日本のお偉いさん達は戦車道の人気の位置を不動のものにしたいと考えていた。
この物語はそんなことに振り回されるはなしである。
そんな、パッションとガルパンの映画を楽しみにしているのが混じってしまってできた作品です。
お目汚しになるかもしれませんがよんでいただけると幸いです。
「あれ? 西住隊長?」
ふらふらと五人組が大洗の門の前で歩いている。
眠りこけて肩を幼馴染にかけている冷泉麻子はいつもどおりに見えるが目の下に濃い隈ができ。
それを支えている武部沙織の笑顔はなく高めのテンションの見る影はなく、友人の五十鈴華が沙織と麻子を支えるのを手伝っていた。
その中でも西済みは茶色ショートのあちらこちらが逆立ってのボサボサで少女は目がうつろでそれを心配そうに秋山優花里が支えている。
「どうしたんですか?」
そう集まってきた戦車道における後輩や仲間に声をかけられるほどに西住みほ達は憔悴していた。
彼女達『あんこうチーム』は大洗戦車道の猛者、学校外の一部では実はプロ戦車道チームではないかと言われるほどの豪の者と評価されている。
それだけの彼女達がここまでやつれていれば知っているものならば誰もが心配する。
「あははは…………ちょっとね」
口元を子供が見ても分かるぐらい引き連れた笑顔を後輩に向けるが当然、後輩は心配そうにみほたちを支え、あるものが目に入った。
みほを支える優花里の手に握られていたディスクである。
話は一ヶ月前に戻る。
このとき丸山紗希は遠くのトンボと目があったが微動だにしていなかった。
*
大洗学園。
戦車道では古豪とかつて言われていた学校であった。
だが、時代の流れで大洗学園の戦車道はなくなり、戦車も売れるものは売ってしまっていた。
それから時間が経ち、近年の予算問題や入学人口の現象、実績不足で廃校の危機に陥り。
それを回避するために実績を得るためとアピールのために戦車道を復活させて、みんなで奮闘した結果、見事全国大会優勝を果たし、廃校の危機を回避することに成功した。
それによって予算や入学希望者の数も増えていくのがわかったらしい。
その復活の中核を担ったのは生徒会とあんこうチームである。
生徒会室にその二チームが集まって話し合っていた。
あんこうチームのリーダーであるみほの顔は困惑の文字が書かれているぐらいわかりやすく目が泳いでいた。
「戦車道のPR映画ですか?」
「あんこうチームで是非という依頼でね」
生徒会長の角谷杏はツインテールを垂らしながら、片手に好物の干し芋を持ちながら説明を続ける
戦車道の世界大会を数年後に控えており、大洗の廃校回避できたのもそれに乗っかる形でもあった。
世界大会のために各国がイメージアップを図ることで戦車道を嗜む人の増加を図り、予算を集めるためにいろいろ工夫している最中、日本も映画というその手の一つに選んだらしい。
もっとも、昔からプロパガンダなどで映画を使う手段よくある手で王道的な手とでも言えるのでおかしい訳ではない。
「でも、私達は演技などやれと言われましても……自信ありませんよ」
学校内だけの学芸会ならばともかく、全国レベルで不特定多数の人にさらされる映画である。
余程の練習や場数を踏んだその道を行っている者かそれか脳天気なナルシストでもない限りは自身を持って参加などできはしない。
あんこうチームの面々は個性豊かではあるもののそういった者達ではないのは確かである。
「あー大丈夫、大丈夫。戦車を動かすシーンで動かす程度で他はカメオ程度だからー」
「……それならば」
「他の学校も参加するらしいから仲良くね。それじゃあ」
「お土産ね」とダンボールに詰められた干し芋を生徒会長からあんこうチーム一人ずつに手を渡される。
ダンボールの上には紙の束が置かれていてそれが詳細らしく、ご丁寧に人数分あった、
*
「そういうことだったんですか。二週間ぐらい見ないなあと思っていたのですが」
大洗戦車道の一年生代表各の澤梓が
他の戦車道参加者も「そういえば」「そういうことだったの」っと、小声で話していた
「でも、どうして生徒会も秘密にしていたんだろう?」
「終わってからのお楽しみだったのでしょう。これがもらえること知っていたのですから」
手に持ったディスクが怪しく紫色の光を放ち。
あんこうチームはそれを疎むかのように目をそらしていた。
「そのディスクは映画関連のものですか」
「でも……正直これは――」
