ウオオオオオオッ!!? なんだァ今の
スタジアムのスピーカーから、プレゼント・マイクの鼓膜を破らんばかりの絶叫が轟いた。観客席からも、割れんばかりの歓声が響く。
『騎手が自ら宙を舞い、瞬きする間に二つのチームからハチマキを強奪して帰還したぞォォ!! でも、いいのかよアレェェェ!?』
「かなりグレーゾーンだけど……て、テクニカルなのでオーケーとしましょう!」
『……騎馬戦の根本を覆すような機動力だな。風で自分を浮かせるだけでなく、土台である仲間の騎馬ごと空中に退避させているからこそ、落下のリスクなく安全に跳躍できる。……とはいえ、来年からはルールの見直しが必要だぞ』
相澤先生の冷静な、しかしどこか呆れたような解説が続く。
「よしっ! ナイスだユノ!」
「……ん。完璧」
「ふふっ、これならどんな攻撃も届きませんわね!」
「さっすが私のユノね!」
瀬呂、小大、八百万の三人が、完璧に決まったコンボに笑みをこぼし、ベルも上機嫌にオレの頬へすり寄ってきた。
オレは新たに奪い取った二本のハチマキを首に巻き、遥か下方で悔しそうにこちらを睨み上げている拳藤たちを見下ろした。
「悪いが、オレ達の高さには届かない」
オレの宣告通り、宙に浮くオレたちへ有効打を持たない彼女たちは、ただ悔しげに見送ることしかできなかった。
やがて拳藤は巨大化させていた両腕をスッと元のサイズに戻し、呆れたようにフゥッと息を吐き出す。
「……参ったね。まさか手も足も出ないなんて。これが入試トップの規格外っぷりってやつか。みんな、切り替えてくよ! あいつらにこだわってたらポイントが尽きる!」
拳藤が自身のチームに指示を飛ばし、即座に踵を返す。
「ケロ……。流石ね、ユノちゃん」
「あんなの反則でしょ……!」
「もーッ! ユノくん強すぎるよー!」
その少し離れた場所では、A組女子チームもまた、オレ達からポイントを奪うのは無理と判断し撤退していく。
一方、グラウンドでの攻防を見下ろす観客席のボルテージは、異様な高まりを見せていた。
『おいおい見たかよ!? 一人だけ別次元の動きしてるぞ!』
『仲間ごと空中に退避して、自分はノーリスクで飛び回る……プロ顔負けの制圧力だ!』
『今年の1年はどうなってんだ……!』
どよめきと大歓声が波のようにスタジアムを揺らす。無数のプロヒーローやスカウトたちからのギラついた熱視線が、上空に浮かぶオレたちに一極集中しているのが肌で感じ取れた。
(だが、このままだと良い意味でも悪い意味でも目立ち過ぎる)
これは、あくまで騎馬戦だ。これ以上浮遊し続けるのはスポーツマンシップ的に悪目立ちしすぎる。プロにオレの個性を見せる事ができた、もう十分だろう。
「降りるぞ」
オレは『天つ風の方舟』を解除し、風のクッションを使って騎馬全体を再びグラウンドへと静かに舞い降ろした。
オレ達の足がグラウンドの土を踏みしめた瞬間、周囲のチームの目の色が露骨に変わった。
「空から降りてきたぞ! 今なら俺の『鱗弾』も届く!」
「オー! ワタシたちがポイント全部頂くデース!」
浮遊という絶対的なアドバンテージを捨てたオレたちを、無防備になったと錯覚した、自身の鱗を飛ばしてくるB組の鱗飛竜や、鋭い角を射出して操る同じくB組の角取ポニー達のチームが一斉に距離を詰めてくる。だが、オレの意図を完璧に理解している仲間たちに焦りの色は一切なかった。
「甘いですわね。地上に降りたということは……私たちの迎撃態勢が整ったということですわ!」
八百万が不敵に微笑み、瀬呂が「返り討ちにしてやるよ!」と腕を鳴らす。
鱗と角取が同時に射撃姿勢に入った。
「行けっ!」
「シューティングデース!」
