二色の魔眼と錬鉄の呪術師   作:lambdazero

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呪いを斬る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は……?」

「空折雪。そうだね……この場において、執行者とでも名乗ろうか? 君の苦しみの根源、それを『殺し』に来た」

 顔を上げた虎杖は呆然とする。

 まだ虎杖の生きていることを知るのは五条が殺しの三段がついたとして打ち明けた上層部に、一部の呪術師。

 それだけなのに。

 彼女は五条から聞いてないだろうと自分で言う。

 救済に来た。絶望しているのだろう。

 その顔の、曇りを晴らそう。

「悠仁、突然だけどさ。宿儺、死刑執行で殺すことになったんだ。悪いけど、今は雪に従って」

「俺の……死刑執行が?」

 五条がそう伝えると案の定誤解する。

 宿儺を殺す、つまり虎杖の死を意味する。

「違うよ。『宿儺』を殺すんだ」

 彼が訂正すると混乱する虎杖。

 どういう事だ。大体この子は誰だ?

「私は、所謂ぽっと出の呪術師でね。全てを壊すためにここに居るの。要はいきなり出て来た、野生のポ○モンみたいなもんだよ。ほら、最後の洞窟にいる最強の人工の奴みたいな?」

「呪術師ってそんな野生にいるもんなの!? しかも例えが初代の伝説!」

 急にツッコミが冴える虎杖。

 元気になったというより、事情は知っていると雪は説明する。

「私の眼は特殊でね。遠くに起きた過去も見通せる左目、魂すら見定めて死を見る右目。この二つと私の術式で、宿儺だけを殺すことが出来るんだ」

 暗に彼の直近の任務も知っていると言っておく。

「……何が言いたいんだ?」

「後で手順を言うけど、悠仁君は宿儺を一回解放して。表に出た方が殺しやすい」

 とんでもない事を要求してきた。

 特級呪霊を解放しろ? この呪いの王を?

 巫山戯るなと怒る前に、五条が割り込む。

「大丈夫。雪の加勢に僕も入る。知ってるだろ、悠仁。僕は最強なんだ」

「でも、先生ッ! こんな狭い部屋で、どうやって……!?」

 その反論に、横目で雪を見る五条。

 無論、方法は用意してある。

「私の領域に宿儺を引き込む。そこで殺すだけ。……聞いてるんでしょ、宿儺。黙ってないで出て来たら? お前の今際の時だよ。遺言ぐらいは聞いて上げる」

 平然と言い切る雪に、不意に。

 

「――随分と大きく出たな、小娘。俺を殺すだと?」

 

 虎杖の頬に単眼と口が浮かび上がる。

 呪いの王、宿儺の浮上。

「聞いていれば笑わせる。この程度の呪力量で何ができる? その持っている呪具で俺を斬ったところで、貴様では俺の魂を見切ることなど出来ん。不敬も大概にしておけ、痴れ者」

「……」

 予想通りの反応だった。傲岸不遜な宿儺のことだ。

 これを見せれば、意味も分かろう。

「餓鬼の大口だと思うなら、寝てる間に感覚が鈍ったんじゃ無いの?」

「……何っ?」

 笑うように、雪は言う。

 同時に、空いている手で左右の眼帯を外した。

 縛りの解除。魔眼が、視界の全てを支配する。

「縛りのおかげで、余計なモノの線も点も削れてる。よしよし、上々だな」

 微笑み、オッドアイが虎杖を見る。

 途端に、寒気がする虎杖。

 昏い瑠璃色の右目、螺旋を描く緑の左目。

 彼女に見られた、その瞬間。背筋が凍る感覚がした。

 これは、以前戦った特級呪霊よりも。

 遙かに、静かに命の危険を感じる恐怖。

(……なん、だ?)

 宿儺も違和感を感じた。

 あの蒼い右目、何だ。

 何を見ている? 宿儺の中を土足で入り込んでくる。

 何を捉えている。邪視の類か? ……違う。

(何だ、あの眼は……!? 六眼では無い、もっと根源的なモノを捉えている! 俺を小僧を見透かし見ているのか、直接!)

