僕のヒーローアカデミア A Little Extra 作:ジョン堂
※9月は更新をお休みさせていただきたく。
再開は10月1日を予定。
何卒、ご容赦いただきたい。
「よっ、ほっ」
よし、柔軟体操終わり。
空は多少の雲はあるが快晴、夏らしく暑くなりそうだ。
俺が今いるのは雄英のプール──今日はここでA組水泳大会を開催する。
事の始まりは、やはり木椰区ショッピングモールでの死柄木弔とのエンカウント……。
あの件が発端となり、林間合宿に向けた買い物は中止になるわ、合宿自体一時延期になるわ、安全の為夏休み中長期外出が出来なくなるわ、散々な事になっている……。
この鬱屈とした空気を払拭する為、俺は相澤先生に交渉して、夏休み初日の今日──学校のプールを1日貸し切ったのだ。
相澤先生も俺達を取り巻く現状に思うところがあったのか、『体力強化を兼ねたレクリエーション』でのプール使用を許可してくれた。
という訳で速攻、クラス全員にプールの件を告知──ほぼ全員が参加を表明してきたので、俺は朝一でプールに来て、クーラーボックスに飲み物やお菓子・軽食類をたんまり用意して、準備を整えた。
後は皆が来るのを待つばかり──先にひと泳ぎするかと、準備体操をしていたという訳だ。
「よし!フライングで悪いが、暑いし、泳ぐぞ!」
飛び込み台の上に立ち、前屈の様に手を足下につく。
「っ!」
水に飛び込むと、その冷たさが気持ち良い!
そのままクロール、腕と足で水の中を進む。
全身運動が体に良い負荷を掛けてくれる。
サバッ
端までついたところで壁を蹴ってキックターン──今度はバタフライだ。
鍛えたこの体、【オーラ】も併用すればきっとシャチやマグロとも並走できる!
ザバァァァン!
「プハァ!ふぅ〜」
勢いをそのままにジャンプでプールサイドに着地。
泳ぐってのは気持ち良いもんだ。
「お?」
この気は──
「おお!おはよう!気賀くん!」
「おう。おはよう、飯田」
1番乗り(俺は主催者)は、プールキャップとゴーグルをかけ、肩にクーラーボックスとタオルを下げた完全装備の飯田だ。
「俺も早く来たつもりだったが、流石だな!」
「まあ、俺は一応主催者だからな」
委員長でもあるし。
それを言ったら、この世界では委員長じゃないのに、誰よりも先に来ようとする飯田の方が流石だ。
「あっ、飯田くん!気賀くん!おはよう!」
お、緑谷もきた。
「緑谷くん!おはよう!」
「おはようさん、緑谷。早いな」
「うん!学校なら【個性】が使えるし、訓練にもってこいだからね!流石気賀くん!ナイスアイデアだよ!」
「はは、まあな」
実際その通りだが、目的の半分以上はレクリエーションのつもりだ。
ヒーロー志望のヒーロー科とはいえ、学生は学生、折角の夏休みを少しもエンジョイできないでは鬱憤も溜まろうというもの。
トレーニングだって、楽しんでやってはいかんとは決まってないしな。
意気揚々と準備体操を始める緑谷──それを皮切りに、他の皆も続々とプールにやってきた。
少し驚いたのは轟も来た事、言っちゃ悪いので言わないが来ないかと思ってた。
スルッとやって来て、皆に混ざって準備体操をしている。
体育祭以降、轟も少しずつ変わってきている。
きっと良い変化だろう。
「んじゃ、皆、プールの貸し出しは17時までだ。それまで各々自由にやってくれ。あっ、くれぐれも怪我とかないようにな。あと飲み物とか菓子とか色々持ってきてあるから、好きに飲み食いしてくれ」
『おー!さすがイインチョー!』
『ゴチになりやーす!』
何のノリだ?
「俺もささやかだが差し入れを持参した。気賀くんのものと合わせて、飲んでくれ!」
そう言って飯田も持ってきたクーラーボックスを開ける。
入っていたのはオレンジジュース、飯田の【個性:エンジン】の燃料でもあるらしい。
それから皆、思い思いにプールを満喫した。
泳いだり、持参したビーチボールで遊んだり、日光浴をしたり──皆、楽しそうで何よりだ。
て、あれ?
切島が来てないな。
「なあ、上鳴。切島来てないけど、何か聞いてるか?」
プールの事を皆に話した時、切島はかなり乗り気だったはずだが。
「ああ、切島なら爆豪連れ出してから来るって言ってたぜ」
おお、流石だな、切島。
あの爆発さん太郎と適合する稀有な漢……。
まあ、そういう事ならもう少ししたら来るだろう。
気を取り直して、俺も皆に混ざってプールでバタフライに勤しむ。
で、プールを何周かして一息吐こうと水から顔を出した時──
「──ったりめえだあ!!」
お、この声は爆発さん太郎──爆豪、来たか。
ザバァ!
プールから飛び上がってみると、いつもの調子で爆豪が緑谷に詰め寄ろうとしていた。
苦笑いの切島が押し留めているのも、もうお決まりの光景になりつつあるな。
「おいクソデク!なんなら、今すぐ白黒つけるかあ!?ああ!?」
そう言って掌をバチバチ小爆破する爆豪。
「そういう事なら折角のプールだ。競泳といこうぜ」
そこで俺が提案を入れた。
なんのかんのでもう刻限が迫って来てるし、今日の締めに丁度いいだろう。
「種目は、50メートル自由形でどうだ?」
「おお!面白そう!」
「【個性】は?」
「勿論アリだ。でも妨害はナシだ。建物への被害も厳禁、なんか壊したら即失格で」
万一やらかしたら、相澤先生に睨み殺されるからな。
「気賀さん、わたくし達もお手伝いしますわ」
「おう、頼む」
女子達は審判と観戦、参加者は男子のみとなった。
第一レース──峰田、常闇、爆豪、上鳴。
「それでは位置について、用意!」
全員がスタート台で構える。
ピィー!
