ようこそ軍神至上主義の教室へ   作:あおいなり

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白き影は棘の折れ方を想う

 

第26話

 

混合合宿、初日の夜。

 

一日の活動を終えた生徒たちは、それぞれの宿泊棟へ戻っていた。

 

合宿所の夜は、学校の寮とは違う静けさがあった。

 

廊下に響く足音。

 

遠くから聞こえる話し声。

 

消灯時間を意識した、少し抑えられた空気。

 

窓の外には冬の闇が広がり、ガラスに映る室内の明かりがやけに白く見えた。

 

影たちの大グループも、入浴や点呼を終え、部屋で過ごす時間に入っていた。

 

同じ部屋には、影、真鍋、藪、白波、網倉、佐藤、森、神室、山村がいた。

 

完全に打ち解けた空気ではない。

 

しかし、朝よりは少しだけ柔らかい。

 

共同生活とは不思議なものだと、影は思う。

 

同じ場所で歩き、同じ作業をし、同じ食事を取る。

 

それだけで、人との距離はわずかに変わる。

 

近づきたくなくても、同じ空気を吸うことになる。

 

避けたい相手でも、隣に座ることになる。

 

混ざるとは、綺麗なことばかりではない。

 

むしろ、気まずさや棘を含んだまま、同じ場所に置かれることなのかもしれない。

 

「はぁ……疲れた」

 

佐藤が布団の上に座り込みながら言った。

 

「まだ一日目なのに、もう結構きついね」

 

森も小さく頷く。

 

「うん。気を遣う場面が多かった」

 

網倉は白波の方を見て笑う。

 

「千尋は代表お疲れ」

 

白波は少し照れたように笑った。

 

「全然、うまくできてないよ」

 

「そんなことないって。最初より声出てたし」

 

佐藤も頷く。

 

「うん。最後の点呼、ちゃんと聞こえてたよ」

 

白波はほっとしたように息を吐いた。

 

「ありがとう」

 

その様子を、真鍋は少し離れた位置で見ていた。

 

佐藤と森が白波に声をかけるたびに、ほんの少しだけ視線が揺れる。

 

軽井沢本人はいない。

 

けれど、佐藤と森は軽井沢に近い。

 

その事実は、真鍋の中にまだ残っている。

 

藪は真鍋の隣に座り、何も言わずに髪を拭いていた。

 

神室は壁にもたれ、退屈そうにスマートフォンを眺めている。

 

山村は静かに荷物を整理していた。

 

影は窓際に座り、部屋の中を見ていた。

 

「また見てる」

 

真鍋が言った。

 

「はい」

 

「もうそれ返事として完成してるよね」

 

「便利ですので」

 

「便利とかじゃない」

 

真鍋は呆れたように言ったが、少しだけ笑っていた。

 

それに気づいたのか、佐藤が真鍋を見る。

 

「真鍋さん、今日けっこう大変だったね。食堂準備」

 

真鍋の表情が一瞬固まる。

 

けれど、すぐに小さく息を吐いた。

 

「別に。あれくらい普通でしょ」

 

「柊先輩、ちょっと言い方きつかったよね」

 

佐藤が言うと、森も控えめに頷いた。

 

「うん。悪い人って感じではないけど……少し、怖い」

 

白波は言いにくそうに口を開いた。

 

「私にも、ちょっと……刺さる感じはあったかも」

 

網倉が頷く。

 

「だよね。褒めてるんだけど、なんか上からっていうか」

 

神室が顔を上げた。

 

「普通に嫌な人でしょ」

 

部屋の空気が少しだけ止まる。

 

神室は気にせず続けた。

 

「笑顔で言えば何言ってもいいと思ってるタイプ」

 

「神室さん、はっきり言うね……」

 

白波が苦笑する。

 

「はっきり言わないと分からないでしょ」

 

神室はそう言って、またスマートフォンへ視線を落とした。

 

山村が小さく言う。

 

