スタンド使いのヒーローアカデミア   作:まだら模様

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第4話:夕焼けの誓いと、守るべき背中

 

「……全く、無茶をして。2人とも怪怪我がなくて本当に良かったわ」

 

夕暮れ時の病院の待合室。

 

消毒液の匂いがかすかに漂うプラスチック製のベンチで、俺と梅雨ちゃんは並んで座り、それぞれの母親から交互に頭を撫でられ、それから少しだけお説教を受けていた。

 

裏池で気絶させた指名手配中の強盗ヴィランは、通報を受けて駆けつけた警察とプロヒーローによって無事に連行された。

 

5歳の子供が2人でヴィランを撃退したという事実は大人たちを大いに驚かせたが、それ以上に、一歩間違えれば五月ちゃんやちゃん太郎も含めて全員が無事では済まなかったかもしれないという恐怖が、親たちの顔を青ざめさせていたのだ。

 

「ごめんなさい、お母さん。でも、幽ちゃんがすっごく頑張ってくれたのよ。ケロ」

 

梅雨ちゃんが隣で、いつもの淡々とした口調のなかに、少しだけ俺を庇うようなニュアンスを混ぜて言ってくれる。

 

幸い、俺も梅雨ちゃんも軽い擦り傷程度で、検査の結果も異常なし。怯えていた梅雨ちゃんの妹や弟は、すでに母親の腕の中で安心したように眠りについていた。

 

「わかってるわ。ただ、2人ともまだ4歳と5歳なんだからね。これからは何かあったら、まずは大人のところに逃げること。約束して」

 

お互いの母親が深くため息をつきながらも、最後は優しく俺たちの小さな手を握りしめてくれた。その温もりに、前世の記憶を持つ俺の胸が少しだけチクリと痛む。

 

(……そうだ。ここは平和な前世の世界じゃない。一歩間違えれば命が吹き飛ぶ、ヒーローとヴィランの世界なんだ)

 

診察を終えて病院を出る頃には、空はすっかり綺麗な茜色に染まっていた。

 

家が隣同士の俺たちは、親たちの少し後ろを歩きながら、夕日に照らされた影を長く伸ばして歩く。

 

「幽ちゃん」

 

不意に、隣を歩く梅雨ちゃんが俺の名前を呼んだ。

 

「なに、梅雨?」

 

「さっきの事件、幽ちゃんの個性がなかったら、私だけじゃ弟や妹を守りきれなかったかもしれないわ。改めて、ありがとう」

 

大きな瞳を真っ直ぐに俺に向けて、彼女はそう言った。その表情はいつものポーカーフェイスに見えて、どこか張り詰めていた緊張が解けたような、年相応の少女の柔らかさがあった。

 

「俺の方こそ。最後の梅雨のキックがなかったら、アイツまた立ち上がってただろ。俺のスタンド……あの個性の能力は5分しか持たないし、パワーのない奴を引き当てたら、俺一人じゃ何もできないんだ」

 

俺は自分の小さな手のひらを見つめる。

 

5分ごとに何が飛び出すかわからないランダムの個性。今回はムーディー・ブルースの「リプレイ」というにわか知識の機転がハマったが、もし本当に日常生活の役にしか立たない戦闘力ゼロの能力だったら、今頃どうなっていたか。

 

そんな俺の不安を察したのか、梅雨ちゃんは一歩前に出て、俺の前に回り込むようにして立ち止まった。

 

「だったら、私が幽ちゃんの前衛になるわ。ケロ」

 

夕日を背にして、彼女は小さく、だけど力強く拳を握ってみせる。

 

「幽ちゃんの個性はとっても面白くて、時々すごく不思議な戦い方ができる。でも、5分っていう制限時間があったり、使いにくい形があるのも本当よね。だから――幽ちゃんが『ハズレ』を引いちゃった時は、私が前に立って幽ちゃんを守る。その代わり、幽ちゃんが『アタリ』を引いた時は、私の後ろから最高のサポートをして」

 

梅雨ちゃんの言葉が、ストンと俺の胸の奥に落ちていく。

 

