転生サトシの旅路   作:ナノブ

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36.新戦力確保 戦力充実化

第74話 今はまだ手を繋げなくても

 

 

ピカチュウ、トゲピー、リザードン、カメール、ジバコイル、バサギリを手持ちにして、皆に自主練しているように言い、一旦オーキド研究所に戻った。

本格的な修行を開始する前に、もう一人、仲間にしたいポケモンがいるのだ。

 

今回はミュウツーにも留守番をお願いしている。

お願いした時のミュウツーの、世界に一人取り残されたかのような絶望顔が印象的だったので、これからはあまり留守番はさせないようにしよう。

だが今回は、ミュウツーの世界を広げる意味でも交流を広げる意味でも、俺のポケモン達に明確な強さを印象付けていい指標としてもらう意味でも、残って他のポケモン達の修行を見てあげてほしかったのだ。

親離れではないが、俺がいない状態でもちゃんと交流できるか試したのもある。

 

 

「あ!サトシ!やっと戻……――――ボロボロじゃない!?」

 

 

カスミもタケシも、自分のポケモン達を出して調整していたようだが、俺の姿を見て驚いたように駆け寄ってきてくれた。

 

 

「あ…………あはは。プテラとちょっとやり合うことになってな。けど、もう大丈夫だよ」

 

「サトシの大丈夫は信頼できるが、大丈夫に至るまでの過程で無茶をしすぎだ」

 

「はは………ごめん」

 

 

タケシに怒られ、一応自覚はあるので素直に謝る。

 

 

「それでなんだけど、俺ちょっと出かけてくる。修行開始は、少しだけ待ってくれないか?」

 

「?それは構わないが……」

 

「どこに行くの?」

 

「内緒!」

 

「ピーカ!」

 

 

ピカチュウと一緒に、人差し指を立てて片目を閉じる。

っていうか、ピカチュウにも言っていないから知らないはずだが。

 

 

「…………まぁいいけど。ちゃんと!無事に!無茶なく!帰ってくること!」

 

「わ、わかってるって……」

 

 

カスミからの念押しに、ピカチュウと一緒に苦笑する。

俺、信用されてないなぁ…。

身から出た錆だからしょうがないけど。

 

 

「じゃあ、行ってくる!」

 

「「行ってらっしゃい!」」

 

 

リザードンを出して背に乗り、見送ってくれているカスミ達に手を振って、目指すはクチバシティの港。

地図での場所がわからないから、前の記憶だけが頼りだ。

クチバシティの港に着いたらリザードンから降り、お礼を言ってモンスターボールに戻す。

そしてカメールを出し、カメールの背に掴まって海へと出た。

 

ピカチュウは俺の肩、トゲピーは俺の頭の上だ。

波導を広げて周りを探りながら、カメールに指示を出して目的の場所を求めて彷徨う。

下手したら遭難するが、陸の場所は波導でずっと把握しているので問題はない。

 

目視で陸が見えなくなるほど遠くに出て、さらにしばらく彷徨い。

彷徨いに彷徨い。

ようやく見つけた、嵐が囲っている島。

トゲピーを一旦モンスターボールに戻し、ピカチュウを抱きしめて、カメールに海に潜ってもらい嵐を突破した。

 

 

「ぷはぁっ!」

 

「ピッカ!」

 

 

海から顔を上げ砂浜に着けば、たくさんのカイリュー達とハクリューが俺達のことを見ていた。

来たぞ、カイリューの島!

波導から伝わってくる感情に悪いものは一切なく、ただ島に来た俺達のことを不思議に思っているようだった。

陸に上がり、カメールにお礼を言ってモンスターボールに戻し、トゲピーを出して抱っこし、改めてカイリュー達に向き合った。

 

 

「はじめまして。俺、マサラタウンのサトシっていうんだ」

 

「ピカ、ピカチュウ」

 

「チョキ、チョゲップリィィィ」

 

「君達の島を荒らすつもりはないんだ。ただ少し見学していきたいんだけど、いいかな?」

 

 

真正面から真摯に頼んでみれば、カイリュー達は皆笑顔で頷いてくれた。

ここのカイリュー達は皆優しい。

そうでなければ、遭難者を救出し続けたりはしないだろう。

すっかり警戒心を解いて、俺に監視もつけず一人にしてしまうところは、不安があるけども。

 

島の中に入っていき、しばらく歩いているとハクリュー達が集まって〝りゅうのまい〟を発動し、身体能力を上げて飛んでいるところに出くわした。

〝りゅうのまい〟がぶつかり合って生じた風を受けて、トゲピーが楽しそうにキャッキャと笑う。

さらに奥に進むと川に辿り着き、滝壺の裏の洞窟でカイリューに見守られながら、ミニリュウが脱皮しているところを見かけた。

 

 

「チョゲップリィィィ!!?」

 

 

初めてポケモンが脱皮しているところを見たトゲピーが、飛び上がって驚いている。

 

 

「クゥ~?」

 

 

こちらに気付いたミニリュウが傍にやってきたので、トゲピーを下におろす。

 

 

「チョ、キ………?」

 

「クゥ♪」

 

 

脱皮したばかりのミニリュウにおっかなびっくりのトゲピーが、恐る恐るミニリュウと交流する様子に、ほっこりする。

傍で見守っていたカイリューと顔を見合わせると、にっこり笑ってくれた。

気のいいやつである。

カイリューにしばらくトゲピーのことを見ていてくれるか聞くと、快く頷いてくれたのでトゲピーにしばらくミニリュウと遊んでいるように言って、洞窟から出た。

 

波導を広げ、知っている波導の持ち主を探すと、川の畔ですぐに見つける。

飛ぶ練習をしている、ハクリュー。

この世界でも飛べないようで、必死に小さな翼をバタつかせて飛ぼうとしている。

そんなハクリューに近寄って、手を差し出した。

 

 

「クゥ?」

 

「飛ぶ練習、俺も手伝っていいかな?」

 

「キュ!?」

 

 

突然の申し出だったからかハクリューは心底驚き、飛び上がって宙に浮いていられず地面に落ちた。

片膝を付いて砂まみれのハクリューの顔をそっと拭い、ツルツルの体を撫でる。

 

 

「俺は、君が自由に空を飛ぶ姿が見たいんだ。協力させてくれないか?」

 

「…………」

 

 

しばらく驚きに目を見開いて固まっていたハクリューだったが、俺が心地好いポイントを撫でると溶けた。

 

 

「キュウ~~~~~」

 

「はは………どうかな、ハクリュー?」

 

「クゥ!」

 

 

俺の心が伝わったようで、ハクリューは俺の手に自分から擦り寄りながら笑顔で頷いてくれた。

 

 

「よし!それじゃ飛べるように、特訓だ!」

 

「ピッカ!」

 

「クゥ!」

 

「他のハクリュー達は、〝りゅうのまい〟で上がった身体能力を活かして飛んでいるみたいなんだ。君もまずは、〝りゅうのまい〟を覚えるところからだな!」

 

 

俺の言葉に、了解!とばかりに尻尾で敬礼するハクリュー。

可愛い。

クスリと笑って、リザードンをモンスターボールから出す。

 

 

「グオウ」

 

「キュ?」

 

「ハクリュー、こいつは俺の仲間のリザードンだ。リザードン、お前にも〝りゅうのまい〟を覚えてもらいたいから、ハクリューと一緒に練習しないか?」

 

 

俺の言葉にリザードンは納得したような顔をした後に、しっかりと頷いた。

 

 

「よし!〝りゅうのまい〟習得に向けて特訓だ!」

 

「グォウ!」

 

「キュ!」

 

「ピッカ!」

 

 

俺が右手を突き上げると、リザードンもハクリューもピカチュウも真似して突き上げてくれた。(ハクリューは尻尾で)

さて。

前回と同じ方法は使えない。

まだピカチュウが〝エレキネット〟を覚えていないからだ。

とくれば、他のハクリュー達のやり方を真似するのが手っ取り早いだろう。

 

ハクリューとリザードンに、胸元辺りをぶつけ合わせた反動で他のハクリュー達のように回ってもらい、自身の内側に秘められているドラゴンタイプのエネルギーを纏うように表に出すのだと教えてみる。

ハクリューは他のハクリュー達のように輪っかになって回り、リザードンは翼を利用して宙返りする。

 

