Ragnarok Online? 【アルカナ冒険譚】 作:Yu-Tokiwa
― 16 ―
ふわふわとした感覚だった。浮遊感なのか、或いは柔らかなものに包まれているのかはわからない。ただ、とても暖かく穏やかで…そして感覚的に鉛のようにすべてが重かった。
「……あたま…痛い……。」
最初に出た言葉は彼女自身が選んで発した言葉では…恐らくない。本当に心の底から思ったからだろうか。彼女が自身の意識を取り戻した瞬間に自動的に出た…みたいな。そんな雰囲気だ。
恐らく目覚めて最初に見ている…これは天井だ。白い。少しだけ視線を巡らせれば壁も白く、窓にかかるカーテンも白い。ついでに言えば窓の外の空も明るいながら白だった。
ぼんやりしていた意識が徐々に鮮明さを取り戻してくる。ようやく耳が仕事をし始めたか、耳鳴りが徐々に散って行き付近の音が聞こえてきた。遠くに喧騒がある。部屋の中は静かではあるがこの部屋の外がその限りではないという事がなんとなくわかる。まあ、病院か。納得だ。
「……生きてるのか…ボクは……。」
かすれて声にすらならないつぶやきが口から出ていく。
なんで?
頭に浮かぶ。疑問だ。アルデバランの倉庫街で背を刺されたか斬られたかした。倒れたのは覚えてる。急速に自分の中から何かが流れ出ていく感覚も覚えてる。自分の最期が近く、それは間違いなく来るはずだった。
しかし彼女の予想は外れる事となり、今につながり疑問に直面している。『生きてるじゃん』…と。
恐らくだが、ここがどこなのか彼女も気づいた。しばらくぶりのベッドが、まさかまさかの病院だとは…。
天井も壁も白い。遠くに喧騒が聞こえ、ここにきて鼻もようやく感覚を取り戻してきたか、まあひどい匂いだ。消毒液と血と布と腐臭に死臭。
「アイツ…なんでしくじったかなぁ…死んでないじゃんか。」
ため息交じりについつい呟いた。
「んん…っ…」
「!?」
突然呻くような声がした。すぐそばだ。びっくりして首を巡らせるとそこに誰かの頭。彼女が寝かされているベッドに突っ伏すようにして誰かがそこにいた。寝ている。
「???」
疑問が一個増えた。
なんで生きてるのか。どうして彼女を殺そうとした人物はしくじったのか。ここはどこで…まあ病院だが、その病院のベッドになぜ彼女は寝かされているのか。そして、これは誰だ? …っていうか本当に寝てる? 今の呟き、まさか聞かれた? 一つ増えた疑問が瞬時に二個、三個と増えていく
ギッ……
体が動く。かなり背中が突っ張る感覚があるが何とかなりそうだ。体にかけられた割と厚手の布団をそっと除け、どうにか上体を起こすことが出来た。激痛はまあまあ押し寄せてくるがどうという事はない。違和感があるのは背中だ。ならばあの時自分に致命傷を与えた攻撃は背中への一撃だったという彼女の記憶は合っているという事か。
「…………。」
ひと通り、自分の体がきちんと動くかを試してみる。右半身は手足共に違和感はない。左の足は大丈夫だが左の腕と肩はあまり動かない。これが負った傷によるものか、治療によって自分自身をぐるぐる巻きにしている包帯によるものなのかはわからない。まあどちらにしろ背中の傷は彼女の身体能力に何らかの支障を与えているのは間違いないようだ。激痛に耐えればもう少しは動かせそうだが、今ここでわざわざ痛い思いをする必要はない。
「……はぁ…」
ここでため息をひとつ。どうしたものか思案する。これからのプランがない。そもそもあんなところに倒れていたであろう自分がなんで病院にいる? 誰かに発見されて運ばれたのか? 誰が? あんな時間に、しかもわざわざ病院から離れて、人通りもほぼない倉庫街を選んで致命傷を負ったというのに……。
誰も通りかからず、彼女はそこで命を落とし、翌朝明るくなってからその亡骸が発見されればそれでよかったのだが…。思った以上に早くに彼女は発見され結果的にこうして生き延びたらしい。なんの偶然か、あんな寂しい倉庫街の路地にたまたま人がいた。しかもあの状態から命をつないだとか、ちょっと信じられなかった。
「まったく、やさしいせかいだこと……。」
もう何度目か。ため息交じりで彼女は呟いた。
「……リタ?」
「!!」
声がした。今度は呻き声などではない。明確な意思を持って発された言葉。しかもそれは驚くべきことに彼女自身の名前だった。
ハッとしてそちらを見ると、それを発した張本人が今まさに彼女の事を見上げていた。起きたか。彼は驚いたように目を見開き、口をパクパクさせている。
「…………???」
何故そうなっているのかわからないリタは若干引き気味でその少年に向かって声をかけた。
「……だれ?」
「え?」
パクパクしてた口は止まったが、その止まったままで少年は硬直した。いや、硬直してないで誰なのかを名乗ってほしい。何しろこの少年はリタの名前を知っていたのだ。
死にかけてたはずが気が付いたら病院で知らない天井を見せつけられ、ベッドに突っ伏していたこの見知らぬ少年が自分の名前を知っていて……普通に考えてホラー寄りのホラーである。
「だ、誰って…オレだよオレ! ヨダだよ。ほら、孤児院でずっと一緒だった……」
「へ? ヨダ? 孤児院? きみは何を言ってるんだい。」
「えっ…きみ、リタだよな? リタ・クレリア・ベイラー。」
「合ってる怖い!!!」
思わず口から出た。ファミリーネームばかりかセカンドネームまでこの少年は知っている。しかしどんなに考えても、この『ヨダ』と名乗ったこの人を思い出せないのだ。彼女は。
そもそも孤児院ってなんだ? 彼女自身に孤児院にいた記憶はない。
「…………!」
じゃあ自分はどこにいたんだ? ここにきてようやく、彼女は重大な『何か』に気が付いた。
「あれ?」
「?」
孤児院にいた記憶はない。しかし『孤児院にいなかった記憶』もない。何歳から孤児院にいたと彼は主張するだろうか。それを彼女は瞬時に否定できるが、どうしてそれを否定できるかの材料が、そういえばない。
孤児院にいなかったのであれば、リタはその時期どこにいたのだ? 色々忘れている。思い出せない。『ああ、これってアレか。』そんなことを頭の片隅で思った。
「ねえ…ヨダ…って言ったっけ。」
「え?」
「ボクって…だれだ?」
「ええええっ!!!???」
さしものヨダも目が覚めたか、悲鳴のような声を上げて勢いよく立ち上がった。
今まで座っていた椅子が勢いよく飛ばされた挙句ひっくり返り、すごい音を立てた。
【つづく】
【NGシーン?】
リタの病室に、幼馴染の【ヨダ】じゃなくて
銀河の英雄の【マスターヨーダ】が来ちゃった
なんでやねん、CHAT GPT。(笑)
リタからすれば心の底からホントに「だれ?」。