時間停止系探索者、ダンジョンの都市伝説となるも我関せず   作:ゴマ醤油

40 / 40
実はも何も遊びたかっただけ

「うぇーいとめるまた最下位ー。全戦全敗とか流石に弱すぎじゃなーい?」

「うるさいですよ初狩り先輩。そういうわけで先輩方、ボランティアーを募集してるんですが……お暇だったりします?」

「なんだそのボランティアーって。ふざけてるのか?」

 

 我が家のオンボロエアコンとは違う、静かながら澄んだ冷風で満たされた部屋。

 久しぶりに坂又(さかまた)部長の部屋に集められた俺達は、今度はちゃんと買われた大乱闘対戦ゲーでぼこぼこにされながら、先日火村さんにされたボランティアーの話を提案してみたが返ってきたのは部長の冷めたマジレスであった。

 

『お前なとりから金借りてんだろ? あいつのことだしぽんと金渡したんだろうが、男として貰いっぱなしってのはどうなんだろうなぁ? 今回の来てくれたら、きっとあいつもとめる君のおかげで助かった~って言ってくれるかもなー?』

 

 部長の操るキャラにボコされた最下位が確定した俺は、コントローラーを置いて冷蔵庫へ向かいながら、先日断ろうとしたときに言われたことを思い出してしまう。

 

 施しについては恐らくというか間違いなく、あの爆乳童貞キラーの白鳥沢(しらとりざわ)さんが話したのだろうが、そこを突かれてしまうと中々に弱い。

 あのときは困っていたので流れで受け取ってしまったが、やっぱり師匠でもないのに貰いっぱなしは駄目だと心にしこりが残って久しく。中々痛い所を突いてきやがってからによ、俺のことをよく分かってらぁ。

 

 ちなみにあの人はボランティアとか抜かしてるが、実際は日給を出すらしいので単発のアルバイトだ。どこがボランティアなんだ、どこが。

 

「あーまた負けたぁ、ちょっとは手加減してくださいよさかさーん。ってかあれ、ぐぐれ浜って言えばあれだよな? 去年アザラシが打ち上がったみたいな話があった、あのぐぐれ浜」

「あったな。十年ほど前にサメが三体ほど発見されて一気に客足が遠のいたのだが、数年ほど前に行われた再生事業が成功し、昨年のアザラシ上陸とぐぐれビーチフェスが話題になったあのぐぐれ浜だ」

 

 提案者でありながら無知すぎるのが悪いのだが、どうして部長は疎か叶先輩さえ俺より詳しいのだろうと。

 どこか釈然としない気持ちを抱えながら、罰ゲームとして持ってきた緑茶とコーラの缶をそれぞれの前に置いていく。

 

「ちょっと調べてみたんですけど、再開発以降毎年行われてるイベントで毎年中々の盛り上がり具合だとか。去年は歌手のYUYUにボンバー松中、芸人のヒグラシこよしや木戸高松を呼んで大盛況だったらしいですよ」

「木戸高松って、最近爆乳グラビアゆりえまいと結婚したあの俳優? いいよなーあのイケメン、男の夢が詰まったボインを独り占めしやがってよー。幼馴染で夢を叶え合うために一度道を分かってからの再会とか、朝ドラかってくらいの犯則だよなー」

 

 わざとらしく、それでいて多分本気であろう舌打ちをかます叶先輩。

 まあ先輩好きだったもんな。確か二つ前の彼女との破局原因がゆりえまいの写真集を買ってるのがバレて始まった口論の末だったとか、そんな感じのことを前言ってた気がする。……恋愛関係の維持って大変なんだな。

 

「なあとめるー。フェスってことは有名人呼ぶんだろー? 今年はどんなゲスト来るんだよー?」

「こな、くそっ! 今年は色んなアーティストの他に、歌って踊れたりトーク力に定評あるダンジョン配信者(ライバー)も数名集めたらしいですよ! 有名所だとホムラとか──」

「ホムラ!? まじでホムラ出るの!? それを早く言えよとめるー、いけずな後輩だなもうー!」

 