「でも、水瀬先輩がいてくれてよかったです」

 

その声に、全員が少しだけ山村を見る。

 

山村は視線を下げながら続けた。

 

「柊先輩の言葉の後に、水瀬先輩が言い直してくれると……少し、安心しました」

 

白波が頷く。

 

「うん。すごく助かった」

 

影は山村を見た。

 

小さな声。

 

だが、正しい場所に置かれた言葉。

 

山村はやはり、よく見ている。

 

「山村さんは、棘の後の薬にも気づいているのですね」

 

山村は困ったように瞬きをした。

 

「えっと……薬?」

 

神室がすぐに言う。

 

「上代語だから気にしなくていい」

 

「上代語、ですか」

 

影が首を傾げる。

 

真鍋が横から言った。

 

「変な例えって意味」

 

「なるほど」

 

「納得するんだ」

 

部屋に小さな笑いが起きた。

 

完全に明るいわけではない。

 

しかし、朝のような硬さは少し薄れている。

 

影はその変化を静かに見ていた。

 

 

少しして、部屋の空気が落ち着いた頃。

 

真鍋がぽつりと言った。

 

「柊先輩ってさ」

 

全員の視線が向く。

 

真鍋は少しだけ言いにくそうに眉を寄せた。

 

「何で、ああいう言い方するんだろ」

 

佐藤が首を傾げる。

 

「ああいうって?」

 

「褒めてるみたいなのに、何か下に見てる感じ」

 

真鍋は視線を落とす。

 

「怒鳴られた方が、まだ分かりやすい」

 

その言葉に、藪が小さく頷いた。

 

「うん。笑ってるから、言い返しにくい」

 

白波も静かに言った。

 

「私も、最初は自分が全部悪いのかなって思っちゃった」

 

網倉がすぐに言う。

 

「千尋は悪くないよ」

 

「うん、分かってる。でも、言われ方がそういう感じだったから」

 

神室は鼻で笑う。

 

「それが狙いなんでしょ」

 

「狙い……」

 

森が小さく呟く。

 

影は静かに口を開いた。

 

「柊さんは、相手を選んでいます」

 

真鍋が影を見る。

 

「相手?」

 

「はい。強く反発する方には深く刺しません。神室さんには軽く触れるだけでした」

 

神室が顔を上げる。

 

「私?」

 

「はい」

 

影は続ける。

 

「水瀬先輩にも、正面からは刺しません。ですが、白波さんや真鍋さん、山村さんのように、反論しにくい方には細く刺します」

 

部屋の空気が少しだけ変わった。

 

白波は少し驚いた顔をする。

 

山村は目を伏せる。

 

真鍋は何も言わない。

 

影は窓の外へ視線を向けながら言った。

 

「柊さんの棘は、強い相手を倒すためではありません。相手を少しずつ下に置き、自分が上に立つためのものです」

 

「それって」

 

真鍋が言う。

 

「ただ嫌な人じゃん」

 

「はい」

 

影は頷いた。

 

「ですが、嫌な方ほど、追い詰めた時に形が見えやすいです」

 

その声は静かだった。

 

けれど、真鍋はその中に何かを感じた。

 

「……上代?」

 

「はい」

 

「また、変な目してる」

 

影はゆっくり瞬きをした。

 

「そうでしょうか」

 

「うん」

 

真鍋は少しだけ身を引く。

 

「昼間のやつに近い」

 

影の瞳には、ほんのわずかな熱があった。

 

怒りではない。

 

正義感でもない。

 

何かを見つけた者の目。

 

獲物を見つけた獣のような、けれどもっと澄んだ光。

 

白波も、少し不安そうに影を見る。

 

「上代さん?」

 

影は小さく微笑む。

 

「申し訳ありません。少し、考えていました」

 

神室が目を細める。

 

「何を?」

 

「柊さんの棘は、どこで折れるのかを」

 

部屋が静かになった。

 

真鍋が顔をしかめる。

 