リザードンは翼があるので地面に落ちることはないが、ハクリューはまだ飛べないので二回転もできずに地面に落ちる。

何か声をかけようかと、励ましでもいるかと思ったが、ハクリュー自身はへこたれておらず闘志を燃やしており、逆に水を差してしまいそうだったので見守ることにした。

 

ハクリューとリザードンが修行している横では、ピカチュウがジバコイルに〝エレキネット〟を教えてもらっている。

リザードン達が必死に修行している横で応援しているだけではいられず、自分もできることを、と思ったらしい。

ピカチュウには、自分から出す電撃を丸く一か所に留めさせた瞬間に、中央から弾くように広げるのだと教えてみる。

 

 

「〝りゅうのまい〟も〝エレキネット〟も、バトルでの汎用性が高いからな。ものにしたら今よりグッと戦いやすくなる。ピカチュウもリザードンも、一緒に頑張ろうぜ!」

 

「ピカピッカー!」

 

「グォォォ!!」

 

 

俺の声に応えるように元気よく吠えるピカチュウ達に、ハクリューが羨ましそうな瞳を向けているのに気付く。

 

 

「もちろんハクリューも、な」

 

「キュッ?」

 

 

再び俺が体に付いた砂を払い落としながら撫でると、ハクリューは驚いたように俺の方を振り向いた。

 

 

「当たり前だろ?もう俺達、友達なんだからさ。ハクリューも、俺達と一緒に頑張ろうぜ?」

 

「キュウ………………クゥゥゥ~~~」

 

 

ハクリューは俺の言葉にジワリと目を見開いた後、嬉しそうに頬を寄せて擦り寄ってきたので、心地好いポイントを撫でてやる。

溶けた。

相変わらず人懐っこくて可愛らしい。

 

 

「はは。さ、もうひと踏ん張りだ!」

 

「ピッカー!」

 

「グォウ!」

 

「キュウ!」

 

「ジルババン!」

 

 

あまり根詰めてやり過ぎるのもよくないので、もうしばらくしたらポフィンで休憩しよう。

そう思って皆の練習風景を見守りながら俺自身も一緒になって体を鍛えていると、ピカチュウの〝エレキネット〟がだいぶ形になってきた。

 

まだ技スロットに名称が出ていないので正式な技としては認識されていないが、尻尾から飛ばした電撃が蜘蛛の巣のような形を保ち始めたのだ。

さすがピカチュウだ。

ジバコイルの教えが上手いのもあるか。

ピカチュウとジバコイルが笑顔でハイタッチしている。

 

リザードンとハクリューもだいぶコツを掴んできたようで、ハクリュー同士でぶつかり合っていた時のような風が生じ始めた。

 

 

「いいぞ!その調子だ!リザードン!もっともっと回るんだ!」

 

「グワァァァァァ!」

 

 

俺の声に応えるように吠えたリザードンが、ハクリューとぶつかり合った後にグルグルと円を描きながら上空に飛び上がって踊るように回ると、ドラゴンタイプのエネルギーが目に見え始める。

お、と思ったと同時にリザードンが思い切り両翼を広げた反動で、リザードンが纏ったドラゴンタイプのエネルギーがキラキラした光となって飛び散った。

 

新たに追加された技スロットに、〝りゅうのまい〟の文字が表示される。

完全に覚えたようだ。

 

 

「やったぜ!リザードン!」

 

「グォウ」

 

 

リザードンは上空に佇んだまま静かにサムズアップしてくれる。

相変わらずクールでカッコいい。

ハクリューはと言えば、先にリザードンが覚えてしまって落ち込んでしまうかと思いきや、リザードンのことをキラキラした瞳で見上げていた。

 

 

「キュッ!」

 

 

そして、リザードンに続くのだ!と言わんばかりにドラゴンタイプのエネルギーを身に纏い、頭に付いている羽飾りをパタパタ動かして飛び上がる。

しかしと言うかやっぱりと言うか、そう簡単には習得できないようでパタリと地面に落ちた。

 

 

「クゥゥゥ………キュッ!」

 

 

悔しそうに顔を歪めたハクリューは、すぐさま身を起こして再びチャレンジする。

が、やはり飛べず地面に落ちた。

飛べる兆しを見せずにただその繰り返しが起きそうだったので、一先ずハクリューを止める。

 

 

「落ち着け、ハクリュー」

 

「キュッ!……………クゥ~~」

 

 

ハクリューのツルツルの体を撫でながら宥めると、ハクリューは悔しそうに顔を歪めながら止まってくれた。

やはりリザードンが習得してハクリューが習得できない状況は、ハクリュー自身が思う以上に心に刺さったようで、歯噛みしながら涙を堪えている。

苦笑してハクリューの頭をポンポンと優しく撫でた。

 

 

「そう焦るな。今日がダメでも明日がある。今必ず習得しなきゃいけないってわけじゃないんだから。時間をかけてゆっくりいこうぜ?」

 

「………………キュゥゥゥ。クゥ……」

 

「ん?今習得しなきゃ、練習を手伝ってる俺達に申し訳ないって?」

 

「キュッ!」

 

 

当たりのようで、ハクリューは目尻に涙を付けたまま申し訳なさそうに頷く。

思わず声に出して笑ってしまった。

 

 

「キュウ?」

 

「ははは。気にしなくていいんだよ、ハクリュー。俺達に申し訳ないとか、そんなこと考えなくていい。元はと言えば、俺達の方から手伝いたいって申し出たことなんだからな。俺達が焼いてるお節介に、ハクリューが何かを思う必要はないよ」

 

「……クゥ?」

 

 

ほんとうに?とばかりに首を傾げるハクリュー。

可愛い。

片手でそっと涙を拭う。

 

 

「うん、ほんと。ハクリューは優しいな。その優しさがあれば、きっと誰かのために今よりももっと強くなれる。自分の可能性を信じて、チャレンジャーでいることを忘れず、強くなることを恐れずにいようぜ。な?」

 

「……………キュッ!」

 

 

何故かウルウルと目を潤ませたハクリューは、笑顔で頷いてくれた。

 

 

「それに―――」

 

「キュ?」

 

「ハクリューが〝りゅうのまい〟を覚えて飛べるようになるまでは、俺達はここにいるつもりだから。本当に、焦る必要はないよ」

 

「!………キュゥゥゥゥ」

 

 

ハクリューは俺の言葉を聞いて嬉しそうに俺の頬に擦り寄り、その長い体を俺に巻き付けてくる。

ちょっと苦しい。

けど可愛いから許す。

 

仲間にならないかと誘うのは、ハクリューが飛べるようになって自分に納得できるようになってからにしようと思っていたが、早めてもいいかもしれない。

寧ろ、もう誘ってしまって他の仲間達の修行をしながら並行して〝りゅうのまい〟習得の修行を行った方が、期限を意識しなくて良い分ハクリューの心に余裕が持てて伸び伸びできるか?

切磋琢磨できる意味でも、仲間は居た方がいいだろうし。

 

尚一緒に来てくれない可能性については、寂しいので考えないものとする。

よし!

そうと決まれば!

 

 

「なぁ、ハクリュー!」

 

「キュウ?」

 

「よかったら、俺と一緒に―――――」

 

 

 

 

 

 

言いかけたところで、大きな爆発音が響いた。

 

 

 

「!!!?何だ!?」

 

「ピカ!?」

 

「!」

 

「ッ!?」

 

「キュッ!?」

 

 

その場にいた全員で慌てて警戒態勢に入ると、爆発音が響いた浜辺の方からモクモクと黒い煙が上がっているのが見えた。

ハクリューがビックリしている時点で、間違いなく非常事態だ。

 

 

「ジバコイル、トゲピーを頼む!」

 

「ジルババン!」

 

 

万が一のことを考えた俺の頼みを聞いて、ジバコイルはすぐさまトゲピーがいる方へと向かう。

 

 

「ピカチュウ!リザードン!行くぞ!」

 

「ピッカァ!」

 

「グォウ!」

 

 

ピカチュウが肩に乗ったのを確認してから、空中にいたリザードンにジャンプして飛び乗った。

 

 

「キュ、キュウ!」

 

「ハクリュー!君は――――」

 

「キュ!」

 

 

本当は危ない目に遭わせたくないのでジバコイルと一緒にトゲピーの方に向かってもらいたいが、ここはハクリューの島だ。

譲らない、一緒に行く。

というハクリューの固い意志を真正面から浴びて、尚も安全なところにいてくれとは、言えなかった。

 

 

「…………………わかった。悪いが、後から来てくれ。俺達は先に行く」

 

