悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
『しつこいですねっ!』
アデリナの高速重装型ラデュールが放つ大型フォトンマシンガンの連射を、イーサンのルードカスタム・リバストがシールドで難なく受け流す。
自慢の超高速を利用して奥に潜むグレインのリーズへ肉薄しようと仕掛けるアデリナだったが、その移動先を完全に読んだかのように、絶妙なタイミングでイーサンからの置き砲撃が飛んでくるのだ。
すでに4回の被弾。極厚の特殊装甲ゆえに大したダメージにはなっていないものの、本来であれば「超高速で翻弄し、弾など一発も当たらない」はずのコンセプト機に乗るアデリナにとって、この鬱陶しいまでの正確さは驚き以外の何ものでもなかった。
――直後。
アデリナのコックピット内の味方データリンクから、ランセス機のシグナルが唐突に途絶えた。
『えっ……!? ランセスさんが……やられた!?』
頼もしい先輩が落とされたという動揺。アデリナが見せたほんの一瞬の隙を、イーサンという男が見逃すはずがなかった。
『そこだっ』
リバストが構えるのは、試作フォトンライフル『アルシアン』。
シミュレーター上の性能としてはリーズと同じくややデチューンされているものの、元が最新鋭の試作器である以上、十分すぎる出力と精度を誇る。
アルシアンから放たれたチャージバーストショットが、アデリナ機の右側面装甲を的確に捉えた。
爆炎とともに側面装甲が派手に爆散し、内部に埋め込まれていたミサイルポッドへ誘爆が広がる。
だが、それだけの衝撃を受けながらも分厚い積層装甲を完全に剥がし切るまでには至らず、機体全体のスペックに大きな低下は見られない。
『汎用機のルードでここまでやるなんて……一体何者なんですか、あなた……!?』
アデリナはその異次元の速度を再び解き放ち、リバストの死角となる側面へと一気に回り込む。そのまま機体前方にフォトンカッターの光刃を展開し、質量を生かした超高速の体当たりを敢行した。
『しがない一自警団員ですよ、軍曹』
イーサンは余裕ありげに答えながら、即座に抜刀した二刀のフォトンセイバーをクロスさせ、正面から突進をガードする。
機体本来の出力の差があまりにも大きすぎるため、正面からの力押しをそのまま受け切ることは不可能だ。イーサンは瞬時にフォトンセイバーの角度を傾け、死角へ向けて衝撃とエネルギーを「受け流し」、横方向へ紙一重で回避した。
火花が散るすれ違いざま――リバストは手にしたアルシアンを、アデリナ機は内蔵された2門のビームキャノンを同時に撃ち出す。
アデリナの一撃は、相手の回避機動を完全に読んだ上での広域クロス射撃だった。
――しかし、イーサンは「あえて動かない」という度胸の据わった選択により、2本の光条のちょうど真ん中に静止して難なく回避。
そしてリバストの放ったアルシアンの一撃は、アデリナ機のフォトンカッター発生器を狙い通り正確に撃砕した。
『こんな化け物みたいな方が、地方の自警団に隠れているなんて思えません……っ!』
アデリナが悔しそうに歯噛みする。
――次の瞬間。
アデリナのラデュール全体から、眩いばかりのフォトン粒子が放出され始めた。
ただならぬエネルギーの昂ぶりに、イーサンも迂闊に間合いを詰めず、慎重に距離を取って様子を伺う。
『……これ、本当はシミュレーターでも使うの初めてなんです。えーっと……イーサン副団長さんですね。覚悟してくださいっ!』
装甲のロックが次々と外れ、重厚な外部装甲が一枚、また一枚とパージされて宇宙空間へと舞っていく。
爆煙と光粒子の向こうから姿を現したのは――パージした装甲の一部を武装として瞬時に再構成・再装着した、本来の姿である『アデリナ専用ラデュール』の洗練されたシルエットだった。
『変形、合体はロマンだ、羨ましいものだね』
イーサンはアルシアンとシールドを構えなおした。
◆
装甲をパージした本体はスマートなシルエットでありながら、再構成された追加装備を装着すると、どこか歪で凶悪なフォルムを描き出していた。アデリナ機の「第二形態」とも言うべきその真の姿。
イーサンのセンサーが捉えた敵機出力の数値は、ルードの倍近くあった。
『ミサイルは潰されましたが、これはまだ生きています!』
アデリナの声とともに、パージした装甲から手の甲へ装着されたフォトンビームキャノンが火を噴く。空間を薙ぎ払うような極太の光条。
『っ!』
イーサンはアルシアンで応戦の射撃を放ちつつ回避行動をとるが、そこを先読みしたように長い光条が追撃してくる。
『仕方ないっ』
逃げ切れぬと悟ったイーサンはリバストの姿勢を変え、足を光線に触れさせる形にして無理やり包囲を突破した。
右足の先を失う損傷判定を受けながらも回避に成功。そして、同時に放っていたアルシアンの弾丸がアデリナ機のビームキャノンに着弾し、見事に破壊した。
『まだですっ! これでもラデュールを任せられているんですから!』
そう言ってアデリナ機はリバストへと突撃してくる。
破壊されたビームキャノンを持っていた腕には、いつの間にか大型のフォトンセイバーが展開されていた。
――だが、本命は別だった。
突進の影に隠すように腰部に設置されたグレネードランチャーが、リバストへ肉薄する。
『軍曹、その機体は素晴らしいですが』
イーサンは冷静に機体肩部のレールガンを起動。火を噴いた実体弾が、空中へ躍り出たグレネードランチャーを的確に貫いた。
『急ごしらえの戦い方では「慣れ」が足りなかったようですな』
そう言って間髪入れずにチャージしたアルシアンを放つ。
ラデュールの大型フォトンセイバーに巨大なフォトン弾が直撃し、激しいエネルギー反動がラデュールを襲った。
『うわっ!』
姿勢を崩したその時、既にリバストはラデュールへと肉薄していた。
『隙ありです、軍曹』
リバストは実体ブレードをラデュールへと深く差し込んだ。
アルシアンによる連続的な射撃のエネルギー消費により、リバストのジェネレーターは限界を迎えており、フォトンセイバーを展開出来ない状態だったが故の選択である。
ゆえに、一撃で中枢を焼き切るには至らず――『アデリナ機はまだ動くことが出来た』。
『まだ、やれますよ!』
実体刃を差し込まれた状態のまま、アデリナ機は残された出力を上げ、巨大なフォトンセイバーをリバストの胸部へと力任せに突き出した。
『……ふぅ、機体の頑強さとスペックだけはどうにもならんな』
イーサンの苦笑混じりの言葉と同時に、双方の機体が限界を超えた爆発に呑まれ、同時に撃破判定、沈黙したのだった。
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