デュエプレのシティバトルの雰囲気で書きます。

各話は大体独立しています。

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初投稿です。


ルピコの恋愛特訓

 

「いやー、プレイヤーさんとこうしてお買い物に行くのも久しぶりですね!」

 

 雲一つない晴天の日。

 私はプレイヤーさんとお買い物デートをしています。守護者になった分、忙しくなって最近会えていませんでしたからね。

 むしろ守護者になって、エレナさんやルカさんが会う口実を増やしているような気も……。

 

 だからこそ、今日のデートは大事なんです。

 デート計画は完璧に立ててきました。

 次はアルバーノさんのお店でお昼ご飯を食べてから、カフェに行ってデュエマをして、その流れで私のお家に招待していく流れ。

 必ずプレイヤーさんを射止めてみせます。

 

 さぁ、頑張りますよー!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 この私、コッコ・ルピコは激怒しました。

 かの邪智暴虐なプレイヤーさんを必ず振り向かせると決意しました。私には恋愛のイロハがわかりません。しかし、プレイヤーさんを取り巻く好意の視線には人一倍敏感です。

 

 場所はすでに私の家。時刻は8時を回ったところ。

 

 そう、今日のデート。

 何も起こらなかったのです!

 

 おかしくないですか?

 いや、おかしいですよね?

 

 こんな私ですけど、プレイヤーさんとは一緒に困難を乗り越えてきた仲ですよ!

 カフェでいい感じにお話したりデュエマして、そのまま私が新しく買ったお家に招待して。

 

 そのまま、お話しして帰っちゃうんですよ!

 頑張って色々準備してきたのに!

 勇気を出したりしたのに!

 

 確かに、プレイヤーさんは三大欲求がデュエマデュエマデュエマで構成されているデュエマシティでも屈指のデュエマ狂人です。私の見立てだけでなく、シティの住民の大半はそう思っているはずです。なんでも、人助けを「デュエマをすること」を対価に毎回やっていますからね。

 ……この前もデュエマが無限にできるからといってアークさんとカイトさんの実験に内容も聞かずに参加していましたし。私がしっかりナビゲートしないと。

 

 つまり、今日のデートで明らかになったことは、プレイヤーさんには恋愛というものに興味がないことです。今日のデートだって私のアプローチに全く気づかないんですから!

 ま、まぁ。ケーキを分けて欲しいなぁ、とか「あーん」をして欲しいと遠回しに言ってしまう私が悪いのかもしれないのですが。けど、何も言わずとも顔色一つ変えずに間接キス込みでやってくるプレイヤーさんもプレイヤーさんですよ!

 その上、不意打ちでドキッとする言葉をかけてくるし……。天然タラシは非常に厄介です。

 まぁ、らしいといえばらしいのですが……。

 

 そんなプレイヤーさんですから、他の皆さんも落とせていないのはまだ助かっていますが。

 

 むぴぴ……結局、意識させるには何をすればいいんでしょうか。

 私はクリーチャー世界の出身ですから恋愛についてはあんまり詳しくありません。純愛トレンディドラマの「トゥルー・トゥルー」は見ましたが、フィクションのお話ですし。

 誰か相談できる人……エレナさんやルカさんのようなおそらく私と同じ気持ちの人には聞かないとして。誰かちょうどいい人は……。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ということで、カスミさん。手伝ってほしいです」

 

「えっ!わ、私に恋愛相談ですか?」

 

 デュエマシティ管理局のカスミさんに相談しに来ました。ロングの紫髪にメガネを付けた頼れるお姉さんです。

 

「……一応お聞きするのですが、なんで私に恋愛相談を?」

 

「それはカスミさんが恋愛妖精と呼ばれるアジサイさんと会話できるからです。ぜひ、私に恋愛のイロハを教えてください!」

 

「あ、私が頼られてる訳じゃないんですね……」

 

 少し微妙な顔になったカスミである。

 そして、その背後に現れたカスミそっくりの人物が現れる。

 

『いいじゃない。この恋愛マスターたるこの私が相談に乗ってあげるわ!』

 

「貴女はなんでそんなに自信満々なんですか!」

 

 恋愛妖精アジサイ。

 カスミに憑依した心を繋ぐ力を持つクリーチャーである。自信家であるが、その声や姿はカスミやプレイヤーにしか見聞きできないらしい。

 現にルピコには声が聞こえていない。

 

「声は聞こえませんがその反応は同意してくれましたね!カスミさん、ぜひ通訳お願いします!」

 

「私は通訳じゃないんですけど……」

 

『そういう割には話には興味津々じゃない』

 

「それは……そうですけど。なんか納得いかないんです!」

 

『なら決定ね』

 

「私の意思が無視されている……」

 

『なら、まずは恋愛の基本のキから始めるわよ!気合い入れなさい!』

 

 これはダメそうですね。

 そう悟ったカスミは心の中でボヤいた。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――

 

 

 

『まずは、目を逸らさずに笑顔で話すこと!』

 