「キュゥ!」

 

 

まだ飛べないハクリューには悪いが、後から響いた再びの爆発音に緊急事態であることも間違いないので、地面を滑るように走ってきてもらうしかない。

俺の言葉を受けてハクリューが頷いたのを確認するや否や、リザードンが最初からトップスピードで爆発音がした浜辺の方へと向かい出した。

 

リザードンに掴まりながら波導で確認すると、潜水艦と思わしき船が浜辺に乗り上げており、中から出てきたであろう人間達がカイリュー達を己のポケモン達で攻撃しているようだった。

人間達のポケモンのレベルが思った以上に高いようで、カイリュー達が苦戦している。

戦っているカイリュー達の後ろには、数匹のカイリューが特殊合金と思われる金属の輪っかに翼ごと締め付けられて封じられていた。

 

 

「くそっ!なんてことを…!!!」

 

 

優しいカイリュー達に、酷い仕打ちにもほどがある。

怒りでどうにかなりそうだが、冷静さを欠いては緊急事態に上手く対応できなくなるだろう。

深呼吸をして意識的に心を落ち着かせていく。

そうこうしている間にも浜辺が近付いてきた。

木々と木々の間。

隙間から、片膝を付いたカイリューに、ポケモンの攻撃が迫るのが見えて――――。

 

 

「ピカチュウ!!!〝10まんボルト〟!!!!」

 

「ピィィィィィカァァァァァァチュウウウウウウウウウ!!!!!!」

 

 

咄嗟に指示したピカチュウの技が、その攻撃とぶつかって爆発を起こした。

爆煙の中に飛び込んで、カイリューを庇う位置に飛び降りる。

リザードンの羽ばたきで、砂埃を吹き飛ばした。

 

 

「なっ!?何だ!!!」

 

「人間!?」

 

「チッ!せっかくカイリューの島を見つけたっていうのに、運のない…!」

 

 

俺の姿を視認した人間達。

数は三人。

人間のポケモン達は、レベル52のスピアー、レベル51のオニドリル、レベル50のギャラドス、レベル53のラッタ、レベル50のマタドガス、レベル52のサンドパン、レベル50のカイリキー、レベル51のゴローニャだった。

 

レベル50を超えている時点でかなりの高レベルのポケモンが、8体。

レベル55で進化するカイリュー達が、野生とは違うトレーナーのポケモンの連携の前に、苦戦するわけである。

 

 

「お前達!カイリュー達を傷付けるな!!」

 

「黙れ!正義気取りの小僧が!」

 

「一人で何とかできると思ってんのかぁ!?あぁ!?」

 

「やるってんなら相手になるぜ?ただし!泣いたって知らねぇぞ!」

 

「お前達こそ!!ジュンサーさんに引き渡してやる!!」

 

 

既に外に出ているピカチュウとリザードンに加え、カメールとバサギリをモンスターボールから出して戦闘態勢に入った。

密猟者、と思しき人間達は、俺の存在に厄介そうに顔をしかめていたが、バサギリの姿を見た途端目の色を変える。

 

 

「うっひょぉ!!珍しいポケモンいるじゃねぇか!!!」

 

「こりゃとんだ誤算だぜ!ストライクの新しい進化形か!?」

 

「カイリューの他に珍しいポケモンまで手に入れられるとはな!おい!やっちまおうぜ!!」

 

「「おう!!」」

 

 

密猟者Aのポケモンが、スピアーとマタドガス。

密猟者Bのポケモンが、オニドリルとラッタとカイリキー。

密猟者Cのポケモンが、ギャラドスとサンドパンとゴローニャのようだ。

 

数的にはこちらが圧倒的に不利。

だがそれでやられる俺達じゃないぜ!

 

 

「リザードン!空を飛んでるポケモン達は、一旦お前に全部任せる!耐え凌いでてくれ!」

 

「グォウ」

 

 

任せろ、と静かに答えてリザードンは翼をはためかせて飛び上がる。

スピアー、オニドリルがリザードンの後に続いて飛び上がり、空中戦が開始される。

 

 

「カメール!思いっ切り〝だくりゅう〟だ!ピカチュウ、〝だくりゅう〟に〝10まんボルト〟!」

 

「ガァァァメェェェェェ!!!!!」

 

「ピィィィィィカァァァァァァチュウウウウウウウウウ!!」

 

 

カメールに巨大な〝だくりゅう〟を生み出してもらい、ピカチュウの〝10まんボルト〟を纏わせて一気に密猟者のポケモン達を襲った。

密猟者がその規模の大きさに慌てて対応している間に、バサギリに〝つじぎり〟を指示してカイリュー達を締め付けている特殊合金の輪を全て断ち切り、全てのカイリューを自由にする。

 

 

「あっ!?お前!!せっかく捕まえたカイリュー達を逃がしやがったな!!」

 

「その金属をいとも簡単に断ち切るとは…………なんて攻撃力だよ!おい!絶対高く売れるぜ!?」

 

「そうだな。だが、最初から〝だくりゅう〟は壁の役割を期待してのもの。与えるダメージはおまけ程度に考えていたのだろうが、それでもあの威力。中々に腕の立つ小僧らしい。お前ら!油断すんなよ!!」

 

「了解だ!」

 

「おうよ!」

 

 

厄介だな。

そのまま油断していてくれれば儲けものだったんだが。

ピカチュウとカメールはまだしも、バサギリはまだレベルが低い。

それでも戦いたそうにうずうずしているのが目に見えてわかるから、俺がフォローしつつ暴れてもらうか。

 

そこからはマタドガス、ラッタ、カイリキー、ギャラドス、サンドパン、ゴローニャを相手に、乱戦となった。

何とか効果抜群の技を喰らわせたいが、密猟者達の連携も中々に上手く、ピカチュウの電撃をサンドパンやゴローニャで防いできたり、カメールの水技をギャラドスで受けたりしてくる。

 

ピカチュウのスピードで撹乱して、カメールの技で囲い込み、バサギリの高火力の技を叩き込む。

その間にも、リザードンはスピアーとオニドリル2体を相手に、空中戦を繰り広げている。

バサギリのレベルが低い分、俺の指示は地上戦に注ぎ込むしかなく、早めにリザードンのカバーに向かいたいが中々に厳しい。

 

 

「キュウ!!!」

 

「!ハクリュー!」

 

 

地上戦が更なる乱戦にもつれ込み始めそうになった頃、ハクリューが到着した。

ハクリューは地上と空中の戦場をパッと見て、数が足りていない空中戦の方を手伝おうと思ったらしい。

〝りゅうのまい〟を発動させて飛ぼうとして、地に落ちた。

そんなハクリューを庇う位置に立って、バサギリへの指示を忘れない。

 

 

「バサギリ!今は思いっ切り突っ込んでいい!〝がんせきアックス〟!!!―――ハクリュー、無茶するな。今は地上で戦力になってくれないか?」

 

「ッ………クゥ!」

 

 

一瞬悔しそうな顔をしたハクリューだったが、すぐに切り替えて頷いてくれた。

悪い。

ハクリューのことを信じてはいるが、緊急事態の今は時間が惜しい。

可能性としてできるかもしれないことより、確実にできることを。

一歩一歩。

着実に。

 

ハクリューのレベルは45。

十分即戦力として役に立つ。

ハクリューが地上戦に加わってくれたことで、確実にやりやすくなった。

 

 

「おい!あのハクリュー、他のカイリュー達よりも強くないか!?結構高値で売れるんじゃないか!?」

 

「野生のカイリューよりはトレーナーに指示されたハクリューの方が強いってだけだろ。それにあのハクリュー、飛べないみたいだぜ?そんな欠陥品より、どうせなら最終進化したカイリューを何匹も売り払った方が儲けに繋がるって!」

 

「まぁ、ミニリュウ、ハクリュー、カイリューの進化形セットを売るってのも手だ。あのハクリューは、優先的に捕まえることにしよう」

 

 

聞いているだけで本当に胸糞悪い。

密猟者達の言葉に傷付いて、顔をしかめるハクリューを優しく撫でる。

意識して優しい波導を分け与えながら、俺のポケモン達皆の怒りのボルテージが上がっていくのを感じる。

 

 

「絶対に」

 

 

帽子のつばを掴んで、後ろに回す。

 

 

「お前達には!!!渡さない!!!!」

 

「ピッッカァァァァァ!!!!!!」

 

 

