ライアーゲーム二回戦――少数決ゲーム。
二十二人の参加者が巨大なホールに集められ、それぞれが「YES」か「NO」のどちらかへ投票する。勝つのは多数派ではない。少数派だ。
単純でありながら、極めて残酷なゲームだった。
ルールはこれだ。
1. 参加者全員が「YES」または「NO」のどちらかに投票する。
2. 集計後、少数派に投票した参加者が勝者となる。
3. 多数派に投票した参加者は敗者となる。
4. 少数派と多数派の人数差によって賞金や借金の移動が発生する。
5. 他の参加者がどちらに投票するかを予測しながら、自分の投票先を決めなければならない。
例えば10人が参加し、
• YES:7人
• NO:3人
となった場合、NOに投票した3人が勝者になります。
その会場に、杏子の姿があった。
一方、その頃、遊戯は不安を募らせていた。
三日間。
杏子から一切連絡がない。
ただの旅行や用事なら構わない。しかし、彼女は約束を破るような性格ではない。嫌な予感が胸の奥で膨らんでいく。
独自に調査を進めた遊戯は、ついに杏子がライアーゲーム二回戦へ進出したことを突き止めた。
そして会場へ向かった彼が目にしたのは、一人の女性がロビーで泣き崩れている姿だった。
「どうしたんですか?」
遊戯が声をかけると、女性は震える声で事情を語り始めた。
二回戦への参加を辞退するため、運営に支払うべき一億円を持参したこと。
しかし運営スタッフを名乗る男に騙され、その金を奪われてしまったこと。
そして今、自分には借金だけが残ったことを――。
遊戯は黙って話を聞いていた。
やがて女性が涙を拭った頃、彼は静かに言った。
「そのゲーム、俺が代理で出ます。」
女性は驚きの表情を浮かべた。
その金を騙し取った男。
遊戯は仮にその人物を「K」と呼ぶことにした。
だが彼の興味は復讐ではなかった。
ゲームそのものだ。
少数決ゲーム。
二十二人。
その人数に違和感があった。
(なぜ二十二人なんだ……?)
遊戯は考える。
二十四人でも二十人でもない。
二十二人でなければならない理由。
そして一つの結論へ辿り着いた。
(八人チームを三つ作る……)
一人の人物が三つのグループに所属すれば、
七人×三+一人=二十二人。
全てのチームを裏から支配できる。
それこそが、このゲームの理論上の必勝法だった。
だが実行は難しい。
参加者の大半を騙さなければ成立しないからだ。
ならば対策はどうするか。
遊戯は九人チームを結成した。
九人なら誰かが複数のチームに所属していれば必ず違和感を覚える。
その違和感は視線や仕草となって現れる。
そして遊戯は見逃さなかった。
ある男が契約書を確認された瞬間、一瞬だけ眉を動かしたことを。
その反応だけで十分だった。
「……いるな。」
遊戯は確信した。
三つのチームを支配している人物がいる。
やがて各チームの契約書を照合した結果、一人の名前が重複していることが判明する。
その男の名は――海馬瀬人。
気付いた時には参加者は四人まで減っていた。
そして最終局面が始まる。
~本編~
「HAHAHAHA! 遊戯! 貴様の敗北が決定した!」
会場に高笑いが響き渡る。
海馬は絶対の自信を浮かべていた。
「何ッ!?」
「俺の質問はこうだ!」
海馬は高らかに宣言した。
「最強のモンスターカードはブラック・マジシャンではなく、青眼の白龍である!」
司会者がベルを鳴らす。
「最終ラウンド第二回戦、開始です」
その瞬間だった。
海馬は手元の「NO」と書かれた紙を無造作に引き裂いた。
細かな紙片が床へ舞う。
そして残った「YES」の札を高々と掲げた。
「もちろん俺はYESだ!!」
勝利宣言にも似た笑み。
「フハハハハハハハ!! これで貴様らに勝ち目はない!!」
その言葉に城之内が顔色を変えた。
(*城之内と杏子は既に敗北していて外野席で見学)
「つまり遊戯はNOしか選べねぇ……!」
だが次の瞬間。
彼の脳裏に最悪の未来が浮かぶ。
もし他の二人もNOを選べば――。
少数派は海馬一人になる。
「……あっ。」
城之内は頭を抱えた。
「やられた……!」
四人になった時点で、最初に意思表示した者が圧倒的に有利。
YESを公開することで、他者の選択肢を縛る。
海馬はその構造を利用していた。
完璧な心理戦だった。
「遊戯!」
海馬は勝ち誇る。
「俺の方がデュエルでもライアーゲームでも上なんだ!!」
だが。
遊戯は微動だにしなかった。