「普通、そういうこと考える?」

 

「考えませんか」

 

「考えない」

 

「そうですか」

 

影は穏やかに言った。

 

「私は少し、見てみたいと思ってしまいました」

 

「何を」

 

「柊さんが笑顔を保てなくなる瞬間です」

 

その言葉は、静かだった。

 

だからこそ、少し怖かった。

 

佐藤が戸惑ったように口を開く。

 

「それって、柊先輩をどうにかするってこと?」

 

「今すぐ何かをするつもりはありません」

 

影は答える。

 

「ただ、見たいのです」

 

神室が低く笑った。

 

「上級生相手に、物騒なこと考えるね」

 

「物騒でしょうか」

 

「物騒でしょ」

 

真鍋が小さく言った。

 

「上代ってさ」

 

「はい」

 

「助けてくれてるのか、壊れるところを見たいのか、分かんない時ある」

 

影は真鍋を見た。

 

しばらく沈黙が落ちる。

 

そして、影は静かに答えた。

 

「両方かもしれません」

 

真鍋の顔が引きつる。

 

「そこは否定してよ」

 

「申し訳ありません」

 

「謝るところじゃない」

 

白波は少し困ったように笑う。

 

「でも、柊先輩と揉めるのは危ないと思う」

 

「はい」

 

影は頷く。

 

「ですので、すぐには刺し返しません」

 

神室が鼻で笑う。

 

「すぐには、ね」

 

影は微笑む。

 

「水瀬先輩にも注意されましたので」

 

山村が小さく言う。

 

「でも……柊先輩の言い方が続くなら、誰かが止めないと、白波さんがつらくなると思います」

 

白波が驚く。

 

「山村さん……」

 

山村はすぐに視線を下げた。

 

「ご、ごめんなさい。勝手に」

 

「ううん。ありがとう」

 

白波は少し照れたように笑った。

 

真鍋は山村を見てから、影へ視線を戻す。

 

「で、上代はどうするの」

 

「まずは見ます」

 

「またそれ」

 

「柊さんが誰を刺すのか。どこで強く刺すのか。誰を避けるのか」

 

影は淡々と言った。

 

「それが分かれば、刺し返す場所も見えます」

 

真鍋は小さく息を吐く。

 

「やっぱり怖い」

 

「申し訳ありません」

 

「でも」

 

真鍋は少しだけ柊のいない扉の方を見る。

 

「ちょっとだけ、見てみたいかも」

 

影が視線を向ける。

 

「柊さんが折れるところを、ですか」

 

「違う」

 

真鍋はすぐに否定した。

 

「白波とか山村が、ああいう言い方で縮こまらなくなるところ」

 

その言葉に、影は少しだけ目を細めた。

 

「真鍋さんは、変わりましたね」

 

「何が」

 

「見る場所が、少し外へ向いています」

 

「……上代のせいかもね」

 

「それは光栄です」

 

「褒めてない」

 

けれど、真鍋の声は柔らかかった。

 

 

消灯前の短い自由時間。

 

影は一人で廊下へ出た。

 

部屋の中には、まだ小さな話し声が残っている。

 

だが、廊下は少し冷たく、静かだった。

 

窓の外には、夜の合宿所が広がっている。

 

遠くに見える別棟の明かり。

 

その下で、別のグループの生徒たちが数人、教師に誘導されながら移動していた。

 

影はしばらくその光景を見ていた。

 

柊の棘。

 

水瀬の静けさ。

 

白波の不安。

 

真鍋の変化。

 

そして、自分の中にある熱。

 

影はその熱を、完全には嫌っていなかった。

 

人が耐える姿。

 

壊れかける姿。

 

それでも立つ姿。

 

あるいは、折れる姿。

 

そのすべてに、影は美しさを見てしまう。

 

それは正しいことではないのかもしれない。

 

だが、否定しきることもできなかった。

 

「上代さん?」

 

柔らかい声がした。

 