広げた波導が、雄叫びを上げたピカチュウの心と、リンクしていく。

視界が重なり、心が一つに。

 

シンクロ状態。

 

できたと理解した瞬間、この状態でいられるのが精々3分ほどだということも理解した。

体への負担で、3分を過ぎれば自然に解除されるだろうとわかったのだ。

それはピカチュウも同じようで、早期決着をつけるために〝ばちばちアクセル〟で飛び出していく。

 

ギャラドスに〝ばちばちアクセル〟の乱舞を浴びせ、一気に戦闘不能にした。

次いでそのままの勢いでマタドガスに張り付き、超至近距離〝10まんボルト〟を浴びせて苦しめる。

 

 

「なっ!!?何だ!?何が起こった!!」

 

「一瞬で、ギャラドスが…!!!」

 

「あのピカチュウ、今までと動きが違う!?」

 

 

密猟者達が反応できる頃には、マタドガスも戦闘不能にできた。

その間にカメールの〝こうそくスピン〟からの〝ハイドロポンプ〟でサンドパンとゴローニャに大ダメージを与え、バサギリの〝きりさく〟と〝つじぎり〟連打で戦闘不能に持っていく。

そしてハクリューに〝たつまき〟を発動してもらい、カイリキーを閉じ込めたところにピカチュウの〝10まんボルト〟で追撃をかけ、戦闘不能に。

あっという間に残るはラッタだけになり、密猟者達が唖然とする。

 

 

「な、な、な、な……」

 

「馬鹿な!!さっきまで拮抗していたのに!!!」

 

「油断、したわけじゃない…………なのに!!!」

 

 

現実を受け止め切れない密猟者達を前に、シンクロ状態が解かれる。

あまりの疲労に俺とピカチュウは同じ動作で片膝を付いた。

 

 

「!!あいつら、よくわからんが疲れてるようだぞ!」

 

「チャンスだ!ラッタ!攻撃だ!」

 

「ラタ!!」

 

「おい!お前らも立ちやがれ!あいつらを攻撃するんだ!!!」

 

 

突っ込んできたラッタの前にカメールとバサギリが立ち塞がり、〝つばめがえし〟と〝ハイドロポンプ〟で吹き飛ばす。

密猟者Cは戦闘不能になったポケモン達に文字通り蹴りを入れながら指示を飛ばしているが、動けていない。

 

 

「はぁ、……はぁ…………やめろ!!戦ってくれたポケモン達に、なんてことしてるんだ!!」

 

「黙れ!俺達のポケモンをどう扱うが、自由だろ!!!」

 

「お前には関係ない!!」

 

 

最低なことを宣う密猟者達に、バサギリは鎌を光らせて密猟者達の頬をかすめて〝れんぞくぎり〟を放った。

 

 

「ヒ、ヒィ…!!!」

 

 

〝れんぞくぎり〟で頬に一筋血を流した密猟者達は、震え上がり腰を抜かしたようで、地面に座り込む。

密猟者達が変なことをしないようにバサギリとカメールに見張りを頼んで、疲れてへたり込んでいたピカチュウを抱き上げた。

 

 

「よくやったぞ、皆」

 

 

一先ず地上戦が落ち着いたのを確認し、空中に目を向けた。

オニドリルと〝ほのおのキバ〟や〝きりさく〟で切り合い、スピアーの不意打ちを〝りゅうのまい〟で舞うように紙一重でかわしながら、俺の頼み通り耐え凌いでいてくれた。

 

 

「リザードン!」

 

「グォウ!」

 

 

大丈夫だ、と鳴くリザードンは元気も体力もまだまだある。

だが俺の手持ちにリザードン以外の空を飛べるポケモンは、いない。

俺の指示のみで1対2を制しなければいけない。

 

…………………………いや。

 

 

「ハクリュー」

 

「キュ?」

 

 

こういう時だからこそ。

 

 

「お前を、頼らせてくれ。お前なら、きっと飛べる」

 

「!」

 

 

ハクリューはびっくりして目を見開き、俺のことを見つめてきた。

真摯に見つめ返す。

今なら、余裕がある。

リザードンも、切羽詰まった状況ではない。

 

 

「大丈夫。お前なら、絶対にやれる」

 

「…………………………」

 

 

俺の目を見つめていたハクリューだったが、決意を決めたように眦に力を入れた。

 

 

「キュウ!!!!」

 

 

そして発動する技、〝りゅうのまい〟。

だが技スロットには技名が出ず、飛び上がったハクリューは頭から地面に落ちた。

駆け寄ることは、しない。

俺の腕の中で起き上がったピカチュウと一緒に、ただ。

 

 

「……………俺は信じるぞ、ハクリュー」

 

 

信じるのみ。

絶対に、飛べると。

 

 

「一緒に、どこまでも一緒に。遠くまで行くために!飛べ!!ハクリュー!!!」

 

「…………………キュウウウウウウウウ!!!!!!」

 

 

砂まみれの顔のまま。

再び高く飛び上がったハクリューは、〝りゅうのまい〟を発動する。

ドラゴンタイプのエネルギーが目に見えて輝き始め、飛び上がったハクリューから光が迸る。

技スロットに、〝りゅうのまい〟の文字。

 

 

「キュ!!!」

 

 

大きくなった頭に付いた羽飾りを動かして、ハクリューは空を飛んだ。

スピアーの〝ダブルニードル〟を、〝きりさく〟で迎え撃っているリザードンの死角から飛び掛かろうとしたオニドリルに、〝ドラゴンダイブ〟で迎え撃った。

 

 

「!?ギャース!?」

 

「クゥ!」

 

 

〝ドラゴンクロー〟でオニドリルを吹き飛ばしたハクリューは、リザードンと背中合わせに並ぶ。

 

 

「やったぜ、ハクリュー」

 

 

呟いた俺の言葉は、きっとハクリューには届いていない。

だがそれでもいい。

今は―――――。

 

 

「リザードン、〝フレアドライブ〟!ハクリュー、〝ドラゴンダイブ〟!」

 

「グォォォォォ!!!」

 

「キュゥゥゥ!!!」

 

 

2対2の状態であれば、リザードンも他を気にせず全力を出せる。

ハクリューと背を預け合い、全力で発動した〝フレアドライブ〟でスピアーを撃ち落とす。

地上に落下したスピアーは、目を回していた。

二回目の〝ドラゴンダイブ〟を受けたオニドリルももうフラフラで、俺の腕の中から飛び出したピカチュウの〝10まんボルト〟の追撃を浴びて、完全に戦闘不能になる。

 

密猟者達のポケモン達が全て戦闘不能になり、密猟者達も一か所に集めて密猟者達が持っていた特殊合金の輪っかで三人とも締め付ける。

あとはジュンサーさんの元に突き出せば、一件落着だ。

 

 

「キュ~~~~~」

 

「…………グォ」

 

「ハクリュー!リザードン!よくやったぞ!」

 

 

地面に降り立って嬉しそうに俺に頬を寄せてくれるハクリューに俺も頬を寄せて片手でハクリューを撫で、もう片方の手でリザードンを撫でる。

カメールもバサギリもドヤ顔で俺の傍に寄ってくる。

可愛い。

 

 

「皆よくやったぞ。あとはこいつらを、ジュンサーさんの元に持っていくだけ」

 

 

なんだけど。

さて、このふん縛った密猟者達、どうやって連れて行こう?

