どうも皆さんこんにちは、コミュニ爺です。
ついにガンブレイズヴェンジェンスの放送が始まりましたね!
まぁ自分は諸事情でまだ見られていないんですけどね。トホホ……。
この小説はStrikerS時空なので、その辺りの知識がなくても楽しめる……と良いなぁ。(オイ
それでは本編をどうぞ。
☆
高町とのデート……?から数日が経った。あんな
俺と彼女が釣り合うとは到底思えなかったが、彼女が喜んでくれているのだから良いのだろう、恐らくは。そこで、色々と相談に乗ってくれたりアドバイスをくれた同僚に、お礼と近況の報告をすることにした。
「―――というわけで……。高町一尉と交際することになったよ」
「おお、そりゃおめでとさん。……で、どっちから話を切り出したんだ?ん?」
「そうだな、あの状況からすると……高町一尉の方から、ということになると思う」
「おま……っ、お前〜っ!よくもやってくれたなあっ!!」
言うが早いか、いきなり両肩を掴まれた。割と痛い。こいつ、結構力を入れていやがるな……。俺が苦言を呈そうとした直前、ぐわんぐわんと前後に激しく揺さぶられる。だからやめろ、痛いし気持ち悪いって。不快感で歪んでゆく俺の顔を見ることもなく、彼は矢継ぎ早に捲し立ててきた。
「俺はなぁ!お前から告るのに賭けてたんだぞ!?お陰で三日分の昼飯代がパァになったじゃねーか!どうしてくれる!?」
「そんなこと言われても困るな……。ちょっと待て、賭けてた、っていうのはどういう意味だ?」
「……な、なんのことかな?」
下手くそな口笛を吹いて逸らされた彼の顔を、じっと無言で見つめ続ける。その圧力に耐えかねたのか、彼が渋々と口を割り始めた。
……要約すると、こいつ主催で俺と高町のどちらから告白するかを題材に、部署内で賭け事をしていたらしい。こいつ主催でだ。……参加した奴らは、後で全員一発ずつ小突いてやる。
どうりでやたらと親切にアドバイスをくれたわけだ。こいつは俺が告白する方に賭けていたのだから、勝率を上げるための努力を惜しまなかったのだろう。……まぁ、結果は不意になってしまったわけだが。心底悔しがっていたが、人の気持ちを蔑ろにした罰とでも思ってもらおう。
彼の手から解放され、視界と呼吸を整える。……賭けに負けた分に加えて、俺からの報復でも喰らえ。しっかりと握りしめたゲンコツを一発、彼の脳天に振り下ろした。鈍い音と共に、彼が頭を抱えて呻き声を漏らす。普段なら心配して駆け寄るところだが、今回はこいつの自業自得だ。しばらく苦しむが良い。
心の赴くまま彼を叩きのめした後、業務に戻る。相変わらずとんでもない書類の量に圧倒されるが、仕事である以上、やるしかない。溢れ出そうな愚痴を喉の奥にしまいこみ、辟易とする気持ちを、鍛え抜いた表情筋で抑えつける。不満を覚えても、隠し通さねばなるまい、今までのように。
そんな小さな決意と共に、眉間にシワが寄る。さて、始めるぞ、と小さく口に出した直後、
「あっ、―――くん。ちょっと良いかな?」
「はい、構いませんよ。高町一尉」
俺の背後には彼女―――高町なのは―――が、満開の花のような笑顔を浮かべながら立っていた。彼女の方へ向き直り、肯定の意を示す。これから書類の山と格闘するところだったのだが、彼女を無下にするわけにはいかないからな。
……しかし、俺の態度の何かが気に入らなかったのだろう。俺が返事を返した途端、彼女は先程までの笑みを引っ込め、不満げに眉をひそめた。加えて、可愛らしく口を尖らせてもいる。……だから、君がそんな顔をしたところで、まるで怖くないんだって。むしろ"可愛い"とか、"微笑ましい"とさえ思ってしまうよ。
彼女が俺の何にお怒りなのか皆目見当もつかないが、このまま眺めているだけというのも心苦しい。思い切って彼女に問いかけてみることにした。
「あの、今度は何がお気に召さなかったんですか?」
「……"なのは"って呼んで。私の、名前で」
「しかし、今は勤務中です。公私の区別はつけるべきかと……わかった、わかった。わかりましたから、そんな目で見ないでくださいよ」
不満げな顔から一点、今にも泣きそうな顔をされたのでは、流石にこちらが折れざるを得ない。瞳を閉じて、ため息を一つ。改めて彼女の名を呼んだ。今度は管理局員としてではなく……彼女の、恋人として。
「―――では、気を取り直して……。どうしましたか?なのはさん」
「……まだダメ。私に遠慮しないで、『本当』の君を見せてよ……」
「……仕方ないな、わかったよ。で、何の用なんだ?たかま……………………なのは」
ぐぅ、今まで取り繕ってきた仮面が、こうもあっさりと剥がされるとは……。恐るべし、高町なのは。流石は管理局のエースオブエースだ……!