むしろ呆れたように息を吐く。
「勘違いするなよ、海馬。」
「何ッ!?」
「この時点でお前の負けだ。」
会場が静まり返る。
海馬の眉がわずかに動いた。
「ハッタリを……!」
「断言する。」
遊戯は真っ直ぐ海馬を見据える。
「お前がYESを見せながら投票した瞬間にな。」
「馬鹿を言うな。」
海馬は鼻で笑った。
「俺はYESへ投票した。つまり俺を倒したければNOへ入れるしかない。YESへ入れた時点で勝ちはなくなる。」
そして腕を組む。
「この六時間苦しむのは俺ではない。貴様ら凡人だ。」
遊戯は首を振った。
「違うな。」
静かな声だった。
だが妙な迫力があった。
「このゲームで圧倒的に不利なアドバンテージを抱えているのは海馬、お前だけだ。」
「不利なアドバンテージだと?」
「ああ。」
遊戯は笑う。
「どうやらまだ気付いていないらしいな。」
そのまま投票箱へ歩いていく。
会場中の視線が集まった。
そして遊戯は投票用紙を入れる。
「俺の投票はYESだ。」
ざわめきが起こった。
海馬ですら目を見開く。
しかし遊戯はそのまま椅子へ戻ると、足を組み、クリームソーダのグラスを手に取った。
まるで観客のように。
まるで勝敗など既に決まっているかのように。
「馬鹿な……!」
海馬の額に汗が滲む。
「遊戯!!」
「何を焦っているんだ?」
遊戯はストローを口に運んだ。
「お前は勝ちを確信してるんだろ?」
その余裕が海馬を苛立たせる。
(なんだ……この感覚は……)
優勢なのは自分のはずだった。
理論も戦略も完璧だった。
なのに。
なぜ遊戯は平然としている?
なぜ焦らない?
なぜ勝利を確信している?
その答えだけが見えない。
そして海馬は気付いていなかった。
「いや、遊戯。お前はYESに入れた時点で勝てないことを分かっているのか? それどころか負ける可能性がある。単に俺と自爆するつもりだったのか?」
海馬は腕を組んだまま言い放った。
その声には揺るぎない自信があった。
盤面だけを見れば当然だった。
遊戯は海馬と同じ「YES」に投票した。
少数決ゲームにおいて、それは自ら勝ち筋を狭める行為に等しい。
理論上、自分が優位。
海馬はそう確信していた。
しかし――。
目の前の遊戯は少しも動揺していない。
それどころか、勝利を確信しているようにすら見える。
その事実だけが、海馬の思考に小さな棘を残していた。
「違うさ」
遊戯は静かに答えた。
焦りも苛立ちもない。
まるで結果を知っている人間のような落ち着きだった。
「それにこの試合、どう考えても俺は負けない」
その言葉に会場の空気がわずかにざわつく。
「今、このゲームを支配しているのは俺。俺はお前の必勝法をいくらでも止められる。しかし、お前は俺の意図を読み取っていない」
遊戯は海馬を真っ直ぐ見据えた。
その視線は不思議なほど揺らがない。
「もがき苦しむのは海馬、貴様の方だ!!」
海馬の眉がわずかに動いた。
(……なんなんだ、この感覚は……)
胸の奥に説明できない違和感が生まれる。
(俺が優位だったはずだ……なぜ遊戯はそんな平然としていられるんだ)
何度も頭の中で盤面を確認する。
計算は間違っていない。
論理も破綻していない。
それなのに。
まるで自分だけが見えていない何かがあるような気がした。
一方、城之内も困惑していた。
遊戯がYESへ投票した瞬間、自分には完全な悪手に見えた。
しかし長年の付き合いがある。
武藤遊戯という男は、意味もなく自らを不利にする人間ではない。
何かがある。
だが、それが何なのか分からない。
だからこそ不気味だった。
海馬は違和感を振り払うように鼻で笑った。
「遊戯、お前の投票は悪手だ」
自らに言い聞かせるような響きが混じる。
「いいか。お前の意図は分かった」
海馬は鋭く指を向けた。
「俺への嫌がらせだ。俺と同じ投票にすることで俺だけは勝たせない……」
そこで口元が歪む。
勝利を確信した人間の笑みだった。
「でもな、立場は違うんだ」
「どう立場が違うか説明してみろよ」
遊戯は挑発するように言った。
その余裕が海馬の神経を逆撫でする。
「そもそも俺は負けて借金を背負ってもすぐに返せる」
海馬は胸を張った。
それは事実だった。
彼は海馬コーポレーションの社長。
世界規模の企業を率いる男である。
普通の人間とは背負っているものも、持っている力も違う。
「なぜなら、俺は海馬コーポレーションの社長だ。お前も知っているだろ」