 

 

「グオウ」

 

「リザードン、三人も持っていけるか?」

 

「グォ」

 

 

サムズアップして、任せろ、と答えてくれるリザードンは頼もしいが、負担も大きいだろう。

 

 

「クゥ!キュゥキュゥ!」

 

「ん?」

 

 

そこにハクリューが、自分も持っていけるよ、と尻尾を上げてウキウキで名乗りを上げてくれた。

確かにハクリューももう飛べる。

だが、人を持ってはいけないだろう。

ツルツルの体では、落としてしまう。

 

 

「気持ちは嬉しいけどさ、ハクリューは――――」

 

「バウ!」

 

「ん?」

 

 

ふと後ろを見ると、カイリュー達が集まって自分達に任せろ、と言ってくれた。

本当は人間を恨み、嫌いになってもおかしくないことをされたのに。

本当に、優しいポケモン達である。

 

 

「わかった。ここはカイリュー達に任せるよ。あいつら三人を、どこでもいいから街のジュンサーさんの元まで届けてくれるか?」

 

「バウ!」

 

「ワウ!」

 

「バウ!」

 

 

一斉ににこやかな笑顔で頷いてくれたカイリュー達。

可愛い。

密猟者達のポケモンを密猟者達のモンスターボールに戻して、カイリュー一体に付き密猟者一人を担いでもらい、カイリュー達は島を飛び出していく。

島を囲っている嵐に突っ込む形になるので、密猟者達が悲鳴を上げていたのは良いザマである。

 

自分に任せてもらえなかったからか、プクリと頬を膨らませるハクリューの可愛いこと。

思わず笑って頬に指を押し当て、プスーっと空気を抜いた。

 

 

「ごめんって。ハクリューには、俺から話したいことがあったからさ」

 

「キュゥ~~~~?」

 

 

本当に?と疑いの目を向けるハクリューに、クスリと笑って手を差し出した。

 

 

「キュ?」

 

「俺と一緒に、来てくれないか?」

 

「!!」

 

 

俺の言葉によほどビックリしたのか、ハクリューはビシリと硬直して大きく目を見開く。

俺はと言えば、先ほどと同じように真摯にハクリューを見つめ返した。

 

 

「俺、頑張ってるお前が大好きなんだ。だからその頑張り、絶対に無駄にしない。俺と一緒に、行けるところまで行ってみないか?俺は、どんなお前でも。どんなことがあっても。その手を掴んでいたい。ハクリューが、大好きだから」

 

「………………」

 

 

目を見開いていたハクリューは、次第にウルウルとその目に涙を溜めていく。

 

 

「………………どうだ?」

 

「!キュッ!」

 

 

ハクリューの答えは、俺に抱き付いてくること。

つまりは、一緒に行こうの意。

 

 

「!…………ありがとう、ハクリュー」

 

「キュゥゥ!クゥゥゥ!」

 

 

よほど嬉しいのか、俺に高速で頬擦りしてくるハクリュー。

かなりくすぐったいが、可愛いので我慢。

 

 

「これからもよろしくな、ハクリュー」

 

「キュッ!」

 

 

空のモンスターボールを取り出して差し出せば、ハクリューは額でボタンを押して入っていった。

一度も揺れずに収まる。

ポケモン図鑑でカメールをオーキド研究所に送り、ハクリューをモンスターボールから出した。

 

 

「クゥゥゥ~!キュゥ~~~~!」

 

「俺、ハクリューと友達になれてすっげぇ嬉しい。俺と出会ってくれて、ありがとな、ハクリュー!」

 

「キュゥ~~~」

 

 

俺に体を巻き付けて頬擦りするハクリューを撫でて落ち着かせる。

今回はまだレベルが足りなくて、ゲット時点で進化までは至らなかった。

しかしそれでも、また出会えた。

また、仲間になってくれた。

 

繋げる手はまだないが、心は繋げた。

繋がった縁を大切に、これからを歩んでいこう。

どこまでも一緒に。

 

 

 

 

 

「チョゲップリィィィ!」

 

「!トゲピー!」

 

 

ハクリューに俺も頬を寄せていると、トゲピーが泣きながら草むらをかき分けて現れた。

トゲピーの後ろから、ジバコイルが慌てた様子で申し訳なさそうに現れる。

どうやら、我慢できなかったようだ。

足元に泣き付いてきたトゲピーを苦笑して抱き上げる。

ハクリューは少しムッとした様子だったが離れてくれた。

 

 

「もう終わったから大丈夫だよ、ジバコイル。トゲピーを守っててくれてありがとな」

 

「ジルババン」

 

「トゲピー、いい子にしてて偉かったな。ミニリュウとは遊べたか?」

 

「チョゲ!チョキチョキ!」

 

 

俺に抱かれてすぐさま泣き止んだトゲピーは、キャッキャと笑いながら頷く。

 

 

「それならよかった。いい刺激になったかな?」

 

「チョゲ♪」

 

 

満足そうなトゲピーに、よかったよかったと俺も笑う。

さて。

俺もピカチュウも、だいぶ疲労から抜け出せた。

 

 

「それじゃあ、帰ろうか。帰ってポケモンリーグに向けて、修行の開始だ!」

 

「ピッカ!」

 

「チョゲ!」

 

「キュウ!」

 

 

帰りはハクリューに乗せてもらって海を渡った。

新たな仲間を加えて、改めて修行開始だ。

 

 

 

 

 

第75話 ポケモン達の様子を見てみよう

 

 

マサラタウンに帰ってカスミとタケシに仲間にしたハクリューを紹介すると、とても驚いていた。

ふふふ。

 

 

「ハクリュー、いやカイリュー達の島なんて、いつの間にそんな場所を知ったんだ?」

 

「ちょっと、当てがあってな」

 

「にしても、実際に仲間にしてくるなんて………。進化してもしなくても、戦力超強化じゃない!」

 

「育て方次第でいくらでも伸びていくだろうからな。これは更なるトレーナーとしての腕が試されるな、サトシ」

 

「あぁ!腕が鳴るぜ!」

 

 

タケシ達と一緒にマサラの森の奥の湖の方まで移動し、そこでミュウツーと一緒にバトル談議に花が咲いていたフシギダネに頼んで、修行のために散らばっていた皆を再び集めてもらった。

そして俺の仲間達にも、仲間になったばかりのハクリューを紹介する。

新しく見るからに強いポケモンが仲間になって、皆の目が更なるやる気に燃えている。

 

 

「さぁ。ここにいる皆で勝ちに行くぞ。誰かが欠けてちゃダメだ。俺には、皆の力が必要なんだ。皆、いつもみたいに、俺に力を貸してくれ。目指すはてっぺん。今の俺達で、行けるところまで突っ走っていこう!」

 

 

俺が右腕を突き上げると、皆も雄叫びを上げながらそれぞれ応えてくれた。

元気いっぱい。

やる気満々。

意力十分。

 

前のサトシは、完全なる実力不足で満足に進めなかった。

けど今回は違う。

頼もしい仲間の実力は十分。

あとは、俺の腕を磨いてやれること全部やって挑むのみ。

さぁ、行くぜ!

 

 

 

と、その前に。

ピカチュウとシンクロ状態(仮称)になれたことを、スイクンに報告した。

あれだけ試してみても視界がリンク状態にすらならなかったのに、一発でシンクロ状態(仮称)になれるとはな。

しかし今やってみても、あの時のようにはいかない。

あの時は密猟者達のあまりの言い様に、頭に血が上って高揚していた。

 

おそらく気分が高揚し、無意識のうちに高まった波導がピカチュウの怒りに燃える心、波導と共鳴し、シンクロ状態(仮称)になれたのではないかと。

今はまだ、喜怒哀楽で気分や感情が高まった時にしか使えないということだろう。

俺の波導が強力とはいえ、その強力は量に由来するとスイクンから教えられた。

質がまだまだ高め切れていない以上、まだまだ上があるということだ。

質を高めていけば、シンクロ状態(仮称)になれるコツが掴みやすいだろうと。

俺もまだまだ鍛えないとな。

 

 

 

シンクロ状態(仮称)についてわかったところで、改めて修行について。

とりあえず買った技マシンをフルに使い、全員の技を調整するところからだ。

その後、各々の課題は明確化しているので、ポケモン達にあった修行内容を課して再び各々修行場に散らばってもらう。

まずはきちんと修行内容が成長に繋がっているかのチェック。

その後は、修行が進んで実戦で試したいポケモン、実戦で感覚を掴みたいポケモン等、挙手制+俺の選抜メンバーで、カスミとタケシと何戦も本気バトル。

 

いつでもジムリーダーの本気ポケモンと本気バトルできるっていう点で、ジムリーダーと一緒にいられるっていうのはすごい貴重だな。

この貴重な縁をずっと大事にしていこう。

 

カスミとタケシが疲れてきたら、休憩と称して再びポケモン達の様子を見に行く。

覚えようとしている技のイメージが中々できない場合は、俺の波導が役に立つ。

俺が覚えたい技のイメージを、波導を通して伝えるのだ。

俺の波導の扱いが上手いからできることだと、スイクンに呆れられた。

 

 

さて。

新しく仲間になったハクリューは、特性せいしんりょく。

技スロット4つの、〝たつまき〟、〝ドラゴンダイブ〟、〝りゅうのまい〟、〝たきのぼり〟を覚えていた。

〝10まんボルト〟、〝アイアンテール〟、〝でんじは〟なんかも覚えてほしいところだが、一先ずは〝りゅうのまい〟を活かした空中戦に慣れるところからだろう。

空中を自由に移動する鳥ポケモン達や、ふゆう特性のゲンガーに相手になってもらっている。

カイリューに進化したら、〝はねやすめ〟や〝しんそく〟等、さらに覚えてほしい技がたくさんできる。

技スロットが増えるかはわからないが、できる範囲で戦術を増やしていきたい。

 

