お気に入り300ありがとうございます!
八百万の一人称なのですが、今まで「私(わたくし)」と書いてきましたが、読み直して分かり辛いと感じた為、ひらがなでの「わたくし」に変更します。(過去話修正済みです)
『さぁ、順位の発表といこうかァ! まずは第1位! 圧倒的な連携と別次元の機動力でグラウンドを支配し、更に1000万ももぎ取ったバケモノ達! 獲得ポイント、1000万2300ポイント、チーム・ユノォォ!!』
大歓声と共に、スクリーンにオレ達のポイントが映し出される。1000万を差し引いても、他チームのハチマキを狩り尽くしたことで2300ものポイントを叩き出していた。
『続いて第2位! 最後に1000万を奪われはしたものの、中盤の隙のない戦法で着実に稼ぎ抜いた! 獲得ポイント1200ポイント、轟チーム!』
『第3位! 一時はポイントを失うも、執念の特攻で上位に返り咲いた怒涛の爆走騎馬! 獲得ポイント935ポイント、爆豪チーム!』
ここまでは順当だ。そして、問題の4位。出久はさっき、「次は負けない」と言っていたが、そもそも4位に入っていないと次はない。
「……緑谷」
「常闇君……ごめん、僕のせいで」
「いや、責めるべきは俺の未熟さだ。終盤戦……防御に精一杯で、とても対応しきれなかった」
「──だが、グリンベリオールが風で場を乱したあの一瞬。……これだけは、かすめ取っていた」
常闇の手に握られていたのは、轟の首に巻かれていたポイントの一つだった。1000万には及ばないが、中間層のハチマキとしては十分な高得点。
「と、常闇くぅぅん!!」
『そしてギリギリの第4位! 獲得ポイント690ポイント! 最後の最後で意地を見せた、チーム・緑谷ァァ!!』
スクリーンに出久達のポイントが映し出された瞬間、出久は顔をくしゃくしゃにして泣き崩れ、麗日も安堵でその場にへたり込んだ。
『以上、この上位4チームが最終種目へと駒を進める……って、オイ!? 待てよイレイザーヘッド!』
『……うるさい。計算くらいできる』
スピーカーから、相澤先生の気怠げな声が響く。
『チーム・轟は3人編成だ。このままじゃ、最終種目に進む生徒が15人になっちまう。トーナメントを組むには1人足りないぞ』
その指摘に、スタジアムがざわめく。
確かに、最終トーナメントは16名で行われるのが通例だ。オレ達が4人、爆豪が4人、出久が4人で、轟の所は3人。合計15名。1枠余っている。
「その件については、私にお任せを!」
パンッ! とムチを鳴らしながら、ミッドナイトがマイクを握った。
「通常通りなら、5位のチームから繰り上げで選出することになるわね! 5位は……心操チーム! 最終種目に出る人を一人選びなさい!」
だが、その心操のチームメンバーであった尾白と、B組の庄田、凡土の三人が、浮かない顔でスッと手を挙げた。
「……ミッドナイト先生。俺達は、辞退します」
「尾白くん!?」
出久が驚いたように声を上げるが、尾白は悔しそうに自らの腕を握りしめていた。
「騎馬戦の記憶が、ほとんどないんだ。……無意識のうちに勝ち上がってたなんて、そんなの俺のプライドが許さない。辞退させてください」
「僕達も、同意見です」
庄田と凡土もそれに同意し、深く頭を下げる。
「……若さゆえの青いプライド。嫌いじゃないわ! その辞退、認めましょう!」
ミッドナイトの宣言により、事態はあっさりと決着した。
「つまり、繰り上げで最終種目に進む16人目は……心操人使! あなたよ!」
彼は驚く様子もなく、ただ気怠げに首を回し、薄暗い瞳で周囲を見渡した。そして、その視線が真っ直ぐに出久やオレ達へと向けられる。
(あいつの個性の詳細は分からないが、恐らく洗脳の類。警戒しておく必要がある)
こうして、波乱に満ちた騎馬戦は幕を閉じ。
雌雄を決する最終種目へと進む16名が出揃ったのだった。
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──そして、昼休憩。
喧騒に包まれた学生食堂の中で、オレは騎馬戦を共に戦い抜いた3人と食事をしていた。
