悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
静寂の宇宙空間の中、グレインの『リーズ』の前に、プリシラの乗る『ラデュール』が姿を現した。
黒と白を基調とした洗練されたリーズと、鮮やかな青と純白が映える美麗なラデュールが、デブリの合間で静かに対峙する。
『プリシラさん、お手柔らかにお願いしますよ』
通信越しにそう告げると同時に、グレインはアルシアンのバースト射撃を放った。
ほぼ同刻、プリシラのラデュールからも右手に構えたフォトンライフルから高出力のフォトンレーザーが閃光となって撃ち出される。
『こちらこそ、宜しくお願い致します、グレインさん』
プリシラは凛とした声で応じながら、迫り来るアルシアンのバーストショットを優雅かつ無駄のない機動で回避していく。1射、2射、3射――そのすべてを読み切ったかのようなラインでかわしてみせる。
グレインもまた、バレルロールを繰り出し、フォトンレーザーをすり抜けた。
プリシラ機は一度距離を取りつつ、牽制として左腕の小型フォトンビームガンを連射する。
グレインはそれを余裕を持って回避しながら、冷静に思考を巡らせていた。
(背部の大型スラスターから見ても、プリシラ機は高機動型。リーズも機動力と追従性を重視した機体だ。戦術タイプとしてはよく似ているが……)
そう分析を進めていたその瞬間、グレインとプリシラの双方のデータリンク上で、ランセス機、アデリナ機、そしてイーサン機の機体反応が消滅した。
『……まさか、ランセス中尉とアデリナ軍曹が二人とも墜とされるとは。完全に想定外でした』
プリシラが小さく感嘆の溜め息を漏らし、即座に機体背部のコンテナから上方へと向けて複数枚の多目的ミサイルを撃ち出した。
『なかなかやるでしょう、うちの者たちも、レタリア嬢も』
グレインはふっと笑うと、撃ち出されたミサイルが展開する前に迎撃しようと照準を向けかけた。――しかし、そうはさせじとプリシラのフォトンライフルが火を噴く。
初速と貫通力に優れる特注仕様のフォトンライフル。よそ見をしながら難なく回避できるほど生易しい一撃ではない。
グレインはミサイルへの追撃を即座に諦め、同様にアルシアンを構え直して正面から応戦する。
あらかじめアルシアンのエネルギーチャージを並行して進め、バースト射撃を連続して放ってからの、極大チャージショット。
プリシラ機は繰り出されたバーストショットを華麗に回避していくが、その回避運動の誘導先には巨大なデブリが立ち塞がっていた。機動を制限されたその瞬間、間髪入れずに極大のチャージショットが直撃コースで迫る。
プリシラは瞬時に左腕を前に突き出した。左腕に装着されたビームキャノンユニットが眩く発光する。
高エネルギーのフォトン同士が正面から衝突し、空間に爆発的なフォトンの粒子が散る。
だが、激しい衝撃とともにプリシラ機の左腕兵装が木っ端微塵に破砕され、宇宙空間へと散っていった。
『とても高出力なライフルですね……!』
プリシラ機の左腕に備えられていたのは、フォトンビームキャノンと局所用フォトンシールドを兼ね備えた複合兵装だった。しかし、アルシアンが放った極大のチャージビームは、その高出力シールドすら強引に穿ち抜いたのだ。
プリシラは迷わず壊れた複合兵装をパージし、機体を軽量化させる。
『なるほど……フォトンシールドまで内臓していたとは……』
グレインが感心したように呟く。
フォトンシールドは展開を維持するには莫大なジェネレーター出力を消費するため、実戦で運用するには今のように着弾の瞬間だけを展開する極めて高度な技術が求められる。実体シールド以上の絶対的な防御力を誇る反面、使い勝手とエネルギー効率においては大きく劣るリスクのある装備だ。
『ですが……防ぎきれませんでした。参りますッ!』
プリシラ機の背部スラスターが蒼いエネルギーを全開に噴き出す。凄まじい加速度でリーズの側面へと回り込むように急速接近してきた。
迎撃のため、グレインはアルシアンの砲身を向け撃ち出すが、プリシラ機は推力を変幻自在に調整し、加速度を不規則に変化させてくる。グレインの先読みすら外す変則機動。
超加速でリーズの懐へと肉薄したプリシラ機。その右手に握られたライフルの砲身から、一瞬で純白の光刃が伸長される。
合わせてに抜刀したリーズのフォトンセイバーと、プリシラ機の銃剣式フォトンセイバーの刃が正面から激突し、激しい火花とエネルギー粒子を撒き散らした。
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