トウコちゃんには入り込める余地があるところには全て入り込んでもらいます。
どうかゆったりとお付き合いいただければと思います。
懐かしい声が聞こえる。
「──、分かってますか?また騙されてただ働きさせられるところだったんですよ!」
「ひぃん……」
青空がどこまでも広がり、暖かな日の光が差し込む教室の前で意識が広がる。
扉を開けるとその中で一方は正座をさせながら説教をし、もう一方はありとあらゆる戦闘教本と何かの論文らしきものを積み重ねて読み込んでいた。
「来たな、──!また模擬戦しようぜ!」
「……あ!──ちゃん助けて!──ちゃんが物凄い怒ってるの~!」
「あ、コラ!まだ話は終わってませんよ!──!!!」
叱りながらも愛おしさを滲ませる声、叱られるのが堪えられないと助けを求める天真爛漫な声や好戦的でハツラツとした声。いつまでも続くと思っていた穏やかな日常がそこにあった。
また何かしたのか問おうとした瞬間、周囲は暗くなり、暗闇が辺りを覆う。
煩雑に並べられた机や椅子のある教室が消え、厳しくも暖かな声も天真爛漫な声もハツラツとしたあの声も全て消えた。
残ったのは砂の混じる乾いた風と傷だらけの体を互いに支え合いながら歩いてくる二人、そしてショットガンを握りしめ絶望に打ちひしがれている同級生だった。
「ごめんね──ちゃん、──ちゃん。わたしがもっとしっかりしていれば……」
「へへ、──……ごめ…な…や……くそく……」
傷だらけの彼女達が倒れる。どちらも不条理を呪うことなく、一方は約束の不履行を、もう一方は自身の不甲斐なさを謝罪した。──そんなことよりも一緒に生きて居て欲しかったのに。
「……私のせいだ。…私があの時あんな事をしなければ……あの二人にあんな事さえ言わなければ……こんな事にはならなかったのに。」
「……もう私にこの場所を守る資格はなくなった。──に全て任せるよ。」
そう言い、彼女はこの地を封じようとした。自身の愚鈍で浅慮な在り方を呪いながら。──その行いは貴方自身を殺すことになる。貴方が守り手を見つけられるその時まで僕はずっと隣に立とう。
しかし現実はそうならなかった。……いや、
それに世界の為と言って、
燃える炎が弾ける。たき火の奥に見える後輩達と共に今を懸命に生きるかつての友人を見て我に返る。
決して叶う事の無いありふれた日常をたき火越しに見ては自身の罪深さに
「……自分で決めたくせに。」
ある一件で発現した神秘の一端。それで
──酷い話だ。どれだけ奮闘しても結末を変えるほどの価値が無かったと突きつけられている。
ここで諦める事が出来たらどれほど良かった事だろう。だが、それは彼女に許されていなかった。
「先輩、終わったよ。」
色彩による反転を経た砂狼シロコがこちらにやってくる。目は赤く腫れ、涙の後が残っていた。
──それだけではない。見えていた未来をそっくりそのまま持ってきていたのだ。
「……やっぱり、そうなっちゃったんだね。
先生と呼ばれた存在はシッテムの箱と呼ばれる壊れかけのタブレットを握ってこちらを見据えている。前から何を考えているのか分からない人だったが、生命維持装置と思われる装備を付けているとなおの事分からくなってしまっていた。
「二人とも……ごめんなさい。私のせいでこんな事に……ごめんなさい…!」
「いいんだシロコちゃん。……僕や先生が選んだ結末だ。貴方が気に病むことは無いんだ。──これでいい、これでいいんだよ。」
泣きじゃくる彼女を抱きしめて頭を撫でてあげる。彼女の手は赤く染まってしまっている。彼女自身も分かっているのだ。どれだけ洗ったとしても綺麗になる事は無い。ずっと傍らに罪悪感を背負っていくことになると。
だが、これでいい。今はどんな障害だろうと越えていく必要がある。託されたものを次へ託すために。
────例えそれが僕自身の命を懸ける事になったとしても。