「それにしてもユノ、マジで凄かったな!」
「ええ。まさか、本当にお一人で1000万を取ってくるとは思いませんでしたわ。……正直、わたくし達を頼ってほしかった気持ちもありますけれど」
八百万が少しだけ唇を尖らせて本音をこぼすと、小大も「ね」と短く同調した。
彼女たちのその不満げな反応に、オレは箸を止め、真っ直ぐに三人の顔を見据えた。
「お前達が後ろで足場を守ってくれていると信じていたからこそ、オレは安心して1000万を奪取できた。感謝してる」
オレが淡々と、だが確かな信頼を込めて告げる。小大は「……ん」と嬉しそうに目を細め、瀬呂も「へへっ、ユノにそう言われると照れるな!」と鼻の下をこする。
「なんだかわたくし達、ユノさんに上手く丸め込まれた様な気もいたしますけど……そう言ってもらえると、嬉しいですわ」
「アンタ達はユノの完璧な勝利の土台になれたんだから光栄に思いなさい! とはいえ、馬としてはよく働いたわね、褒めてあげる!」
ベルがテーブルに降り立ち、偉そうにふんぞり返る。
その直後。
「ハッ、1位通過だからって随分と余裕だね、A組。僕たちのポイントを散々食い物にしておいて──」
B組の物間が挑発的な笑みを浮かべて現れたが、ドガッ! という鈍い音と共に、鋭い手刀がその首に振り下ろされた。
白目を剥いて倒れ込む物間を引きずりながら、拳藤と鉄哲が姿を現す。
「ごめんなー。こいつ、ちょっとA組にこじらせててさ。でも、悪い奴ではないんだ」
拳藤は物間の襟首を掴んだまま、カラッとした笑みを浮かべて自己紹介を始めた。
「改めて、私はB組の拳藤一佳。で、今引きずってるこのバカが物間寧人。こっちの暑苦しいのが──」
「鉄哲徹鐵だ!」
「ユノ・グリンベリオール。ユノでいい」
オレが短く返すと、鉄哲は「おう! じゃあユノ、改めてよろしくな!」と快活に笑い、拳藤も「じゃあ私もユノで呼ばせてもらうよ。よろしく」と微笑んだ。
それに続いて、八百万と瀬呂も自己紹介をした。
そして、拳藤は悔しさを滲ませながら言う。
「いやー、騎馬戦じゃ完敗だったよ。まさか、騎馬ごと風で浮かせられるなんてね」
「それに、小大の個性をあんなに上手く使いこなすなんてな! あの小石が巨大なネットになるコンボ、マジでビビったぜ!」
悔しさを滲ませながらも清々しい笑顔を向ける拳藤と、真っ直ぐに称賛を送ってくる鉄哲。オレは短く頷き返した。
「ああ。……だが、八百万の『創造』、瀬呂の『テープ』、小大の『サイズ』。どれか1つでも欠けていたら成立しなかった作戦だ。オレ一人の力じゃない」
オレはそう言って隣の面々を示す。
「ユノさん……。ありがとうごさいます、光栄ですわ」
「へへっ、そう言ってもらえると救われるぜ! 正直、あのパチンコ台にされた時は腕がちぎれるかと思ったけどな」
「ん……!」
八百万が上品に微笑み、瀬呂は頭を掻きながら笑う。小大もまた、オレの方を見て頷く。
「自分の力だって驕らず、仲間のことを……お前、漢だな!」
鉄哲はそう言って、オレの肩を叩く。
そしてふと、拳藤がオレと小大を見比べる。
「ねえ。前々から気になってたんだけどさ……ユノと唯って、仲が良いよね? 度々一緒にいるところを見かけるけど」
「入試の時に手助けをして、それから縁がある」
「ん」
「へぇー。入試の時に、ね……。それにしても、唯。ユノといる時だけ、何か雰囲気違くない?」
拳藤が目を細めて小大を見つめる。
「……ん。ユノといると、落ち着く」
「ふーん、落ち着く、か。なるほどね〜」
拳藤はニヤニヤとオレと唯を見比べる。
「なんだ」
「いーや、何でもないよ」
拳藤は、「あの唯がね〜」と小声で呟く。
そのやり取りを聞いていた瀬呂が、目を丸くして大げさに身を乗り出してきた。
「は……? おいユノ、もしかしてお前、抜け駆けか!?」
「抜け駆け……? ただ、事実を言っただけだ」
「くっそ、このイケメンが!」
オレが淡々と返すと、向かいの席に座る八百万が、口元に手を当てて上品に微笑みながらも、どこか複雑そうな視線をオレと小大に向けていた。
