かぐや「かぐやがいない間に、彩葉がかぐやと浮気したー!」 あの子ちゃん「蛇足っす」   作:超かぐや姫!に脳を焼かれた人

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蛇足話04 ヤチヨ「いいね~。『私は、わたしの事が好き』だね~」 彩葉「誰がうまいこと言えと?」

 

かぐやの戸籍ができた。

 

彩葉が難しい顔で書類を書いたり、偉い人たちと話したり、もっと偉そうな人たちを黙らせたりした結果、かぐやはようやく地球で「いる」ことになったらしい。

 

そして、ツクヨミの正式アカウントもできた。

 

作ってくれたのはヤチヨだった。

本人確認も、活動者登録も、配信に必要なあれこれも、全部まとめてどうにかしてくれたらしい。

 

「ヤチヨすごーい!」

 

「ふふー。ヤッチョはツクヨミの管理人ですから~」

 

スマコンはまだない。

けれど、かぐやの身体には、月のあの子がくれた腕輪由来の便利機能がある。

視界には最初からいろいろな情報が浮かぶし、ツクヨミへの接続もできる。

地球の機械から見れば、少し変わった端末に見えているらしい。

 

つまり。

 

「かぐやも配信できるー!」

 

「ダブルかぐやコラボ配信だー!」

 

もう一人のかぐやと、月から帰ってきたかぐやは、タワマンのリビングで両手を取り合って跳ねた。

 

「ただし」

 

彩葉が、ぴしゃりと言う。

 

「余計なことは言わない。月がどうとか、私の浮気がどうとか、かぐやが二人いる理由とか、勢いで喋らない。わかった?」

 

「はーい!」

 

「はーい!」

 

「返事はいいのよね、返事は」

 

彩葉は疑わしそうだった。

 

でも、かぐやはもう配信できるのが嬉しくて仕方なかった。

配信。ツクヨミ。かぐや。いろP。

全部、彩葉と一緒にいた頃の楽しい記憶にくっついている。

 

「それで、今日は何するの?」

 

彩葉が尋ねると、もう一人のかぐやはにこっと笑った。

 

「お楽しみー!」

 

「お楽しみって何?不安なんだけど」

 

「お楽しみは、お楽しみだよー」

 

「配信内容を事前に確認したいって言ってるの」

 

「だいじょーぶ! かぐや、ちゃーんと考えてるから!」

 

「その言葉で安心できたこと、一回もないんだけど」

 

彩葉の目が細くなる。

 

ヤチヨはソファに沈み込みながら、楽しそうに笑っていた。

 

「まあまあ。彩葉、今日は見守り配信みたいなものだと思えばいいんじゃないかな~」

 

「……ヤチヨは内容知ってるの?」

 

「知らないよ~」

 

「知らないのに何でそんな顔してるの」

 

「どう転んでも面白くなりそうだからかにゃ~」

 

「最悪の信頼ね」

 

もう一人のかぐやは、そんな彩葉の警戒をするりとかわして、配信設定を開いた。

 

「それじゃあ、始めるねー!」

 

「待って。まだ内容を聞いてない」

 

「今日はいろPも一緒ね!」

 

「はい?」

 

「そんじゃあ、ツクヨミに行こー!」

 

「久々の配信だー!」

 

☽☽☽☽☽☽☽☽

 

ツクヨミ内の練習用スタジオエリアに、配信開始を示す赤いランプが灯った。

 

白い床。鏡張りの壁。簡易照明。画面の隅に流れ始めるコメント欄。

 

その中央に、かぐやが二人いた。

 

二人とも、衣装はお揃いだった。

金色の髪に、月を模した飾り。朱と若草を基調にした、和とアイドル衣装の真ん中みたいな服。

胸元と腰には水引みたいな飾り結びがあって、袖や裾にはひらひらした軽い布が重なっている。

足元は、くったり垂れた耳みたいな飾りのついたスニーカー。ぱっと見は同じ。

でも、よく見ると左右が反転していて、胸飾りの流れも、布の重なりも、月飾りの傾きも、きれいに鏡合わせになっていた。

 

並んで立つと、ほんとうに「お揃いのもう一人のかぐや」だった。

 