……彼女の名前を呼ぶまで、随分時間がかかったが、許して欲しい。
締まりのない顔をしている彼女を落ち着かせて、本題を尋ねる。どんな難題が飛んでくるやら、と身構えていたが、彼女の用件は驚くほど簡単なものだった。
―――家族や友達に、会って欲しい。俺を紹介したい。そう、言ってくれたのだ。
迷うことなく頷きを返し、日取りの確認を始めた。彼女の実家は管理外世界だと聞いている。二人の休暇を合わせられる日の検討と、彼女のご両親や友人への事前連絡が必要になるだろう。そう尋ねてみると、彼女は柔らかく微笑み、後者は自分に任せて欲しいと胸を張った。それに関しては、俺にできることなどたかが知れている。ここは大人しく彼女に任せるとしよう。
こうして打ち合わせはつつがなく進んでいき、あっという間に小旅行の日程が完成した。魔法の認知されていない世界、"地球"……か。柄にもなく、彼女の故郷を尋ねるのを楽しみにしている自分がいる。少し前なら、俺がこんな風な気持ちになるなんて、想像すらしなかっただろう。……良い方向に変われている、そう思いたいものだ。
そんな俺達の様子をじっと見つめていた同僚から放たれた恨み節には、少々驚かされたが。末永く爆発しろ!だの、せいぜい幸せになりやがれ!だの……。悔しがっているのか、祝福してくれているのかをハッキリさせて欲しいものだ。
……言われずとも、彼女は幸せにしてみせるさ。俺にできる限りはな。彼女には大きすぎる恩があるから。ありのままの俺自身を認めてくれたこと。善意の仮面を被ったままでも良いと、俺のこれまでを肯定してくれたこと。自己嫌悪の念に苛まれていた俺の心を、彼女が救ってくれた。だから、今度はこちらが恩を返す版だ。彼女の柔らかい笑顔だけは、なんとしても守りたい。彼女のささやかな幸せを、必ずだ。
そんなことを考えていたからか、俺の顔は中々に強張っていたようだ。それを彼女に指摘され、慌てて力を抜く。……あまり彼女に気を遣わせては申しないと思うのだが、彼女の察しの良さを掻い潜ることは相当難しい。彼女に隠しごとをするのは半ば諦めつつ、胸の内の想いを素直に吐き出した。
……胸に覚えた照れが邪魔してくるようで、言葉が上手く紡げない。辿々しいながらも、なんとか胸の内を口にし終える。恥ずかしいという気持ちが、身体全体を満たすような感覚に襲われた。そして、それを聞いていた彼女も。二人して似たような感覚を覚えたらしく、俺たちの顔は朱色に染まっていた。
……ほんの余談だが、同僚からの妬むような視線が背中に突き刺さり、僅かな居心地の悪さを覚えたのは秘密だ。彼女と解散し、気にしないフリをしながらデスクに向き合う。いつものように、延々と終わらない書類との格闘に取り掛かった。緊急招集は、ついぞかからず終いだった。
☆☆
「紹介するね、フェイトちゃん。この人が私の―――」
「―――へぇ、この人が……」
「はい、はじめまして。ハラオウン執務官」
居心地が悪い。彼女―――ハラオウン執務官―――の刺すような目線が、俺を射抜くからだ。頭からつま先まで、俺の値踏みでもするかのように見つめてくる。たかま……なのはから聞いていた話では、ハラオウン執務官は穏やかで落ち着いている人物らしい。らしいのだが、正直なところ、そうは思えなかった。
俺を目の敵に……とまではいかないが、訝しむような目で見てくるので、背中に嫌な緊張が走るからだ。……何か、彼女に悪い印象でも与えてしまったのだろうか。振り返ってみたが、皆目検討もつかない。そこで、思いきって彼女に尋ねてみることにした。
「あの、ハラオウン執務官……。
「誰が口を開いていいって言ったのかな?私は今なのはと話してるんだよ?暫く黙っててもらえる?」
「ふぇ、フェイトちゃん……」
な、なのはまで引いている……。表情こそ笑顔だが、明らかに俺を拒絶する態度だ。初対面だというのに、ここまで露骨に嫌われる覚えはない。なのはに耳打ちし、普段の彼女の様子を尋ねるも、やはりこんな振る舞いはしないそうだ。
「ふぅん……結局そうなんだ。なのはも私を捨てるんだね……」
「なのはも、って……。
「あ〜……厳密には違うというか、複雑な家庭事情がありまして……」
