暴君忠長に転生したので、兄上のために日本列島をメンテします 〜SFチートのはずが、田んぼと水路と寺社ノードの保守係なんですが〜   作:パラレル・ゲーマー

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第六部・早く訪れた太平の世編
第60話 水神様、星の帳面を開く


 慶長十九年、冬。

 

 大坂冬の陣の「後始末」の第一段階を終え、俺たち徳川の一門は、慌ただしく江戸への帰途についていた。

 

 大坂城の当座の押さえと周辺の統治は、家康が選んだ信頼の厚い譜代大名と、普請奉行・町奉行格の実務衆に委ねられた。

 

 彼らには、城の接収、牢人衆の解散と再就職の差配、そして大坂の町のインフラ整備という、途方もない実務が残されている。

 

 俺が掘り当てた水脈や温泉のおかげで、現地の空気は敗戦の地とは思えないほど明るいものになっていたが、徳川の中枢はすでに「次の仕事」へと意識を向けていた。

 

 帰路の道中、俺は自分の文机代わりの葛籠を見つめて、深いため息をついた。

 

「……大坂の温泉の導線を整えて、井戸の候補地を台帳にして、新しい町割りの注意点を残して。ようやく江戸に戻れると思ったのに、帰り道の俺の荷物、行きよりも台帳が増えてるんですけど」

 

 隣で馬に揺られていた竹千代兄上が、平然と言った。

 

「それだけ、大坂でまっとうな仕事をしたということだ」

 

「褒め言葉のはずなのに、全く嬉しくないし胃が痛いです」

 

 *

 

 その夜、帰途の宿場町にて。

 

 俺は一人、自室で大坂で得た神仏ノードのログを整理していた。

 

 大坂という巨大な都市で、水と信仰のレイヤーを修復した影響は大きかった。端末には、以前はなかった項目がずらりと並んでいる。

 

『大坂広域神仏ノード:水土マップ保存完了』

 

『温泉反応:三箇所登録/管理引継ぎ済』

 

『都市水路構造:暫定解析完了』

 

『追加レイヤー:天体観測ノード/初段解放』

 

「……へー、天体観測ノード。……って、いや、意味分かんないぞ?」

 

 俺が首を傾げていると、空間が微かに歪み、KAMI様が現れた。

 

『やっほー。ようやく気づいた?』

 

「水神様なのに、なんで星の観測なんてしなきゃいけないんですか。いくらなんでも担当範囲が広がりすぎでは?」

 

『水は天から降るでしょ。星の動きは暦に関わるでしょ。暦は田んぼの種まきや収穫に関わるでしょ。……はい、完全に管轄内ね』

 

「理屈が雑すぎる!!」

 

『この時代では、星の動きは政治と農業と宗教、そのすべてに密接に繋がっているの。だから水土御用が極まってくれば、当然、暦と天文にも手を突っ込むことになるわ』

 

「やめてください。水路と泥の管理だけでも仕事が多いのに、空の機嫌まで見てたら過労で死にます」

 

 *

 

 KAMI様は、いつになく真面目な顔になって説明を続けた。

 

『いい? この時代、空に現れる彗星や客星は、ただの綺麗な天体現象じゃないの。天下の吉凶、王朝の運命、戦の兆し、そして天命の揺らぎ。……人々には、そういう恐ろしい「天の言葉」として解釈されるわ』

 

「客星って、突然空に現れる星のことですよね。彗星とか、新星とか、超新星とか」

 

『そう。現代の天文学なら、星の爆発やほうき星として分類できるけど、この時代の人間にとっては、「普段はなかった星が、突然空に現れた」というだけで、世を揺るがす大事件なのよ』

 

 KAMI様は、歴史の核心を突いた。

 

『本来の歴史では、この慶長十九年、大坂冬の陣の最中に客星が記録されるわ。日本各地の記録にも残るし、権力者たちが祈祷を行った形跡もある。……でも、この世界では大坂冬の陣が早く終わりすぎた』