 次のゲームが始まり、相変わらず集中狙いしてくる叶先輩の攻撃に抵抗していると、そのまま話を振ってくる。

 初戦から今に至るまでの間、あまりに執拗な初心者狩りをしてくるので時間止めてコントローラー隠してやろうかなと苛つきながらも、仏の心で流して話していくとホムラの名前が出た途端、露骨に食い付いてきた。

 

「……やけに食い付きますね。叶先輩、ダンジョン配信者(ライバー)とかあんまり興味ないって結構前に言ってたじゃないっすか」

「ちっちっち、時は流れるんだぜとめる。まあファンなのは俺のハニーの方、昨日機嫌損ねちゃったからサインでもあげたら一発逆転ってわけよ。おっと皆まで言わんでいいぜ、連れてってもらう以上は身を粉にして働くから……ってああ! 落としやがったな馬鹿とめる!」

 

 へへっ、油断してるからだよ。これで初心者の意地思い知っただろ、ばーか。

 

「……ダンジョン配信者(ライバー)、か。浜辺でのイベントには少し合わないような気がするが、どんな意図の人選なんだ?」

「あー、俺も気になって訊いてみたんですけど、多額の出資してる会社があるって言ったじゃないですか。そこの社長の方針って言ってましたね」

「なるほど、上のねじ込みか。まあ相応の利益がなければ金を出す意味などない、至極妥当な人選だ」

 

 何とか叶先輩を退け、一対一となった部長の質問に答えながら懸命にキャラを動かすが意味はなく。

 操作していた赤帽子の世界的スターが呆気なく場外に落とされ、再び部長が一位となった画面に肩を落としていると、部長は満足そうに少し口元を緩めながら缶に手を付ける。

 

「それではる。どうして喧嘩したんだ? お前にしては珍しく、浮気でも見つかったか?」

「違うっすよー。……いやね、冷蔵庫にあるプリン食べちゃったんすよー。それがちょっとお高いやつでお冠ってわけなんすよ」

 

 ……けっ。

 

「部長部長。あいつヤリチンチャラ男の癖に甘々に惚気てきやがりますよ?」

「まったくだな後輩。女の家を転々として大学生活を過ごしてきたような遊び人風情が、今更彼女のプリン一つで一喜一憂してる姿は見せつけてるとしか言い様がないな」

「ひっでえなこいつら。本当にサークルの仲間かよ?」

 

 けっ、と吐き捨てるように舌を打ち、不機嫌そうに顔を逸らしてしまう叶先輩。

 まあ自業自得だ。いくら俺が世界で最も心の清い聖人(自称)だったとしても、胸焼けしそうなリア充自慢は擁護できない。別に自分を非リアだとは思わないが、恋愛縁皆無の男への恋愛話=ギルティだ。

 

「それでどっすかね部長。旅費とか全部出してくれるらしいんで、負担も少ないと思うんすけど……」

「え、まじ!? 単発バイトなのに二泊三日で全部出してくれるとか神すぎじゃん! 行くっきゃないっすよさかさん! ダン考夏の大合宿ってことで、さーかーさーん!」

「……まあ、日程的には問題はない。一バイトに企業が二泊三日を提供するのは破格すぎて逆に怪しいが、大学最後の思い出として海に行くというのも一興だろう」

 

 ぶんぶんと叶先輩に肩を揺すられた部長は、しかめ面をしながら顎に手を当てながら考え込む。

 実は他にも誘っている人はいるのだが、まあそこは言わなくていいだろう。

 

「ただなとめる。前回もそうだが、ただお願いを聞いてやるってのも面白くない。人の危機がかかっていないなら、なおさらな」

「え、えっと……お酌とかします? あ、この前良いハンバーガー屋見つけたんで奢ります?」

「いらん。……そうだな、運否天賦といこう。ちょうど先月出たから買ってみたすごろくのパーティゲームがあってな。一回勝負でお前より順位の下だった者のみが付いていく……というのはどうだ?」

 

