身元不明だったが、テレビでニュースを観た妹が届け出てきた。後頭部に打撲、後に川に捨てたが、偶然、流木に引っかかった。身元は意外と早く分かった。ガイシャがズボンの裏に縫い付けていた、超耐水マット紙を使ったラベルシールで作った名刺だ。

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身元不明だったが、テレビでニュースを観た妹が届け出てきた。後頭部に打撲、後に川に捨てたが、偶然、流木に引っかかった。身元は意外と早く分かった。ガイシャがズボンの裏に縫い付けていた、超耐水マット紙を使ったラベルシールで作った名刺だ。


わたしは今日まで生きてきました

わたしは今日まで生きてきました

========== フィクションです ===========

=== 主な登場人物 ===

眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 

辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。

 

神道助六・・・捜査二課課長。

深山俊哉・・・警視庁広報課課長。警部補。

 

=================================

 

※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 

午後1時。捜査一課横の大会議室。『目黒川死体遺棄事件』本部。

管理官が説明を始めた。

「ガイシャは、野村新太。発見者は、近くを通った、『ヨグルトレディ』。昨日午後。台風で折れた桜の枝と共に流れていた。身元不明だったが、テレビでニュースを観た妹が届け出てきた。後頭部に打撲、後に川に捨てたが、偶然、流木に引っかかった。身元は意外と早く分かった。ガイシャがズボンの裏に縫い付けていた、超耐水マット紙を使ったラベルシールで作った名刺だ。」

「ガイシャは、身の危険を感じていたんだ。 」と、大曲が呟いた。

 

午後2時。クルマの中。

「臭うな。」

「え?」

「お前じゃない。クルマでもない、村松でもない。野村さんは、独居だった。高齢者の祖居は珍しくない。あそこに病院があるな。村松、理由こじつけて、隣の西浦さんを・・・。」

「了解しました。」

「まだ、全部言ってないぞ。」

「判ります。私、先輩、好きだから。」

「・・・。」

 

午後2時半。野村家。

西浦さんから『家の鍵』を預かった、大久保幸恵が、夫の敏夫と共にいた。

大曲先輩の、大仰なお悔やみを言われた幸恵夫婦は戸惑っていた。

「自然死や病死と違って、解剖が済んでからでないと、ご遺体はお返し出来ないんです。妹さんは、葬儀社の方と打ち合せしておいて下さい。それと、規則なので申し訳ないんですが、野村さんの私物をチェックさせてください。ひょんなところから、犯人に辿り着くかも知れないんです。眩目君、衣類とアルバム等、立ち会って頂いて調べてね。」

「了解しました。」

 

俺は、先輩の言う通り、夫婦が、この家に不案内なことに気づいていた。

年賀状等の類い、住所録、アルバム。全てきちんと整理してあった。

アルバムを見て、更に気づいた。『親族との集合写真』がない。

「仲の良い、お友達、判ります?」

妹は、小学校中学校の、2人以上で写っている写真のみ、指をさした。

野村さんが楽しそうに写っているのは、大学の写真、コンピュータ専門学校の写真、会社の慰安旅行の写真のみだった。

2人は、明らかに、『初見』だった。

先輩のところに行った俺は、友人らしき人達の名前・住所のメモと名刺入れを見せた。

「おお、大収穫だな。こちらも大収穫だ。どうもお邪魔しました。ご遺体の件は、後ほど係から連絡があると思いますので。」

2人に丁寧に挨拶をし、俺達は病院に向かった。

 

午後4時。野村家から50メートル先の病院。

村松から聞き出した話を復唱させ、西浦さんは頷いた。

「西浦さん、お買い物の予定なんかは・・・。」

それと悟った西浦さんは、「ああ、そうそう。〇〇で今日、福引きがあるんだったわ。」と、俺達を見た。

さすが、野村さんが合鍵を預けるだけの相手だ。

 

午後5時半。捜査一課横の大会議室。『目黒川死体遺棄事件』本部。

取り調べ室から、神道課長、深山課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

神道課長、深山課長は、すぐに出ていった。

管理官が説明を始めた。

「ホシは、ガイシャの妹夫婦。大曲くんや開光課長の睨んだ通りだった。ホシの2人は、宗教団体総合科学会の会員で、借金が出来ていた。母親の相続で大金が入ったので、調子に乗って使い過ぎた。だが、組織からは抜けられない。野村さんを殺して家を手に入れれば何とかなる、と言われ殺害した。川への遺棄は、台風の最中に組織の者が行った。隣家の西浦さんは、たまに来ては、気ままに振る舞っていた親族を観察していた。お金が絡んでいることも、だ。彼らは気づかなかったが、野村さんは、衣類に名刺を縫い込んでいたし、防犯カメラも仕込んでいた。事件当夜、2人が出入りしたことは明白だ。遺棄を担当した組織の連中も映っている。野村さんは、元プログラマで、今は、流行りのWeb小説ライターだ。身内のことも小説にしている。『今から小説家になりたいか、諦めろ』と怒鳴られていたとか。大曲君が発見したショートカットのリンク先には、生前の野村さんが歌っている姿も映っていた。」

「恐ろしくアナログな2人は、恐ろしくデジタルな野村さんに、敵うことは無かった、永遠に。」

大曲先輩は、歌声をダビングしたものを再生した。

皆、涙が止まらなかった。

 

午後7時半。眩目家。

「結局、野村家の母親の実家が葬儀を行うことになったそうだ。預貯金が僅かで、『爪に火をともす』生活している人間から、何もかも奪おうとするなんて。」

 

俺は、蘭子をそっと抱きしめた。何時間も。

 

―完―

 

わたしは今日まで生きてみました

時にはだれかの力を借りて

時にはだれかにしがみついて

わたしは今日まで 生きてみました

そして今 わたしは思っています

明日からも

こうして生きて行くだろうと

 

わたしは今日まで生きてみました

時にはだれかをあざ笑って

時にはだれかに おびやかされて

わたしは今日まで生きてみました

そして今 わたしは思っています

明日からも

こうして生きて行くだろうと

 

わたしは今日まで 生きてみました

時にはだれかにうらぎられて

時にはだれかと手をとり合って

わたしは今日まで生きてみました

そして今 わたしは思っています

明日からも

こうして生きて行くだろうと

 

わたしはわたしの生き方がある

それはおそらく自分というものを

知るところから始まるものでしょう

けれど それにしたって

どこで どう変わってしまうか

そうです わからないまま生きて行く

明日からの そんなわたしです

 

わたしは今日まで生きてみました

わたしは今日まで生きてみました

わたしは今日まで生きてみました

 

そして今 わたしは思っています

明日からも

こうして生きて行くだろうと

 

作詞:吉田拓郎

作曲:吉田拓郎

歌:吉田拓郎

 

 

作品コード:139-5171-8

 

※『著作権』等の問題あるようなら、エンドマーク以降は削除します。

クライングフリーマン

 

 




「捜査一課ですけど、」のスピンアウトです。
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