休日にレクイエムと鑑定士が一緒にご飯を食べに行くお話

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第1話

「こんにちは、レクイエム。今日はどうしたの?」

 

「こんにちは……鑑定士。今日は……ご飯を……食べに来た」

 

「ご飯って……やっぱりトマトゼリー?」

 

「ううん……ハンバーガー……」

 

珍しい返答に少し驚きつつも、鑑定士は微笑んだ。

「そっか。なら、今日もご一緒してもいいかな?」

 

「うん……鑑定士と……一緒に食べる」

 

ファストフード店に入り、注文した品を待ちながら他愛のない会話を交わす。

 

「鑑定士……今日は……休み……?」

 

「うん。エイポンもずっと忙しいわけじゃないから、今日はおやすみだよ」

 

「そっか……。私は……翳に休めって……言われた……」

 

「(トマトデビルの件が終わった直後だからかな?)そうなんだ。あ、レクイエムの番だよ」

 

トレイを受け取り、日当たりの良い窓際の席に腰を下ろす。

 

「いただきます」

手を合わせてから、鑑定士は向かいに座るレクイエムをちらりと見た。彼女の手元にあるのは、いつか見た光景と同じ――バンズの間にトマトだけを分厚く挟み、その上からたっぷりとケチャップをかけた特製バーガーだった。

 

「レクイエム、それ本当に好きだよね」

 

「うん……トマトたくさん……好き。……鑑定士……食べる?」

 

「ふふ、なら一口もらうね」

 

差し出されたバーガーの端を、小さくかじる。

 

「うん、美味しい。ありがとう、レクイエム」

 

「鑑定士……助けてくれた……お礼」

 

そう言って、レクイエムはバーガーを口に運ぶ。

 

――それは見事に、たった今、鑑定士が口をつけたのと全く同じ場所だった。

(ごくり……っ)

 

無邪気に頬張るその無防備な姿に、鑑定士は思わず喉を鳴らした。変な意味はないと分かっていても、どうしても意識してしまう。

 

「?……鑑定士……お腹……空いてない……?」

 

「あ、ちがっ、違うの! そうだね、私もいただきますっ」

 

動揺を誤魔化すように、鑑定士は急いで自分のハンバーガーをパクパクと口に運んだ。

やがて二人とも食べ終わり、食後の穏やかな時間が流れる。

客も少なく、窓から差し込む午後の太陽がひだまりを作っていた。ぽかぽかとした暖かさに誘われたのか、レクイエムはいつの間にかコウモリの姿になり、鑑定士の膝の上で丸まって寝息を立てていた。

 

「ふふ……可愛い……」

小さな羽を優しく撫でているうち、鑑定士のまぶたも次第に重くなっていく。

一時間ほど経った頃。

ぽふっ、と小さな音がして、膝の上のコウモリが人間の姿に戻った。

 

「ふわぁ……」

目をこすりながら見上げると、すぐ目の前に鑑定士の寝顔があった。

 

「……鑑定士……寝てる?」

 

「すぅ……すぅ……」

 

穏やかな寝息。レクイエムは少し首を傾げた。

「ん……白蔵が言ってた……寝てる人は……起こしちゃダメって。前に……休んでた翳を起こして……翳が白蔵に怒ってた……」

 

ふとテーブルを見ると、気を利かせた店員がすでに空のトレイを下げてくれていた。窓の外はまだ明るく、日向の席は毛布のように暖かい。

 

しかし、レクイエムには一つ問題があった。人間の姿に戻ったはいいものの、鑑定士に「膝枕」された状態になってしまい、身動きが取れなくなっていたのだ。

 

「鑑定士……起こせない……。このままだと……」

 

うーんと悩んでいると、眠っていた鑑定士の頭が、こくり、とゆっくり落ちてきた。

 

「……鑑定……士……?」

――こつん。

柔らかい唇が、見上げるレクイエムの額にそっと触れた。

 

「…………」

おでこにキスをされたままの体勢で、静かに時間が過ぎていく。

 

数秒、数十秒。

(……あ。コウモリになれば、抜け出せる……?)

 

レクイエムがその単純すぎる解決策にようやく気づいたのと、鑑定士がゆっくりと目を覚ましたのは、ほぼ同時だった。

 

「……ん……レクイエム……? あ……ごめんっ……寝ちゃってたね……」

 

まだ少し寝ぼけた声で、鑑定士が慌てて顔を上げる。

 

「鑑定士……おはよう……」

「うん……おはよう、レクイエム。……あ、そうだ、早くトレイを下げなきゃって……あれ、下げられてる?」

 

「うん……店員さんが……下げてくれた……」

「そっか……」

 

ホッと一息ついて、鑑定士は優しく微笑んだ。

 

「なら、そろそろいこっか」

 

「うん……今日はありがとう……鑑定士……。また……一緒に……食べる」

 

「うん、こちらこそ、またね。レクイエム」

 

お店を出て、鑑定士と別れた帰り道。

午後が過ぎ、夜になり、やがてベッドに入る時間になる。

 

静かな部屋の中、レクイエムは今日あったことを思い返していた。

額に残る、ほんの少しの温もり。

 

「…………」

 

無意識のうちに自分の額にそっと触れ、レクイエムは少しだけ口角を上げる。ほんのりと頬を染めながら、彼女は温かい眠りにつくのだった。




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