 

ピカチュウは〝エレキネット〟の完成を目指し、バタフリーと一緒にジバコイルに師事している。

ジバコイルもピカチュウに習って〝10まんボルト〟を覚えようとしており、いい相互関係が築けているようだ。

 

 

水タイプのポケモン達は、基本的にスイクンに師事している。

スイクンは水タイプのポケモンであるカメール、キングラー、ニョロゾ、ヒンバス、カブトプス、オムナイトに水技と氷技、そして戦い方を教えているようで、技の威力やキレ、そしてバトル中の動きが格段に良くなっている。

伝説のポケモンに戦い方を教わるなんて、これもまた貴重な体験だ。

本当に、感謝してもし切れない。

 

 

ポケモン同士で技を教え合っているもの達もいれば、戦い合っているもの達もいる。

その最たる例が、太陽とリザードンだ。

お互いをライバルと認め合っているからこそ、お互いに負けたくないという気持ちが強く伝わってくる。

特にリザードンは、トキワジム戦に選ばれたのが太陽だったからか、更に強くなりたい熱意がすごい。

空中戦からあえて翼を使わない地上戦まで、ありとあらゆる戦い方でお互いを高め合っている。

太陽は俺がいない中でも〝えんまく〟を駆使して、リザードンは新たに覚えた〝りゅうのまい〟を駆使して、それぞれ激戦を繰り広げていた。

それを見て、〝りゅうのまい〟を習得した時にリザードンに憧れたらしいハクリューが目を輝かせている。

 

 

同じ種族のポケモンが明確にライバルとなり、良い対戦相手となっている太陽達と違い、フシギダネとフシギソウは良き兄妹関係を築いていた。

ライバルじゃないわけではないが、フシギダネがフシギソウに戦い方を教えている今は、良いところ師弟関係だろう。

フシギダネは、フシギソウがフシギバナに進化した時のことまで考えて戦い方を教えているようで、自分の戦い方をそのまま伝授しているわけではなく、フシギソウにあった戦い方を教えていた。

器用なやつである。

 

フシギソウはそんなフシギダネを兄として心から慕っているようで、キラキラした瞳で見ている。

微笑ましい。

たまに箱入り娘すぎて、興味を示したものに躊躇いなくフラフラと近付いて行くのは危ない時もあるので、直したいところだが。

 

 

ゲンガー(のろわれボディ個体)とゲンガー(ふゆう個体)も、ライバルでありながら兄弟のような気の置けない友人のような、とてもいい関係を築けている。

お互いのバトルスタイルは全く違うが、ゲンガー(ふゆう個体)はゲンガー(のろわれボディ個体)に戦い方と攻撃技を習っており、ふゆう特性を活かした戦い方をしようとしているのに対し、ゲンガー(のろわれボディ個体)はゲンガー(ふゆう個体)の戦い方を見て、自分にできる攻撃的なバトルスタイルをさらに磨こうとしている。

お互いがお互いに良い影響を与えているようだ。

 

 

そういえば、ずっと子育てに明け暮れていたモルガナも、今回の修行に参加していた。

俺との交流はそこまでなかったはずだが、どういうわけか俺のことを強く慕ってくれており、バタフリーに釣り合うポケモンでいるために自分も強くなりたい、と申し出てくれたのだ。

俺の正式なポケモンと言っていいのかは微妙なところなので、大会には出さないと思うが。

俺のポケモン達と同じ修行内容では息切れしそうだったので、まずは軽い修行内容を課して体を鍛えるところから始めた。

バタフリーも嬉しそうで、さらに修行に熱が入っている。

 

 

トゲピーはモルガナ相手にバトルの練習だ。

レベルが近いのと、二匹ともまだ本格的な修行に入るには体ができていないから。

モルガナも娘のように可愛がりながら、温かくも厳しく相手をしている。

 

 

ブイズ系統は、基本的にエーフィがお姉さんとして仲良くやっている。

エーフィが長女、ニンフィアが次女、ブラッキーが長男、リーフィアが次男といったところか。

ブラッキーとニコイチで、リーフィアのもう一人のお兄さん的立ち位置にいるウインディも、よく一緒に修行している。

大家族のようで微笑ましい。

そういえばエーフィとニンフィアの間に、火花が散る気がするのは本当に気のせいなのか…?

 

 

ケンタロス、ガルーラ、ニョロゾは仲間になった場所が一緒だからか、今も尚レベルが近いからか。

この三匹でよく一緒に修行している。

ケンタロスとガルーラは互いに押し合いぶつかり合い、力の応酬。

ニョロゾはそんな二匹に力の出し方を教わりながら、遠距離攻撃で二匹を受け止め、受け流し、押し返せるようになるまで鍛えている。

スイクンもいつでもマンツーマンで教えられるわけではないので、スイクンに習ったことを実戦で試しているような形だ。

 

 

カメールも同じで、スイクンから教わったこと+練習中の〝ハイドロカノン〟を習得しようと試している。

〝ハイドロカノン〟といえば、フシギダネも〝ハードプラント〟を習得しようとしているようなのだ。

俺には内緒にして、完成したら見せてくれるつもりのようなので、俺もアドバイス等はせず完成するまでじっくり待つことにしている。

 

 

ヒンバスは進化してからが本番、とは考えていないようで、ヒンバスのままでも戦えるように戦闘訓練を積んでいる。

進化できる美しさMAXまでもう少しだが、どうやらヒンバスは今のままでも戦えるようになりたいみたいなのだ。

その相手になるのは、もちろん仲の良いゾロア。

ゾロアの特性は手持ちの最後のポケモンに変化して場に出るイリュージョンだが、俺のゾロアはずっとイリュージョンを駆使して人間とポケモンから逃げていたからか、バトル中にもイリュージョンで姿を変化させたり何かを生み出したり、障害物を作ったりして戦える。

初見で対応するのはまず難しいだろう。

お披露目する時が楽しみだ。

 

 

 

 

 

第76話 ヤドンがヤドランになる時

 

 

「ビンヌ?」

 

「そう!海のリゾート、ビンヌ!町内会の旅行で、三泊四日のツアーがあるの!歩いて行ける距離にあるし、修行ばっかりして根詰めていないで、たまには羽を伸ばしに行きましょう?」

 

 

朝起きて、いつものように修行場に向かおうとした俺を引き留めてきた母さんに、何やら旅行に誘われた。

そういえば、前は自主トレをしていろって言われて置いてかれたんだっけ?

今回は修行のやり方がわかっているから、修行ばかりしていたことで息抜きに誘ってくれたらしい。

 

 

「いいね!水ポケモン達を遊ばせてやりたいし、行こうかな」

 

「決まり!あたしとタケシも行くわよ~!」

 

「海のリゾートだからな。たまには思いっ切り遊んで、リフレッシュするとしよう!」

 

 

家に泊まっているカスミとタケシも一緒に行くらしい。

そうと決まれば、オーキド研究所に行って皆の元に向かい、数日間の休みを言い渡す。

修行できないことに渋るポケモン達もいたので(プテラなんかはそもそも休みが何かわかっていなかった)、軽い自主トレであればやっていて構わないと許可を出し、俺が帰ってくるまでに疲れを取り万全の状態にしておくよう伝えた。

 

そして手持ちを水ポケモン達で固めようと、カメール、キングラー、ニョロゾ、ヒンバス、カブトプス、オムナイトを呼んだところで、ずっと抱えていたある問題をカスミに指摘される。

 

 

「ねぇ。リーグに出るとなると、六対六のフルバトルをすることになるわけでしょ?」

 

「ん?うん、そうだな」

 

「フルバトルに毎回ピカチュウを出すってわけにもいかないだろうし、サトシの手持ちの制限はどうするの?」

 

 

やっぱり気になるよな。

でもこの問題は、解決方法を二通りほど思い付いている。

 

 

「んーと、ピカチュウのモンスターボールだけオーキド研究所に送って、ピカチュウをベンチかカスミ達に預けて手持ちを六体にする方法と、ミュウツーに頼んでモンスターボールを転送されないようにしてもらう方法がある。とりあえずは、オーキド研究所にモンスターボールだけ送っておくのが誰にでもできる正規の方法だと思うし、そっちにしようかなって思ってるよ」

 

 

……………………あれ?

