何時ものように、土を耕していた。
━━━━闇霊「────」に侵入されました!━━━━
鍬を置き、
畑から離れる。踏ませたくない。殺す。
遠くから闇霊が向かって来る……。
人を辞めた、歪な半竜の姿。
悍ましい咆哮とともに、空気が爆ぜた。
赤涙も発動してる。
………たまにいる。
昔、赤涙が発動してる半竜が白霊で来てくれた。なんでか分からないけど、体力を回復しないから、人間性をあげた。
でも、なんでか回復せずに、赤涙をずっと発動させたまま一緒に戦ってくれた……。
…………今でも、よく分からない。
半竜がかなり近付いて来た所で、そこから更に炎の力も取り込んだ。
内なる体力………秘められてる筈の、呪術師カルミナの業。
自傷の赤黒い光は、背負ったサンクトゥスの盾の微光で、僅かに緩んでいるけど……。
触れるだけで、殺せる……でも、私も多分一撃で死んじゃう。
結晶魔法の青を纏わせた、打刀。
その鞘に手が掛かる。
畑との距離が、近い。
神速の居合斬り。
─────閃光が走る
駄目、パリィ出来ない。
刀が肉を断ち、体力の九割以上が一瞬で消し飛んだ。
けど、死ななかった。
斬撃の衝撃が突き抜けるその瞬間、鉄の大剣を虚空に仕舞う。
衝撃波のベクトルを、なんとか相殺。
未だ斬撃を放ったままの、無防備な背中。
──間合いはゼロ。
超重量のスモウハンマーを取り出して、背後から叩き込む。
鎧ごと胴が潰れ、肉と臓腑が前へ押し出される。
潰れた肉塊を撒き散らして、闇霊はソウルの滓となって霧散した。
スモウは、これで人を潰してた。
骨も鎧も、関係ない。
━━━━闇霊「────」が消滅しました━━━━
手に入った人間性を、無造作に手の中で握り潰した。
体力が回復する。
足元の泥に一瞬だけ咲いた、青い薔薇の結晶を踏み砕き、畑へ歩く。
深い足跡。土がひどく抉れてる。
崩れた畝を戻して、踏み潰された草を抜く。
石を退け、灰を払い、葉を持ち上げる。
傷がある。けど折れてはいない。
………畑は壊れても、直せる。
土を均して寄せ、水をやる。
水をやれば、水を吸う。
何も、無い。
私がいても、変わらない。
スモウハンマーを仕舞い、畑の脇で静かに燃える篝火へ向かう。
突き刺さった剣。くすぶる灰。その前に、腰を下ろす。
陽炎の向こうに、別の世界の残像が、うっすら見える。
ロードランは、死んだ世界。時空が歪んでる。
王刃の腰巻きを身に纏い、同じように虚空を見つめる影。
火の粉が舞うのを、じっと見つめる。赤い光が爆ぜて、消えて、また生まれる。
ずっと、そうしてた。
気付いた時には、残像は霧のように歪んで消えてた。
立ち上がる。
今日も、土を耕す。