紅魔族族長の娘であり、孤高という名のぼっちを不本意ながら貫く彼女の名はゆんゆん。
朝は優等生らしく7時前に起床し、身支度と朝食を手際よく済ませ、余裕を持って学校へ向かう。
そんな彼女の学園生活が始まるのだが、今日はほんの少しだけ、いつもと違う出来事が待っていた。
「おはようございます!って、あれ?」
3組の教室の扉を勢いよく開けて入ると、教室には自分の席と教卓だけがあり、その自分の席の上には見慣れないボタンがぽつんと置かれていた。
「これ、何だろう?恐怖公先生の忘れ物?でも、なんで私の机の上にあるのかな?」
何気なく置かれていたボタンを手に取ったゆんゆんは、しばらく考え込んだ後、ふいにひらめいた。
「はっ!もしかしてコレって、あの槍の勇者って人からのお詫びの品なんじゃ!?あの時、つい豚って呼ばれちゃったから思わず殴っちゃったけど、あの人もあれで反省したんだとしたら、コレはその時のお詫びって可能性があるわ!」
確かに、そう考えればゆんゆんの席に置かれていた理由としては一応説明がつく。
だが、あの男が本当にそんな殊勝な心がけを持てるのだろうか。
もしここにゆんゆん以外の者がいれば手を振って「ないない、それはない!!!」と否定していたことであろう。
だがしかし、悲しいかな。年齢=友達なしのゆんゆんにとって、お詫びの品をもらうのは初めてのことで、嬉しさのあまり舞い上がってしまい、そんなことに気づけないでいる。
「にしても、コレってなんのボタンなんだろう?あっ、ひょっとしてコレを押した瞬間に天井が開いてくす玉とかが落ちてメッセージが飛び出てくるとかのサプライズが!!?」
その考えに行きつくや否や、テンションが最高潮に達したゆんゆんは、迷うことなくボタンを押した。
ピンポーン!
「へ?」
気の抜けるチャイム音が鳴ると同時に、周りの景色がグニャリと歪み始めると、困惑するゆんゆんを飲み込んで世界から掻き消えるのであった。
「──ん?あれ、ここどこ?」
気がつけば薄暗い大量の座席と、巨大なスクリーンがある部屋の真ん中に立っていた。
見渡しても誰もおらず、それどころか部屋の出入り口すら存在していなかった。
いきなりの展開に、何も分からずにオロオロとしていると、部屋に備え付けられているスピーカーから声が発せられた。
「ご入場の皆様、お座り下さい」
「え?え?座ればいいの?」
突然のアナウンスの指示に混乱するまま、ゆんゆんは言われるがままに着席する。
すると、その様子を何処から見ていたのか、ブーと上映を知らせるブザーの音が鳴り響く。
「それではこれより、ナツキ・スバルの人生上映会を開演します」