「いえ、見てもらいましょう」
「華?」
驚いている沙織と引き換え華の顔は覚悟が決まって強い確固たる意志の炎が目に燃えていた。
変なところに火がつくのは誰も華の読めないところである。
「私達の戦った証を…………生き様を! 場所とテレビとデッキを借りましょう!」
「嫌な予感しかない」という空気が大洗戦車道の面々の中に漂っていた。
このとき、丸山は明後日の方向を見ていてトンボが鼻の先に止まっていても微動だにしていなかった。
*
集まった先で見たものはまるで異世界のような光景であった。
右に左へ走り時にはセットを上に下へと昇り降りをしているスタッフ。
必死で台本を読み込み、リハーサルをしている役者たち。
まるでちょっとした街の祭りみたいにごった返していた。
その人混みの中からあんこうチームのもとに人影が寄ってくるのをみほは確認した。
その人影には見覚えがあった。
大洗、あんこうチームが最初に戦った他校、聖グロリアーナの代表者達であった。
「ひさしぶりね」
「ダージリンさん、オレンジペコさん……アッサムさん?」
「確かにあなた達とあんまり話してないけど、似たようなやりとりを過去にやったのだから……」
ムギュッとみほを何かが後ろから覆う。
みほの頬に金色の髪の毛が辺り、その主と目が合うと人懐っこそうな笑顔を見せる。
「私もいるわよ」
「ケイさん」
ケイの隣にナオミとアリサが腕を組んで立っていた。
更にその先にも人影が見えて、その人物は手を差し伸ばしてきた。
みほはその手をぎゅっと握手をして微笑む。
「アンチョビさん、カルパッチョさん、ペパロニさん」
「久しぶり。今度は仲間としてよろしく」
「いえ、たけちゃ……じゃなかった。カエサルさんによろしくお願いします!」
アンコウチームはここまでくればと辺りを見回すと案の定プラウダの代表者もいた。
ただ、アリサとカチューシャがなにかつまらないことで火花を散らしていたのをそれぞれナオミとノンナが諌めていたので挨拶は沈静化した後に回すのがいいと判断した。
トンとみほの肩を後ろから叩く者がいた。
グロリアーナ、サンダース、アンツィオ、プラウダときたら残りは――――。
「みほ」
「おねえちゃんにエリカさん……何その格好?」
「あなた達が……四号使うからドイツ戦車枠を消費しているから私達が悪役戦車担当なのよ」
黒森峰のまほとエリカのいつもの制服ではなくどこか特撮的な悪の軍隊的な服を着ていた。
よく見ると服のデザインが若干まほのほうが派手なので上司役なのだろう。
「くくくく…………今度の勝負は我々に勝たせてもらうハハッハ」
「おねえちゃん?」
高笑いを続けるまほをよそにエリカとみほは話を続ける。
この二人はあんまり会話ができそうな感じの仲ではないのだがおかしなスイッチが入っているまほの前ではどうでも良くなって麻痺しているらしい。
「なぜだか、ノリノリで……私達もモブキャラに毛が生えた程度の役なのに」
「あははは。お姉ちゃんをよろしくお願いします」
「そんなの当たり前よ……もしかして、あの騒ぎ様はあなたに会えることを喜んでいるんじゃあ?」
戦車道が絡んでいて真剣にやらないといけないところがあるわけだが、前と違い姉妹で戦うわけではなく仲間として触れ合える貴重な機会と考えればまほが浮かれるのはわからないことでもない。身内とはいえ離れて生活をしているしまほは卒業を控えていて大学生になればみほと会える機会が更になくなってしまいかねない。
「……でも、ノリノリすぎない?」
「形から入るんだろう」
そういえばコスプレで性格が変わる人がいると聞いたがまさかあのクールそのもののイメージが強い西住まほがそうなのかと沙織は目を細めていた。
この時はだれもまほの行動によって目がそれてしまっていたが、「なんでこんな格好」をしているかを「もう少し良く考えていれば」と後々思うことになった。
*
『まだだ! みんな大丈夫!?』
「あれ? 普通の映画じゃないですか。戦車のシーンも普通にとれているじゃないんですか?」
「それに主人公が戦車道を友達に協力でまたやり始めるところとか王道じゃないですか」
「あははは…………」
「この主人公、西住隊長に似てるような」
誰かが、声に出した言葉にまたもやみほの顔が引きつる。
主人公の性格は冷静の中に熱い情熱を秘めた少女というものであり、奇策を用いるかつての強豪だったが家庭の事情で引っ越し、舞台となるチームに配属となったという設定だ。
