「ラーフラ」
呼びかけると相棒は若草色の翼をあげ応えてくれる。
「いい肉が手に入ったんだ。柔らかいとこをさ、こっそり持ってきたんだぜ。俺も昼飯持ってきたから一緒に食べよう」
ラーフラは甘えるように顔を擦り付け喉を鳴らす。
バケツに入った生肉を差し出すと嬉しそうに咥えた。
俺も彼女の翼の下に入り腹を枕にして座り込み、持参したサンドイッチをパクつきながら脈絡のない話をダラダラしていた。
と、竜舎が騒がしくなる。王子様のお出ましだ。
「ジェイスさん、お疲れ様です」
立ち上がって敬礼をする。
彼は懲罰勇者だが竜騎兵にとっては関係ない。彼以上の戦士はいないのだから敬意の対象だ。
「お、ラーフラ、旨そうなもの食べてるな。差し入れか?よかったな」
ジェイスさんは俺を一瞥しただけでラーフラに話しかける。これもいつも通りだ。一瞥されただけマシ
ラーフラも嬉しそうにし、彼に擦り寄ろうとするが奥から甲高い鳴き声が響き慌てて首を引っ込める
「ラーフラ、ダメだよニーリィさんがいるんだから」
ジェイスさんはよく竜と話している。きっと言葉がわかるのだろう。こういうのは理屈ではない。
竜達には知性がある。飽くまで発声の問題で俺達とは会話にならないだけだ。俺に彼女達の声が聞こえないのは残念だが、せめて俺の事を知って欲しいから俺は必死に話しかける。
でも王子様が来ると俺のことはそっちのけだ。少し寂しい
「おいお前」
竜舎を出ようとするとジェイスさんに呼び止められた。
「今日の肉、赤身だったな。なんでだ」
「……えっと、この前脂身持ってったらなんかあんまり喜んでなかったから……?」
「そうか」
ジェイスさんはそのまま行こうとしたがニーリィさんに呼び止められ足を止めた。
「ん?ああ、わかったよニーリィ、ちゃんと伝えるよ」
俺に対しては打って変わって眼光が鋭い。
思わず背筋を伸ばす。
「ラーフラが礼を言ってたぞ、美味しかったらしい。ラーフラは最近少し太り気味なの気にしていて、最近は赤身肉の方が好きなんだ。お前が気づいたから喜んでたよ」
え!ラーフラそんな理由で脂身避けてたの!?
「あと『最近重くなってきたから少し痩せて欲しい』だとよ。ラーフラの翼の下許されたからって調子乗んなよ。あそこはあの子達にとっては特別な場所なんだ。お前いつも潜りこんでダラダラしやがって。ラーフラが許してる意味をもっとちゃんと考えろ」
ジェイスさんが人間相手にこんなに話してくれる事は初めてで驚くばかりで突っ立ってることしかできない
「おい!」
「っす!了解ですジェイスさん!ありがとうございます!俺ら、ジェイスさんとニーリィさんには遠く及びませんが2人で頑張るんでこれからもよろしくお願いします!」
「…おう」
ジェイスさんの肩越しに竜舎を覗き込むと相棒と目があった。
手をブンブン振ると笑ってくれたような気がする。
とりあえず明日は早起きして走り込みをしよう。
俺はジェイスさんには遠く及ばないが、頑張るぜ相棒。