人間になりたいうた   作:ギークヴォルフ

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第7話

土を掘る。

 

鍬が石に当たる。拾って、退ける。

混じった灰も、同じように退ける。

 

種を埋めて、指で押さえ、水をやる。

 

立ち上がると、灰が今日も降っていた。

 

葉を持ち上げる。虫食いはない。

 

大丈夫。

隣の苗も、大丈夫。

 

水をやると、土が少し沈んだ。

まだ足りない。もう一度やる。今度は十分。

 

しばらく眺める。大丈夫。

 

━━━━他の世界から侵入されました━━━━

 

鍬を置き、鉄の大剣(グレートソード)を取り出す。

 

畑から離れる。踏ませない。殺す。

 

闇霊。

 

人を辞めた、歪な半竜の姿。

 

悍ましい咆哮とともに、空気が爆ぜる。攻撃力上昇。

 

更に炎の力を取り込んでる。内なる体力………秘められてる筈の、呪術師カルミナの業。

 

自傷の赤黒い光が、背負ったサンクトゥスの盾の微光に相殺されながら、赤涙の指輪を発動させてる。

 

相手の体力はほぼ無い。けど…多分一撃で死んじゃう。

 

結晶魔法の青を纏わせた、打刀。

その鞘に手が掛かる。

 

畑との距離が、近い。

 

神速の居合斬り。

 

閃光が走る。

 

速い。

 

駄目、パリィ出来ない。

 

刀が肉を断ち、体力の九割以上が消し飛んだ。

 

ほぼ確殺の威力。

 

けど、極々僅かに、体力が残った。

 

斬撃の衝撃が突き抜けるその瞬間、鉄の大剣を虚空に仕舞う。

 

衝撃波のベクトルを、なんとか相殺できた。

 

未だ斬撃を放ったままの背中。間合いはゼロ。

 

超重量のスモウハンマーを取り出して、背後から叩き込む。

 

背骨が砕け、肉の潰れる重い音。

 

飛び散った肉片と共に、闇霊がソウルの滓となって消えてく。

 

手に入った人間性を、無造作に手の中で握り潰した。

 

体力が回復する。それだけ。

 

足元の泥に一瞬だけ咲いた、青い薔薇の結晶を、靴底で踏み砕き、畑へ歩く。

 

深い足跡。土がひどく抉れてる。

崩れた畝を戻す。踏み潰された草を抜く。

 

石を退け、灰を払い、葉を持ち上げる。

 

傷がある。けど折れてはいない。

 

大丈夫。

 

均して、土を寄せ、指で押さえて、水をやる。

 

スモウハンマーを仕舞い、畑の脇で静かに燃える篝火へ向かう。

 

突き刺さった剣。くすぶる灰。

 

その前に、腰を下ろす。

 

陽炎の向こうに、別の世界の残像が、うっすら見える。

 

ロードランは、死んだ世界。時空が歪んでる。

 

王刃の腰巻きを身に纏い、同じように虚空を見つめる影。

 

火の粉が舞うのを、じっと見つめる。赤い光が爆ぜて、消えて、また生まれる。

 

ずっと、そうしてた。

 

気付いた時には、残像は霧のように歪んで消えてた。

 

立ち上がる。

 

土を掘る。

 

灰が今日も降っていた。

 

侵入者を殺す。畑を均す。篝火に座る。

 

畑を見る。大丈夫。

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