悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
シミュレータールームの観客席。メリーの機体の頭部が一瞬で撃ち抜かれた瞬間、息をのんでいた自警団員たちの間に激しいどよめきが走った。
「マジかよ……ッ!」
アランドが思わず呟く。
「……あんなの、反応できるわけがないぞ」
動揺を隠せない表情で、レッタもモニターに釘付けになっている。
「あんな装備を隠し持っていたなんて……」
ヘルタが息を飲みながら見つめる画面の先――そこには、融解した大口径ロングライフルを傍らに漂わせ、その手に細身のフォトンライフルを静かに構えるランセスのラデュールの姿があった。
◆◆◆
『ヒット。ふぅ、うまく誘いに乗ってくれたね』
コックピット内で、ランセスがどこか楽しそうに通信へ声を乗せる。
『ですが、せっかくの主砲の方は破壊されてしまいましたね』
ランセスは主砲である大口径ロングライフルをあらかじめ近くに漂わせ、そこからグレイン達を狙撃。
反撃してきたメリーを細身のライフルで撃ち返したのだ。
想定外だったのは、メリーの反撃で主砲を破壊されたこと。
プリシラの指摘に、ランセスは軽快に笑い返した。
『いやぁ、あの僅かな時間でこれだけ正確な狙撃を返してくるなんて、相当いい腕をしてるよ。プリシラ中尉、終わったらあの狙撃手をうちの部隊にスカウトしてくれないか?』
『ふふ、私はスカウトどころか、あちらの方々全員をうちへお迎えしたいと思っていますよ。……さて、行きましょうか』
プリシラが静かに攻勢を促すと、待ち切れないといった様子でアデリナが割り込んできた。
『私はそんな大所帯じゃなくていいですよ~! 一人で全部やっちゃいますからね!』
直後、アデリナの異形のマキナが背部と脚部の大型スラスター群を全開に噴射。膨大な推進力によって、巨体からは想像もつかない異常な初速で加速を開始した。
『じゃあ、手筈通りに』
ランセスはそう呟くと、両肩の大型コンテナをゆっくりと展開。機体から鈍い光を放つ特殊粒子を周囲へ散布し始め、戦場の視界とセンサー情報を撹乱する領域を形成していった。
◆◆◆
『やられた……!』
メインカメラを失い、真っ暗になった視界の中でメリーが悔しそうに唸る。
『メインカメラをやられた状態で戦うのは厳しすぎる。メリー、無念だろうが離脱だ』
グレインの冷静な指示が飛ぶ。
センサーシステムを完全に破壊された以上、この領域の戦闘で生き残ることは不可能だ。しかし――
『ですが……まだ、最後にこれだけは……!』
メリーは悔しさを押し殺し、全弾打ち尽くす覚悟でコンソールのトリガーを押し込んだ。
ブレイカーラインの両肩および脚部に増設された各種ミサイルポッドが一斉に開放され、残存するすべての多目的ミサイルが追尾軌道を描いて解き放たれた。
狙う着弾地点は、先ほど自らの頭部を射抜いた光線が放たれた発射ポイントだ。
『悔しいですが……私はここで引かせていただきます!』
猛烈なミサイル群による着弾の煙幕を残し、メリーの機体はシミュレーター上の戦闘不能判定を受けて離脱、脱落となった。
『早々に3対3の同数か……。少々荷が重かったか?』
イーサンがいつもの口調で、隣のグレインへ通信を入れる。
『ふ、まだやれるさ。……アンタも、腹の中じゃそう思ってるんだろ? ――レタリアもな』
「もちろんですわ! メリーさんの仇も、しっかり叩きのめして取ってみせますわよ!」
アーデンのコックピットで、レタリアが笑みを浮かべて胸を張る。
1機を失いながらも、その戦意は衰える事は無かった。
レタリアの『アーデン』、グレインの『リーズ』、イーサンの『リバスト』の3機は、押し寄せる本国軍の精鋭たちを迎え撃つべく、一斉に前進を開始した。
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