推奨人数:1人
所要時間:8000年
推奨技能:〈目星〉、〈聞き耳〉、〈戦闘系技能〉or〈交渉系技能〉
非推奨技能:極端に低いSAN値
共通HO:
あなたは月のお姫様だ。しかし味も温度も無い退屈な世界であった月を抜け出しあなたは地上に降り立ち、紆余曲折ありながらも大切な人が出来た。
だがその幸せは長くなく、あなたは月へと帰ることになってしまった
しかしあなたはそんな事で諦めるような人でもない
月での引継ぎを終え地上に降り立った時と同じ宇宙船に乗り込み地球へと目指そうとした所、不慮の事故によって8000年前の地球に降り立ってしまった。そんなあなたの目的はただひとつ『8000年後の未来』で『大切な人たち』と再会することだ
公開NPC情報
名前:クオン
外見:中性的な顔立ち。首までかかる銀髪を後ろで無造作にくくっている。いつもは穏やかな笑みを浮かべている
備考:貴方にとってクオンとは『8000年後の未来』で再開する『大切な人たち』の1人である
今は昔、えーっと…ざっと6550万年前の話
この地球がまだ白亜紀と呼ばれていた頃、宇宙より現れた宇宙人が地球という舞台で争っていた。その理由は様々であるがその結末は一言で言うのならその宇宙人たちは一人残らずこの地球の舞台の上から姿を消した
そう。たったふたりを除いて……
「……と、まあそんなわけで一人地上に残されたのが俺…!悪名高い古のもののエテルよ」
「へぇ~!
現代から遡って約8000年前、遠い未来では日本の東京の内陸と呼ばれる場所で一組の男女が黄昏るように腰を下ろしていた。…空は仰ぎ見るほど透き通って綺麗で、目の前に広がる海は光を反射しながら全く文明とは程遠く水平線まで真っすぐ波打って広がっている
そんな黄昏る二人。
男は面白がるようにゆったりと自分の膝に肘を付いて目の前でわちゃわちゃと話を続ける金髪に顔を向ける。そこには髪色と同じ金眼のその少女は己の事をかぐやと名乗った。そこまではまだ良いと男、いやエデルは薄く微笑みながらその要領を得ぬかぐやの説明を聞いていた
だが、まさかエデルのことをかぐやは確かな口調でこう彼を呼んだ
「クオン?」
「?うん。クオンはクオンだよ」
今までエデルが生きてきた中でかぐやという人間は見たことが無かった
つまりエデルにとってかぐやとは他人だったのだろう、そうこの時まではと人間離れした思考でその答えを導く。エデルとかぐやがこの場所で偶然出会ったきっかけになったかぐやが歌っていた口笛の歌のお陰で偶然彼ら、彼女らは出会ったのだ
とは言え、こうして
隕石と衝突したせいか宇宙船【もと光る竹】も故障し、肉体を出力するエネルギーを失ったかぐやはただ何もできず深い深い水底に沈むほか無かった。精神体であるかぐやにとって生理的な要求は満たされなくても死にはしないが、それ以上に精神と直結している。このまま長い年月、いやもう誰にも会えないという孤独と絶望、そしてそれを染み込ませるように狂気がかぐやを破壊しようとした矢先での出来事だった
「ふぅん。なるほど、なら俺は今からクオンと名乗ろうか」
「え!?そ、そんな簡単に名前を決めちゃっていいの?」
地獄に仏。とは正にこの事を言うのだろうとおよそ130日ぶりの人の温もりと誰かと言葉を交わすというかぐやにとって涙が溢れて止まないこの喜びと止まらない謎。それは何故8000年後の日本で大切な人と共に過ごしていた人がこの今の8000年前の日本にいて、そして別の名前を名乗っていたのか
しかも私がクオンのことをクオンと呼べば直ぐに名乗りを変えるほどの名前に対しての無頓着さ
