悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
煙幕とノイズを切り裂き前進する、アーデン、リーズ、ルードカスタム・リバストの3機。前方には先ほどメリーが放った全弾掃射の着弾による爆炎と残煙が漂っている。
『……センサーに強いノイズだ。広域チャフかジャミングを撒いたな』
イーサンが呟く。
メインモニターの感度が著しく低下し、正確な敵機座標の補足が困難になっていく。
『来るぞ、各機備えろ!』
グレインの警告が飛んだ――まさにその直後。
煙幕を破り、遥か彼方から凄まじい質量と推進力を伴った「暗灰色の巨体」が突っ込んできた。
「っ! 見えていますわ、そんな直線的な攻撃、当たりませんわよ!」
スラスターを瞬時に噴射させ、アーデンが迫る塊の側方へ回避する。
今度の攻撃は接近する「行動の起こり」をレタリアはしっかりと捉えていた。
凄まじい勢いで3機の中央を通り抜けていった暗灰色の機体――アデリナの重装甲ラデュールは、すれ違いざまに背部コンテナから大量のマイクロミサイルを扇状に放つ。
そして、そのまま弧を描きながらもターンを決め、再び超高速で接近してきた。
『おいおい……無茶苦茶な機動だな。うちのお嬢様と同類かよ』
回避行動を取りながら、グレインが苦笑交じりに通信へ声を乗せる。
「どういう意味ですの!? わたくしの動きはもっと華麗で優雅ですわよ!」
抗議の声を上げながら、レタリアも、そしてイーサンも間一髪でミサイルの群れを回避していく。
旋回し、再び3機の頭上を通り抜けざま、アデリナのラデュールは手にした大型フォトンマシンガンを掃射。空間を無数の光弾が埋め尽くす。
「速いだけではなく、ごてごてした厄介な相手ですわね……わたくしがあれの相手をした方が良いのではなくて?」
マシンガンの光条を最小限の動きで回避しながら、レタリアが提案する。
『いや……奥に控えている狙撃手の方が圧倒的に厄介だ。あいつに遠方から横槍を入れられたら立ち行かん。レタリア、君があの狙撃手を叩け。メリーの仇を打ってこい』
グレインが即座に優先目標を指示した。
「そうですわね、分かりました、引き受けましょう!」
レタリアはまっすぐランセス機のある一帯へと向かった。
『あのデカブツは俺が引き受ける。引き付けて足止めしよう』
イーサンが通信に入る。
『……引き付けると言っても、出来るのかイーサン?』
グレインが尋ねる。これはイーサンの腕前を疑ってのことではない。イーサンの乗るルードカスタムは全般的な性能が向上しているが、あの特殊仕様のラデュールが誇る異常な機動力と推進力に追随できるスペックでは到底なかったからだ。
『ま、やり方次第ってやつだ』
イーサンは静かに言い放つと、同時に肩部にマウントされた大型レールガンの照準を素早く固定し、砲弾を放った。
アデリナの移動先を予測したレールガンの一撃。
超高速で放たれた実体弾が、猛スピードで突進してきたラデュールの胸部曲面装甲を深く抉り、火花を散らせた。
『……分かった、俺はリーダー機(プリシラ)を受け持つ』
グレインは、機体を反転させ、プリシラが接近してくるであろう宙域へとリーズを加速させた。
◆◆◆
『当てられました! でも、まだ大したダメージじゃないですっ!』
装甲を抉られた衝撃を抑え込みながら、アデリナが強気に通信へ声を弾ませる。
『私が到達するまで、決して無理をせず牽制に留めてください』
プリシラが冷静に指示を飛ばしつつ、続けて狙撃手のランセスへ状況を確認する。
『ランセス中尉、そちらの状況はどうですか?』
『散布したチャフのおかげで、向こうからの正確な位置特定は難しくなっているはずなんだが……一機、まっすぐこっちに向かって来てる。とんでもない速度だ。アデリナちゃんの機体にも負けないくらい速いよ』
ランセスはそう答えながら、迫り来る影へ向けて即座に一射を放つ。
――高出力フォトンが空を裂く。だが、影はそれを難なく回避した。
(外した……いや、読まれたか。……アレが噂に聞く『暴走令嬢』のアーデンか)
そして次の瞬間、ランセスのメインモニターに小さく、――アーデンの姿が捉えられた。
紫紺の装甲に走る金のラインが煌いている。
『激しく動き回るのは苦手なんだが……もうプリシラ中尉のカバーが間に合う距離じゃないな。腹をくくってやるしかないか』
ランセスは、両肩の重厚な大型コンテナをパージ。巨体を絞り込んで機動性を確保すると、手にした細身のフォトンライフルをまっすぐに構え直した。
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