無数の鋭い鱗の弾丸と、空中で軌道を変えて襲い来る四本の角。だが、オレは動じることなく前方に手をかざし、突風を展開する。
すると、迫り来る鱗弾と角はあっけなく軌道を乱され、強引に上空へと逸らされていく。
攻撃を無力化され、鱗と角取が「なっ!?」と隙を見せたその瞬間。
「いっけェェ!!」
瀬呂の両腕のパチンコから、小大が極小化した『目眩ましの閃光玉』と『捕縛ネット』が猛スピードで弾き出された。オレは風の魔法でその軌道を完璧にコントロールし、彼らの顔面と死角へ正確に誘導する。
「……ん。『サイズ』解除」
小大の指鳴らしと共に、閃光玉が炸裂して強烈な光を放ち、極小だったネットが一気に元の巨大な姿へと膨張した。
「うおっ!? 目がっ……!」
「オーノォー!? ネットが絡まって動けないデース!」
視界を奪われた鱗、ネットに拘束されて陣形が崩れたポニーの数秒の隙を見逃さず、オレ達はハチマキを回収した。
息つく間もなく、今度は背後から奇声があがった。
「ヒャハハハ! 隙だらけだぜお前らァ!! オイラだってポイント稼いで女子にキャーキャー言われるんだァァ!! お前ら、しっかりオイラを支えろよ!!」
振り返ると、女子全員にフラれて涙目の峰田が、嫉妬と欲望に狂ったような顔で無数の粘着ボール『もぎもぎ』を投げつけてきていた。
その下では、上鳴と口田が必死に足を動かしている。
「おい峰田、暴れんなって! バランス崩れるだろ! つーか個性使えねェから俺、ただの肉体労働じゃねーか! マジ割に合わねぇ!」
上鳴がヤケクソ気味に文句を叫びながらも、口田と合わせて突進してくる。
だが。
「……峰田、うるさい」
オレが軽く手を払い、局所的な突風を巻き起こす。
飛んできた粘着ボールは全て風で弾き返され、あろうことか突進してくる口田の足元に張り付いた。
「ンギャアアアア!? オイラのボールがぁぁ!! 許してくれ口田ァァァ!!」
「うおお!? ちょっ、マジで身動き取れねぇぞ峰田ァ!!」
自滅して完全にグラウンドのオブジェと化した峰田の首から、オレはついでとばかりにハチマキをむしり取った。
各チームがポイントを削り合い、疲弊していく中、オレたちは無傷のまま『風魔法×創造×サイズ×テープ』のコンボでポイントを積み上げていく。
(……頃合いだな)
残り時間、1分。
オレは視線を、グラウンドの中央で逃げ回る出久と、それを巨大な氷の壁で追い詰めようとしている轟へと向けた。
「……あの1000万をもぎ取る」
グラウンドの中央では、熾烈な一千万争奪戦が最終局面を迎えていた。
出久の騎馬が、轟の放った巨大な氷の壁と、障子の腕によって完全に退路を断たれ、追い詰められている。
「……飯田!」
「掴まれ皆!! トルクオーバー……『レシプロバースト』!!」
轟の騎馬の前衛を務める飯田が、ふくらはぎのエンジンの出力を限界突破させた。
視認すら困難な超高速の踏み込み。出久が「えっ」と反応する前に、轟の左手がすれ違いざまに、出久の首に巻かれていた一千万のハチマキを奪い取っていた。
「取ったぞ……!」
轟が息を吐き出す。一千万を失い、出久の顔が絶望に染まったその瞬間。
「返してッ……!! フルカウル、5%!!」
出久が奪われた一千万を取り戻そうと、フルカウルを使い轟へと手を伸ばす。轟もまた、迎撃のために右腕から冷気を立ち昇らせた。
そこへ──。
「デクゥゥ! 半分野郎ォォ!! 1000万は俺のもんだァァ!!」
空気を切り裂くような爆音と共に、物間からポイントを奪い返していた爆豪が、自らの騎馬を離れて、空を飛びながら強襲を仕掛けていた。