かぐやにとって名前とは大切な人からもらった最初のプレゼントだ。まさかそんな自分の名前を簡単に変え切ってしまえるほどのカルチャーショックはかぐやの脳内を混乱に混乱を重ねて混乱に落とす。
「ああ。いい、いい。俺たちにとっちゃ名前なんて飾りさ」
アダム、アスク、ジェフティ。ああ、アハスなんて名乗ったこともあったかとまるで嘲る笑みを浮かべながら指折り数えるエデル…クオンも分類上はかぐやと同じ宇宙人だった。とは言えクオンははるか昔、種族単位で宇宙を飛び回る皮膜を失っているからクオンは地球産まれ地球育ちの宇宙人という事になる
「つまり…クオンはかぐやのお兄ちゃん?」
「兄…?ああ、なるほど。そうなるかもしれないな」
かぐやも月から来た宇宙人。そしてかぐやの大切な人の1人に入っているクオンもまさか自分と同じ宇宙人だったとは、と驚きながらも胸が熱くなる感覚がする。それは長らく月でも孤独だった少女を埋めるたった一人会えた死なず老いずの同胞
しかもその同胞が8000年後の未来で出会っている大切な人で、壊れた宇宙船も直せる技術を持っていたなんて一体どれほどの奇跡と確率を超越しているのか。これこそ運命的な出会いなのだとかぐやの脳内は最早フィーバー状態だ。大勝利、勝ったも同然だ
「それじゃあお兄ちゃんに、彩葉の事も紹介してあげないとね!」
「イロハ?…そうだな。我々には多くの時間がある」
─────そうして多くの時間が過ぎた
人間が農作を始めた時代に現れたかつて深い海溝に沈められた旧支配者の落とし子との激戦。その中から力を持った王と呼ばれる存在が築いた墓と偶然繋がってしまった外なる神の化身たる顔の無きスフィンクスとの激闘。かぐやの姿を見て姫と召し上げようとしたことや、旅の最中の食客として夢の国より来る異形の怪物との全面戦争…そして一国の落陽を見届けて8000年
苦も楽も共に過ごしていけば多少なりとも情が湧くものだといつしか髪色が落ちたかぐやの姿を見た
「……ん~?どしたの?」
「いや、何でもない」
自由に動ける肉体があるとはいえカグヤのその精神性は限りなく人間に近い。度重なる神話生物との殺し合いは少なくない傷をかぐやに背負わせてしまったとあの日からずっと距離が近いままのかぐやの髪を撫でる
…神話生物は視認するだけでも精神に毒を与える。特に空の向こうより来る神の存在に近しい存在ほど人間の精神では耐えられない。
だからそう、かぐやは何度も何度も何度も狂気に陥ってはその度にクオンが魔術をかけて正気を取り戻していた。だが、その方法は狂気に落ちたかぐやの精神の一部を衝撃で無理矢理吹き飛ばしているだけ、つまりその分の負担がかぐやから昔の爛漫さを奪ってしまった
もちろんかぐやの正気を削ったのはそれだけではない。
老いず死なずの同胞であるクオンは…その実、真の意味で不老不死ではない。と言うのもかつてかぐやと出会ったあの時より少し前に大規模な敵勢力の侵攻があったためかクオンは自分の肉体を失っている。
「
「あーそっか…じゃあ次のクオンの体を見繕わないと、だ」
そう。あの日かぐやがクオンと出会った日のようにクオンは
この魔術の名前を【精神転移】や【忌まわしき交換】とはかぐやは聞いているが、その中身までは教えてくれなかった。と灰色になったクオンの髪を撫でながら次の肉体はどうしようかとかぐやは考え始めた。5000年前まではクオンのもうひとつの魔術を使って精神を吹き飛ばした死にぞこないの誰かの体を使っていたが最近(ここ3000年ほど)はかぐやの持っていた宇宙船【もと光る竹】の力を使って肉体をプリントアウトしているのだ