その少し横には、彩葉のいろPアバターがいる。

かぐやたちほどひらひらしてはいない、すっきりしたシルエット。

動きやすさを優先した細身の衣装に、ツクヨミらしい光のラインが控えめに走っている。

派手ではないのに目を引くのは、たぶん、着ているのが彩葉だからだ。

 

さらに端には、ヤチヨ。

仮想空間で見慣れた、あの花魁めいた華やかな姿。

重ねた布の色気も、ゆるく揺れる袖も、飾りの細かさも、全部が「月見ヤチヨ」だった。派手なのに下品じゃなくて、やわらかく笑っているだけで、そこだけ空気が少し甘くなる。

 

コメント:ぬるっと始まったな

コメント:待ってた

コメント:今日はいろPもいる?

コメント:しれっと混じってる管理人様はなんなんですかね?

コメント:かぐやが二人いる

コメント:かぐやが二人いる!?

コメント:怖い

コメント:かわいい

コメント:怖かわいい

コメント:いろP????

コメント:酒寄博士?????

 

「ねぇねぇ、いろP見て見てー!」

 

もう一人のかぐやが、かぐやの肩に両手を置いた。

かぐやは、にぱっと笑って合わせる。

 

「幽体離脱~!」

 

「はいはい、すごいすごい」

 

息ぴったり。以心伝心の双子芸。

 

彩葉は配信開始十秒で諦めた顔になって、雑に拍手した。

 

コメント:開幕からこれ

コメント:情報量多

コメント:いろPの雑対応

コメント:増えた?

コメント:増やした?

コメント:ヤチヨの分身みたいなもん?

コメント:クローン?

コメント:禁忌?

コメント:倫理委員会ー!

コメント:かぐやちゃんかわいい

コメント:どっちもかわいい

コメント:脳が追いつかない

コメント:あいさつ忘れてね?

コメント:あいさつ警察だ!

コメント:あいさつ大事。古事記にも以下略。

 

「あいさつ!」

 

もう一人のかぐやが、はっとした顔で手を打った。

 

「忘れてた! せーっの!」

 

「「かーぐやっほー!」」

 

二人のかぐやが、同じ顔で、同じ声で、同じ角度に首を傾げて手を振る。

 

コメント:かわいい

コメント:かわいい

コメント:かわいい

コメント:二倍かわいい

コメント:二倍顔がいい

コメント:ステレオかぐや

コメント:耳が幸せ

コメント:目が混乱

コメント:いろP説明して

コメント:酒寄研究所説明して

 

「先に言っておきます」

 

彩葉が画面に向かって一歩前に出た。

 

「クローンではありません。増やしてません。酒寄研究所は倫理的にも法的にも問題のある研究をしていません」

 

コメント:公式声明きちゃ

コメント:声がガチ

コメント:酒寄博士モード

コメント:倫理的にも法的にも…?

コメント:言い方が怖い

コメント:じゃあ何

コメント:法に触れてないならええか

コメント:かぐやちゃんだし、仕方ない

コメント:かわいいからヨシ!

コメント:仕方なくない

 

「仕方なくないってコメントした人、正しい」

 

「いろP、コメント拾うのうまーい!」

 

「そこ褒めるところじゃない」

 

もう一人のかぐやは、ぱんっと手を叩いた。

 

「というわけで!」

 

「どういうわけで?」

 

「今日はダンス練習しまーす!」

 

「はいはい、演奏しろってことね」

 

「題目はー!」

 

もう一人のかぐやがくるりと回る。足元に、きらきらした文字が浮かび上がった。

 

『私は、わたしの事が好き。』

 

「これ!」

 

「あー、あの無茶苦茶な振付のやつ……」

 

「おっしゃー! 踊り狂うぞー!」

 

かぐやは勢いよく拳を突き上げた。

 

「あんた、踊れるの?ブランク大丈夫?」

 

「たぶん!」

 

「たぶんって……」

 

「だいじょーぶ! かぐやが教えるからー!」

 

もう一人のかぐやが、自信満々に胸を張る。

 

「かぐやが、かぐやに?」

 

「そう! かぐやが、かぐやに!」

 

「そのやりとりやめい。視聴者混乱させるでしょうが」

 

コメント:ダンス練習きた

コメント:題目最高

コメント:私は、わたしの事が好き

コメント:ダブルかぐやでそれやるの?

