土を掘る。
鍬が石に当たる。拾って、退ける。
混じった灰も、同じように退ける。
種を埋めて、指で押さえ、水をやる。
立ち上がると、灰が今日も降っていた。
葉を持ち上げる。虫食いはない。
大丈夫。
隣の苗も、大丈夫。
水をやると、土が少し沈んだ。
まだ足りない。もう一度やる。今度は十分。
しばらく眺める。大丈夫。
━━━━他の世界から侵入されました━━━━
鍬を置き、
畑から離れる。踏ませない。殺す。
闇霊。
人を辞めた、歪な半竜の姿。
悍ましい咆哮とともに、空気が爆ぜる。攻撃力上昇。
更に炎の力を取り込んでる。内なる体力………秘められてる筈の、呪術師カルミナの業。
自傷の赤黒い光が、背負ったサンクトゥスの盾の微光に相殺されながら、赤涙の指輪を発動させてる。
相手の体力はほぼ無い。けど…多分一撃で死んじゃう。
結晶魔法の青を纏わせた、打刀。
その鞘に手が掛かる。
畑との距離が、近い。
神速の居合斬り。
閃光が走る。
速い。
駄目、パリィ出来ない。
刀が肉を断ち、体力の九割以上が消し飛んだ。
ほぼ確殺の威力。
けど、極々僅かに、体力が残った。
斬撃の衝撃が突き抜けるその瞬間、鉄の大剣を虚空に仕舞う。
衝撃波のベクトルを、なんとか相殺できた。
未だ斬撃を放ったままの背中。間合いはゼロ。
超重量のスモウハンマーを取り出して、背後から叩き込む。
背骨が砕け、肉の潰れる重い音。
飛び散った肉片と共に、闇霊がソウルの滓となって消えてく。
手に入った人間性を、無造作に手の中で握り潰した。
体力が回復する。それだけ。
足元の泥に一瞬だけ咲いた、青い薔薇の結晶を、靴底で踏み砕き、畑へ歩く。
深い足跡。土がひどく抉れてる。
崩れた畝を戻す。踏み潰された草を抜く。
石を退け、灰を払い、葉を持ち上げる。
傷がある。けど折れてはいない。
大丈夫。
均して、土を寄せ、指で押さえて、水をやる。
スモウハンマーを仕舞い、畑の脇で静かに燃える篝火へ向かう。
突き刺さった剣。くすぶる灰。
その前に、腰を下ろす。
陽炎の向こうに、別の世界の残像が、うっすら見える。
ロードランは、死んだ世界。時空が歪んでる。
王刃の腰巻きを身に纏い、同じように虚空を見つめる影。
火の粉が舞うのを、じっと見つめる。赤い光が爆ぜて、消えて、また生まれる。
ずっと、そうしてた。
気付いた時には、残像は霧のように歪んで消えてた。
立ち上がる。
土を掘る。
灰が今日も降っていた。
侵入者を殺す。畑を均す。篝火に座る。
畑を見る。大丈夫。