「ほら、また二人だけで通じ合ってる。もう私のことなんて必要じゃないんだ……」
暗いオーラを放つ彼女を二人がかりで落ち着かせ、話を聞き出してみる。……俺の問いかけには、ほとんど反応を返されなかったことなんて、全く気にしてないぞ。ないったらない。
……話を戻そう。彼女は、一人になるのが怖かったのだそうだ。俺達が同棲を始めると思い至り、なのはと同居していた彼女の場所がなくなると思ったのだという。……うん、それは俺に対しての当たりが強くなるわけだ。十年来の親友を、ぽっと出の男に取られたのだ。彼女からすれば、いい気がするわけがないのも当然だろう。
だが、このまま黙っている、というのもできそうにない。そこで、俺の胸の内をそのままぶつけることにした。彼女が一人になるだと?笑わせる。人は一人だけじゃ生きていけないというのに。第一なのはという友達がいるのに、そんな言葉を使うこと自体、俺には許せなかった。だから……今この場だけは、仮面を外そう。この気持ちに蓋をしておくことなど、到底我慢できそうにないから。
「ハラオウン執務官……ここは敢えて
「……君の意見なんて、求めてないよ。わからないかな?」
「求められてなくても、無理やりにでも聞いてもらいますから関係ありません。……なのはって友達がいるのに一人になる、ですって?ふざけないでいただきたい」
すげなく拒絶されるところだったが、怒りを滲ませた一言が響いたのだろう。一瞬だけ息を詰まらせた後、彼女はポツポツと言葉を漏らし始めた。
「だって……クロノの、お兄ちゃんの時もそうだったんだよ?きっと、なのはもそうなるんだ。会える時間が減って、少しずつ遠くに行っちゃうんだ……」
「……あなたは、なのはの友達でしょう?どうして彼女を信じてあげられないんです!?なのはが、そんなことをする人だと思いますか!?」
「……君にはわからないよ、ひとりぼっちがどれだけ辛いことかなんて。もう、あんな思いは……」
「まったく、ウジウジウジウジと……!そんなになのはと居たいなら、これからも一緒に暮らせばいいでしょう!」
「ダメだよ……それじゃ二人の邪魔になっちゃうもん……」
「そんなこと、俺は気にしませんから。……なのはもそうだろう?」
なのはに問いかけると、慌てたように頷きが帰ってきた。それを確認した俺は小さく微笑むと、一歩身を引き、なのはとハラオウン執務官を向き合わせる。後は、二人の間で話を付けてもらおう。言いたいことは粗方言ったし、俺の言葉よりも、友達の言葉の方が真っ直ぐに届くはずだから。二人に断りを入れて、少し席を外す。……感情的に怒鳴ったことが気まずくなったわけじゃないぞ。ないったら、ない。
―――数分後、二人の元に足を運ぶ。ハラオウン執務官もすっかり落ち着いており、先程まで俺に向けられていた視線も、幾分柔らかいものになっていた。そのことに、ほっと胸を撫で下ろす。剣呑な態度を取られ続けるのも中々辛いものがあるからだ。
まとまった二人の話を聞くに、ハラオウン執務官とも同居する運びになったようだ。これからよろしくお願いします、と伝えると、バツの悪そうな顔を浮かべた彼女から、か細い声で返事が帰ってきた。
目線くらいは合わせて欲しいものだが、先程のあの態度を鑑みるに、急に友好的に振る舞うことはできなかったのだろう。これから共に暮すことになるのだから、軋轢を産まない程度には仲良くしたいものだ。
「フェイトちゃん……彼に手を出しちゃ、ダメだからね」
「そ、そんなことしないよ!?…………多分」
今度は一転して、なのはが険しい顔を浮かべたが、気が付かないフリをして身を返した。寒気すら感じるほどの威圧感を醸し出す彼女に突っ込む勇気は、俺にはなかったのである。加えて、原因が何なのかわからないのだ。なのはが機嫌を直してくれるのを待っている間、黄昏れることしか俺にできなかった。
☆☆☆
そして迎えた地球訪問の当日、俺は緊張感のあまり固まってしまっていた。なのはのご家族は、彼女を含んで五人いる。父、母、兄、姉、そしてなのはだ。事前の連絡を済ませた後、家族写真と共に説明してくれた彼女の様子から察するに、家族仲は良好なのだろう。……少し、羨ましい。