「それくらいはいつもやっています」

 

『そうなのね!じゃあ次は普段とは違う服を着てギャップを狙うのよ!』

 

「昨日のデートでやったんですけど、最初に『服装変わっててかわいいね』と言われて終わってしまったんですよ!」

 

『その後にそわそわしている様子はあった?』

 

「全くないですね。いつも通りのプレイヤーさんでした」

 

『そんなはずないわ!チラチラ見られたりした?首とか太腿とか!』

 

「そんな視線感じなかったですよ……」

 

『あの男。自分への好意は鈍感なのに、他人への気づかいは完璧なのね……。厄介な相手だわ』

 

 その後もアジサイさんの熱血恋愛指導が続いたのですが……。

 

『押してダメなら引いてみるのよ!』

 

「引くと追ってこないのは一貫しているんですよね。問題がある時だけは必ず追ってきてくれるんですけど……」

 

『恋愛の話に持ち込んで、意識させるのは?』

 

「デュエマにしか興味ないから、で一蹴されました」

 

『色仕掛けよ!水着とか胸とか見せるのよ!』

 

「わざと下着のお店の前を通ったのですが、反対側のカードのお店しか見ていませんでした。なんなら、どっちの水着がいいかも聞いたのですが、顔色一つ変えずに答えられました」

 

『どうなっているのよ、あの男!』

 

 ついにアジサイさんが匙を投げてしまいました。

 

 正直、アジサイさんに相談する前にできそうなことは片っ端からやったつもりではあるのですが……。

 それにしても打つ手がないのはどうすればいいんですか。

 

『あとはクリスマスとか行事の雰囲気に乗じるしかない!』

 

「守護者になったので主催者側か警備とかで、時間は取れないんですよね……」

 

『詰んでるじゃないの……。ぐぬぬ、恋愛妖精の名に懸けてこの相談は解決させなければならないのに!』

 

「いつからそんなプライドを持ってるんですか……」

 

 議論に取り残されていたカスミさんがため息をつく。

 

「でも、実際どうすればいいのでしょうか?」

 

 その言葉にとうとうアジサイさんは声を詰まらせてしまいました。

 

 沈黙が落ちる。

 

 その答えを出したのはカスミさんでした。

 

「まぁ、恋愛素人の私からするとですね、当たって砕けろとか王子様に口説かれるとか、燃える恋愛には憧れますけど。でも、一緒に居て安心できる恋愛というものも素晴らしいものだと思います」

 

「一緒にいると安心できる恋愛ですか?」

 

「ルピコさんも感じているかもしれませんけど、気兼ねなく接することのできる相手って、自分が思うよりもずーっと大切な人なんです。だから、背伸びしすぎずに関わり合うのもいいんじゃないですか」

 

「……それって現状維持ってことですか」

 

「そ、そういう訳ではないですが……」

 

 あたふたするカスミさん。次の言葉をなんとか絞り出そうとしています。ちょっと意地悪な返答でしたかね。

 

 けど。

 

「ふふ、冗談ですよ。貴重なアドバイスありがとうございます」

 

 どこか腑に落ちた気がしました。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

「覚醒せよ!勝利の覚醒者ボルシャック・メビウス!」

 

 試練の塔の15階、今日はプレイヤーさんが担当する階ですね。今日の私は試練の塔のナビゲーターとしてのお仕事です。スゴイ数の挑戦者の方達が沢山いらっしゃいます。

 

 最近の試練の塔ですが、プレイヤーさんが守護者として塔の番人になってから頂上に到達する人は現れていません。全力で挑戦者を叩き潰すプレイヤーさんのせいといえば間違ってはいないんですよね。ここで負ける人が、その……かなり多いので。というか、プレイヤーさんが試練の塔で負けているところを見たことがありません。

 さすが、プレイヤーさんですね!

 

 そうしているうちに、プレイヤーさんのボルシャック・メビウスのダイレクトアタックが通りました。

 

「お疲れ様です、プレイヤーさん。今日はこれで終了なので、どっかご飯にでも行きませんか?」

 

 現在は21時を過ぎたところ。

 このエレベーターが壊れた塔を階段で降りたら21時半手前になりそうです。

 

「ラストオーダーに間に合うか微妙な時間だね」

 

「そうですね……。コンビニで済ませるのも健康に良くないですし……」

 

「じゃあ家に来る?」

 

「え!プレイヤーさんのお家ですか?」

 

「うん。とは言っても、簡単なものしか作れないけど。ルピコがいいなら」

 

「ぜひ行かせてください!」

 

 これは絶好のチャンスなのでは?

 気合いを入れますよ、私!

 

 ……私、臭くないですよね?

 15階の階段を登り降りして、アツいデュエルを見て。

 汗かいてませんよね?大丈夫ですよね?