「ああ。当然」
遊戯はあっさり頷いた。
海馬はさらに続ける。
「俺は一日に十億の利益を生み出すことができる」
その言葉には誇張も虚勢もない。
積み上げてきた実績がある。
天才的な経営手腕がある。
そして何より、自分自身への絶対的な信頼があった。
「俺の力があればいくらでも稼ぐことができるんだ。つまり借金なんてすぐに返せる」
海馬は勝ち誇ったように笑った。
「しかし遊戯、お前はそんな稼ぐ力がない。つまり俺は負けたとしてもダメージはほとんどないんだ」
海馬の中では完璧な理屈だった。
このゲームが借金を背負うゲームである以上、返済能力の差はそのまま心理的余裕の差になる。
だから自分は強い。
負けすら恐れる必要がない。
そう思っていた。
だが。
その言葉を聞いた瞬間――遊戯は小さく笑った。
「失言だったな、海馬」
その声は静かだった。
だが妙に確信に満ちている。
海馬の表情が険しくなる。
「なんだと!?」
予想外だった。
自分の理屈のどこに欠陥があるというのか。
海馬には理解できない。
だが遊戯の目は、まるで既に答えを知っている人間の目だった。
「まぁいい。時期に分かる」
遊戯は肩の力を抜いたまま言った。
まるで焦る必要など最初からないと言わんばかりに。
「確かに俺はお金を稼ぐ力はない」
その言葉に海馬は勝ち誇ろうとした。
しかし次の一言で、その笑みは止まる。
「だからこそそれが優位になるし、ゲームでは俺の方が上だ」
遊戯の瞳には迷いがなかった。
海馬は思わず言葉を失う。
自分の知らない勝ち筋を握っている人間だけが持つ確信。
それが遊戯にはあった。
そして海馬は初めて認めざるを得なかった。
盤面の有利不利とは別の場所で、この勝負の主導権が少しずつ自分の手から離れていることを。
タイムアップを告げるブザーが会場に鳴り響いた。
六時間。
参加者たちは互いを牽制し続け、誰も決定打を打てないまま時間だけが過ぎ去っていた。
やがて巨大なスクリーンに投票結果が映し出される。
海馬 YES
遊戯 YES
舞 NO
キース NO
会場がざわつく。
誰も勝者になれない。
完全な引き分けだった。
その瞬間、スクリーンに二つの仮面が映し出される。
ライアーゲーム事務局のディーラー――闇の仮面兄弟だ。
「今回は引き分けだかんな!」
兄の声が響く。
「誰かが勝つまでこのゲームは続くんだぜ!」
弟が楽しそうに続ける。
まるで人の人生を賭けたゲームなど、ただの娯楽だと言わんばかりだった。
会場の空気はさらに重くなる。
しかし次の瞬間。
「このアマ、YESに入れろよ!」
キースが机を叩いた。
舞へ向けられた苛立ち混じりの声。
舞も負けていない。
「あんたの方こそYESに入れなさいよ!」
二人の視線がぶつかる。
お互いに相手へ責任を押し付けていた。
当然だった。
少数決ゲームにおいて、自分だけが損をする選択などしたくない。
一歩譲れば食われる。
ここに残った者たちは全員、その事実を嫌というほど理解していた。
そんな二人を横目に、遊戯は静かに立ち上がる。
周囲の視線が自然と集まった。
この六時間、一度も取り乱さなかった男。
誰もが彼の言葉を待っていた。
遊戯はステージ中央へ歩み出る。
そして静かに宣言した。
「今回も引き分けになる!」
断言だった。
予測ではない。
確信。
海馬の目が細くなる。
(また始まったか……)
そう思いながらも、彼は無視できなかった。
遊戯はポケットから投票用紙を取り出す。
そこには「NO」と書かれていた。
次の瞬間――
ビリッ。
紙が真っ二つに裂ける。
さらに細かく。
何度も。
完全に復元不可能なほどに。
白い紙片が床へ舞った。
会場中の視線がその行動に釘付けになる。
「俺はYESに入れるぜ」
あまりにも自然な口調だった。
まるで昼食のメニューでも決めるかのように。
そして遊戯は席へ戻る。
足を組む。
テーブルに置かれたクリームソーダを手に取り、ストローを口へ運ぶ。
シュワシュワと炭酸が弾ける音だけが静かに響いた。
その余裕が海馬には癪だった。
(なぜだ……)
勝負は自分が支配しているはずだった。
それなのに。
なぜ遊戯は少しも焦らない。
なぜ平然としていられる。
そして闇の仮面兄弟が宣言する。
「最終戦第三ラウンド開始だかんな!」
「泣いても笑ってもこれで決着かもしれないぜ!」
会場の空気が張り詰めた。
その時だった。
遊戯が海馬へ視線を向ける。