4歳児の姿をしていても、彼女の精神の成熟度と冷静さは、さすがは原作通りの頼もしさだった。

 

「……うん。そうだね。2人で一人前、か」

 

「そうよ。2人で一緒に、どんな人でも助けられる最高のヒーローになりましょう。約束ね、幽ちゃん」

 

梅雨ちゃんが差し出してきた小さな手。

 

俺はその手をしっかりと握り返しながら、心の中で強く誓っていた。

 

(ああ、約束するよ。これから先、どんな過酷なイベントが待っていようと、お前の背中は絶対に俺が守りきってみせる)

 

お互いに固い誓いを交わし、少し誇らしい気持ちで歩いていた、その時だった。

 

事件の興奮が冷めきっていなかったせいか、俺の身体に無意識に力が漲り、例の「スイッチ」がカチリと自動で回ってしまった。

 

(あ、マズい……! ガチャが回っちまった……!)

 

インターバルが終わっていた俺の体から、再び謎のオーラが周囲に張り巡らされる。

 

脳内にインプットされた新しい名前は――『ワイルド・ハーツ』。

 

(ワイルド・ハーツ……!? 誰のスタンドだそれ!? 前世のにわか知識にも全く心当たりがないぞ……!)

 

冷や汗が流れる。名前だけでは能力がさっぱり予想できない。

 

しかも、その戸惑いに呼応するように、俺の背後からぬっと「それ」が俺の意志を無視して勝手に飛び出してきたのだ。

 

「……え?」

 

隣を歩いていた梅雨ちゃんが、その場にガタガタと固まった。

 

そこに現れたのは、軍服のような意匠を纏い、大きな狼男を思わせる凶暴な雰囲気を持った獣人型のスタンドだった。ギラギラとした肉食獣の瞳。知性は低そうで、ただ目の前の獲物を捕らえて引き裂くことしか考えていないような荒々しい自我が、強烈なプレッシャーとなって周囲の空気を震わせる。

 

「ガルゥゥゥ……ッ!!」

 

低い獣の唸り声を上げ、ワイルド・ハーツが空き地の隅に置かれていた大きな庭石へと猛然と襲いかかった。

 

(暴走してる!? クソ、こいつの能力は何なんだ!?)

 

焦る俺の脳裏に、ふと一つの直感が閃く。

 

(……待てよ。こいつを『使う』と強く意識すれば……個性のルールを引き出せるんじゃないか!?)

 

俺は五感を研ぎ澄まし、目の前の凶暴な狼男を支配するべく、**「このスタンドの能力を暴き、コントロールする」**と強く精神を集中させた。

その瞬間――俺の脳内に、今までにはなかったカチリとした感覚と共に、そのスタンドの**「基本ステータス」と「固有の仕様」のすべてが、鮮明なシステムメッセージのように直接流れ込んできたのだ!**

 

【ワイルド・ハーツ:スペック表】

破壊力:C / スピード:A / 射程距離:A

持続力:B / 精密動作性:C / 成長性:C

 

(これだ……! 強く意識すれば、にわか知識がなくてもスタンドの性能がなんとなく理解できる……!!)

 

脳内に響く情報を瞬時に処理する。

 

スピードと射程距離は最高クラスの『A』。しかし、パワーを示す破壊力は一般人と大差ない『C』。近距離技を持たず、正面からの殴り合いには向かない「遠距離スピード型」だ。しかも、幼児の俺が引き出したばかりのせいか、スタミナ(持続力)の低さが目立ち、スタンドの足元がすでに少しふらついている。

 

ガガガガガシャァン!!

