今州城に向かう道のり、その道を一人の男が歩いている。男は金髪を後ろで編み黒い軍服の上から赤いコートを羽織っている。その足取りは力強いが、どこか不機嫌さがにじみ出ていた。
「はァ~、なんで俺がこんなことしなきゃいけないんだよォ…」
ヘルメスは舌打ち混じりに土を蹴った。だが足取りだけは止まらない。
「組織長も人使い荒いぜ、あいつなら一人で出られるだろ。そもそも俺には表の仕事があるってのによォ。人をやるにしてもクリストフォロでいいだろォが」
「組織長」に対して悪態をつきながら男は道を歩いていく。その黄金の目は目的地である今州城を視界に収めていた。
「街に入るときに何かあるかとおもったが、そんなこともなかったな」
特に揉め事などもなく今州城の城下街まで侵入した男は悠々と街を歩いていた。街中には夜帰軍が駐屯しているおかげで、軍服を着ていても特に目立つこともなく歩けていた。
高くそびえる城が視界に広がった。男は顔を上げ、小さく鼻をならす。
「ここはなかなかに警備が厳重だな。まァ関係ないけどな」
今州城の厳重な警備に少しも怖気づく様子を見せず、男は前へと動き出す。その動きを警備の人間は特に咎める様子もなく無視している。まるで男の動きが見えていないかのように。
そうやって警備の人間やシステムをすべて潜り抜け、男は目的の人物と対面していた。
「おい、出るぞ」
「あぁ、お前か」
「そうですよォ。ヘルメスですよ」
檻の中にいる男、スカーに対してヘルメスと名乗った男は心底うんざりといった顔で話しかける。その声には呆れと疑問が含まれていた。
「なんで捕まってるんだよ。お前のせいで俺は今州まで来ることになったんだが」
「漂泊者に会って勧誘したんだが、フラれてしまったんだ」
「それがショックで捕まったのか?」
「そうともいえるかもな」
「バカバカしい。まァいいや、お前の捕まった理由なんて実はどうでもいいからな」
「ん?」
「組織長から招集がかかったンだよ、場所は…」
「リナシータ、だろ?」
「なんだ知ってたのか?」
「クリストフォロだ。あいつに頼またんだ、というかあいつの協力で脱獄できる」
「はァ?じゃあ無駄足じゃねェか。俺はもう帰る。」
「もう行くのか?」
「あァ、次はリナシータで会うかもなァ」
そこで話を切ったヘルメスは牢獄から離れていく。振り返ることも、歩く足を緩めることもなく。それにスカーが何かを言うこともない。そのまま二人は別れた。
「しっかし"漂泊者"か、あいつがリナシータに来たらそれはもう、めんどくさくなるんだろうなァ」
ヘルメスは最後まで警備に発見されることなく今州城を抜け出し、リナシータへの道のりを歩んでいた。その道中でスカーから聞いた漂泊者について思いをはせる。
「まァ考えたところで仕方ねェか。さすがの
ヘルメスがリナシータへと向かって歩いていると、道の前から残像が歩み寄ってくる。その残像は今州城の警備とは違い、ヘルメスを認識しているようだった。
「ん?なんだ残像か。気ィ抜いてたかな」
そういいながらヘルメスはコートの内から銀色の棒を取り出す。その棒は片手で軽く握れる太さで小太刀ほどの長さをしている。
「ちょうどよかった。実験に付き合ってくれないか?拒否権はないがなァ」
その瞬間、ヘルメスは常人が認識できない速度で残像に肉薄すると棒で殴りつける。
すると殴りつけられた残像は、爆ぜるような衝撃と共にものすごい速度で横殴りに吹き飛んでいく。そのままの勢いで周りの残像にも同じように、肉薄し棒で殴りつけ吹き飛ばすを繰り返す。気が付くとヘルメスの周りには残像は存在していなかった。
「こんなもんか、これも使う必要なかったな」
残像を殲滅したことに何も思うことがないように、息をはく。
夜風がコートを揺らす。
ヘルメスは変わりない銀の棒を眺め、小さく笑った。
「さてと、久しぶりにフローヴァの様子でも診るとするか」
最後まで読んでくれてありがとうございます!
勢いで書いたので続くかは分からないです。