……え?八神二佐とはどうなったのかって?フェイトさん(こう呼ぶように厳命された)の時と違って、すんなり話が済んだから言うことがないんだ。すまない。まぁ、一家総出で祝福してくれたのは、照れくささよりも喜びが勝ったのだが。
特にヴィータ三尉からは大層感謝されたが、一体なぜだろう。涙すら流しそうな勢いだったし、外見も相まって心から喜んでいる子どもにしか見えなかったな。……彼女、俺の上官なんだが。まぁそれはともかく、感謝されることに悪い気はしない。目線を合わせて、こちらからも感謝の言葉を告げた。……つい頭を撫でてしまって、怒らせてしまったけれど。
……話が脱線したな。つまるところ、俺は緊張しているんだな。なのはの実家にご挨拶に行くことに、それはもう大層緊張しているようだ。八神家への顔見せを思い出したのも、高町家へのご挨拶が、あの時のように上手くいけばいいと思ったからだろう。
一度上手くいったからとて、その成功体験に縋り続けるのもよろしくない。頬を叩き、気持ちを入れ替える。大丈夫、なのはのご家族なのだから、きっと良い人たちのはずだ。だから、きっと大丈夫。意を決して、高町家の敷居をまたいだ。
―――お義父さんとお義兄さんからの視線が痛い。ハラオウン執務官の時よりも、数段鋭い威圧感が襲ってくる。……なのは、君は相当愛されて育ったんだろうな。本当に、羨ましいよ。
現実逃避も程々に、高町家四名に自己紹介をする。お義母さんとお義姉さんには中々の好感触だったようだ。……お義父さんとお義兄さんからは……お察しください。値踏みするような目で見られてます。言葉こそフレンドリーだけど、声のトーンや立ち居振る舞いからは威圧感しか感じません……。
針の筵、というには言いすぎだが、何とも気まずい。早いところ印象を良くしなくては。……努めて明るく振る舞うものの、父兄二人の反応は芳しくない。きっと、なのはのことを凄く大切に思っているのだろう。俺は親の顔も知らないから、これだけ愛されている彼女が少し羨ましく思えた。
「……なのはが羨ましいよ」
「ほう、それはどういう意味かな?」
……独り言に鋭く反応しないでください、お義父さん。正直怖いです。背後を取られた上にボソリと呟かれるのだから、それはもう肝を潰した。もしかして高町家は
聞かれてしまった以上、隠しておくこともできないだろう。お義父さんに、感じたことをそのまま伝えることにした。両親が健在で、温かい家族に恵まれている彼女が羨ましかった、と。
それを聞いた彼は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていたが、どうしたのだろうか。思わず尋ねると、神妙な顔つきでお義父さんが答えを教えてくれた。彼の姿は、神父に懺悔をする教徒のようにも見えた。
「……俺は、なのはが大怪我をする前に、あの子を止められなかったんだ……」
「大怪我って……まさか、撃墜事件のことですか?」
「そうだ。あの子のやりたいことだから、と嘯いて、放っておいてしまったんだよ。……本当なら親として、無理にでも止めさせるべきだったのに」
「お義父さん、それは……」
「わかっているさ、それがあの子の覚悟に泥を塗ることだってね。でも……あの子に傷ついて欲しくないと思うのは、親として当然のことだろう?」
寂しげに、自嘲気味に笑う彼に、俺は何と言えば良いのかわからなかった。……正直なところ、俺には、親の気持ちというものがよくわからない。お義父さんの抱える後悔や無念を、本当の意味で理解して、彼の痛みに寄り添えるとは思えなかった。だから、俺が口にできたのはただ一つだけ。ただ一つの願いと、憶測だけだった。
―――彼女の、なのはの安らげる場所を守ってあげて欲しい。帰る場所があるというのは、素晴らしいことだから。きっとなのはも、お義父さんたちを恨んだりなんかしてないだろうから。
それを受けたお義父さんは、少し驚いたような表情を浮かべ、もちろんだと言ってくれた。この言葉がどれだけの救いになったのかはわからない。それでも、なのはが俺にそうしてくれたみたいに、少しでもお義父さんの心が安らいでくれれば良いと思えた。
それに俺は、なのはが家族を大切に想っていることを知っている。じゃなきゃ、家族写真を大事に持ってなどいないだろうし、俺に紹介してくれた時も笑顔になんてなれないだろうから。そのことをお義父さんに伝えると、ようやく本心から笑ってくれたような気がした。