 

「……つまり?」

 

『史実なら戦の真っ最中に起きるはずだった空のイベントが、この世界では「戦が終わった直後」に重なるのよ。政治的には、かなり厄介ね』

 

 俺は、その意味を理解して顔をしかめた。

 

『徳川が豊臣を討ち、太閤の恩を忘れたから天が怒ったのだ、と言う者が必ず出る。逆に、豊臣を下して徳川の天下が定まったことを、天が祝福して示したのだ、と言う者も出るわ』

 

「どっちに転んでも、誰かの政治利用のダシにされるやつじゃないですか」

 

『その通り』

 

 *

 

 KAMI様はさらに冷酷な現実を突きつける。

 

『もし、来年の田んぼの実りが良ければ、「あの星は徳川の瑞兆だった」と言われる。逆に不作や疫病が流行れば、「大坂を奪った祟りだ」と噂されるわ』

 

「天体の動きと田んぼの不作なんて、直接関係ないですよね?」

 

『現代の科学ではね。でも、この時代の民草の心には、大いに関係があるわ』

 

「うわぁ……」

 

『さらに厄介なのは、徳川中枢もそれを完全に無視できないってこと。天変があれば、権力者は祈祷を命じないといけない。祈祷は、この時代ではただの迷信じゃなく、政治であり、立派な医療行為であり、危機管理でもあるのよ』

 

「祈祷が、医療行為?」

 

『そう。病気平癒、厄除け、延命、将軍家の無事。……そういう祈祷は、医学が未発達なこの時代では、本気で「治療」や「国の防衛」として扱われるの。彼らにとってはね』

 

「じゃあ、俺が『ただの迷信だから気にせず無視しましょう』なんて言えないわけか」

 

『言ったら、あんたの方が「天下の常識を欠いた、空気の読めない馬鹿」になるわよ』

 

「言い方!」

 

 *

 

 その時、端末が赤いアラートを点滅させた。

 

『天体観測ノード:初段稼働中』

 

『客星反応:近日、肉眼観測可能域へ接近』

 

『推定観測開始:数日〜二十日以内』

 

『社会情勢変化:要注意』

 

『解釈分岐リスク:徳川瑞兆/豊臣祟り/天下交代/将軍家厄災』

 

『推奨:徳川中枢との情報共有』

 

「……数日から二十日以内に、客星が出る?」

 

『出るわね』

 

「これ、めちゃくちゃ大事なイベントじゃん!」

 

『だから言ってるでしょ。天体の動きは止められない。でも、その星を見て人間が勝手に燃え上がるのは、前もって準備しておけば多少は制御できるかもしれないわ』

 

「大御所様と兄上に話そう!」

 

『珍しく即断ね』

 

「いや、これ黙ってたら、絶対あとで泥沼の地獄になるやつですから!」

 

 *

 

 俺は、宿の奥の座敷へ駆け込んだ。

 

 そこには、幸いにも家康、秀忠、竹千代の三人が揃って茶を飲んでいた。

 

「どうした国松。顔が、また猛烈に胃を痛めた時の顔になっておるぞ」

 

 家康が、可笑しそうに目を細める。

 

「また何か、厄介なものが見えたのか」

 

 竹千代が、茶碗を置いて身構えた。

 

「これから……空に『客星』が出るみたいなんですけど。……どうします?」

 

「待て待て待て。……客星?」

 

 家康の動きがピタリと止まる。

 

「星の異変まで分かるというのか」

 

 秀忠が、驚きに目を見開く。

 

「大坂の水脈から、なぜ急に空へ行くのだ」

 

 竹千代の鋭いツッコミに、俺は半泣きで答えた。

 

「私が一番聞きたいです! 大坂で神仏ノードが育って、新しく『天体観測』の機能が解禁されたんです。水と暦と田んぼが繋がっているから管轄内だそうです。私は全く納得していませんが!」

 