 

ワイルド・ハーツの鋭い爪と牙が庭石を激しく引き裂くが、破壊力Cの悲しさか、岩の表面を深く削り取ることはできても、一撃で粉砕するようなパワーはない。

 

「幽ちゃん、大丈夫!? 暴走しているみたいだけど……あんまり強そうな一撃には見えないわ。ケロ」

 

「大丈夫だ、梅雨! こいつの本領は近接戦じゃない。……距離を取らせる!」

 

脳内に開示された仕様の第二弾――コマンド技の情報を引き出す。

 

「ワイルド・ハーツ! 距離を取れ! 射程距離Aを活かすんだ!」

 

俺の命令に、スタンドは不満そうに唸りながらも、素早いフットワークで岩から大きく距離を取った。よし、コントロールは完全に奪い返した。

 

「やれ! 『エンドレスネームレス』ッ!!」

 

俺の命令と同時に、ワイルド・ハーツの体からオーラが分離し、脳内メッセージにあった通りの「自動追尾の大鷲型スタンド」が鋭い鳴き声を上げて夕闇の空へと放たれた!

 

大鷲は目にも留まらぬスピードで急降下し、庭石へと突撃する。

 

派手な爆発は起きない。しかし大鷲が触れた瞬間、庭石の周囲の空気が重く澱み、敵の防御力や生命力をガクンと引き下げる独特のデバフ波動が広がった。これこそが、3ターン(数十秒)以上持続してダメージを与え続ける、独自の状態異常『大鷲』の付与だ。

 

「……! 幽ちゃん、あの岩、なんだかボロボロと脆くなっていっている気がするわ。ケロ」

 

「そう、これこそがこいつの真骨頂だ! 仕上げだ、やれ!」

 

ワイルド・ハーツ本体が再び岩へと距離を詰め、超高速の「二回連続通常攻撃」を叩き込む!

 

シュシュッ! と鋭い風切り音が二度響き、大鷲のデバフによって脆くなった庭石の表面が、今度は面白いようにザクザクと削り取られていった。

 

(なるほど……! こいつは一発のデカいパワーで戦う奴じゃない。限界までデバフを重ねた上で、燃費の良い高速の二回通常攻撃で相手を確実に削り殺す、超・長期戦特化のスタンドなんだ……!)

 

もし将来、不気味な幽霊屋敷での戦いや、規格外の強さを持つデバックルームのボスのような化け物ヴィランと泥沼の持久戦をすることになれば、これほど自信を持って推薦できるスタンドは他にない。

 

「ピピッ……」

 

頭の中に終了の合図が響き、5分間のカウントダウンが終わる。

 

ワイルド・ハーツと大鷲の姿が、光の粒子となって霧散していった。

 

「ハァ、ハァ……!」

 

途端に、幼児の体に急激な気だるさが押し寄せる。持続力の低さと燃費の悪さが、今の4歳児の体には少々こたえた。

 

「お見事ね、幽ちゃん」

 

梅雨ちゃんがすぐに駆け寄り、俺の小さな肩を支えながら、優しく微笑んだ。

 

「最初の時計の人(ムーディー・ブルース)もそうだったけれど、今回の狼の人も、幽ちゃんが命令した途端にすごく不思議な能力が開花したわ。幽ちゃんの個性、使う時に何かコツを掴んだんじゃない? ケロ」

 

「ああ……。強く意識すれば、そのスタンドの『スペック表』や『技の仕様』が、なんとなく頭の中に流れ込んでくるのが分かったんだ。これなら知識にない知らない奴を引いても、すぐに戦術を組み立てられる」

 

「それは心強いわね。幽ちゃんが遠距離から大鷲で敵を弱らせて、私が前衛で時間を稼ぐ。今回の狼の人なら、そんな完璧な連携ができそうよ」

 

梅雨ちゃんは夕日の中で、誇らしげに胸を張った。

 

手探りのにわか知識だった俺の個性に、明確な「仕様理解」という武器が加わった。

 

そして何より、隣にはその戦術を瞬時に理解して支えてくれる最高の幼馴染がいる。

これから始まる未来がどれほど過酷で、どんな裏ボスのようなヴィランが立ちはだかろうとも、俺たちは確実にそいつらを削り伏せ、最強のヒーローへの道を歩んでいける――そんな確信を胸に、俺たちは赤く染まった我が家への門をくぐった。

 




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また出して欲しいスタンドを募集します!
どしどし書いていってください!
分からないスタンドも多いので、これを機に新しくスタンドを知りたいと思っています

※ちなみに一度スタンドを使役させたら5分間の間意図的にスタンド使役を解除することは出来ません。
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