空の向こうから、なにかが僕たちを覗き込んでいる。
善悪なんてどうでもいい。ただ、この胸に燻る愛や、嫉妬や、未練――人間という生き物が垂れ流す、醜く肥大した感情だけを、奴らは愉しげに“観測”している。
降臨した“使徒”の前に、世界はあっけなく削られていく。
抗うための兵装《感情燃焼機関》は、僕たちの感情そのものを燃料にして炎を上げる。戦えば戦うほど心は摩耗し、大切な記憶の輪郭が、体温と一緒に消えていく最低の兵器。
命を燃やす英雄たちのまぶしさに、僕はいつも目を細めていた。
才能も、出力もない僕には、戦う資格すらない。世界の救済なんてどうでもよかった。僕の狭い視界には、ただ一人、幼馴染の小宮依里だけがいればよかった。
誰よりも壊れやすいあいつが、世界の“救世主”へ祭り上げられていく。
依里の声が、どこか遠くのスピーカーから聞こえる気がして、胸の奥が冷たく震えた。
遠くへ行かないでくれ。僕を置いていかないで。
……だから、あいつが傷つき、無力な少女に戻るたび、心の底で酷く安堵してしまう自分を、僕は殺せそうにない。
当の依里は、「私がやらなきゃ、みんな死んじゃうから」と、取り憑かれたような笑顔で心を焼き、また戦場へ向かう。
これは、世界を救う英雄の物語じゃない。
……愛するほどに壊れ、守りたいと願うほど怪物に堕ちていく、僕たちの記録。
なろう・カクヨム・Nolaノベル様でも投稿しております
善悪なんてどうでもいい。ただ、この胸に燻る愛や、嫉妬や、未練――人間という生き物が垂れ流す、醜く肥大した感情だけを、奴らは愉しげに“観測”している。
降臨した“使徒”の前に、世界はあっけなく削られていく。
抗うための兵装《感情燃焼機関》は、僕たちの感情そのものを燃料にして炎を上げる。戦えば戦うほど心は摩耗し、大切な記憶の輪郭が、体温と一緒に消えていく最低の兵器。
命を燃やす英雄たちのまぶしさに、僕はいつも目を細めていた。
才能も、出力もない僕には、戦う資格すらない。世界の救済なんてどうでもよかった。僕の狭い視界には、ただ一人、幼馴染の小宮依里だけがいればよかった。
誰よりも壊れやすいあいつが、世界の“救世主”へ祭り上げられていく。
依里の声が、どこか遠くのスピーカーから聞こえる気がして、胸の奥が冷たく震えた。
遠くへ行かないでくれ。僕を置いていかないで。
……だから、あいつが傷つき、無力な少女に戻るたび、心の底で酷く安堵してしまう自分を、僕は殺せそうにない。
当の依里は、「私がやらなきゃ、みんな死んじゃうから」と、取り憑かれたような笑顔で心を焼き、また戦場へ向かう。
これは、世界を救う英雄の物語じゃない。
……愛するほどに壊れ、守りたいと願うほど怪物に堕ちていく、僕たちの記録。
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| 英雄はまだ人間だった | |
| 第壱話 「コンビニの灯り」 | |
| 第弐話 「プリンを買う理由」 | |
| 第参話 「誰かを、本当に救えたり、するんですか」 | |
| 第肆話 「何も心配いりません」 | |
| 第伍話 「第一使徒」 | |
| 第陸話 「スープの嘘」 | |
| 第漆話 「死んだアスファルトみたいな色だった。」 | |
| 第捌話 「私には、ただの騒音にしか聞こえなくて」 | |
| 第玖話 「……透ってあったかいよね」 | |
| 第拾話 「残像」 | |
| 英雄の作り方 | |
| 第拾壱話 「名前の葬列」 | |
| 第拾弐話 「遺品たちの夜」 | |
| 第拾参話 「神殺しの輪郭」 | |
| 第拾肆話 「被適合者の調律」 | |
| 第拾伍話 「泥の底から、空の底へ」 | |
| 第拾陸話 「兵器たちの葬列」 | |
| 世界を殺す約束 | |
| 第拾漆話 「極刑台のハッカー」 | |
| 第拾捌話 「約束の底」 | |
| 最終話 「世界を殺す約束」 | |