少しみほと被っているのもみほの話を生徒会や実家から聞いた情報を基に整理した設定であるからだ。
このことも撮影参加したあとから聞いたことであり、監督達曰く「美味しい設定だし、王道だし」と言われた。
「たしかに、カメオ」
「あんこうチームが主人公のクラスメイトで」
「ダージリンさん達が喫茶店で、サンダースの皆さんがハンバーガ屋で、プラウダが食堂にいたよね」
「アンツィオがたこ焼き屋やっていましたね……なんで、たこ焼き?」
『負けるわけにはいかないんだ! たとえアンタでも……』
「ここから本番ですよ」
誰もが優花里の言葉の意味を言葉の重みで理解していた。
面白くなるや山場ではなく、地獄という意味で言っているのだと。
だが、あんこうチーム以外は普通の山場にしか見えない。
皆が固唾を呑んでいるなか丸山は二匹のトンボを見ていた。
『トランスフォーム!!』
「変形したぁ! ロボットに! しかも、すごいレベルのCG」
声を上げたのはアニメや特撮が大好きな阪口桂利奈だった。
そのためか、CGの凄さにいち早く気付きとても興奮しているのだが他の面々は魂を取られたようにぽかんと口を開けて次に出した言葉皆揃えて同じ言葉だった。
「なんで!」
「うん、他の国の映画も似たようなものだらけであんまり違いがなかったからやけになったらしく…………」
ものを作る上で避けたいと思う一つにほぼ一緒のタイミングに他のと被ってしまうことである。
監督が王道といったのが後々に響いてしまった結果であった。
王道なのは確かに悪いものではない。
だが、映画も似たようなものが同時に大量にあればどんなに力を入れても陳腐化どころか笑いの種になってしまう。
ならば……最初から笑いの種になってやれ! 笑われるより笑わせろ!
だが、途中まで作っていてそこからいきなり作風が変わっているがそれもネタにない! 予算もないしね!
という無茶苦茶なヤケクソになったらしい。
その結果が笑えるや笑えない以前の何かになっていた。
出演者もスタッフも監督もスポンサーも血の涙を流したらしいが皆ハイになって暴走して灰になったらしい。
もちろん、あんこうチームも聖グロリアーナもサンダースもアンツィオもプラウダも黒森峰も勢いに押し切られる形で灰になったらしい。
いや、もはや廃。
劇中の戦車の動きがすさまじいレベルのものとなっていたことは出来上がったあとに気づいた。
憔悴しきっていたが。
無論そこからは無茶苦茶だった。
『トランスフォーム……そんなお前たちが大層に言うようなものど我には造作も無い!』
「敵のラーテも変形した! おおきい!」
『みんな! 限界は超えるものだ!』
「主人公達の戦車ロボもなにか変形した!……あれ? あんこうチームや他の学校の戦車も……合体した! しかもバランス悪!」
『フハハハここまでこれまい!』
「なんか、人工衛星が来た! 主人公を宇宙へ撃ち出してる! 生身で大丈夫なの!?」
『紅茶はこうでなくては……苦いわね』
「ダージリンさんがコーヒーを紅茶として飲んでる!」
『クククハハハハハみほぉぉぉぉ!』
「黒森峰の隊長がラスボス乗っ取ってる! しかも、西住隊長の名前を叫んでる」
『おんどりゃあ!』
「主人公が砲弾を投げ返してる! ロボも投げた!」
「もう主人公だけでよくない?」
『シューシュー』
「黒森峰の隊長が主人公の親って告白シーンがどう見てもあのSF超大作の……」
『決着をつけましょう……フットボールで!』
「なんで、ラストバトルでサッカー…………あれ? ダージリンさんがラスボスになってない? でも、ボールがバスケ……」
『デーンデンデン』
「主人公のレシーブで地球が滅亡してる!」
『私達は……栄光をつかみとった!』
「よくわからないけど優勝してる」
このとき、丸山は番となって飛んで行くトンボを微動だにせずに見送っていった。
この日本映画は意外にヒットした……バカ映画として。
ちなみに他の国も軒並みこの映画が迷走した原因である「被ってしまう」ことによる陳腐化を恐れてしまい、恋愛に走ったり、学園艦が沈んだり、ダンスに走ったりしたらしく、十数年間戦車道映画はバカ映画のイメージを植え付ける事になった。
その頃、丸山は三突が沈んでいた池のヤゴを見ていた。
以上。
ガルパンの映画を心から楽しみにしています。
近くで上映してくれると嬉しいのですが。