コメント:天才

コメント:いろPの胃が死ぬ

コメント:もう死んでそう

コメント:いろPも踊る?

コメント:踊って

 

「でねでね!」

 

もう一人のかぐやは、さらに勢いを増した。

 

「今度ライブしようよー! ライブ! ヤチヨも入れて、四人でー!」

 

「いいじゃん! かぐやもライブやりてー!」

 

「待って」

 

彩葉が即座に止めた。

 

「四人?」

 

「うん!」

 

「かぐやと、かぐやと、ヤチヨ」

 

彩葉は指を折る。

 

「三人でしょ」

 

ダブルかぐやは、同時に彩葉を見た。

 

「いろPも」

 

「一緒に」

 

二人のかぐやが、ぴたりと息を合わせて一歩近づく。

 

「「踊ろ?」」

 

同じ顔。

同じ目。

同じ声。

 

左右から逃げ道を塞ぐみたいに見上げられて、彩葉は一歩下がろうとした。

けれど、下がるより先に眉間を押さえた。

 

コメント:いろPも

コメント:いろPも踊ろ

コメント:踊ろ?

コメント:上目遣い

コメント:これは無理

コメント:逃げられない

コメント:左右からかぐや

コメント:ダブルかぐやサンド

コメント:いろP負けろ

コメント:負けて

コメント:ちょろP待機

 

「ぐっ……」

 

彩葉は少しだけ沈黙した。

 

「ま、まあ……気が向いたらね」

 

「「やったー!」」

 

「やるとは言ってない!」

 

コメント:勝った

コメント:勝ったな

コメント:気が向いたらはやる

コメント:いろPちょろい

コメント:ちょろP

コメント:かぐやに弱い

コメント:知ってた

コメント:四人ライブ決定

コメント:歴史が動いた

 

「決まってない!」

 

「ヤッチョも楽しみだな~」

 

「ヤチヨも止める側に回って」

 

「え~? ヤッチョ、四人でライブやりたいにゃ~」

 

「ほーら、ヤチヨもやる気!」

 

「ライブだー!」

 

「……はぁ。まず今日の配信をちゃんと成立させなさい」

 

そうして、ようやく練習が始まった。

 

まずはサビ前のステップ。

 

もう一人のかぐやが見本を見せる。右、左、軽く跳ねて、腕を流す。

視線の向きも、髪の揺れ方も、配信用に綺麗に整っていた。

 

かぐやも真似をする。

真似をした、はずだった。

 

「ヴェ!?」

 

一拍早く、くるんと回ってしまう。

 

「ステップ合わせるのこんなむずかったっけ!?」

 

「かぐやはかんぺきー!」

 

もう一人のかぐやは得意げに胸を張った。

 

彩葉は顎に手を添えて何やら思案している。

 

「頭で理解してる動きが、そのまんま身体に出力されてるみたいね。だからワンテンポ早くなる。どんな処理能力してるのよ、その身体?」

 

「おー、かぐやの身体がすごいってことー?」

 

「すごい。すごいけど、ダンスではちょっと困りそう」

 

「すごいのに!?」

 

「すごすぎて困ることもあるの」

 

コメント:かぐやちゃんステップ合ってない!

コメント:どっちがどっちだ……?

コメント:片方だけ動きが人間じゃない気が……

コメント:全員人間じゃないだろ

コメント:いろPの解説がガチ

コメント:博士モード助かる

コメント:二人もいるなら片方もらってもバレへんやろ……

 

「あげません!」

 

彩葉の声が、食い気味に飛んだ。

 

コメント:はやっ

コメント:即答

コメント:圧が

コメント:いろP???

