超越生命体アブストラクトの侵略により滅亡の危機に瀕した人類。地球人の文明によるエントロピー増大を危険視する彼らに対し、人工知能を搭載したスーパーロボット「グランネイバー」が大いなる対話に挑む。

※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ハーメルン」「アルファポリス」に投稿しています。

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超空白機グランネイバー ~いかがでしたか? 地球人の底力は~

 時は西暦3022年。数百年の時を経て太陽系の外縁まで達した人類の宇宙進出は、高位次元より現れた超越生命体アブストラクトの襲来によりその終焉を迎えた。

 

 かつて数千を超えたスペースコロニーとその住民の全てはアブストラクトの次元要約力により元素にまで分解され、テラフォーミングが行われた太陽系の惑星も次々と虚無の大地へと還元されていった。

 

 地球上の80%を超える大地がアブストラクトにより還元されたその時、辛うじてアブストラクトの侵略を受けていなかった地球連邦極東日本地域の東京エリアでは人類の生存を賭けた最後の手段が完成していた。

 

 

「博士、これが対アブストラクトの決戦兵器ですか? 似たような機体はいくつか実戦投入されましたが、全て金属の塊に還元されたではないですか。今更スーパーロボットなんて……」

「まあ見ていたまえ。このスーパーロボット『グランネイバー』は戦うための存在ではなく、アブストラクトとの大いなる対話のために建造されたのだ。出撃は今すぐにでも……」

「大変です! アブストラクトの概念円盤がついに日本地域にも現れ、よりにもよってこの研究所の近隣に着地するようです!!」

 

 地球連邦直轄の研究所で完成したスーパーロボットの最終調整を行っていた博士とその助手のもとに、驚くべき知らせが舞い込んできた。

 

「そうか。アブストラクトもこの『グランネイバー』の完成を察知していたとなれば、今がその時だということだろう。グランネイバー、出撃せよ!!」

『承知いたしました!!』

 

 人工知能を搭載されたスーパーロボット「グランネイバー」は博士の命令で起動すると、開き始めた研究所の天井からブースターに点火して飛び立った。

 

 

「愚かなる地球人よ、元素の状態に戻るがよい。我々高位次元の民を脅かす存在は、消滅する運命にあるのだ……」

『お待ちください、私は地球人全体の意思を代表してあなた方に対話を求めます。よろしければ円盤から出てきて頂けませんか?』

 

 概念円盤と呼ばれるこの次元で実体を持たない移動手段の中で独り言を呟いていたアブストラクトに対し、グランネイバーは空中に浮遊して概念円盤の前に立ちふさがると対話を呼びかけた。

 

「何をするつもりか知らんが、貴様はただの兵器ではないようだから話を聞いてやろう。そこの建物の屋上に降りる」

『ありがとうございます、私もそちらに行きます』

 

 アブストラクトは概念円盤からすぐ近くの高層ビルの屋上まで空間転移し、グランネイバーも18メートルの巨体でビルの屋上に降り立った。

 

『早速本題に入りますが、あなた方は人類がエントロピーを増大させすぎたことに危機感を持って襲来されたそうですね。このまま人類の文明が発達していけば、いずれは高位次元に暮らすあなた方の生存も(おびや)かしかねないと』

「よく分かっているではないか。いくら弁明したところで、ヒトという種族が無尽蔵に増えていけば貴様らの単位で500年も経たないうちに高位次元にまで進出していたことは我々の未来予測で明らかになっていた。500年など高位次元の民からすれば一瞬の時間だ」

 

 グランネイバーの人工知能にはアブストラクトと人類との闘争の記録が刻まれており、これまでの侵略の中でアブストラクトが主張してきたことは全て把握していた。

 

『私が今回主張したいのは、人類の文明がいくら発達しても高位次元に被害を及ぼすことはあり得ないということです。空間に映像を転写しますので、こちらをご覧ください』

「ならば見てやろう。どれどれ、ひどく文字が大きくて色彩が激しいな……」

 

 アブストラクトはグランネイバーが空間に転写した映像に目を向けた。

 

 

>具体的な問題点や危険性を知らずに敵視してしまう方も多いのでは?

>とにかく色んな理由を付けて滅ぼされる生命体と言えば「地球人」!!

>その具体的な迷惑さを調べてみました!!