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 

 

「お、お邪魔します……」

 

 初めてのプレイヤーさんのお部屋。

 もっとデュエマのカードで溢れていると思ったんですが、そんなことないんですね。

 玄関やリビングは物は少ないですけど綺麗に整頓されています。

 

「軽くご飯作るからその辺でくつろいでていいよ」

 

「いえ、手伝いますよ」

 

「いいの?ありがとう。じゃあジャガイモの皮剥きをお願いしようかな」

 

「任せてください!」

 

 ピーラーを受け取り、2つのジャガイモの表面を水で洗い流していく。

 

 肩を並べて沢山戦ってきましたけど、料理をするのは初めてですね。

 なんだかソワソワします。

 けど、プレイヤーさんはお肉を切ってフライパンを温めたり、お料理に集中していています。この状況も気にしていない様子。

 デュエマの時や困難に直面した時と一緒ですね。この集中している横顔が、何より私に勇気をくれるんです。

 

 互いに無言の時間。

 自分の担当することをしているだけ。

 トントンと野菜を切る音とかすかな呼吸音だけが流れる。

 

 この無言の時間が心地いいです。

 

 プレイヤーさんはもちろん、私もこの静かな時の流れを自然と過ごしています。

 お出かけだったり、外食したり、背を伸ばすことも時には大切だとは思います。

 けど、そうした時間があるからこそ、この等身大で過ごせる時間がより一層大切に感じられるんですね。

 

 ふふっ。

 

「どうしたのルピコ?」

 

「いえ、ただ幸せだなーって」

 

 守護者として、ナビゲーターとして、山積みのお仕事。

 責任重大ですが、その疲労感が今はただ嬉しい。

 

 プレイヤーさんの隣で笑っていられる日々。

 それがずっと続けばいいな、そう感じています。

 

「じゃあ、プレイヤーさんの手料理いただきますね!」

 

「どうぞ、召し上がれ」

 

「では、いただきます!」

 

 出来上がったアツアツの野菜炒めは、歯応えよく、噛んでいくとどこか甘かった。

 

「美味しいです!」

 

 自然と笑みが溢れました。

 

 プレイヤーさんを見ると、どこか呆けた顔をして。

 そして、少し顔を赤く染めて笑ってくれました。

 

 その笑顔を見たかったんですよ。

 背伸びしたデートでは見せてくれなかった顔。

 

 今だけはこの野菜炒めが高級イタリアンの味を超えるものに感じられます。

 

 恋愛って色々な形がある。

 人生に輝きをくれる。

 そんな日常の一幕。

 

 もう少しこのままで。

 そう願いながらこの時間を楽しみました。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 

 

 お皿を片付け、シャワーをお借りして、そろそろ帰ろうかというところで。

 

「そういえばルピコ」

 

「なんですか?」

 

「こないだのお買い物の時の話なんだけど」

 

「何かありましたか?」

 

「水着を選ばせたってことはさ、そういうこと?」

 

「……そういうこととは何でしょうか?」

 

「ストレートに言うよ。ルピコって俺のこと好きでしょ」

 

 え?

 

 言われた言葉が耳を通り過ぎる。

 意味が理解できずに流れた一瞬。

 意味を理解した瞬間、心臓が跳ね、耳が真っ赤に燃え上がる。

 

「ピィ!な、なんのことですか?」

 

 脳が混乱している。

 あの鈍感デュエマ狂人のプレイヤーさんが?

 私の気持ちに気づいていたの?

 今まで全くそんな素振り無かったのに?

 

 私が動揺している間に、気づけば壁際に追い込まれていました。

 右手を恋人繋ぎで握られ、もう片方の手は腰ごと抱き寄せられる。そして、真っ直ぐ見下ろされる形。

 

 圧迫され、逃げ場が一つ一つ潰されている感覚。

 

 普段とは違うプレイヤーさんの顔。今だけは直視することができません。

 けれども、反撃の言葉どころか顔を背ける逃げ場もありません。

 火照った顔を少しでも見られないように下を向いて抵抗します。

 

「あそこまで露骨にアピールされたら、俺だって気づくよ。なんだって、好きな女の子からのアプローチだし」

 

「す、好きな女の子?」

 

 耳元で囁かれ、ゾクリと体の芯から震える感覚。

 発せられた言葉に顔が勝手に上向いてしまいます。

 

 見えたのはプレイヤーさんの私の全てを見透かすような黄緑色の瞳。

 そこには初めて見る深い欲望がありありと浮かんでいました。

 

「ルピコ以外に考えられないよ、恋人になってくれ」

 

 それは、心の底から欲しかった言葉だった。

 

「……お、お願いします」

 

 気づけば口から返答していた。

 

 集中している時の勇気をくれる顔が近づいてくる。

 逃げ場なんてなかった。

 いや、逃げるなんて発想はあり得なかった。

 

 今更ながらこの状況に興奮している私を自覚する。

 けど、そんなことはどうでもよかった。

 

 瞳を閉じる。

 

 唇が重なる。

 

 

 

 等身大の恋愛だけではなく、燃えるような恋愛もいい。

 私の大切な一日となった日でした。

 


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