「星の理にまで、精通しておるのか……」

 

 家康が、底知れぬ者を見るような目で俺を見つめる。

 

「精通してません! 見えただけです! しかも、数日から二十日後くらいで、はっきりと客星が現れるという予兆が出ています」

 

 *

 

 俺は、未来の知識とこの時代の常識を慎重に切り分けながら説明した。

 

「はっきり言います。……星の出現そのものが、天下の吉凶を直接決めるわけではありません。迷信……いえ、この時代の言い方をするなら、『星の理と人の世の動きは、直接は繋がっていない』ということです」

 

「直接は、か」

 

 家康が、顎髭を撫でる。

 

「はい。でも、民草や公家、寺社、そして武家は、そうは受け取りません。空に急に新しい星が現れれば、必ずそこに『意味』を求めます」

 

「徳川の勝利の瑞兆、あるいは豊臣を追った祟りか」

 

 竹千代が、即座に政治的な解釈を並べる。

 

「その両方がありえます。後付けで何でも乗せられますから」

 

「厄介だな」と秀忠が顔をしかめた。

 

「しかも、来年の米が豊作なら星のおかげ、不作なら星のせい。新しい病が出ても星のせい。豊臣の旧臣が不満を漏らして騒いでも星のせい。……全部、星に結びつけられます」

 

「なるほど」

 

 家康は、小さく息を吐いた。

 

「火のつく前の『火薬』を見つけたようなものか」

 

「はい。星そのものは火薬じゃありませんが、それを見た『人間の解釈』が、爆発する火薬になります」

 

 *

 

 家康は、腕を組み、しばらく黙考した。

 

「……待て。今、性急に結論は出せぬぞ」

 

「大御所様?」

 

「今は、大坂の戦の『後始末』の真っ最中じゃ。豊臣の移封、大坂城の接収、牢人の処理、そして大動員した諸大名の帰国。……そこへ、天変の噂が重なれば、どこでどう火がつくか全く分からぬ」

 

「今現れれば、確かに困るな」

 

 秀忠も同意する。

 

「吉兆と見る者もいれば、凶兆と見る者もいる。こちらで公式の解釈を定める前に、世間に勝手な噂が走れば、ひどく面倒なことになる」

 

 竹千代が、世論の制御の難しさを指摘した。

 

「でも、今の世の空気なら、『徳川の天下が定まった吉兆』と取る者が多いんじゃないですか?」

 

 俺が言うと、家康は首を振った。

 

「分からぬぞ。徳川が豊臣を追い、大坂を理不尽に奪ったからこそ天が異を示したのだと、そう触れ回る者も必ず出る」

 

「でも、大坂の町は焼いてませんし、秀頼公の命も取ってないですよね?」

 

「それはそうじゃ。だが国松よ。……噂というものは、事実よりも『都合よく』走るものなのだ」

 

 その言葉には、長き戦国を生き抜いた天下人の、人間という生き物に対する深い不信と理解があった。

 

 *

 

「ならば、どうする。祈祷を命じるべきか」

 

 秀忠が問う。

 

「それは……すぐにやった方がいいと思います」

 

 俺が即答すると、竹千代が眉をひそめた。

 

「星の理は人の世と関係ないと言ったばかりだぞ」

 

「関係ないからこそ、社会的には大いに関係があるんです」

 

 俺は、政治的ポーズの重要性を説明した。

 

「もし大御所様や将軍家が、客星が出ても何もせず無視すれば、『公儀は天変を軽んじている』『天の言葉を恐れぬ傲慢な武家だ』と批判されます。祈祷は、空の星を消したり変えたりするためじゃありません。人々に、『公儀は天変を真摯に受け止め、天下の安寧を祈っている』と示すための『政治』です」

 

 家康が、深く感心したように頷いた。

 

「……祈祷もまた、政か」

 

「はい。たぶんこの時代では、医療であり、危機管理であり、最も分かりやすい政治的振る舞いです」

 