「(……なんでしょう。とても微笑ましいのに、少しだけ、胸がチクリと痛みますわ……)」
そんな、それぞれの思惑が交差する和やかな空気を引き裂くように、ベルがプクッと頬を膨らませてしゃしゃり出てきた。
「ちょっとちょっと! ユノの一番はこの私なんだからね! あんたはあくまで、馬その二なんだから!」
小さな腕を振り回して威嚇するベル。だが、小大は全く動じることなく、静かな瞳でベルを見つめ返した。
「……ん。妖精さんも、友達」
「え、と、友達……!? し、失礼ね。私は偉大な風の精霊なのよ! ……でも、仕方ないから今日は特別に許してあげるわ!」
「ん」
チョロい相棒が機嫌を直したところで、オレはベルを軽く指でつまんで肩に戻した。
その一連のやり取りを見ていた鉄哲が、目を丸くして身を乗り出してきた。
「うおおっ!? なんだ今のちっこいの、喋ったぞ!? ユノ、それお前の個性の一部か!?」
「まあ、そんなところだ。風の精霊のベルだ」
「へぇー! 生き物みたいに意思があるなんてスゲェな!」
鉄哲が感心したように声を上げる横で、拳藤は驚きつつも、クスリと笑ってベルと小大を交互に見比べた。
「意思があるっていうか、人間以上に感情豊かだね。唯と張り合ってるみたいだけど……ふふっ。チョロ……いや、素直で可愛い相棒じゃん」
「だ、誰がチョロいよ! 私は偉大なんだから!」
再び抗議しようとジタバタするベルを宥めつつ、オレは小さく息を吐いた。
「じゃあ、私達は戻るよ。またな。……それと唯、午後も頑張って」
「じゃあな!」
「……ん」
小大が小さく手を振ると、拳藤たちも笑顔で応え、物間を引きずったまま自クラスのテーブルへと戻っていった。
そしてオレも食事を再開しようとした時──1人、ざるそばを啜っていた轟と、真っ直ぐに視線が交差した。
その目には、オレが放った「全力で来い」という言葉。そして騎馬戦の終盤、隙を突かれて1000万を奪われた屈辱。そのすべてを燃やすような、激しい熱を帯びていた。
オレは表情を変えることなく、ただ静かにその視線を受け止める。
数秒の無言の交錯の後、オレはゆっくりと視線を外し、再び目の前の食事へと向き直った。
「どうかしましたの、ユノさん?」
「……いや。午後からの試合が、楽しみになっただけだ」
✦ ━━━━━━━━━━━━━━ ✦
休憩時間が終わり、午後の部が始まろうとスタジアムに生徒たちが集まり始めたその時。
グラウンドの空気が、一部だけ異様なものになっていた。
『さァて皆さんお楽しみ! 午後の部開始前に、ちょっとした催し物だァ! ……って、どうしたヒーロー科A組!? どんなファンサービスだソリャ!!』
プレゼント・マイクの困惑した実況が響き渡る中、スタジアムの視線を一身に集めていたのは、チアガールの衣装に身を包んだA組の女子生徒達だった。
ポンポンを手に持ち、露出度の高いヘソ出しのユニフォーム姿でグラウンドに立つ彼女たちは、一様に顔を真っ赤にして硬直している。
「峰田さん! 上鳴さん! わたくし達をよくも騙しましたわね!?」
八百万が顔を真っ赤にして、グラウンドの端で親指を立てている峰田と上鳴をキッと睨みつけた。
「あなた達が、相澤先生が午後の部からはチアをやれって言っていたと仰ったから、わざわざ『創造』で皆の分の衣装まで作りましたのに……!」
「アホらし……。騙されるなんて、ウチらもどうかしてた……」
「ケロ……峰田ちゃんと上鳴ちゃんの言うことなんて信じるべきじゃなかったわね」
耳郎がポンポンを地面に叩きつけて座り込み、梅雨ちゃんも呆れたようにため息を吐く。
どうやら、あの二人の「相澤先生からの指示だ」という嘘にまんまと乗せられてしまったらしい。峰田と上鳴は「眼福ゥゥ!!」「八百万マジでナイス!!」と涙を流して拝んでいる。
「なによあいつら、ヒラヒラした格好なんかして。ユノの応援なんて、この私一人で十分なんだから!」
「……そうだな」
オレの肩の上でポンポンを振る真似をして威張るベルに軽く頷きながら、オレは呆れ半分でその騒ぎを眺めていた。
「よし! そんなこんなで遊んでる暇はないわよ! 最終種目の発表にいくわ!」