使用期限は大体人間の寿命と同じぐらい。もちろん、壊れていない宇宙船と今まで外宇宙の知識とも触れてきた今のかぐやなら自身と同じ完全に死なず老いずの肉体を作ることも難しくないが当のクオンの転移では不完全な転移になってしまうという欠点があった
「かぐやそっくりの体は止めてくれよ?」
「あははー、も、もちろんですとも……」
そのため肉体の見た目をかぐやに一任しているためか時折、かつてのかぐやの金髪金眼の姿の肉体を作られて『はいこれ!次のクオンの身体ね!』と渡されることもあった。…そこはかぐやよりも長く星のメインアカウントに寄生してきたというクオンにとっては人間…だけではなく恐竜や、四足歩行の動物も経験しているから今更性別など別に気にすることなどないが……
「全く、この前のこと覚えているだろう。大変だったんだからな」
「だね。まさかかぐやとクオンを姉妹だと思って娶ろうとする王様がいるとは~…」
色味が激しく似ている、というか人類最高峰の美を誇る肉体であるがゆえにそういう色恋沙汰に巻き込まれることが多かったため今も伝わる各地の傾国の伝説の原因がこの二人だったこともあったりするのは内緒である。
「そういうわけで今回も今のと似た感じにしてくれよ?」
「かしこま!……えーっと…」
だが、気にすることはそこではないと宇宙船を制御しながらかぐやが考えることはただひとつ。
いつしかクオンの内面が豊かになっている事への嬉しさだった。忘れもしない出会ったあの日まだかぐやがかぐやだった頃のクオンの顔は笑っていながらも笑っていない。あくまで表面上で私を真似たものだったとかぐやは知っていた
とは言え、それを責めることは出来ない。
何故なら今までずっと人知れず、かぐやが知るよりももっと前からたった一人でクオンは地球を守ってきたのだ。宇宙の外から、或いは夢の国から現れる言葉にするのも差し支えるような怪物を相手にたった一人で。なんの見返りもなく、誰に知られることもなく
そんなクオンに少しでもいいから笑ってほしいと振り回し続けた今までだったとかぐやは、いいや。
「そうだ、クオン。学校に行ってみない?」
「…………はあ?」
運命の輪廻は回る
───そう、目を逸らし続けた
◇
20XX年、ここ日本ではとある仮想空間が一世を風靡していた
その名前も【ツクヨミ】仮想空間ツクヨミと呼ばれた日本だけでアクセス数が億にも達すると言われるその広大な世界はとある
そんなツクヨミを統治する管理人AIの一柱にして歌って踊れるツクヨミ内のトップライバーこそ、この【月見ヤチヨ】…その正体はもはや言うまでもなくかぐやだが、その名前はもはや私の名前ではないと己の名前をヤチヨと改めて、ここツクヨミを管理する傍らこうしてライバーとして活躍をしているのだった
『やおよろ~!仮想空間「ツクヨミ」管理人の月見ヤチヨで~す』
『帰してほしいんだが…ああ、ごほん。同じく管理人の日依チヨだ』
だがそんなヤチヨのライブにごく稀に現れるもう一人のライバーを知っているだろうか
中性的、或いは無性的な容姿にドラゴンのような翼を持ちその顔の上半分は赤い星が散りばめられた仮面で隠しているもうひとりのツクヨミ支配者AI。その名前を【日寄チヨ】と言った
ツクヨミの表の統括者をヤチヨとするのなら裏の統括者はチヨである事はここツクヨミを少しでも知るのなら常識の話である。基本的にプレイヤーの前には姿を現さぬAIであり、こうしてヤチヨの配信に顔を出すことさえ稀なチヨ…その正体は言うまでもなくクオンである
無数に流れるコメントを眺めながらチヨは長かった今までの事を不意に思い出した
人類の発展速度よりも早くネット空間の進化は昼夜問わず進化してきた。最初は一文字を画面に表示するだけだったのがいつしかこうして意識だけの世界を形成し人と人の垣根は随分と低くなったとクオンはツクヨミを眺める