「なぁ海馬」
静かな声。
しかし会場中に聞こえる。
「当たり前の結果なんだよ。これは」
海馬は黙って聞いている。
「お前と俺がYESに入れたら、こいつらはNOにしか入れない」
遊戯は舞とキースを指差した。
「この二人の強欲さを信頼して俺はYESに入れた」
舞の眉がぴくりと動く。
キースは舌打ちする。
だが否定はできなかった。
二人とも、自分の利益を最優先する人間だからだ。
海馬は突然笑い始めた。
「ハハハハハハハハハ!」
会場に響き渡る高笑い。
「でも遊戯、お前は勝てない」
その目には自信が戻っていた。
何かを思いついた顔だった。
「そしてそうか。こいつら強欲か」
海馬の口元が吊り上がる。
「だったら俺の勝ちだ」
遊戯は即座に答える。
「断言するぜ」
海馬の表情がわずかに止まった。
「今思いついた方法は、すぐには成立しない」
遊戯は続ける。
「そして成立したとしても、お前自身が撤回することになる」
海馬の目が鋭くなる。
「賭けてもいいぜ」
一瞬だけ沈黙。
そして海馬は鼻で笑った。
「フンッ。分かったような口を」
投票箱へ向かう。
革靴の音が静かに響く。
そして一枚の紙を取り出した。
「NO」
その文字を全員へ見せつける。
「NOだ!」
勝利宣言のようだった。
「俺の勝ちだ……俺の思いついた方法を当ててみろ、ハッタリ遊戯」
海馬は確信していた。
この方法なら勝てる。
誰にも読めない。
そう思っていた。
しかし遊戯は小さく笑った。
「ハッタリかどうか当ててやるよ」
その目は真っ直ぐだった。
「海馬の考えるくらいのことはよ」
海馬の眉が動く。
「言ってみろ」
「金で買収する気だろ」
その瞬間だった。
海馬の心臓がわずかに跳ねた。
「舞とキースを。三人でチームを作る」
図星だった。
海馬の表情は変わらない。
しかし内心では驚愕していた。
(……遊戯の奴め……読まれたか)
完全に。
一字一句違わず。
自分の考えそのものだった。
遊戯は続ける。
「図星のようだな」
余裕すら感じさせる口調。
「それもそのはずさ。俺が誘導したんだからな」
「何?」
海馬が眉をひそめる。
「強欲と言えば結び付けるだろ。このゲーム、買収しなくちゃ勝てないからな」
海馬は舌打ちした。
読まれた以上、隠す意味はない。
だったら正面から押し切る。
そう判断した。
海馬は舞とキースへ向き直る。
「舞、キース……」
低く力強い声。
「お前らに二億ずつやる」
会場がざわついた。
二億。
常識外れの金額だった。
「だから俺を勝たせろ」
舞は髪をかき上げる。
その仕草はいつも通り美しかった。
だが表情は冷たい。
「お断りよ」
即答だった。
海馬が目を見開く。
キースも腕を組んだ。
そしてバンダナを締め直す。
「俺もだ」
こちらも即答。
海馬は絶句した。
理解できなかった。
二億。
それだけの金を提示されたのだ。
断る理由がない。
そう思っていた。
「お前ら馬鹿なのか……」
海馬の声には苛立ちが滲む。
「ノーリスクで二億だぞ」
その言葉に遊戯が笑った。
「馬鹿は海馬の方だぜ」
静かな声だった。
だが確信に満ちている。
「俺は舞とキースにクリボーのカードへ書いたメッセージを渡していた」
海馬の瞳が見開かれる。
「何……?」
遊戯はテーブルへ肘を置いた。
「俺は海馬のこれからの行動」
そしてゆっくりと言う。
「それから、二人にとって本当に得な行動が何かを提示している」
海馬の胸の奥で、不吉な予感が膨らみ始めていた。
それはゲーム開始から何度も感じてきた違和感。
遊戯だけが見ている景色。
遊戯だけが知っている勝ち筋。
そして今、その正体へ一歩近づいてしまった気がした。
アニメライアーゲームを見たので
遊戯王×ライアーゲームってあり?
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かなりあり
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あり
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ふつう
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なし
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かなりなし