シスターフッドの大型犬ちゃん   作:ZK

8 / 9

また迷走していたので初投稿です。


8.旧友

 

先生と補習授業部、ハスミ先輩の共闘を見た翌日。

 

 

 

 

「た、助けてくれぇ…」

「ヘッドホンを外してくれるだけで良いからぁ…」

 

コンビニの近くの電柱に、耳はヘッドホンを付けた状態で縛り付けられている二人の不良を見かけた。

私はこのやり口に見覚え…正確には誰がやったのか知っている。私のよく知る人物だ。

 

私の古巣で一番親しかった元同僚。そしてあの私を最も近くで見た元同僚。そんな彼女は縛られた二人の前に立って、二人に彼女独自のお仕置き(?)をしている。

 

「あ、そこのシスター!た、助けてくれ…!」

 

2人のうちの片方が私に気付いて、助けを求めてきた。それを見てか、スズミもこちらを見て目が合った。

 

ピンと耳と尾が立った。

お互いを認識した一瞬の沈黙。

 

「あ、シオンさん…。」

 

「えっと、シャーレぶり…ですかね…。」

あちらが私を憎んでいないだろうことはわかっていたが、やっぱり怖い。

尾を私の脚に無意識に巻き付ける。スズミの出方を伺おうとするが、それは相手も同じだった。

 

「「…?」」

 

不良の2人が、私たちの間の妙な沈黙に首をかしげているのが見えたので、これ幸いと、話を振る。

 

「…えと、その2人は何を?」

 

「この2人ですか?…先ほど、コンビニ強盗を働こうとしていたので制圧しました。ただ…。」

 

「???」

 

「少し気になることを言っていて…。

 『見たことない奴らに住処を奪われた』と。」

 

「お?少し気になりますね。」

見たことない奴ら、それが彼女らの住処を奪ったと。少し興味が湧いた。

 

「そ、そうなんだよ!ガスマスクを着けた気味の悪い奴らに襲われて…!」

 

「妙に手際が良くて、あっという間に仲間もやられて…。」

 

「正義実現委員会ではなく?」

 

「あたしらだってちょっと黒いバイトとかやってたけど…他は大人しくしてたんだ!それに正義実現委員会はガスマスクなんて着けないだろ!?」

 

「…まぁ、そうですね。」

正義実現委員会による不良集団やヘルメット団アジトの摘発は最近低調になっている。

エデン条約を控えた今、防衛と警備のためにだいぶ人員を回したために、大人しくしている輩はそのまま放っておいている。

 

「他の敵対している集団では?」

 

「…こういうのもあれだけどさ、あたしら含めて、周りの奴らにあんな連携まで出来ない。下手したら正義実現委員会よりヤバいんじゃないか?」

「それに装備も整ってたんだ!多分サプレッサーまで用意してる!」

 

ふむ…少し気になりますね。

 

「…スズミさん、この2人を私にくれませんか?ちょっと気になるのでお(・)話(・)をしたいのですが。」

 

「ひ、ひぃ!?」

「へ、ヘッドホン外さなくていいです!ここで反省しますから!だから拷問は…!」

 

突然恐慌し始めた不良2人。本当にお(・)話(・)するだけなんですけれど!?なんか怖そうな顔してましたか!?

 

「あのですね、シスターフッドは今はそんな組織では…」「今は(・)!?」

 

落ち着かせようとしてもうまく行かない。

 

「だから、さっきのお話を聞きたいだけですから!拷問なんてしませんから!」

「助けてくれ!音楽は聞くから!!」

 

そうして言い合いをしていると、コンビニから出てくる人がそのやり取りに困惑しながら歩いていくのが目に入った。

 

「…ひとまず、ここはコンビニの迷惑になりますから、場所を移しましょう。」

 

あ、そうですね。それにここで2人に騒がれるとシスターフッドにあらぬ噂がふりまかれてしまいますし。

とりあえず縄をほどいて、逃がさないように2人の襟を捕まえる。

 

「ひ、ひぇぇ…」

「おぁぁ…。」

 

2人はすっかり借りた猫のように静かになった。そんな2人を引っ張っていきながら、スズミと並んで歩く。

 

 

「「…。」」

 

足音がやけに大きく聞こえる。居心地が悪そうに耳が伏せて、尾は足の間に逃げ込んでいる。あちらも、ちょくちょくこちらを見て様子を見ているように見える。

 

こうしていると、なんだか前の場所でのことを思い出す。そういえば、彼女と知り合ってすぐの時も、こんな感じだったような。

 

 

私と彼女の出会いは、まぁ端から見れば大して変わったものでもない。

ライフル当たる距離まで近付いたわりに苦戦していた私を、彼女が助けてくれた。

 