最初にネットに関心を向けたのも実はヤチヨだった。
時間や空間など基本的に同じ世界線、時間軸にいるのならば距離は無に等しいかつてのクオンにとってこうしてまで誰かと共に同じ空間を維持するために目に特別な機械を介するほどの必要性はなかった。確かにクオンもクオンで今までヤチヨに振り回されて以降らしい姿を模倣することは出来るようになったがその根底はどこまでも古のもののままだった
だがヤチヨの行動が無意味だと簡単に切り捨てられるほどこの8000年は長くはなかった
今だってそう。物理的な肉体を宇宙船へと変換して電脳へと戻っているヤチヨは生き生きとこの手を引いていると、そんな相方の姿を見ながらこのツクヨミの世界に思いを馳せる。
『それで今日は何をするんだ?ヤチヨ』
『そうだね~。じゃあ今日はチヨのお便りタ~イム!みんなドシドシ、チヨに質問してみてね』
ヤチヨに比べて、チヨに帰る場所はない
この長い間に何度もヤチヨが口にしたイロハとやらにもこの長い間に同名らしい存在と交流があってもかぐやの待ち望んだ人ではないと言うことぐらいは分かる。だからこそこのツクヨミという世界がヤチヨの無聊を慰めることになるのなら吝かではなかった
ヤチヨのチヨ質問タイムと同時に流れてくる無数の質問。その多くが神々(ここツクヨミにいる全てのプレイヤーの名称)がチヨに対する興味と好意に値する質問ばかりだった。とは言え、何故裏方に徹すると言ったはずの自分がここまで関心を向けられるのか?…その辺りの理解度はどうやらまだクオンには欠けていたらしい
そんなチヨは裏の統括者として度が過ぎた違反者を「はいクズ確定。ぶっBANします」という役割を担っているためか、チヨと出会うためにはこうして稀にヤチヨに引き摺られてやってくる配信の時かBANされるほどの違反行為を行う他に方法はない。ちなみにチヨ目的でわざと違反行為をしたものはヤチヨに叱られることになる
『おお~!ほら、やっぱりチヨも大人気だよ大人気!』
『そうなのか…?しかしこれほど質問が多いとなると』
『えへへ。でも実はチヨの方が年上なのです!つまりヤッチョのお兄ちゃん!』
ちなみにだがKASSENのNPCにチヨは秘かに実装されている。出現条件は
『そうです!まだ何もなかった頃のツクヨミにヤッチョとチヨが2人で矛を突き立てグルグルと~』
『そうなると…いや、止めよう。嫌な予感がする』
『リ・リ』
楽し気にヤチヨの感情と連動しているメンダコが揺れているのを見て、チヨもその胸に抱えた緑色のデフォルメされたクラゲが楽し気に揺れて声を上げているのが聞こえる。このふたつは二人のモチーフアイテムとして常に身に着けており、ここツクヨミの中でもふじゅ~(ツクヨミ内通貨、電子マネーに変えることも可能)で取引されるぐらいにはファンアイテムである
ちなみにだがメンダコがそのままメンダコだがチヨのクラゲは名称が分からないため、その軟体的な動きとたまに分身ヤチヨが持っているのを見てスラ君と言う愛称が付いている。もっともそれはチヨが持っているクラゲよりも公の場に出ることが少ないからでもある
『それじゃあ質問タイムはここまでここからは……』
『じゃあ私は戻る…うわっ!』
そんな話をしながらもヤチヨが駆けだす。その手にチヨを引っ張って月の輝く舞台の一番上に
ここからがメイン舞台なのだとまるで月まで届けるようにヤチヨが、決して離さぬようにと踊りでる
『みんないっくよー!!』
そう。彼女こそ───お姫様
超かぐや姫おもしろかったです
あまりに世界観がクトゥルフと合ってた気がしたので書いちゃった。後悔はしてない