影が振り返ると、そこには一之瀬帆波がいた。

 

Bクラスの中心にいる少女。

 

冬休みに、ケヤキモールで出会った穏やかな輪の中心。

 

彼女は少し驚いたように微笑んだ。

 

「こんなところで会うなんて、偶然だね」

 

「こんばんは、一之瀬さん」

 

影は軽く頭を下げる。

 

「少し、夜風を見ていました」

 

「夜風って、見るものなのかな」

 

一之瀬は小さく笑った。

 

「上代さんらしいね」

 

彼女の笑顔は、柊とは違った。

 

相手を下に置かない。

 

試すような笑みでもない。

 

ただ、相手がそこにいていいと告げるような温度がある。

 

影はそれを見て、静かに言った。

 

「一之瀬さんの笑顔は、人を下に置きませんね」

 

「え?」

 

一之瀬は目を瞬かせた。

 

「それ、褒めてる?」

 

「はい。たぶん」

 

「たぶんなんだ」

 

一之瀬は困ったように笑った。

 

「でも、ありがとう」

 

影は彼女を見る。

 

「柊先輩とは違います」

 

「柊先輩?」

 

「同じ大グループの二年生です」

 

「ああ……上級生とのグループ、少し大変?」

 

「はい。棘が多いです」

 

「棘……」

 

一之瀬は少し考える。

 

「何となく、分かるかも。上級生がいると、気を遣うよね」

 

「一之瀬さんは、人に気を遣わせる方ではありません」

 

「そうかな」

 

「はい」

 

影は少しだけ目を伏せる。

 

「一之瀬さんは、人を安心させて動かします」

 

「動かすって言われると、少し変な感じだね」

 

一之瀬は苦笑した。

 

「私は、みんなが安心して話せる方がいいなって思ってるだけだよ」

 

「それが、人を動かす力なのだと思います」

 

一之瀬は少し黙った。

 

そして、穏やかに言った。

 

「上代さんは、今日何かあった?」

 

影は一之瀬を見る。

 

「どうしてそう思われたのですか」

 

「目が少し、怖かったから」

 

影は瞬きをした。

 

一之瀬の声は責めるものではなかった。

 

ただ、心配するような声だった。

 

「怖い、ですか」

 

「うん。誰かを見ているというより、何かが壊れるところを待っているみたいな」

 

影は黙る。

 

一之瀬は続ける。

 

「ごめんね。変なこと言ってたら」

 

「いえ」

 

影は静かに首を横に振った。

 

「正しいと思います」

 

「正しい?」

 

「私は、壊れるところを見たいと思っていました」

 

一之瀬の表情が少しだけ変わる。

 

驚き。

 

けれど、拒絶ではない。

 

「誰かを、壊したいの?」

 

「分かりません」

 

影は答えた。

 

「壊したいのか、止めたいのか、見たいだけなのか。時々、自分でも分からなくなります」

 

一之瀬は少しだけ眉を寄せた。

 

「それは、少し危ないね」

 

「はい」

 

「でも、分からないって言えるなら、まだ大丈夫だと思う」

 

「そうでしょうか」

 

「うん」

 

一之瀬は優しく笑った。

 

「だって、本当に危ない人は、自分が危ないって思わないから」

 

影はその言葉を聞いた。

 

柔らかい。

 

しかし、不思議と刺さらない。

 

一之瀬の言葉は、相手を押さえつけない。

 

それでも、中心へ届く。

 

「一之瀬さんは、不思議な方ですね」

 

「それ、上代さんに言われるとちょっと複雑かも」

 

「申し訳ありません」

 

「謝らなくていいよ」

 

一之瀬は少しだけ窓の外を見る。

 

「もし、誰かがつらそうなら、助けてあげたいって思うよね」

 

「はい」

 

「でも、助け方を間違えると、その人も、自分も傷つくことがあると思う」

 

影は黙って聞いていた。

 

