ハンター世界で楽しみを   作:ナムルパス

5 / 5
第2話:狂気の沼と漆黒の棍 一、 地下道のデッドヒート

「はぁ、はぁ、はぁ……ッ! クソ、あの試験官……一体どこまで走り続けりゃ気が済むんだよ……!」

 

背後から聞こえるレオリオの荒い呼吸と、呪詛のような愚痴が地下道に木霊していた。

 

サトツの先導によるマラソンが始まってから、すでに数時間が経過している。距離にして数十キロ。一般の陸上選手であればとっくに限界を迎えている領域であり、地下道のあちこちには、泡を吹いて倒れた大人の受験生たちが無残に転がっていた。

 

そんな地獄絵図のような状況の中で、集団の前方を走る少年の三人組――ゴン、キルア、アベルの足取りは、驚くほどに軽快だった。

 

「ねえ、アベルのその背中の棒、本当に重くないの?」

 

ゴンが純粋な好奇心に満ちた目を輝かせながら、隣を走るアベルに話しかけてきた。

 

「ん? ああ、これね。樫の木を削り出した物でさ。普通の木刀よりは三倍くらい重いけど、もう身体の一部みたいなもんだから、持って走るくらいはどうってことないよ」

 

アベルは涼しい顔で微笑みながら答えた。

 

実際には、修行時代からアベルの濃密なオーラを吸い込み続けたその棒は、鉄の塊並みの重量に変貌している。

しかし、念の基礎を叩き込んで肉体を鍛え上げているアベルにとって、その程度の重量は羽毛のように軽かった。

 

そのアベルの返答を聞いて、反対側を走るキルアが、フッと不敵な笑みを浮かべる。

 

「へえ、三倍ね。お前、やっぱり面白いわ。普通のガキなら、それ背負って一キロ走っただけで音を上げるぜ。……でもさ、そろそろこの退屈なジョギングにも飽きてこない?」

 

キルアが退屈そうにつま先で地面を蹴ったその時、三人のすぐ後ろから、落ち着いた、しかしどこか険性を孕んだ声がかけられた。

 

「三人とも、油断はいけない。試験官のペースは、少しずつだが確実に上がっている。脱落者の数が、さっきの倍以上に増えているんだ。体力を温存しておくに越したことはない」

 

声の主はクラピカだった。

 

額に汗を浮かべ、乱れた金髪を払いながらも、その鋭い碧眼はしっかりと前方の試験官を捉えている。隣で今にも死にそうなレオリオを気にかけつつ、同時に同世代の子供たちが無茶をしないよう、年長者としての義務感から忠告してくれたのだ。

 

アベルは心の中で(さすがクラピカ、視野が広いな)と感心しつつ、肩をすくめて見せた。

 

「心配ありがとう、クラピカ。でも大丈夫、これでもちゃんとペースは考えてるから」

 

「そうそう! むしろ身体が温まってきたくらいだよ!」

ゴンが無邪気に笑うと、クラピカは「やれやれ……」と呆れたように息を吐いたが、その表情には微かに柔らかい色が混じっていた。

 

そんなやり取りの最中、前方の暗闇の奥に、微かな光が見え始めていることに気づいた。地下道の出口――すなわち、第一次試験の第一関門の終わりが近づいているのだ。

 

「あ、光だ!」

ゴンが嬉しそうに声をあげる。

 

「よし! ゴン、アベル! どっちが先に地上に出られるか、競争しようぜ!」

キルアが制服のポケットに手を突っ込んだまま、ニヤリと笑った。

 

「乗った! 負けた方が飯を奢るってのはどう?」

アベルが原作知識を頭の片隅に浮かべながら、楽しそうに提案を上乗せする。

 

「いいねそれ! 最下位が二人分奢りね! いくよ、せーのっ!」

ゴンの合図と同時に、三人の少年は爆発的な加速を見せた。それまで大人のペースに合わせてセーブしていた脚力を一気に開放し、風を切って地下道の出口へと突っ込んでいく。

 

「なっ……!? おい、待ちたまえ三人とも! 競争などしている場合では――」

 

クラピカが慌てて制止の声をあげるが、少年たちの耳にはもう届かない。

 

「あ、おいお前らズルいぞ! 待てぇ!!」

 

遥か後方から聞こえるレオリオの絶叫を置き去りにして、アベル、ゴン、キルアの三人は、眩い太陽の光が降り注ぐ地上へと、ほぼ同時に飛び出したのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

念能力者になってよ!(作者:メガシャキ)(原作:HUNTER×HUNTER)

原作開始前にモブに憑依してしまった男が、某魔法少女アニメの害獣みたいなことをする話


総合評価:496/評価:7.18/連載:10話/更新日時:2026年05月24日(日) 03:55 小説情報

ジャンプファンはハンター✖️ハンターの世界に行く(作者:悲しみ)(原作:HUNTER×HUNTER)

ジャンプ好きの男がハンター✖️ハンターの世界を駆け抜ける。


総合評価:77/評価:6/連載:1話/更新日時:2026年05月17日(日) 01:32 小説情報

アンタッチャブル(作者:アポロ魔王)(原作:ONE PIECE)

ロブ・ルッチ成り代わりモノ。▼


総合評価:1444/評価:7.2/連載:7話/更新日時:2026年04月12日(日) 12:49 小説情報

ようこそ!地獄から地獄へ─転生先がBLEACHだなんて聞いてない!─(作者:ブラックコーヒー)(原作:BLEACH)

▼呪術廻戦の世界にて、五条悟の次に戦い破れた主人公、白石 要。▼空港にて再会をした五条悟ら、懐かしい面子に別れを惜しみ『北』を選んだ主人公だったが...。▼実は、現代から呪術廻戦の世界へ転生した人物だった。▼★追記です。▼※何も考えずに読む物語。▼※考察何もしておりません。(苦手です)▼※自分がただこうなったら面白いだろうなって感覚で書いてる話です。▼※賛否…


総合評価:254/評価:-.--/連載:5話/更新日時:2026年01月11日(日) 22:49 小説情報

崑崙山で生まれたけど、外の世界では氣のことを念と呼ぶらしい(作者:awazat)(原作:HUNTER×HUNTER)

気がついたら、赤ん坊になっていた。▼前世の記憶はぼんやり残っている。でも、名前も死んだ理由もよく思い出せない。わかるのは、自分がどうやら別の世界に生まれ変わったらしいということだけ。▼生まれた場所は、仙人と仙女が住むと言われる秘境・崑崙山。父は氣を練る仙人、母は氣に触れる仙女。そして、主人公ミナトは生まれたときから、人の身体を包む「氣」が見えていた。▼崑崙山…


総合評価:538/評価:7.93/連載:7話/更新日時:2026年05月21日(木) 22:16 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>