それは、ある年のシーサイドダブルレーンでの出来事だった。
「さあジャンプステージで115号車カローラアクシオがNSXを抜かしにかかる…!!!あっ!!!」
それは一瞬だった。インから俺を抜かしにかかったルーキーが、ジャンプの踏切板で姿勢を崩し、空中で俺に衝突したのだ。
(くそっ……!ここで死んでたまるか!!)
このままでは車とともに崖下でお陀仏だ。私はシートベルトを切り、窓を叩き割ると愛するNSXから飛び出した。
「あーーっとダブルクラッシュだ!!!ジャンプ台を踏み切って空中で、NSXに横から突っ込むようにカローラアクシオが衝突…!!!カローラアクシオはガードレールに乗り上げつつもコースにとどまっていますが、NSXは崖下へコースアウト!!!前園選手は無事でしょうか!?」
無事だ…とはとても言い難いが、下の洗い越しまで落ち、ひしゃげて炎上するNSXとは裏腹に、私は斜面の木に引っかかって助かった。
それからしばらくして、一向に見つけてくれない運営のドローンに悪態をつきながら、俺は意識を失った。
病院で目を覚ましてから知ったが、あのあと大破炎上するNSXはさすがに放置できず、MFG史上初めてレース中断の措置が取られたという。
「前園さん無理ですって、今からじゃ新しいNSXのチューニングは本戦に間に合いません!!」
「そこを何とかするのがメカニックの君の役割だろう!MFGは公道レースなんだ!前輪駆動のシビックではやっていけない!!」
「無理なもんは無理なんです!!第一現物が届くのは明日でしょうに!」
あの大事故からしばらくして、私は復帰戦に向けて準備を進めていた。しかし愛するNSXは大破、ガラクタとなってしまった。メカニックの中里くんを問い詰めても何も変わらないのは理解しているが…気持ちがはやってしまう。
「この際S2000とか骨董品でも構わない!!とにかく後輪駆動か四駆!何かないのか!」
俺がそう言うと中里くんは天を仰いだ後、机に手を叩きつけて告げた。
「言いましたね?後輪駆動か四駆だったら何でもいいんですね?わかりましたよ!本戦までに完璧に仕上げて渡しますから何持ってきても文句言わないでくださいよ?」
そう言うと、中里君は事務所を出ていった。
熱海ゴーストの予選をシビックタイプRで18位で終えた俺は、中里くんがなんとか用意したという代車を見て唖然としていた。
「これは…NSXのミニチュアモデルか…?」
「何言ってんですか前園さん。S660ですよ。」
「そのくらいは見ればわかるさ。いや…確かに後輪が回ればそれでいいとは言ったが…」
確かに、S660は立派なミッドシップのスポーツモデルだ。ホンダが威信をかけて作った傑作には違いない。だが……
「軽自動車で…MFGを戦えと…?」
「さすがにフルチューンしてありますよ。スーチャーとターボを駆使してそれなりにフラットトルクの220馬力に仕上げました。それでもドッカンターボ気味なのは否めませんが…」
元が64馬力のエンジンをそこまで仕上げてまで、俺を軽自動車に乗せたいのか、中里。精魂込めてモーターユニットを外したNSXをお釈迦にされて、そんなに怒っているのか、中里。
「車重は?」
「890kgです。余計なもんつけた関係でかなり重くなりました。」
「パワーウエイトレシオは4.05(kg/hp)、やりあえないわけじゃない、か。」
「軽すぎるので接触厳禁ですけどねぇ。せいぜい頑張ってください。私は2台目のNSXを仕上げるので忙しいので。」
そう言うと中里は隣のNSXへ、作業に向かった。
ご丁寧にも津 584 ほ S-660の黄色い希望ナンバーをつけたS660に乗り込んだ俺は、何か新しい感覚に目覚めていた。NSXとはまた違う、新たな理論に。
続きは投稿できないかもなのでみんなで考えてください。
書いていて思ったこと
・カローラアクシオでMFG出るとか正気か?
・ジャンプステージを斜めに飛ぶとか逆に器用だな、狙ってやったろ
・ジャンプステージの下って洗い越しトラップだったっけ?
・空中で車から飛び出すとかコナンかよ、俺の中の前園和宏は最強無敵の名探偵か何かか?