八百万のホイッスル(八百万製)で各選手一斉にスタート──
「『爆速ターボ』!!」
BOMッ!!
「どーだ!このモブども!」
一着、爆豪──しかし爆豪、【爆破】で空飛んで水に一切触れてない。
「『どーだ』じゃねえ!!」
「泳いでねえじゃねえか!!」
瀬呂、切島からブーイングが飛ぶ。
「自由形っつっただろうが!!」
まあ、ここは爆豪の主張を認めよう。
第二レース──切島、瀬呂、青山、轟
「位置について、用意!」
ピィー!
各選手一斉にスタート──爆豪を見て、皆、もう泳ぎに拘らない。
瀬呂はテープで得意の空中移動──テープは後で回収な。
青山はヘソビームで飛び──途中腹痛で失速、隣の瀬呂を巻き込んで
パキキキ!
スタ
一着、轟──水面を凍らせて滑ってスルッとゴール。
『だから泳げって!!』
爆豪がアリなんだから、轟もアリだろう。
アリだから轟は凍らせたプールを溶かしてもろて。
第三レース──口田、砂藤、俺
「位置について、用意!」
ピィー!
ザバァァァン!!
「ふぅ」
一着、俺──ちゃんとプールに飛び込んで泳いでゴールしたぞ、勢いそのままに潜水からプールサイドにジャンプで上がったけど。
『イルカかよ!?』
人間だよ。
第四レース──飯田、緑谷、尾白、障子
他が泳ぐ中、飯田は脚の【エンジン】でレーンの上を滑走──泳ぐより難しくね?
緑谷が【OFA・フルカウル】による強化でクロール──加速して飯田に追いつく。
最後は2人のデットヒートの結果──僅差で緑谷WIN!
最後、各レースの勝者による決勝レース──
「それでは、50メートル自由形の決勝を始める!」
轟、爆豪、緑谷、俺の勝負──クラスの皆も盛り上がる。
「いったれ爆豪!」
「轟も負けんなよ!」
「デクくん頑張れー!」
「気賀さんファイトー!」
クラスメイトから声援が上がる中、俺達4人はスタート台に上がる。
「位置について!」
決勝審判飯田の声で、全員が身構える──が、しかし。
「あっ、ストップ!」
俺はレースを止めた。
「んだコラァ!!何止めてんだ湯気野郎テメェ!!」
「ま、まあまあ、かっちゃん、落ち着いて!」
「どうした?」
レース参加者達も、観戦者達も疑問符(爆豪は怒りマーク)を浮かべる。
俺はプールサイドに備え付けられた時計を指差す。
「17時、プールの貸し出し時間が終わった。レースは中止、総員撤収だ」
『ええ〜!?』
「ざけんな殺すぞ!!」
「仕方ないだろ。相澤先生すぐそこまで来てるんだから。ほら、撤収急げ。モタモタしてると、先生に捕縛されて引き摺り出されるぞ」
『は〜い』
「クソがあ!!」
多少ごねるも最後には全員がプールから出ていく。
更衣室に着く前に相澤先生に会った。
「あ、相澤先生。撤収完了してます」
「分かった、施錠する。お前ら、寄り道は程々に早く帰れよ」
『は〜い』
「伸ばすな『はい』だ」
そんなやり取りで相澤先生と別れ、更衣室で着替えて自由解散となり、A組水泳大会はお開きとなった。
その帰り道──
「ッ!?」
電車で自宅最寄駅に着いた時、俺はある気を感知して体が強張る。
この気──間違いない、死柄木弔だ!
何故ここに!?
「……ん?」
だが……ふと疑問を感じる。
死柄木弔、なのは間違いないが……何だろう、この気の感じ……?
狂気や殺気の類いは一切無い。
寧ろ、儚いような……ぼんやりとしているような……透けているような……上手い言葉が思い付かない、何とも奇妙な感じだ。
「……行ってみるか」
本当なら、感知した時点で相澤先生にでも連絡するのが正しいだろう。
しかし、以前会った時の様子も気になって、俺は先ず直接、死柄木弔を確認する事にした。
駅から出て、気を辿って行ってみると……やはり、死柄木弔はいた。
駅近くのベンチで、無造作に、じっと動かず前を向いていた。
「……よお、気賀」
俺を見つけた死柄木は、なんともあっさりした口調でそう声をかけてきた。
「死柄木……」
「よかったよ、会えて……探してたんだ」
探してた……?
俺を……?
「……どうやって……?」
「有名人は大変だな……本人の知らないところで、ネットで顔を曝される……」
ネット……SNSか何かで誰かが俺の写真でも撮ってアップしてたか……。
なるほど、それでこの駅で張り込んでいた訳か……。
しかし、そんな不確かな情報を頼りにしてまで、何故俺に……?
「……俺に何の用だ?」
「ああ、頼みたい事があるんだ……」
そう言うと、死柄木は立ち上がり、俺の前に来る。
「頼み……?」
「ああ……」
──オールマイトに会わせてくれ。