 

 

「地球人自ら迷惑な存在だと自覚しているのはいい姿勢ではないか。続きはないのか?」

『もちろん用意しております。続けてご覧ください』

 

 

>「そもそも地球人って何?」

>地球人の定義は様々にありますが、最もメジャーな定義としては地球上で誕生したホモ・サピエンスの文明集団を指すようです。

>人類には他にもホモ・エレクトスやネアンデルタール人がありますが、彼らは絶滅したのでここで言う地球人には含まれません。

>「ホモ」というのは太古の昔に使われていたラテン語で「人」という意味ですが、20世紀から21世紀前半にかけては同性愛者への差別用語としても使われていたとのことです。

>当時の地球人のリテラシーの低さがうかがえますね。

 

 

「……それで、早く本題に入ってくれないか?」

『これも既に本題なのですが、まあ見ていてください』

 

 

>「色んな理由を付けて滅ぼされる生命体、地球人。その理由とは?」

>地球人が実際に滅ぼされようとしているのは有史以来今現在が初めてですが、フィクションの世界では本当に様々な理由を付けて地球人は滅ぼされてきました。

>異星人が地球に入植するために原住民を滅ぼすといった単純な理由もありますが、多くは地球人の存在そのものを危険視していたようです。

>地球人の存在が本当に危険なのかどうかを確かめるため、私たちは人類の歴史を振り返ってみました。

>人類の歴史は戦争の歴史と言われるように、人類は誕生以来様々な戦争を繰り広げてきました。

>中でも着目したいのはかつての日本や中国における戦国時代や北アメリカでの南北戦争で、人類は同じ人種や国家の中でも戦争を起こしてしまいます。

>ちなみに人種や国家を定義すること自体も難しく、「同じ人種」といった言葉の使用には注意が必要です。

>このような配慮は21世紀前半に「ポリティカルコレクトネス」と呼ばれ、過度なポリコレは当時社会に軋轢(あつれき)を生むこともありました。

>地球人が滅ぼされる理由は明確には分かりませんが、このようなトラブルも関係しているのかも知れませんね。

 

 

『解説が長くなりましたので、この辺りで地球の美しい自然風景を映します』

「いや、それはいいから我々に分かるように説明してくれ」

 

 

>「地球人を滅ぼそうとする存在、アブストラクト。彼らの目的とは?」

>地球人を現在滅ぼそうとしているアブストラクトの正体に迫ることができれば、地球人が滅ぼされる理由も分かるかも知れません。

>まず、私たちはアブストラクトの文化や暮らしについて調べてみました。

>アブストラクトが暮らしている高位次元にこちらから行くことはできないため詳細は分かりませんでしたが、あれほど高度な文明を持っている以上、とても豊かで楽しい生活を送っているのではないでしょうか。

>アブストラクトという言葉は地球連邦の公用語で「抽象」「概要」といった意味がありますが、これは偶然の一致ではなく、アブストラクトの種族名は地球人からは「アブストラクト」と聞こえるようになっているようです。

>相手の認知に影響を与えるとは、アブストラクトの皆さんはやはり高度な文明をお持ちのようですね。

>アブストラクトが用いている言語についても調べてみましたが、そもそも文字を使っているのかも分かりませんでした。

>ですが、あれほど高度な文明を持っている以上、アブストラクトはかつてのラテン語やドイツ語のような高度な文法の言語を持っているのではないでしょうか。

>いつか平和な交流が樹立されたら、地球人の言語とアブストラクトの言語との通訳が活躍しそうですね!

 

 

「……結局、何が言いたいんだ?」

『そろそろ終わりますよ。最後までどうぞご覧ください』

 

 

>いかがでしたか?

>地球人には様々な問題点や危険性があるようですが、私たちも自らを反省して平和を求めています。

>アブストラクトの皆さんがこの解説映像を見てくださったということは、いつかは和平交渉の道も開けるのかも知れませんね。

>それでは次回の映像でお会いしましょう!

 

 

『こちらが私たち地球人の叡智(えいち)を結集した解説映像です。現在、この映像を太陽系の各地に転写しておりますので他のアブストラクトの皆さんにも見て頂けていると思いますよ』

「な、何というエントロピーの高さだ。このような映像を見せられれば……我々は…………」

 

 エントロピー増大の極致とも呼べる映像を目前で見せられ、アブストラクトの使者はこの次元から消滅していった。

 

 太陽系の各地でもアブストラクトは消滅していき、元素に還元されたスペースコロニーや住民たちも元へと戻っていく。

 

 

「グランネイバー、帰ってきたか! 私が開発したキュレーション回路は順調に働いたようだな」

『ええ、これで人類は救われました。いかがでしたか? 私の……』

 

 空を飛んで研究所に帰ってきたスーパーロボットを出迎えた博士に、グランネイバーは続ける。

 

 

『いえ、訂正します。いかがでしたか? 地球人の底力は!』

 

 恐ろしく内容のないその言葉は、人類の新たな夜明けを告げる一言だった。

 

 

 (END)


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