 不敵に笑い、自覚をして黙る宿儺の逆鱗を口にする。

 転生したから知っている、地雷。確実に激昂する。

 

「――可哀想にね。平安時代には最強無敵だった呪術師が、今じゃ悠仁君の檻に閉じ込められて、現代の呪術師の世界で生かされている首輪付きのペットだって。五条先生を殺すって言ってた癖に、悠仁君の身体も支配できない。ただ、引き篭もって眺めてるだけ。何にも出来ない、ペットと一緒」

 

 刹那、咄嗟に虎杖が左腕で右腕を押さえた。

 伸ばそうとしていた右腕は、雪を殴ろうとしていた。

「うぉっ!? 急に暴れ出すな宿儺!」

「貴様……。今、俺を飼い犬と言ったな……?」

 宿儺の声に、殺意が混じる。

 これ以上無いほどの怒気も。

 ケラケラ笑って雪は続ける。

「あれれ。違った? ほら、昔歴史で会ったよね。何とかの哀れみの法律。動物は可哀想だから殺しちゃいけませんよーって」

「この俺を、畜生と同じだと言いたいのか……!! 貴様、誰に向かって口を聞いている!?」

 身の丈で生きてきたと自称する宿儺の確実な地雷。

 それは全編通して終盤で分かった、自分への憐れみ。

 原作では虎杖が俺がお前を殺せるから中に戻れば見逃して生かしてやるという言動で逆鱗に触れる。

 雪はもっとシンプルに言った。

 可哀想な宿儺。封印されてペットみたいに虎杖の中で大人しくするしか出来ない時代錯誤の呪術師の成れの果て。

 これって飼い主に刃向かえないペットだよね? と。

「悠仁君の中で躾の出来ないペットが何か言ってますね、五条先生。可哀想だと思いません? この子、自分が呪いの王だとまだ思ってるみたいですよ?」

「小娘ぇえええええええッ!!」

 激昂する宿儺が暴れる。

 だが檻の破壊は出来ず、呪力も練れない。

 吠えるだけの負け犬だと言うと更に激怒する宿儺。

 煽りに現代最強の呪術師も加えれば尚良い。

「分かる、分かるよ雪! ほんっと、哀れだよねこいつ! ハハッ、笑っちゃうよね。表に出たってどうせ僕にも雪にも勝てずに尻尾巻いて逃げるだけしかオチのない、昔の老害がなんか言ってる。受けるわー」

「貴様らァッ!!」

 あわあわとする虎杖を無視して哀れんで笑うと、ブチ切れる宿儺。

「そこまで死に急ぐか、餓鬼共ォ!! 小僧、出せ! 今すぐ俺を出せェッ!!」

「あらー? 自分の意思で悠仁君の身体を奪って真っ先に殺すって言ったの、誰だっけ宿儺さん? 自分で出られないのかな? 一々悠仁君の許可が必要な室内犬みたい。可愛いなぁー。これが呪いの王かぁ! 先生、見て下さい! まるで愛玩犬ですよ! 尻尾振って出せって吠えてます!」