「だから、上代さんが誰かを助けようとしてるなら、壊す方じゃなくて、立てる方を選んであげて」

 

立てる方。

 

その言葉は、影の中に静かに落ちた。

 

軽井沢は折れなかった。

 

龍園は敗北を抱えて立った。

 

真鍋は気まずさを抱えながら少しずつ前を向いている。

 

立つ。

 

壊れることではなく。

 

「難しいですね」

 

影が言うと、一之瀬は笑った。

 

「難しいね。でも、たぶん大事だよ」

 

「覚えておきます」

 

「うん」

 

その時、廊下の向こうから二年生の男子たちの声が聞こえた。

 

軽い笑い声。

 

その中心に、南雲雅の姿があった。

 

南雲は誰かと話しながら歩いていたが、影と一之瀬の方へ一瞬だけ視線を向けた。

 

目が合う。

 

南雲は軽く笑った。

 

爽やか。

 

というより、面白いものを見つけたような笑み。

 

来るなら来い。

 

そう言っているような、余裕のある笑顔だった。

 

一之瀬が少しだけ姿勢を正す。

 

「南雲先輩……」

 

南雲は声をかけるほどではなく、軽く手を上げただけで通り過ぎていった。

 

だが、その一瞬で、廊下の空気は少し変わった。

 

影はその背中を見送る。

 

「一之瀬さん」

 

「うん?」

 

「南雲さんの笑顔は、一之瀬さんとも柊さんとも違いますね」

 

一之瀬は少し困ったように笑った。

 

「南雲先輩は、すごい人だよ。生徒会長だし、二年生の中心みたいな人だから」

 

「はい」

 

影は静かに言った。

 

「人を盤上へ招く笑顔でした」

 

「盤上?」

 

「来るなら来い。面白ければ拾う。つまらなければ流れの外へ押し出す」

 

影は南雲の消えた廊下を見る。

 

「そういう笑顔に見えました」

 

一之瀬は少しだけ黙った。

 

「上代さんの見方、やっぱり鋭いね」

 

「そうでしょうか」

 

「うん。でも、気をつけてね。南雲先輩は、軽く見えても簡単な人じゃないと思うから」

 

「はい」

 

影は頷いた。

 

「とても興味深い方です」

 

「そこは、怖いって言うところかも」

 

「最近、よく言われます」

 

一之瀬は小さく笑った。

 

「じゃあ、私そろそろ戻るね。上代さんも、消灯に遅れないようにね」

 

「はい。ありがとうございます」

 

一之瀬は軽く手を振り、廊下を戻っていった。

 

影は一人、窓の前に残る。

 

一之瀬の笑顔。

 

柊の笑顔。

 

南雲の笑顔。

 

同じ笑顔でも、向いている先が違う。

 

安心させる笑顔。

 

下に置く笑顔。

 

盤上へ招く笑顔。

 

人を動かす方法は、一つではない。

 

影は、自分の手を見た。

 

自分は、どう動かすのだろう。

 

見るだけなのか。

 

壊すのか。

 

立たせるのか。

 

その答えは、まだ見えない。

 

だが、明日になれば、また棘は動く。

 

柊はまた笑うだろう。

 

白波はまた迷うだろう。

 

真鍋はまた刺さるだろう。

 

水瀬はまた静かに整えるだろう。

 

そして影は。

 

「……棘の折れ方ではなく、立たせ方」

 

影は小さく呟いた。

 

口にしてみても、まだ少し馴染まない。

 

けれど、その言葉は消えなかった。

 

廊下の窓に映る自分の目は、いつもの静けさを取り戻していた。

 

だが、その奥にある熱は、まだ完全には消えていない。

 

白き影は、消灯前の冷たい廊下で静かに思った。

 

明日。

 

柊美咲の棘は、きっとまた誰かへ向かう。

 

その時、自分は何を見るのか。

 

そして、何を選ぶのか。

 

混ざる戦場の夜は、静かに更けていった。

 

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