それがきっかけか、私たちは少し一緒にいることが多くなっていた。

最初はお互いあまり話が膨らまなかったが、段々と連携を取るようになって、時に鍛えられ、一緒に巡回に出るようになって…あの時も2人だった。

 

 

 

「シオンさん…その、シスターフッドは、どうですか…?」

今回は先に口火を切ったのはスズミだった。こういうときに先に切り出すのは珍しい彼女の声は、その声音からこちらを伺う様子が感じ取れた。

 

「えぇ、私なんかを拾ってくれて、良くしてもらっています。」

 

あの時私に声をかけて、赤の他人の私の話を聞いてくれて。そして私のような者を近くに置いて居場所をくださるサクラコ様の姿が浮かぶ。

そして、部外者であった私を助けてくれるマリー、ヒナタさん。そして多くのシスターの方々。あの人たちのおかげで、今私はこうしてまだトリニティにいる。

 

「…あ、でも、決して前が悪かったとかそういうのではなくて…。」

つい、予防線を張ってしまう。実際、あの件を起こすまで、私はあそこに自身の居場所を持って、居心地よく過ごしていたし、別に居場所を失ったわけでは無かったのだ。

 

ハスミ先輩も、スズミも、私の居場所を残してくれていた。それなのに去った罪悪感が私の中にまだ残っている。

 

 

「…ふふっ。」そんな声が聞こえたような気がして、スズミを見る。

 

「…スズミさん?」

「すみません。シオンさんも変わらないようですね。…少し安心しました。」

 

「え?」

 

そう聞き返そうとすると、スズミが前を指さす。

 

「ここにしましょう、私がたまにパトロール中の休憩に使う場所です。」

 

そうして、スズミは私…と引いて来た不良2人を連れてカフェに入った。

 

 

 

***

 

「…どこの奴らか、検討もつかないですね…。」

 

「ここらの不良でも無いようですし、なら一体誰が…?」

 

結局、2人に改めて話を聞いてみたが、ここら辺の不良集団とは思えない、謎の勢力ということしかわからなかった。

 

「…ティーパーティーの工作。」

「いえ、いくらティーパーティーでも、彼女らを襲う理由が思いつきません。」

 

私にスズミが答えると、今度は彼女が問う。

 

「ゲヘナによる工作でしょうか。」

「いや、彼女らならばもっと派手にやるでしょう。」

 

この前の美食研究会を思い浮かべながら答える。

 

「ブラックマーケット勢力の進出。」

「トリニティにですか?他にもっと狙える場所があると思いますが…。」

 

そんな議論を交えたが、結局めぼしい相手は思い浮かばなかったので、紅茶を飲んで(不良2人の分は私とスズミで折半)してお開きとなった。

 

 

「この2人は私から正義実現委員会に引き渡しておきます。」

 

「私の方でも、少し調べてみようと思います。」

 

シスターフッドに連れて行かれないというのを知ってか安堵の息をもらす2人に思うことはありますが、今もなお自警団として正義を貫く立場をとるスズミに、私は素直に感心している。

 

「…いつか私もこんなことをしなくてもよくなれば良いのですが。」

 

「きっとそうなりますよ。スズミさんの意志は本当ですから。」

そう言ってみるが、スズミの腰に下がっている閃光弾が私の視線を吸い寄せる。彼女が、誰も傷つけないように持ち歩くトレードマーク。

 

「私とは違って、スズミさんならきっとやり通せますよ。」

 

なんだか、スズミが眩しいように思えて、あまり顔を見られない。

もしかすると、いやきっと、彼女が辞めたのも私のせいなのでは…「シオンさん?」

 

おっと、ひどい顔してたかな…。

 

「…シオンさんも、きっとやり通せます。…あの時も、誰かを守りたいという意志は、本当でしたから。」

 

彼女は、そう言ってくれた。

 

「私はそんな大層なものじゃ…いえ、ありがとう、ございます。」

 

あまり謙遜しすぎるのもかえって良くない、とサクラコ様に言われたことを思い出して…いや、好意に甘えた。スズミの優しさにつけ込んでいるのだ。

 

 

「お互い、守りたいものを守れるように頑張りましょう。…それでは。」

 

「はい。スズミさんに平穏があらんことを。」

 

そうして、お互いに少しはにかみながらもその場を解散した。

 

 

 

 

 

シオンの強さ(目安)

  • 最強クラス(上澄み)
  • 強い(準最強)
  • 中の上(ネームドの中では強め)
  • 中(ネームド内で平均的)
  • 中の下(モブ程度なら苦戦しない)
  • さらに下
  • 傍観席
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。