「いや、マジで情けない。って言うかこれもうジョークでしょ。僕を殺す前にさぁ、立場を弁えなよ宿儺。犬だってもう少し賢いよ?」

「おのれぇえええええええッ!!」

 煽るとまあ、憐れみと嘲笑をされて沸点を超えた宿儺。

 普段、煽りや妬みや恐怖は宿儺は慣れている。

 嘗て最強無敵だった呪術師は、自分なりに美学があった。

 その中に。生きている人生の時で、宿儺ほどの呪術師を憐れみで見た人間は居なかった。

 可哀想。そう投げかける前に細切りにされていた。

 だが今はどうだ。宿儺は出られない檻の中。

 外から動物園の観客のように閉じ込められる宿儺を見てあんな扱いで可哀想と憐れんでいる人間がいる。

 それが溜まらなく、宿儺には不愉快だった。

「貴様ら、死にたいなら思い通りにしてやるッ!! 小僧ォ、最早縛りなど居らん、今すぐ俺を此処から出せェ!」

「わー。キャンキャンペットが吠えてるー。可愛いー」

 挙げ句に愛玩犬と言われて宿儺の持っているプライドと美学が逆撫でされる。

 畜生の愛玩と言われて怒らない呪術師が居るならそいつは単なるバカだ。

「黙れェッ!! それ以上口を開くァ!」

 虎杖が不格好に動く。

 ブリキのダンスのような変な動作。

 中で宿儺が大暴れしているらしい。

「おうおう、めっちゃくちゃキレてるね宿儺。で、此処からどうするの雪。雪の領域内部で表に出すなら、僕も加勢するよ」

「お願いします。今の宿儺は、まだ答えを得ていません。故に無下限を突破する方法が無いのです。一方的に五条先生の無下限で抑えきれます」

 魔眼で見る、虎杖の身体。

 直死で、肉体の奥底にある宿儺の魂に大きな亀裂が走っているのが見えた。

 此処さえ絶てれば。確実に絶命する。

 ただ奥底を斬るには少しばかり、手間がかかる。

 だから誘う。

「おいで宿儺。私達が遊んであげるよ。嬉しいでしょ?」

「貴様だけは微塵で済むと思うなよ、小娘ェッ!」

 実際表に出れば宿儺の御厨子が襲ってくる。

 だがこの時点での御厨子は奥義の竈の蓋までは開けられまい。

 だってこっちには、恵の十種影法術の状態で漸く拮抗できた無下限を持つ五条がいる。

 そして何より。歪曲の魔眼には、御厨子は通じない。

「さて……じゃあ、始めようか?」

 魔眼を細めて、微笑む雪が。

 狭い部屋で、領域を展開する。

 

「――体は剣で出来ている」

 

 この領域展開は、印を結ばない。

 代わりに長い詠唱を必要とする時間の縛りがある。

 

「――血潮は鉄で、心は硝子」

 

 嘗て、映画で見た遠い世界の錬鉄の魔術師。

 その『答え』に行き着く前、大事な一つのために己を悪でも良いと言った愚かな青年がいた。

 

「――幾たびの戦場を越えて不敗」

 

 これは本来ならば、錬鉄の英雄の力であった。

 だが彼もまた、分岐した世界の錬鉄の一人だった。

 

「――たった一度の敗走もなく」

 

 彼ほど強くはないのが雪だ。

 でも、三人の錬鉄の英雄の中で。

 個人のために己すら否定できる強さを持つあの人は。

 

「――たった一度の勝利もなし」

 

 ある意味、雪の理想に近かった。

 

「――遺子はまた独り、剣の丘で細氷を砕く」

 

 だからこの詠唱に変わったのだろう。

 英霊の正義の味方でもない。

 正義の味方を諦めない青年でもない。

 

「――けれど、この生涯はいまだ果てず」

 

 家族のために己の全てを差し出した、その覚悟を憧れて。

 もしこの命が、五条の為になるのなら。

 雪は自分だって擲つだろう。

 

「――偽りの体は、それでも、剣で出来ていた」

 

 領域展開!

 

「――無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)!」

 

 部屋を越えて包み込む、術式の極致。

 見るが良い。これが空折雪の、無限の剣製。

 無数に剣の突き刺さる、月も、星も見えない吹雪が荒れ狂う闇夜の雪原。

 英霊でも無い、正義の味方でもない、家族のために戦った錬鉄を己に重ねた青年の術式。

「……広いね。それにこの空間。全部、濃密な呪力で溢れている。即座に一工程で武器を複製する領域。雪の名の通り、雪原か」

 五条が広がった白銀の世界を見て呟く。

 無数に刺さった刀剣類から様々な武器。

 全部、呪術師なら知っている類の武具だった。

「悠仁、良いよ。激オコの王様、出しちゃって」

 五条も目隠しを解いて、臨戦態勢に入った。

 虎杖は本当に良いのか迷ったが、怒り狂う宿儺の勢いに、気圧された。

 この頃の虎杖は歯車の覚悟は出来ていないし、兄を名乗る不審者や魂の兄弟とも出会っていない。

 後は、五条への全幅の信頼。

 一度富士山呪霊で見た領域展開を行う雪に、託すことにした。

「分かった……! 死ぬなよ、空折! 先生!」

 呪いの王の、解放。禁忌の方法に、二人は。

 