コメント:独占欲出たな

コメント:今のは速かった

コメント:俺でなきゃ見逃しちゃうね

コメント:もらえないらしい

コメント:知ってた

 

「「いろP!」」

 

二人のかぐやが同時に彩葉へ飛びついた。

 

「ちょっ、練習中! 配信中!」

 

「いろPがかぐやあげないってー!」

 

「かぐやもあげないってー!」

 

「その話は終わり!終わり!」

 

何度か繰り返しても、かぐやのステップは少し早かった。

 

音は聞こえている。動きもわかっている。むしろ、わかりすぎていた。

頭の中で「次」と思った瞬間、身体がもう次の動きを始めてしまう。

 

「うー……彩葉がやってみせてよー」

 

「は?」

 

「見本! 見本があればわかるかも!」

 

「いや、ステップ自体はできてるし、タイミングの問題でしょ?見本を見せる必要は――」

 

「いろP、お願いー!」

 

もう一人のかぐやも両手を合わせる。

 

「いろPの振付、かぐや見たいなー」

 

「ヤッチョも見たいな~」

 

いつの間にか、ヤチヨも彩葉の背後に回っていたようだ。

 

コメント:ヤチヨも参戦

コメント:ヤオヨロ~

コメント:修羅場か?

コメント:いろP百合ハーレムきたな

コメント:いろP踊るの?

コメント:踊る?

コメント:踊るの?

コメント:待機

コメント:正座

コメント:録画した

コメント:まだ踊ってない

コメント:いろP先生お願いします

 

彩葉は、流れるコメントを見て露骨に嫌そうな顔をした。

 

「……一回だけだからね」

 

その瞬間、コメント欄の速度が一段上がった。

 

「見るだけ。真似しなくていい。動きのタイミングを確認するだけ」

 

「はーい!」

 

「はーい!」

 

「よし」

 

彩葉がスタジオの中央へ出る。

 

「「ヤチヨ!」」

 

「うけたまかしこまつかまつり〜〜☆」

 

ヤチヨが管理者権限を行使して、配信アーカイブとは別枠の録画を開始した。

 

二人のかぐやが、きらきらした目で見つめている。

ヤチヨはにこにこしている。

犬DOGEは床で伏せている。

 

彩葉が息を吸った。

 

「五、六、七、八」

 

足が動く。

 

右。左。軽く跳ねる。腕を流す。視線を送る。半歩引いて、ターン。

 

「ヴェー、無茶振りしたつもりだったんだけど、彩葉普通に踊れてるー!なんでー?」

 

「無茶苦茶な振付って言ってたのにねー!普通に踊れちゃうんだから、もー!」

 

派手ではなかった。

かぐやほど勢い任せでもない。

もう一人のかぐやほど配信用に完成されてもいない。

ヤチヨみたいな余裕もない。

 

でも、音をちゃんと掴んでいた。

 

遅れない。急がない。

必要なところで止まって、必要なところで動く。

彩葉が、流れる音の上を、まっすぐ歩くみたいに踊っていた。

 

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:伝説

コメント:かわいい

コメント:助かった

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

月見ヤチヨ:いろPが踊った~!!!

コメント:いろPが踊った~!!!

コメント:酒寄博士が踊った

コメント:ヤッチョもよう見とる

コメント:研究所の人たち、みってる~?

コメント:論文にしろ

コメント:なんでコメントにもいるんだこの管理人

コメント:いろPいいいいいいい!!!!

 

「あー、もう!」

 

彩葉は、曲が止まる前に叫んだ。

 

「コメント欄、踊っただけで騒ぎすぎ!」

 

コメント:踊ったから騒いでる

コメント:いろPが踊ったんだぞ

コメント:騒ぐだろ

コメント:騒がない理由がない

コメント:今日ここにいてよかった

コメント:生きててよかった

コメント:みんな生きるのはどうですか~?

コメント:最高です

コメント:生きるの最高

 

「うんうん、いいねいいね~! 生きるの最高だね~?」

 

ヤチヨは満足気に頷いている。

 

「よくない!」

 

彩葉はそう言いながらも、二人のかぐやの方へ向き直った。

 

「今のでタイミングはわかった?」

 

「わかった! 気がする!」

 

「かぐやも、かぐやに合わせればいいんだよー」

 

もう一人のかぐやが笑う。

かぐやは、その顔を見た。

 

同じ顔。同じ声。同じ名前。

でも、同じではない。

 

最初は少し変だった。

彩葉の隣に自分そっくりの女の子がいるのは、胸がむずむずした。

 

でも今、楽しそうに笑っているもう一人のかぐやを見ていると、嫌な感じはしなかった。

 

