アビドス砂漠の中心区から、やや離れた場所―――倒壊した建物がぽつぽつと存在するその場所で眩い光とともに現れた一人の男が目を開ける。
口元に傷のある、極めて筋肉質な男。
―――一泊置いて、彼はニヤリと笑みを浮かべる。
「おいおい?もしかして本当に転生できたのか??」
その人相に、その人物に、全く似合わないセリフを平然と吐き出す―――そんな名もなき転生者。
『オイ』
「ッッ……キタコレぇ、サンクトゥムタワー……!!そしてその頂点に輝くヘイロー!」
『……』
「そして、なんといっても―――天与の暴君、伏黒甚爾の肉体っっ!!!」
簡単なストレッチを行うように身体を動かし、わかりやすく調子に乗り始める転生者。
『―――オイ』
―――ぞわっと一瞬にして全身に鳥肌が立つ。悪寒が止まらない。
それは彼の魂が感じた危機感であり、根源的な恐怖であり、自分が失われることを察したが故の生理的恐怖―――生存本能でもあった。
「ひぃっ……な、な……あ、あれ?お、おれが……きえてく?!な、なんで……!」
『ハッ、テメェの魂が俺の肉体に勝てなかった。それだけだろ』
「ふざけんな!!おれはかみにえらば―――」
『ウルセェな、とっとと消えてろ―――』
まるで
―――そう……今、この世界に。
この〝透き通るような学園都市〟に―――正真正銘、〝天与の暴君〟が舞い降りた。
「ハッ漸く静かになったか。神に選ばれたとか自分で言ってやがったが、惨めなモンだ」
「……前見てェに自我は消えねぇし、近くに術師も居やしねぇ……まぁいい、そういうことならわざわざ自死して無駄にすることもねェだろ」
「あ?……―――」
そう結論付けた伏黒甚爾は、突然歩行を止め、背後を見る。
数秒間だけ、視線を何も無い空中へと向け……すぐさま正面に戻す。
「―――やたらデケェな」
―――彼の向ける、その瞳には百メートル近く離れた場所から向かってくる砂嵐が映っていた。
だが、彼が視ているのは実際にはそれではない……その砂嵐を起こしているナニカであった。
「どう足掻いてもビル五階分以上は悠にある、か……」
自身の五感と感覚機能を存分に発揮し、振動と音から即座にその大きさを推測する甚爾。
「……ま、此処は大人しく逃げとくのが吉か」
甚爾が踵を返し駆け出そうとする、その時―――丁度、背中側……ナニカが居るその方向からほんの僅かに風が吹く。
甚爾の天与呪縛から成る類稀なる嗅覚は本来ならば気付かないレベルの血潮の匂い、そして夏の夜の花畑を思い起こさせるような花を模して生まれた微細な香り。
同時にフラッシュバックする記憶―――それは自らが記憶の底に沈めた記憶の断片。
「……ハァ、くだらねぇ……ソレは捨てたろ―――」
甚爾はそう言葉を吐き捨てながらも、地面に転がっていた手頃な石を拾い上げる。
────投擲。
フィジカルギフテッドが本気で放ったそれは亜音速並の速度で突き進み、分厚い砂嵐の層と鋼鉄の身体を盾として持つ【第三セフィラ
「ひぃん!」
そのまま轟音と共に倒れ伏し、ピクリとも動かないビナー。
そして所々に掠り傷があるものの確かに生きていて、自身を呆然と見つめている少女【梔子ユメ】……その一切に背を向け―――姿がブレ、音もなく消え去ったのだった。
「……ヒーロー?」
「そう!名前も何も告げずにパッて消えて!一瞬で『ビシューン!!!』ってビナー?を倒しちゃったんだよ!えへへ、カッコよかったなぁ〜」
「……へぇ、そうですか。まぁ最終的に脱水症状になりかけているユメ先輩を見つけたのは私ですけど……カッコよかったのはその人だけですか。ふーん……へぇー」
「ええっ、し、嫉妬してる?あのホシノちゃんが!?いつも辛辣なあのホシノちゃんが!」
「っ―――人のことなんだと思ってるんですか!大体もとを辿れば―――……はぁ、いえ、まぁ、その……助かって良かったです。ユメ先輩……」
「クククッ。それでは……その契約内容で了承して頂けますか?―――伏黒甚爾さん?」
癖になってんだ、生産だけして続き書かねぇの。←ドクズ
ほら、評価と伸びが良ければ書くかもしれないから……