「大丈夫。五条先生は最強だから」

 

「大丈夫。僕、最強だから」

 

 と、答えた。

 一瞬で、顔に模様が浮かぶ。

 表情は憤怒。激情の状態で降臨する、呪いの王。

 御厨子の即時発動。

 狙いは不気味な双眸の生意気なクソ餓鬼。

 そして、この陳腐な領域を上書きする己の領域を展開する――。

 

『凶れ』

 

 そう、左目を鮮烈に輝かせて雪は告げた。

 途端、彼女に飛来する不可視の解はおろか、宿儺の印を結ぶ両腕が捻じ切れた。

 鮮血をぶちまけて、腕が骨も肉も諸共捻れた。

「何っ……!?」

 何が起きた。宿儺の激情が冷静沈着に戻る。

 怒りよりも知識を越えた超常現象に頭が追いつかない。

 神速の解より速い、不可解な事象。

 反転術式で即座に治癒。が、またいきなり捻じ切る。

 物理方式も、宿儺の高出力の呪力の防御も関係ない。

 ただ、事実として治癒を感知した瞬間には再び捻じ切れる。

 足も突然捻じ切れた。

 雪原を真紅に染めて倒れる宿儺。

 四肢の切断。だるまのようだった。

 超速の反転術式を超える、意味の分からない捻るという攻撃。

(何が起きている!? 呪力は感じない! あのクソ餓鬼の術式はこの陳腐な領域展開だろう! ならばこれは五条悟の無下限か!? だったら何故呪力を俺が感知出来ない!! 呪力を通さず術式は起動しないハズだ!)

 無様に倒れる、その先。見上げる眼前、足音も無く。

 二人の呪術師が近寄って吹雪の中で宿儺を見下ろす。

「あれ……? 宿儺、お前ってこんなに弱かったっけ? 時期的な問題? 指が少ないから?」

 拍子抜けのように、釈魂刀を担いだ雪が呟く。

 五条悟は笑って、七色の六眼で宿儺を見る。

「御厨子を使おうって、何やってんの宿儺。雪の領域展開を潰すために同じ方法使うなら印は必須。これ、常識だよね? でもさ、雪にはそのセオリーが通じないんだよ。六眼でも歪曲の魔眼の攻撃、見えないもん。呪力を通さないで攻撃してる、ただの物理攻撃。……物理攻撃? いや、一般的に言えば超能力か、どっちかってーと」

「呪術的な解釈の出来ないんですか? 驚きました」

 呆気なく、四肢を潰されこのクソ餓鬼がその気なら頭を潰して即時に殺せるという事実に気付く宿儺。

「舐めた真似を……!」

 這いずる自分を客観視して不愉快さが激増する。

 何故こうなる? 此奴は何だ? 歪曲の魔眼?