「ならば、禁裏や寺社とも、足並みを揃える必要があるな」

 

 竹千代が、京都との連携を視野に入れた。

 

 *

 

 俺は、解釈が暴走しないための『制御案』を提示した。

 

「表向きの公式な解釈としては……『戦が終わり、豊臣の命も残り、天下が定まった。その大きな節目に、天が現した星である。公儀はこれを恐れ、決して驕ることなく、天下安寧のために祈祷を行う』という形にするのが良いかと思います」

 

「徳川の勝利の自慢には、しないのだな」

 

 秀忠が確認する。

 

「はい。『徳川が勝った吉兆だ!』と公儀が調子に乗りすぎると、反感を買い、足元をすくわれます。逆に『祟りだ、凶兆だ!』と世間に騒がれるのも困ります。だから、『天の示しを畏れ、驕らずにひたすら祈る』という姿勢が、一番安全で批判されにくいんです」

 

「勝って驕らぬ徳川、か」

 

 家康が、面白そうに呟いた。

 

「豊臣助命とも繋がるな。命を取らずに天下を定めたからこそ、驕らず天を恐れて祈る。……理にかなっている」

 

 竹千代も同意する。

 

「悪くない」

 

 秀忠が決裁を下す。

 

『ずいぶん、政治の落とし所を作るのが上手くなったじゃない』

 

(ひたすら胃痛で鍛えられましたからね)

 

 *

 

 家康は、即座に天変対策の指示を出した。

 

「客星が出た場合、陰陽道・暦博士に即座に観測記録を取らせよ。同時に、諸国の寺社に天下安寧の祈祷を命じる」

 

「解釈は『天下安寧を祈るべき天の示し』に統一せよ。『徳川勝利の吉兆』と騒ぎすぎる阿呆も、『豊臣の祟り』と煽る不届き者も、公儀の力で抑え込め」

 

「大坂、京都、江戸で、噂の流れを厳重に監視せよ。……そして、客星の記録は水土御用ではなく、暦と天文の『別帳面』として管理せよ」

 

「星そのものは空で動かせぬ。ならば、地上の『人の口』を整えるしかあるまい」

 

 家康の言葉に、俺は苦笑した。

 

「大御所様、その言い方、完全に『情報統制』です」

 

「政とは、そういうものじゃ」

 

 *

 

 一件落着かと思いきや。

 

 KAMI様が、俺の耳元でさらっと恐ろしいことを言った。

 

『ちなみに。天体観測イベントは、これで終わりじゃないわよ。まだまだあるからね』

 

「……はい?」

 

『近年、たまたま目立つ大イベントが少なかっただけ。これから数年間、客星や大彗星の大きめなイベントが立て続けに起きるわよ』

 

 端末のログが、追い討ちをかける。

 

『未来天変候補:元和三年客星』

 

『未来天変候補:元和四年大彗星群』

 

『世界規模観測イベント:影響度高』

 

『ローマ・明・朝鮮・欧州への歴史的影響:高』

 

「えー……勘弁してくれよ……」

 

 俺は、机に突っ伏した。

 

『ふふふ。水脈、温泉、田んぼの次は、星ね』

 

「水神様の守備範囲、絶対におかしいって!」

 

『天から雨が降る以上、空の星の動きも水神様の立派な職場よ』

 

「屁理屈すぎる!!」

 

 *

 

 俺は、星の話から連想し、今後の『外交爆弾』についても前方確認しておくことにした。

 

「そういえば……支倉殿に持たせた、ローマ法王との『通話札』の件も、そろそろ準備を考えないといけませんよね」

 

「うむ。支倉の遣欧使節は、まだ羅馬までは届いておらぬ。だが、いずれ確実に届く」

 

 家康が、遠い海へと思いを馳せる。

 

「その頃には、国内での『禁教令』と、外に向けた『法王との対話』という大いなる矛盾を、どう説明するかが問題になるな」

 