 考える素振りをしていた部長は、わざとらしく何かを思い出したように声を上げたと思えば立ち上がり、これみよがしにゲームのパッケージを見せてくる。

 先月発売した人生ウォーカー2。ポップで親しみやすいデザイン且つお手軽な操作で楽しめながら、やけに友情を破壊してくる闇のパーティゲームで、よく配信者やゲーム実況者がやっているから知っている。

 

 なるほどな。欲しいのなら自分で掴み取ってみろと……ふふっ、そういうのも悪くないな。

 

「上等ですよ部長。ぼっこぼこにいてこまして、あっつあつのビーチに引きずり出してやりますとも」

「やってみろ最年少。最下位だったら砂浜の上を裸足で歩きながら、美女にナンパでもしてもらおうか」

 

 例え戯れだとしても、絶対に負けられない戦いがここにはあると。

 「あのー、もしもしー」なんて言ってる叶先輩なんてお構いなしに、俺と部長の間に現実でも見えてしまいそうなほど火花が散る。

 

 目指すは当然パーフェクトな勝利のみ。さあて、どう時を止めてイカサマしてやろうかね?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

超人(ガチ)系Vtuberは世界を救う夢を見るか(作者:蓮太郎)(オリジナル現代/コメディ)

▼ 時は21世紀、世界は再び戦争がはじまり英雄を求める…………ということは無かった。▼ 人脈無し、事件無し、しかしスーパーパワーを持て増している柴木昌也(しばきまさや)はしみじみと日常生活を噛みしめていた。▼ そんな彼の趣味はVtuberとして配信すること。▼ ヒーローが現実的に居たらどうなるのか話し合ったり、超人的な動体視力でゲームをしてアカBANされたり…


総合評価:398/評価:7.73/連載:9話/更新日時:2026年06月07日(日) 12:25 小説情報

夭折した天才漫画家だけど、転生したらTS美少女だったから勝手に続き描く(作者:匿名TS美少女)(オリジナル現代/日常)

夭折した天才漫画家が転生して続きを書く話。


総合評価:2995/評価:7.51/未完:17話/更新日時:2026年03月03日(火) 12:04 小説情報

TSして魔法少女になったら頭が可笑しい奴しかいないんだが(作者:つる植物)(オリジナル現代/戦記)

 TS転生した先は魔法少女が異形の魔物と戦う世界だった。▼ 孤児だった俺に魔法少女の適正があったので魔法少女になった。▼ しかもなんか魔物を適当に斬っていたらSクラスの1位になっちゃった。▼ 同期の2位は俺を殺しに掛かってくるし、他のSランク頭の可笑しい奴らばかり。▼ 一般人の俺は今日も魔物をたたっ斬るのであった。▼ 


総合評価:3776/評価:8.36/連載:18話/更新日時:2026年07月03日(金) 15:00 小説情報

ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル現代/冒険・バトル)

現代ダンジョン立志伝〜大戦の軌跡〜▼……というゲームをプレイしていたプレイヤー達は、プレイヤーとしての知識を活かして成り上がりを目指すようです。▼2度の大戦以外にも日ノ本を狙う国はわんさかおりますが、プレイヤー達は生き残れるのでしょうか!


総合評価:5413/評価:8.5/連載:103話/更新日時:2026年05月12日(火) 19:51 小説情報

ダンジョンから帰ったら五十年経ってたんだが。~え?昔の仲間が今や大手ギルドの代表?なにそれ知らん……こわ……~(作者:蝉時雨)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 世界にダンジョンという、いくつもの『扉』が出現してから、早五十年。▼ ▼ 人類はこの未知の脅威に対し、慎重に対処をしようとしていた。しかし、その『扉』から現れた異形のモノたちが蹂躙をはじめる。▼ 現代の兵器は異形には届かず、為す術なしかに思われた。▼ だが、人類は諦めなかった。▼ 自ら『扉』に乗り込み、戦果を持ち帰るものが現れ始める。『扉』の先で得た素材で…


総合評価:1024/評価:7/連載:27話/更新日時:2026年07月05日(日) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>