「瀬呂、八百万、小大。お前らはここで守りを固めて待機してろ。オレが戻るまでの足場を死守しろ」
「えっ!? ユノさん、まさか単独で……!」
驚く八百万たちを尻目に、オレは前衛の瀬呂の肩を軽く蹴り、ふわりと上空へ跳躍した。向かう先は、轟、爆豪、出久の三人が激突しようとしている、弾幕地帯のど真ん中。
オレは、そこへ低空飛行しながら強烈な突風を放つ。
すると、上空からの爆豪の爆炎は吹き飛び、轟の突き出した氷柱はへし折れ、轟へ手を伸ばしていた出久の体勢が大きく横へと流される。
「チッ、風野郎がァ……!!」
「な……ッ!?」
「ユノ、君……!」
風圧によって三人の攻撃が逸れ、体勢が崩れた一瞬の隙。
オレは風に乗ってさらに加速し、轟の首元へと距離を詰める。
「しまっ……!」
オレは風を纏わせた手刀で、咄嗟にハチマキを死守しようとした轟の腕を弾き、その首元から1000万をふわりと抜き取った。
「悪いな。
そのまま空中を鋭く反転し、待機していた仲間たちが支える騎馬の上へと、音もなく静かに着地する。
オレが首に1000万のハチマキを巻きつけた、まさにその直後。
無情にも終了のブザーがスタジアムに鳴り響いた。
『タァァァイムアァップッ!!!』
静まり返るグラウンド。やがて、誰が勝者なのかを理解した観衆から、地鳴りのような大歓声が沸き起こった。
『怒涛のラスト10秒! 最後に1000万をもぎ取ったのは……チーム・ユノォォォ!!』
「やったーッ!! ユノ、最高よ!!」
ベルがオレの頬に抱きつき、瀬呂が「よっしゃあぁぁ!」と天を仰いでガッツポーズを決める。八百万と小大も、互いの健闘を称え合うように、そっと手を合わせ合っていた。
一方、グラウンドの中央では三者三様の敗北の姿があった。
「クソがァァァッ!! ふざけんな風野郎ォォォ!!」
爆豪が地面を激しく殴りつけ、喉が裂けんばかりの咆哮を上げる。
出久は崩れ落ちるように膝をつき、何も掴めなかった己の手のひらを悔しそうに見つめていた。
そして轟は、オレに1000万を奪い取られた隙を思い返すように、ただ呆然と自らの左側を見つめ下ろしている。
オレは出久を見据え、首に巻いた1000万のハチマキに手を添えながら、静かに言い放った。
「
オレの言葉に、出久はハッと顔を上げた。
悔しさに震えていたその目に、再び強い光が宿る。オレから視線を逸らさず、出久は泥だらけの拳をギュッと握りしめた。
「……うん。次は負けないよ、ユノ君!」
「おい俺を無視すんなクソデクとスカシ野郎ォ! 次、タイマンで絶ッッ対ェに爆殺してやる!!」
爆豪が血走った目でオレを睨みつけ、牙を剥く。
「ふんっ! できるもんならやってみなさいよ、爆発頭!」
「上等だわ! ブッ殺す!」
ベルがオレの肩の上で「あっかんべー」と舌を出す。オレはドヤ顔をしているベルの頭を軽く指で撫でながら、彼らに背を向けた。
「……楽しみにしてる」
背中に三人のヒリつくような闘気を受け止めながら、オレは共に戦い抜いた仲間たちの元へと歩み寄る。
「いやー、マジで凄かったぜユノ!」
「ええ、本当に素晴らしい指揮でしたわ!」
「……ね。私たち、最強」
瀬呂が笑顔でハイタッチを求めてきて、八百万と小大も誇らしげな表情でオレを迎えてくれた。三人と軽く拳を合わせ、互いの健闘を称え合う。
『さぁ〜て! 激動の騎馬戦を制し、最終種目へと駒を進める上位4チームの発表だァァ!!』
スタジアムの興奮が冷めやらぬ中、プレゼント・マイクの声が高らかに鳴り響く。この中の上位4チームが、次の競技へと駒を進めることができる。つまり、オレの対戦相手となる奴らだ。
オレは静かに、表示されるスクリーンを見つめていた。