Ragnarok Online? 【アルカナ冒険譚】 作:Yu-Tokiwa
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「おまえら、良くぞここまでスカに飲ませてくれたな!」
「飲ました記憶はないんだけどね~。あっはっはっ!」
「おー! そりゃあ俺が勝手に飲んだもんよぉ! 誰も俺をとめらんねぇぜ! それにしてもバニ。おめぇよく見りゃいい女だなぁ~俺っちの女になんね?」
「あ、スカポンずりー! 俺も俺も! バニ~! だいちゅきだー!!」
「うわああっ!? たすけ、助けてネームさああんっ!!!」
「おめーら! 全員捨てて帰るぞコノヤロウ!!」
街の南部になる。
中心地より水路を越える橋を隔てた一角を騒がしく彼らは進む。
まあ、よくぞ男3人でコレだけ酔っ払った。特にスカがひどい。
酒場の使いの少年に呼ばれて助けに来たのは、宿の広間でくつろいでいたネーム(ナマエ)と、風呂から上がってきたばかりのバニだった。
マーシは読書の中断に難色を示し、いづなはすでに部屋に戻って寝ていた。
「おまえら最低だ。出先でこれはなんだ? ホントに……」
「酒が俺を呼んでんだ! しょーがねぇだろうが!」
「おめーは本当にしょーもねーよ!!」
「わっはっはっはっ!」
えらいハイテンションで飛ばしまくるスカ。そしてそんな足元のおぼつかない彼にバニに替わって肩を貸しているネームは彼にバンバン背中を叩かれ、引きつった笑いを浮かべていた。
「ネームさんの言う通りですよぉ…。ゲフェンじゃないんですから、出先の町でこんなに飲んじゃってもぉ…。お酒のにおいは染み付くし、湯冷めはするし。あぁ~あ……」
吐く息は白い。
雪が降るような寒さではないが、現在いるアルデバランはゲフェンよりずっと北にある町なので日没後の冷え込みはかなり身に染み入るものがある。
男衆はまだしも、風呂上りで出動命令が下ったバニはたまったものではない。
『もう一度お風呂入らなきゃ』…と、半ばベソをかくようにぼやく。
「?」
一行が倉庫街を抜ける道に差し掛かったときだった。
列の中ほどを歩いていたヤンがふと立ち止まった。
「どした?」
それに気付いたヨダもまた、足を止めてヤンを振り返った。
「あれって、人じゃね?」
「あ?」
彼が指差した先。
それをヨダが見て、更にそれに気付いたバニもそちらを見た。
「あ!」
「?」
そして、バニが上げた声に、先頭を行っていたネームが気付いて、やはり振り返った。
「人だ。」
バニが最初に走り出した。
倉庫と倉庫の間を走る路地。
そこにその人物は倒れていた。
ザザザッ!!
バニがいち早くその場に到着する。
そこにうつぶせに倒れていたのは…髪の長い少女だった。
そしてその一面に彼女のものと思われる血が撒き散らされていた。
背である。その血を流しているのは。
灰色のコートに赤黒い血の染みがあり、そこを刃物が貫いた痕がある。
背後からの一撃。襲われたのだ。
「ね、ネームさんっ!!!」
「行け! ネーム。」
バニが叫んだ。
同時にスカも彼の肩を解放する。
事態を察し、ネームが走り出した。
どたたたっ!
バニに遅れてヨダとヤンが到着していた。
「な、ナンダコレ……!」
「ひでぇ…!」
ともに渋面になる。バニはすでに傍らに膝をつき、少女の容態を調べていた。
「息がある!」
「!!」
「背中の傷を掌でふさいで! 横向けにして!」
ネームが到着し、肩からかけたカバンの中をさぐり始める。
彼に言われるまま、バニは手袋をとると持ち歩いていたナイフを取り出し、傷口まわりの服を切った。傷口に張り付くように広がった髪を退け、今もなお血が溢れ出る傷口を、ヤンが手でふさぐ。
「くっそ、ダメだ! 傷口がでかい!」
「起こして良い? もう塞いだ?」
「待った待った! 髪が入り込んでる。どけてどけて!」
「巻き込んでるよ! ちょっとだけ手を緩めて。」
ヤンに言われ、ヨダが少女の髪を傷口から取り除く。
赤黒く染まった髪がバタバタと地面に落ちた。
「いいよ。バニ上げて。」
「はいっ!」
バニはそのまま少女の体に手をかけてうつ伏せから、そっと横向けに体位を変えさせた。
「えっ!?」
「!」
少女の体が血溜より起こされ、首がガクンとバニの腕に転がるように乗った。
そして、その少女の顔を見て、声を上げたのはヨダだった。
「り、リタ!?」
「知り合いか?」
「……あ、ああ…いや、けど、ずっと前に死んだ……!」
「ややこしそうだな、後にしよう。ネーム、替わってもらっていいか?」
「いや、そのまま抑えといて。俺が呪布を貼る。」
「わかった。早い所頼むわ。傷がでかすぎて手じゃあ塞ぎきれない。」
そういう彼の指の隙間からとめどなく血はあふれ出し地面へと流れ落ちていく。
「まずい、息が弱くなってく! 血圧も…下がってる! 脈が取れない!」
「震えが出てるぞ、マントよこせ! 早く早く早く!!!」
ヤンがいうとヨダが自分が羽織っていたマントを脱いで、処置の邪魔にならないように彼女の体にかける。
ネームがカバンから取り出した布に息を吹きかけると、青白い光を発する。治療具のひとつである呪布だ。この世界では割と一般的に使われている。
それをそのまま、ヤンが手で塞いでいる傷口に近づけて添える。
「ちょっとずつ、掌をずらして。」
「お、おう。」
ゆっくりとその手のひらを退けつつ、それに替わって光を放つ布が少女の傷口を覆っていく。掌が退けられてわずかにあいた隙間からどす黒い血が溢れ出る。
しかしややあって、傷口を布が完全に覆った。
「ひとまずはこれでいい。」
「どこかに運ばないと。病院までちょっと距離あるぞ?」
ヨダは提案する。
その言葉とともに白い息が吐き出される。それほどにここは寒い。
北の街アルデバランの夜の空気が、今この瞬間もこの少女の体から体温を奪っている。それにここで出来たものは応急処置でしかない。傷に見合った高度な治療を一秒でも早くに受けさせなくてはいけない。
「普通のヤツの倍の速度で走れば半分の時間で着くぜ?」
「!?」
驚いて顔を上げる一同。
その視線の先で、仁王立ちするスカが笑っていた。
【つづく】