Ragnarok Online? 【アルカナ冒険譚】   作:Yu-Tokiwa

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第20話

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「つまりこれは双方合意の上で為されたことであり、ヨダさん側による一方的な事象ではない…と。」

「これは『誓ってそう』というほかないです、はい。」

 

 

バニの言葉がいやに重い。彼をめちゃくちゃに追い込んでくる。半べそになってヨダは答える。嘘は言っていないが凄い罪悪感がある。

 

 

「けどなぁヨダ、若い男女がベッドの上だぞ。ましてやここは病院だ。それに聞いた話じゃあ彼女はキミの事を覚えていなかったはずじゃあないのかい?」

 

 

すると今度は彼の前に立つバニの…その更に向こうにいたマーシがあきれたように言ってきた。マーシはベッドに腰掛け、その彼女に膝枕されるようにしてリタという少女は寝息を立てていた。

 

 

「それは…まあ、色々あって………って、なんでオレ正座させられてんですかねぇ!?」

 

どうしてか病室の床に正座させられているヨダ。それを腕組みして見下ろすバニ。アルカナに於いては割と高身長のバニの前でちょこんと小さくなっているヨダは差し詰めいたずらを叱られる小型犬のようになっていた。今ベッドに腰掛ける大柄な猫たるマーシこそがヨダに正座を命じた張本人だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「いやぁヨダくん。ビジュアル的にはなかなか刺激的なもんを部屋に入るなり見せられたんでなぁ。こっちとしては興味が湧くわけだ」

「いや、これは…その……」

 

 

そもそもが発端となった少女リタは既にマーシの膝の上で、それこそ丸まった猫のように眠っている。この状況について説明できるのがここにはヨダしかいないのだが、しかしそのヨダすらも正直何が起こってしまったのかがわからない状況である。だって展開が早すぎる。

 

 

「色々不思議なことが起こってオレとリタは恋人同士になりましたっ!」

「なに言ってんだおまえ、ぶっ飛ばすぞ。」

「ですよね!?」

 

 

ダメだ、マーシはとにかく今はダメだ。逃れるようにして自分を見下ろすこれまた大柄な犬たるバニを見上げてみれば、心底疑わし気な、三日前から死んでいるカエルの死骸を見るような目で彼を…

 

 

「こっちもだめでした!!!」 

 

 

夕暮れの病室。かわいそうな若者の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

………………。

…………。

トトト……

 

 

さらさらと風が撫でていく音が聞こえる。窓の外を、野良猫が歩いて通り過ぎる。

 

 

「ふふっ……」

 

 

ヨダが可笑し気に少しだけ笑った。

『いつもの場所ではない宿屋』。彼は胸の中にいる愛しき女性の髪を梳るように撫でてその髪に顔をうずめて大きく息を…その香りを楽しんだ。

 

 

「ちょっ!? ちょっとまってよ!? 私が言うのもなんだけど、それを乗り越えてきてリタちゃんと恋人になったのに、最後別れちゃうわけ!?」

 

 

急に、その『愛しき女性』が再起動する。さしものトキノもピックリして思わず上半身を起こしてしまった。ヨダは『ハハハ…』とちょっと複雑そうに笑って頬をかく。

 

 

「まあ、色々あったんだよ」

「……あったン…でしょうねぇ…」

 

 

ヨダの苦笑にトキノは複雑そうな声を出した。

ここまで聴いてきて、彼とリタの間に何があったのかは理解できた。

しかもそれ自体かなり重い話ではあるし、そんな過去を背負ったリタが今の姿にまずまず結びつかない。今のが5年前の話となると、その後4年弱はリタとヨダは恋人であったわけだ。しかも別れた後も関係は良好であるという。トキノがリタに会いづらいのもそれが理由のひとつでもある。

例えば徹底的に関係が悪化して別れたのであれば割り切れるものだが、今の話を聞いてもそうだし、今のリタとヨダの関係を見たり、また『見てきた』という第三者から聞いても本当に彼女の事が理解できない。

そこに来て今の話だ。『今、現在進行形の不思議ちゃんでよくわからないリタは、その始まりからが謎過ぎてよくわからない人。』になった。

出自は不明。孤児院に来た理由も不明、いなくなった理由も不明。いなくなった後も、再びヨダの前に現れた経緯も、彼女を刺した犯人も彼女が刺された背景も全部が不明。

人間、誰にだって謎のひとつやふたつはある。だがリタに関しては『誰にだって謎くらいあるよねー』の範疇にはいない。

 

 

「どうする? 続きも聞く?」

「う、うーん…やめとくわ? なんか軽い気持ちで聴いていい話じゃなかったし…多分この先もそういう話じゃないと思うし……。それに……」

「どーかな。」

「!」

 

 

まだ相変わらず、ヨダは苦笑している。けど、その表情には少しだけ『肩の荷が下りた感』があった。

どういう形であれ、その相手が今の恋人のトキノであっても、話すことが出来た。聞いてもらえたというのは彼にとって大変に意味がある事だったのだろう。

それがトキノにも分かったし、その話を聞いてあげて肩の荷を下ろしてあげられたのが自分であることが嬉しかったりはする。

ただ彼女は先ほどの言葉の最後、『それに……』の先を飲み込んでいた。

 

 

『ちょっと応援しちゃってる自分がいる。』

 

 

言わなくてよかった。

 

 

【つづく】

 

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