「今まで厳しい目で見ていて、悪かったね。……なのはのことを、よろしくお願いします」
「はい、もちろんです。……娘さんには、いつも助けてもらいっぱなしですけどね」
「ふっ、そうか……。それなら、なのはが辛い時や苦しい時に、支えてやってくれないか?俺には、できなかったことだから……」
「……怒りますよ、そんなこと言ったら。なのはから見れば、家族の皆さんが居てくれることが、大きな支えになってるんでしょうから」
「……そうだな、義息子の機嫌を損ねるのも不味い、か。……将来は、面倒見てもらうわけだしな」
冗談を言えるくらいには、持ち直してくれたようだ。……でもこの人の場合、老後でもピンピンしてそうなんだよなぁ。お義兄さんとお義姉さんもそうだけど、立ち居振る舞いにまるで隙がないし。おそらく、何かしらの格闘技でも齧っているのだろう。敷地内に道場まで構えていることだしな。
そんなことをぼんやりと考えていると、お義父さんがとんでもないことを口走ってきた。
「君も身内になるんだ。どれ、御神の剣を……」
「待って、ちょっと待ってくださいお義父さんっ!それ以上はマズい予感しかしませんよ!具体的には、三角形のハート的な何かが……!」
第一、そんな簡単に覚えられるモンじゃないでしょうがっ!お義兄さんたちも幼い頃から厳しい修行を……って、何を言ってるんだ俺は。御神の剣とやらを詳しく知りもしないくせに、えらく具体的なイメージが浮かんできたな。
突飛な展開には面食らったものの、お義父さんに気に入ってもらえたのは僥倖だった。……しかし、酒を勧めるのはやめていただきたい。俺は娘さんと同い年です。地球の常識では未成年扱いなんです。困っていいると、お義兄さんから同情的な視線を感じた。あぁ、この人も酒が苦手なんだろうなぁ……。
こうして高町家での夕食、ひいては晩酌の時間は、少しの喧騒を交え、なだらかに過ぎていった。
☆☆☆☆
なのはの部屋にて、借りた布団の上に腰を下ろしていた俺は、思わずため息を付いた。
「ふぅ、今日は慌ただしくて疲れたな……」
「にゃはは……ごめんね。うちの家族、ちょっと変わってるから」
「謝らないでくれ。別に嫌だったってわけじゃないんだ。ただ……」
「ただ?」
なんでもない、と頭を振ってごまかす。言えるはずがなかった。俺にも家族がいたら、こんな風な日が当たり前だったかもしれない、だなんて。きっと、正直に伝えれば、彼女は気に病んでしまうだろうから。
隠し事をされたことに不満気な彼女を宥めつつ、眠りにつく。あぁ、こんな何気ない幸せが、ずっと続きますように。休息を求めていた俺の身体に引きずられるように、俺の意識は瞬く間に沈んでいった。
☆☆☆☆☆
―――すっかり安らいだ彼の瞼の上に、桜色の光がぼんやりと浮かぶ。そのことに、彼が気づくことはなかった。
「これからは、寂しくないよ。私たちが、家族になるから……」
「だから、一緒に悩んで、一緒に幸せになろうね?」
菫色の視線が、すっかり眠りに落ちた彼を包み込む。慈愛と執着心に満ちた彼女の瞳は、ベッドの上から彼を見つめるだけに飽き足らず、サーチャーを用いて隠し撮りを続けていた。……元気出せよ、レイハさん……。
彼の眠る布団に忍び込む。彼の温もりを感じていたい、彼の孤独を癒してあげたい。そして―――
―――彼を通じて、孤独だった幼い自分を慰めたい。
"高町なのは"の寝顔は、非常に安らいだものだった。愛する人と同衾したのだから、心身ともに満たされた時間だったのだろう。当然の帰結だ。
傍らに居る彼もまた、一人暮らしをしていた頃と比べものにならない、穏やかな表情を浮かべていた。高町家での暮らしを受け入れ、安息の場所と認めたことが伺える。
―――翌朝、目覚めた彼が慌てふためくことになるのは、全くの余談である。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
誤字脱字、設定ミス等あれば遠慮なくご指摘いただければ幸いです。
それでは、また。
最後に……サブタイでタイトル詐欺かまして、ごめんね?