 千年の中、蓄えた知識でも訳の分からない理屈で半殺しにされた屈辱。

 邪視なら分かる。それも呪術だ。

 だがこの魔眼なるものは呪力を使わない。

 このクソ餓鬼は、何者だ。

「先生、どうします? このままサクッと殺して良いですか?」

「いや、その前に思いっきり手足もげてるんだけど。悠仁に戻ったら反転術式使えないんだよ? 最悪死ぬよ? 無傷って言ったよね?」

「ええ。ですから先生が治癒して下さい」

「僕もそこまで万能じゃないな!?」

 こっちの理解の範疇を超えている二人の呪術師。

 最強の無下限。そして不可解な魔眼という名称。

「下らん。手足をもいで勝ったつもりか? 俺の魂を切り裂くなど」

「えいっ」

 瑠璃色の右目を細めて、釈魂刀を鳩尾に突き刺す雪。

 ……宿儺は、直感で分かった。

 これは、致命傷だ。魂に切り口を入れて、刻む。

 痛恨の、殺傷力。

「がはっ!?」

 喀血する宿儺。

 取り込んだ指が血反吐と共に出て来た。

 引っこ抜く釈魂刀。吹き出す血。

「あ、指出ちゃった。そっちまで斬ってないのに」

 予想外だったのか、雪がぼやいた。

 このクソ餓鬼、魂に何か細工を施した。

 定着した受肉が、魂が、無理矢理虎杖の肉体から剥離して、切断されていく。

「このっ……餓鬼……! 俺に何を……した……!?」

 呪いの王は、終盤こそ本当に絶対的に最強だった。

 逆説的に言うなればそれはあくまで、伏黒恵の十種影法術、そして魔虚羅のおかげで学習できたから。

 五条悟を殺せたからだ。

 つまり、だ。

「悠仁君の肉体じゃ、五条先生に勝てるわけない。術式のない、ただの器だもの」

 お前は鞍替えしなきゃ、ただの凡夫だと原作のように吐き捨てる雪。

 受肉した時代を間違えたただの害獣。

 これが、あの宿儺? 史上最悪の呪術師?

 ……呆気ない。宿儺の状況が原作では如何に有利だったかよく分かる。

 初期の頃は魔虚羅にも勝てないとは言ってたけど、これなら勝てまい。

 歪曲の魔眼すら、避けることも出来ないんじゃ。

 到底、雪には勝てない。

 直死で魂の急所の点を突いて、抉った。

 もう、宿儺は終わりだ。

 目的も無く現世に来た災害には、とっとと往生して貰おう。

「うーん……うーん……!? こう、かな!? アウトプット、これで良いかも!」

「出来たんですか?」

「即興だけど、硝子の真似したから多分オッケー!!」

 本物の天才と言うのは、無茶振りを難なく熟せる五条悟以外には、要らない。

 消えろ、原作の災厄。諸悪の一つ。

 ラスボスの座は、お前の席では無いのだから。

「……忌々しい、クソ餓鬼共が……」

 口だけが回る。視界が、ぼやけてきた宿儺。

 反転術式が、行えない。

 そもそも呪力が、練れない。

「斬られた魂の治癒でもしようって? 無駄だよ。私の直死は、そんな生易しいものじゃない。生きているなら神様だって殺してみせる。そう言わしめた、魔眼だから」

「直死……? 意味の分からん、事を……」

 あぁ、反吐が出る。

 呪詛なら言葉で幾らでも出るのに。

 こんな餓鬼に負けるのか。

 矜持も美学もない、ただの餓鬼に。

「消えろ、呪いの王。お前はこの世界に、必要ない」

「言ってろ……。異分子風情が……。これで、図に乗るな……」

 消えていく。斬られた魂が、行き場を失う。

 待つのは終焉。輪廻すら断ち切る、虚無。

 直死に魅入られた、呪いの王は光栄だろう。

 世界の端末という規格外すら殺す直死の魔眼を、単なる呪術師の身分で受けられたのだから。

「じゃあね、宿儺。もう二度と、復活しないでよ」

「ここで、永遠に、さようなら?」

 皮肉を告げるは最強と未知の怪物。

 薄れ行く意識の中、呪いの王は後悔のように最期に残す。

「羂索めの悪巧みに……乗るべきでは、無かったな……」

 そう遺言を呟き、死に絶えた。

 事実上の、ラスボスの絶命。

 慌てて即興で反転術式アウトプット、フルパワー。

 治療を施す、五条悟と。

「あれ……? 宿儺が、消えた……!?」

 多くの悲劇と責任と罪悪感を背負う主人公。

 虎杖悠仁の救済と。

「おめでとう、悠仁君。貴方はもう、立派な呪術師だ」

 極上の笑みを浮かべるイレギュラー。

 黒幕の計画が根底から破綻した、一夜だった。

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