 秀忠が、頭の痛い外交問題を指摘した。

 

「さらに、明の国とも、そろそろ正式に接触したいです。……ただ、天文や暦の話をするにしても、いきなり皇帝に照会するのは危険です。琉球や薩摩を経由して、まずは明の『天文官』に実務の照会をする形が安全かと」

 

 家康が、スッと目を細めた。

 

「明か」

 

「秀吉公の朝鮮出兵の深い傷が、かの国にはまだ残っている。決して軽くは扱えぬ相手だ」

 

 竹千代も、東アジアの緊張関係を理解している。

 

「はい。だからこそ、政治や外交ではなく、まずは『暦と天文の照会』という名目で接触するんです。客星や彗星の記録を共有する形なら、接触の口実としては極めて自然です」

 

「天を読む話は、明の皇帝の絶対的な権威にも関わるぞ」

 

「だからこそ、慎重にやるんです。いきなり万暦帝ではなく、まずは実務の天文官からです」

 

 これで、客星対策、ローマ法王との通話、明の天文官への接触という、今後の三本の巨大な柱が揃ってしまった。

 

 *

 

 竹千代が、腕を組んで淡々と俺の仕事を整理した。

 

「つまり。これからお前は、大坂の水路、温泉、新しい町割り、牢人対策、武家諸法度、参勤の種となる制度の考案、京都の禁裏との挨拶、羅馬の法王との通話、明国との天文接触、そして客星の解釈制御を、同時に全て抱えるわけだな」

 

「……一つにまとめないでください。死にたくなります」

 

「死なぬために、やるのだろう」

 

「ぐっ……! 正論が痛い!」

 

 家康は、苦しむ俺を見て、腹を抱えて楽しそうに笑った。

 

「よいよい。戦は終わったが、天下の政はこれからが面白いところよ!」

 

「大御所様は、面白がらないでください!」

 

 *

 

 帰路の夜。

 

 俺は宿の縁側に出て、冷たい冬の夜空を見上げた。

 

 まだ、空に客星は出ていない。

 

 だが、端末には確実な予兆が出ている。

 

『客星出現予測:残り数日〜二十日以内』

 

『社会情勢変化:要注意』

 

『祈祷・暦・噂制御:事前方策準備中』

 

『将来天変イベント:複数待機』

 

「星は、ただ空に出るだけだ。誰を呪うわけでもない。……でも、それを見た人間が勝手に意味をつけて、祈り、恐れ、勝手に天下を揺らすんだよな」

 

『そうよ。水は流れる。噂も流れる。星の意味も、人の口を介して流れていく。……その流れるものを、氾濫しないようにどう整えるかが、あんたの仕事でしょ』

 

「水神様、ついに星の噂まで『流量管理』ですか」

 

『よかったじゃない。見事な職域拡大よ』

 

「前世のブラック企業の上司みたいな言い方なんですよ、それ」

 

 大坂の地で、水脈を暴いた。温泉を掘り当てた。

 

 町を生かすための、地下の水土マップも手に入れた。

 

 そして今度は、空だった。

 

 近く、客星が現れる。

 

 星そのものは、きっとただの天体現象だ。けれど、この時代の人々にとって、それは天下の吉凶を告げる『天の言葉』になる。

 

 ならば、俺がせっせと泥にまみれて整えるべきものは、水路だけではない。

 

 星を見た人々の口と、噂と、祈りの流れまで……少しでも暴走しないように、制御しなければならないのだ。

 

 戦は終わった。

 

 けれど、天下を安定させるための実務には、終わりがない。

 

 俺の頭の中には、また新しい厄介な仕事の帳面が降ってきていた。

 

 表題。

 

『客星出現に伴う、社会情勢変化への事前対応と噂の制御案』。

 

「……いや、だから表題が重すぎるんだよ!」

 

 俺の叫びは、まだ何も現れていない冬の夜空へ、虚しく吸い込まれていった。

 

 




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