「……かぐや、かぐやのこと、けっこう好きかも」

 

「かぐやも、かぐやのこと好きー!」

 

もう一人のかぐやが、迷わず笑った。

 

彩葉が何かを言いかけて、やめる。ヤチヨは、少しだけ目を細めていた。

 

「いいね~。『私は、わたしの事が好き』だね~」

 

「誰がうまいこと言えと?」

 

「今日の題目だからね~」

 

彩葉が小さく息を吐く。

 

「じゃあ、もう一回。五、六、七、八」

 

今度のかぐやは、音だけを追わなかった。

彩葉の声を聞いて、もう一人のかぐやの足元を見る。

 

右。左。待つ。跳ねる。腕を流す。

 

ターンした瞬間、左右反転のお揃いが鏡みたいに重なった。

水引飾りと裾の軽い布が、少し遅れてふわりと揺れる。

 

ぴたり、とはいかない。

けれど、さっきよりずっと合っていた。

 

「できた!」

 

「できてる!?」

 

「まだちょっと早い。でも、かなり良くなった」

 

彩葉がそう言うと、かぐやは両手を上げた。

 

「やったー!」

 

コメント:揃ったー!

コメント:今のよかった

コメント:ダブルかぐや最高!

コメント:かわいい

コメント:曲のタイトル回収

コメント:私は、わたしの事が好き

コメント:かぐやがかぐや見て踊ってる

コメント:尊い

コメント:いろP先生すごい

コメント:ヤッチョがずっとニコニコしてる

コメント:結局、なんでかぐやちゃん二人いるんだっけ?

コメント:酒寄博士だから

コメント:酒寄彩葉だから

コメント:いろPだから

コメント:ちょろPだから

 

かぐやは、もう一人のかぐやと顔を見合わせて笑った。

 

私は、わたしの事が好き。

 

もう一人のかぐやがこの題目を選んだ理由が、少しだけわかった気がした。

胸の奥に残っていたむずむずは、いつの間にかなくなっていた。

 

☽☽☽☽☽☽☽☽

 

「じゃあ、今日はここまでー!」

 

「「またねー!」」

 

「さらば〜い」

 

コメント:いかないで

コメント:四人ライブ待ってる

コメント:いろPも踊って

コメント:ちょろPも踊れ

コメント:次回、四人ライブ

コメント:決定

コメント:決定

コメント:決定

コメント:いろPも踊って~!!!

 

「決まってない!」

 

彩葉が叫ぶと、二人のかぐやが同時に笑った。

 

「「気が向いたら、だもんねー!」」

 

「確定じゃない!」

 

「でも、いろP、今日は踊ってくれたよ?」

 

「……それは」

 

「「かぐやのこと、好きだから?」」

 

彩葉は黙った。

 

ほんの少しだけ、目を逸らす。

 

「……嫌いだったら、ここまで付き合ってないわよ」

 

二人のかぐやは、顔を見合わせた。

 

それから、同時に彩葉へ飛びついた。

 

「「いろP、好きー!」」

 

「ちょっ、抱きつくなー!」

 

ヤチヨが、にこにこしながら視界の端を指差した。

 

「いろP~、まだコメント流れてるよ~」

 

「え……ヤチヨ?」

 

コメント:聞いた

コメント:聞いた

コメント:いろPがデレた

コメント:ちょろP「嫌いだったら、ここまで付き合ってないわよ」→これ好き

コメント:実質好きじゃん

コメント:ダブルかぐやサンド

コメント:オードリーかと思った

コメント:今日ここにいてよかった

コメント:チャンネル名「かぐやいろPかぐや」に改名しろ

コメント:生きててよかった

コメント:四人ライブ待ってます!

 

「ヤチヨ?」

 

「不可抗力かにゃ~」

 

「ヤチヨ!」

 

かぐやは、彩葉に抱きついたまま笑った。

 

私は、わたしの事が好き。

 

もう一人のかぐやも。

ヤチヨも。

かぐやたちに弱い彩葉も。

そして―――

 

ぜんぶ、大好き。

 





わけあって、匿名を解除しました。といっても、別に過去作品とかがあるわけではないですが。ご報告までに。
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