なんか、ミュウツーが不満げに頬を膨らませた幻覚が見えたような?

さすがに気のせいかな?

 

 

「んー…………」

 

「どうした、タケシ?今の話で何か問題でもあるか?」

 

 

タケシが腕を組んで眉間にしわを寄せている。

 

 

「いや、モンスターボールに入るのが嫌いでも、いざという時になければ困るものではある。ミュウツーの負担にならないなら、手元にモンスターボールを置いておく方が安全ではあると思ってな………」

 

 

ん?

ミュウツーの顔、今輝いた?

でも、ん~~~~~~~~。

タケシの言うことも一理ある、か………。

 

 

「ミュウツー――――」

 

『負担にはならない。幾らでも私が入っているモンスターボールのようにできる。幾らでも、な』

 

「おぉ………」

 

 

聞く前に差し出された返答。

そして繰り返された言葉に、思わず感嘆の声が漏れる。

制限なしなのね。

いざとなれば俺のポケモン達総出で旅ができるわけだ。

さすがにやらないけど。

 

 

『どうせ私とサトシは、ずっと一緒にいるのだ。何も問題はあるまい?』

 

 

……………………うん、もう何も言うまい。

少し顔をしかめたスイクン、それはやきもちかい?

 

 

「それじゃミュウツー。悪いけど、手持ちが六体以上になる時はモンスターボールが転送されないように頼むな?」

 

『任された』

 

 

問題解決っと。

 

 

「ちょっとズルい気もしなくもないけど、サトシはトラブルに巻き込まれ体質だから、念のためは必要よね?」

 

「あぁ。念を入れておくに越したことはないだろう」

 

 

俺自身がトラブルメーカーってわけではないのにね?

何でだろうね?

 

一先ず手持ちをカメール、キングラー、ニョロゾ、ヒンバス、カブトプス、オムナイトにして、試運転としてピカチュウとトゲピーのモンスターボールを転送されないように頼み、ミュウツーを加えた九体でビンヌに向かうことにする。

一応オーキド博士にも伝えておこうと、オーキド研究所に入るとオーキド博士が頭を抱えていた。

 

 

「博士ー?大丈夫?」

 

「頭でも痛いんですか?」

 

「おぉ、サトシ達か。いや、痛いわけではない。ワシが考えてもさっぱりわからんのじゃよ」

 

「何が?」

 

「これじゃよ」

 

 

博士がパソコンを操作し、画面にヤドンが映し出される。

 

 

「あ、ヤドン」

 

「可愛い!」

 

「このヤドンにシェルダーがくっついて、ヤドランになるんじゃ。合体して進化するんじゃが、その過程がサッパリわからん。考えても考えてもわからず、考え出すと夜も眠れない!」

 

 

また大げさな。

 

 

「おぉ、そうじゃ!ニシノモリ教授に聞けばわかるかもしれん!」

 

「ニシノモリ教授?」

 

「ポケモン学の権威で、ポケモン図鑑を書いた一人なんじゃ。確かビンヌに住んでいるとか…」

 

「あ!ビンヌなら、これからあたし達行くところなんです!」

 

「おぉ!そうなのか!ちょうどいい、話を聞いてきておくれ!」

 

「はぁい」

 

 

そういえば、前もヤドンとシェルダーとヤドランの謎を聞くために、俺もビンヌに向かったんだっけ?

出発する前に、博士に手持ちを六体の制限を超えて多く連れ歩くことを話し、ミュウツーの力でモンスターボールを転送しないようにしていることを話した。

 

その時初めてミュウツーを紹介することになったのだが、オーキド博士はひっくり返って驚いていた。

そういう反応になるよなぁ(二回目)。

ぜひミュウツーを研究させてほしいと目の色を変えて詰め寄られたが、ミュウツーが無表情ながら酷く嫌がっていたので、ミュウツーの境遇を話して遠慮してもらった。

もう少しミュウツーが人に馴れてきたら、少しずつ研究に付き合ってあげてほしいところだ。

 

 

「それにしても、そうかそうか。六体を超えて、手持ちを持つか」

 

「…………やっぱり、大っぴらにはしない方がいいことですよね?」

 

「うむ、そうじゃなぁ………。一応手持ちポケモンは六体までだと規則で決められておるが、それは六体以上連れて歩くとなると、トレーナーの力量がものすごく顕著にものを言うことになるからじゃ。扱いやすい、扱い切れるポケモンの数が大体六体までだと決められ、どんなトレーナーも基本は六体までしかポケモンを持てん。しかし、手持ちの制限を解除する正式な手続きを踏めば、そのトレーナーは好きな時に好きなように好きなだけポケモンを連れて歩けるようになる」

 

「えっ、そうなの?」

 

「うむ。じゃがその手続きを踏むのはかなり大変じゃ。繰り返すが、六体までだと定められているのは、六体までが一般のトレーナーに扱えるギリギリの数だからに他ならない。それを超えて手持ちを持つとなると、特別な役職や特別な理由がない一般トレーナーでは、チャンピオンリーグベスト4に入らねば正式な手続きはまず無理なんじゃ」

 

「チャ、チャンピオンリーグ…………」

 

「ベスト4…………」

 

 

カスミとタケシが呆然としている。

まぁ、そうだよな。

前の時も手持ち制限解除の話なんて、聞かなかったもんな。

俺がそこまでの実力を持つトレーナーになれたのは、ずっと後だったし。

 

 

「サトシ。ピカチュウのようなモンスターボールに入ることが嫌いなポケモンがいるから、フルバトルするために手持ちを多く持つ必要があるのはわかった。誰かに何かを言われたら、ワシが後ろ盾になろう」

 

「いいんですか?」

 

 

反対されることはないにしろ、釘を刺されるかと思っていたが、まさか後押ししてくれるとは。

 

 

「サトシのことはワシも幼い頃からよく知っておる。手持ちを多く持ったとて、それで悪さをするようなトレーナーじゃないこともよく知っておる。ミュウツーという、未知のポケモンですら仲良くなれたお主なら、ポケモンの扱いは大丈夫じゃろうて。ただし、くれぐれも気を付けるんじゃぞ?」

 

「!はい!!」

 

 

博士からの信頼が嬉しい。

その信頼を、損ねることのないように。

俺は俺の信じた道を、しっかり歩いて行くんだ。

そして手持ち制限解除の正式な手続きを踏めるようになったら、その時はきちんと手続きを踏もう。

堂々と、皆とずっと一緒にいるために。

 

 

俺、俺の肩に乗ったピカチュウ、俺が抱っこしたトゲピー、カスミ、タケシ、母さんで、改めてツアーの列に並んで出発した。

歩いて行ける距離というだけあって、ビンヌは近かった。

 

オーキド博士のお使いは任せてくれて良いから、俺のポケモン達を海で遊ばせといてくれないかとカスミとタケシに頼むと、二人は快く頷いてくれた。

母さんは町内会の人達と一緒だ。

ピカチュウとトゲピー以外のポケモン達をカスミ達に預け、さっそく海に遊びに行く二人の背中を見送って、ニシノモリ教授がいる場所へと向かう。

呼び鈴を押すと、人のよさそうな男性が顔を出した。

 

 

「おや、どなたかね?」

 

「俺、マサラタウンのサトシっていいます」

 

「ピカ、ピカチュウ」

 

「チョゲップリィィィ」

 

「おや、珍しいポケモンを抱えているね」

 

「トゲピーっていうんです。あの、ニシノモリ教授に聞きたいことがあって―――」

 

「まぁま、ここで話すのもなんだ。あがっていきなさい」

 

「お邪魔しまーす」

 

 

中には本棚にびっしりと本が並んでいた。

前はカスミとタケシも一緒に来たような気がするが、今回は一人だ。

 

 

「ニシノモリ教授は、ここでポケモン図鑑を書いているんですか?」

 

「あぁ。教授と呼ばずに、ニシノモリ五世と呼んでくれたまえ」

 

「五世?」

 

 

聞けば、初代、二世、三世、四世と存在するらしい。

 

 

「それより今の私を悩ませておるのは、あれだよ」

 

 

そう言ってガラス張りの窓から見える海を見下ろしていたので、一緒に覗いてみるとヤドンが見えた。

なんと、ニシノモリ教授もオーキド博士と全く同じことで悩んでいるようだった。

 