ミッドナイトがムチを鳴らし、スタジアムの空気を一気に引き締める。
「ここからは進出者16名による、一対一のガチンコトーナメント戦よ!」
スクリーンに巨大なトーナメント表が映し出され、くじ引きによって次々と対戦カードが埋まっていく。
オレはスクリーンを見上げ、自らの配置と、その先に待つ対戦相手たちを静かに確認した。
【最終トーナメント 対戦カード】
第1試合: ユノ・グリンベリオールvs 常闇 踏陰
第2試合: 轟 焦凍 vs 瀬呂 範太
第3試合: 飯田 天哉 vs 発目 明
第4試合: 切島 鋭児郎 vs 障子 目蔵
第5試合: 緑谷 出久 vs 心操 人使
第6試合: 八百万 百 vs 小大 唯
第7試合: 爆豪 勝己 vs 麗日 お茶子
第8試合: 芦戸 三奈 vs 青山 優雅
一回戦は、攻防一体の『
「……第1試合から、いきなり入試トップか。俺も運がないな」
少し離れた場所で、常闇がオレを見据えながら静かに腕を組んだ。その影から黒影がヌルリと顔を出し、「ヤッテヤルゼ!」と闘志を燃やしている。
轟は無言のままオレの方へと鋭い視線を向ける。出久は心操との対戦を確認した後、オレと視線を交わして力強く頷いた。そして爆豪は、出久を睨みつけている。
順当に勝ち進めば、出久はオレの前に爆豪と戦う必要がある。
フルカウルを覚えたとはいえ、出久にとって爆豪は強敵であり宿敵でもある。
オレは出久に近付き、真っ直ぐに言い放つ。
「出久。決勝で会おう」
「……うん。 待ってて、ユノ君……!」
そのやり取りを聴いていた爆豪が、血走った目でオレたちを睨みつける。
「あァ……? デク。テメェ、まさか本気で俺に勝てると思ってんのかァ」
「ッ! か、かっちゃん……!」
「ちょっと力の制御を覚えたくらいでいい気になんな。テメェは俺が潰す」
「……ごめん、かっちゃん。これだけは譲れない……! 僕は君に勝って、ユノ君と決勝で戦う」
出久のその言葉に、爆豪はピタリと動きを止めた。
かつて『無個性』として見下していた幼馴染の、決して怯まない強い意志を宿した瞳。その視線を真っ向から受けた爆豪の額に青筋が浮かび、両の手のひらからチリチリと爆破の火花が弾ける。
「……上等だクソナード。準決勝でそのナメたツラ、跡形も残らねェくらい爆破してやる。俺と当たるまでに、負けんじゃねぇぞ」
ドス黒い殺気を放ちながら、爆豪は今度はオレの方へとその凶悪な視線を向けた。
「お前もだ風野郎。デクを潰してテメェも潰す」
「……吠えるのは、出久を倒してからにしろ。そうやって出久をナメていると、足元を掬われるぞ」
「あァ!? 俺が石ころなんかに負けるわけねェだろうが!!」
爆豪はギリギリと歯を食いしばり、踵を返した。出久もまた、自らの震える手をギュッと握り締め、スタジアムの外へと消えていった。
「ふんっ! 爆発頭もイズクも、ユノの前に立つまでに、せいぜい負けないようにしなさいよね!」
オレの肩の上で、ベルが腕を組んで偉そうに言い放つ。
「
オレは口角を釣り上げ、スタジアムから出た。
スタジアムでは、これからリクリエーションを行うらしいが、オレは出場せずにアップをすることにした。
(オレは、誰にも負けない。ここでトップになって、出久より先に最高のヒーローになる)
スタジアムの熱狂を遠くに聞きながら、オレは一人、静かな控室でベルから流れ込んでくる魔力を練り上げていた。
やがて、レクリエーションの終了を告げる歓声と共に、グラウンドのステージが巨大なコンクリートのリングへと組み替わる重低音が響いてくる。
『さぁさぁ皆様お待たせしました! 最終種目、一対一のガチンコトーナメント……ついに開幕だァァ!!』
プレゼント・マイクの絶叫がスタジアムを激しく揺らし、観衆のボルテージが一気に最高潮へと跳ね上がった。
「さぁ、いよいよ本番よ! 第一試合の選手は、入場しなさい!」
ミッドナイトの声がスピーカーから響き渡る。
オレはゆっくりと目を開け、立ち上がった。
「行くぞ、ベル」
オレは小さく呟き、歓声の待つ光の射す入場ゲートへと歩みを進める。