 

「ヤドンの尻尾にシェルダーがくっついてヤドランに進化する過程、か………」

 

「これを何としても突き止めて論文にまとめ、学会に発表したいのじゃよ」

 

「学会?」

 

「そう、純然たる学問の園、ポケモン学会にの」

 

 

というわけで、何としてでも理由を知りたいニシノモリ教授は、ヤドンの生態研究の一部として釣りをすることにしたらしい。

釣りか。

俺達もやっても良いのだが、トゲピーが退屈してしまう可能性があるので、今回は見送った。

ピカチュウと一緒にトゲピーと遊んでいると、しばらくしてニシノモリ教授のヤドンがコイキングを釣り上げる。

 

 

「へぇ………こんな風に釣りをするんだな」

 

 

意外とヤドンを見ているだけでも楽しい。

 

 

「よし!そろそろお昼ご飯にするかな!」

 

「お!待ってました!」

 

 

ちょうど良い頃合いに、ニシノモリ教授が昼食をご馳走してくれた。

デッキでお昼ご飯の後の休憩を取りながら、シェルダーは二枚貝なのにヤドンにくっついてヤドランに進化すると巻貝になる、という不思議を聞いていると、パラグライダーでロケット団が現れる。

 

 

「な、何なんだ一体……」

 

「なんだかんだと聞かれたら」

 

「答えてあげるが世の情け」

 

「世界の破壊を防ぐため」

 

「世界の平和を守るため」

 

「愛と真実の悪を貫く」

 

「ラブリーチャーミーな敵役」

 

「ムサシ」

 

「コジロウ」

 

「銀河を駆けるロケット団の二人には」

 

「ホワイトホール白い明日が待ってるぜ」

 

「あニャーんてニャ!」

 

 

いつもの口上を述べ、ニシノモリ教授にロケット団図鑑を作れだの、ニシノモリ教授のポケモンを奪ってやるだの、好き勝手言っている。

 

 

「で、でも私が持っておるのはそこのヤドンだけじゃ」

 

「まぬけポケモンで有名な………」

 

 

ポテポテ、とヤドンがニシノモリ教授の前に歩いてくる。

 

 

「まぬけポケモンだろうと、あほポケモンだろうと、何でも奪うニャァ!」

 

「おっほほほ!しっかり調べはついてるんだ。このシェルダーを使い、ヤドンをヤドランにしてゲットするのさ!」

 

 

いつの間にか、ムサシの手にはシェルダーが入っていると思われるモンスターボールが。

 

 

「そうだニャ!」

 

「何!?逃げろ、ヤドン!!!」

 

 

慌てたようにニシノモリ教授が叫ぶが、おっとりしたヤドンは首を傾げるだけ。

結局ニシノモリ教授がヤドンを抱えて建物を飛び出して砂浜に逃げていく。

それを追い掛けるロケット団。

 

 

「………………進化、しちゃまずい、のか………?」

 

「ピカァ?」

 

「チョゲ?」

 

 

そこが前もわからなかった点だ。

結局あの時は進化してしまったのだったか。

進化が問題ではなく、ロケット団に奪われるのだけが問題でないのか。

人工的にシェルダーが尻尾に噛み付くのでは、研究にはならない、のか?

ならないか、さすがに。

 

 

「とにかく俺達も行こう!」

 

「ピッカ!」

 

「チョゲ!」

 

 

思わず考え込んで見送ってしまっていたため、ロケット団からだいぶ遅れて後を追う。

辿り着いた時には、ヤドンの尻尾にシェルダーが噛み付いた後だった。

 

 

「あ!」

 

「やったニャァ!これでヤドンはヤドランに進化するニャ!」

 

 

ニャースの言葉通り、進化の光を放ってヤドンがヤドランへと進化する。

進化したと同時に四足歩行から二足歩行になり、ニシノモリ教授がおぉ、と感嘆の声を漏らした。

 

 

「そうか!シェルダーはヤドンの尻尾に噛み付いた瞬間二枚貝から巻貝へと変化するのか!大発見じゃ!」

 

「ヤドラン」

 

 

ニシノモリ教授はヤドンが人工的に進化しても喜んでるみたいだし、やっぱり進化させるのを止める必要はなかったようだ。

 

 

「ヤドランをゲットするニャァァァァ!!!」

 

 

襲い掛かってきたロケット団は、ヤドランの技である〝メガトンパンチ〟で吹っ飛ばし、ピカチュウの〝10まんボルト〟で追撃をかけてサクッと「「「やな感じーーーーー」」」にする。

ムサシが所有していたシェルダーがニシノモリ教授が所有しているヤドンの尻尾に噛み付きヤドランに進化したことで、所有権の問題が浮上してくるが、ヤドランの所有権はどうやらニシノモリ教授らしく、ヤドランも言うことを聞いているので問題はないだろう。

 

 

「なるほどなるほど!シェルダーがヤドンの尻尾に噛み付くのは共生の関係なのか!」

 

 

ロケット団を追い払った瞬間から、ニシノモリ教授はまたしてもウハウハでヤドランについて研究を始めている。

 

 

「共生、っていうと………」

 

「共に生きるってこと。お互いにとってメリットがあるのさ。シェルダーに噛み付かれたヤドランは、バランスの関係で二本足で立つ。これによって、手が自由になるから〝メガトンパンチ〟のような技も使える。そして尻尾に噛み付いたシェルダーは、外の世界に行ける。忘れんうちに、メモッとこっと」

 

 

ご機嫌のニシノモリ教授。

俺も貴重な瞬間を見ることができて、非常に満足だ。

ニシノモリ教授とヤドランに別れを告げ、カスミ達がいる浜辺へと向かい、合流する。

カメール達は、海や砂浜で遊んでいたものもいれば走り込みや的当て等軽いトレーニングをしていたものもおり、非常に充実して過ごせたようだ。

 

 

「カスミ、タケシ。俺のポケモン達を見ていてくれて、ありがとな」

 

「お安い御用よ!」

 

「サトシにはオーキド博士のお使いがあったからな。気にするな」

 

 

心優しい友人達に感謝だ。

ビンヌにいられる日数は、まだある。

もうしばらくリフレッシュのためのバカンスといこう!

 

 









スイクン(色違い) Lv.55

エーフィ♀  Lv.57

リザードン♂ Lv.59 -太陽-

ピカチュウ♂ Lv.59

キュウコン♂(色違い) Lv.48

バタフリー♂ Lv.50

ピジョット♂ Lv.50

ニドキング  Lv.51

フシギダネ♂ Lv.50

リザードン♂ Lv.53

カメール♂  Lv.50→54

キングラー♂ Lv.49

ニンフィア♀ Lv.50

ゲンガー♂  Lv.55

バタフリー♀(桃色の色違い) Lv.20→25 -モルガナ-

ゲンガー♂  Lv.54

コノヨザル♂ Lv.57

ブラッキー♂(色違い) Lv.48→49

ウインディ♂(ヒスイの姿) Lv.50

リーフィア♂ Lv.40→42

ベトベトン♂ Lv.47→48

ジバコイル(色違い) Lv.45→46

ケンタロス♂ Lv.36→38

ガルーラ♀  Lv.34→37

ニョロゾ♂  Lv.36→38

ドサイドン♂ Lv.43→45

バサギリ♂(色違い) Lv.34→42

ゾロア♀(色違い) Lv.31→35

ヒンバス♂(色違い) Lv.30→34

ラッキー♀  Lv.32→35

カラカラ♂  Lv.36→38

ポリゴン2  Lv.35→38

カブトプス♂ Lv.43→45

プテラ♂   Lv.60

オムナイト♂ Lv.30→34

トゲピー♀  Lv.19→24

フシギソウ♀ Lv.30→35

ミュウツー  Lv.70

バリヤード♂ Lv.36→38

ハクリュー♀ Lv.45→47 NEW!




とりあえずここまでです。
約一か月間、読んでくださりありがとうございました。

この後の展開や、こうなってあぁなってという大体の構想はできているのですが、如何せん筆が進まず、全く書けていない状態です。
モチベが戻ればまた書き進められるようになると思うのですが、それまではストップです。

それでは、ありがとうございました。

ちょっとアンケート。 長くていいからバトル中区切らないでいるか、長いと読みにくい等あるから区切るか。 読者の意見が知りたいのでお願いします。

  • 翌日の投稿でいいからバトル中に区切る。
  • 長くていいからまとめて。
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