キングカズマinヒロアカ   作:うさぎ

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第13話

 

 

 

 

 (間に合ってくれ)

 俺専用の脳無をしばき倒した俺は相澤先生が戦っている場所へ全速力で、向かっていた。

このままだと原作みたいに先生の顔面がリアルで崩壊しかけるからなんとしても助けなければ!

 

しばらくして、広場が見えてきた。そこには腕を折られて脳無に捕まっている相澤先生だった。

 

 

 「――クソッ、やっぱりもう捕まってやがるか……!」

 

 物陰に身を潜め、荒い息を整えながら広場の惨状を睨みつける。

視界の先、脳無の巨大な手に組み伏せられている相澤先生の姿があった。嫌な音が響き、先生の腕が不自然な方向に曲がる。

 

 原作知識があろうがなかろうが、あんなの見せられて平気でいられるわけがない。胸の奥からドス黒い怒りが湧き上がってくる。

だが、焦って飛び出せば犬死にだ。

 

ぶっちゃけあの2人は意外とどうにかなる。死柄木の「崩壊」は間合いに入らなければいい。黒霧の「ワープゲート」も、出現位置さえ予測できれば躱せる。問題は、相澤先生をあそこまで蹂躱している、ショッキングピンクの脳ミソを剥き出しの脳無である。

 

 オールマイト専用だから俺の格闘術じゃああんまりダメージ入らんし。腕をちぎっても再生するし。おまけにショック吸収も兼ね備えてるので、ヒットアウェイ戦法による時間稼ぎも不可能。

うん。改めて思うけどこいつ序盤に出てはいけないだろ。

 

 だがもうウダウダ考える時間はない。

 

「――お前か、コソ泥うさぎ。わざわざ戻ってくるとは、随分と自殺志願者なプレイヤーだな」

 

 死柄木が首をガリガリと掻きむしりながら、物陰の俺に視線を向けた。

隠れていたつもりだったが、マルチ脳無を撃破してここまで全力疾走してきたんだ、流石に気配を隠し通せるわけがなかった。

 

 その時脳無は相澤先生の顔面を地面に叩きつけようとしていた。

俺は覚悟を決めた。前世の憧れはこの程度で諦めないであろう。

 

 思考を捨て、身体を最高速度のその先へと加速させる。

狙うは相澤先生の顔面を掴んで地面に叩きつけようとしている脳無の、その「腕」だ。

 

 普通に殴ってもショック吸収で無効化され、超回復でリセットされる。なら、打撃そのもののダメージを期待するんじゃない。万助さんの地獄のシゴキで叩き込まれた、衝撃の「浸透」と「方向修正」――武術の極意をここにぶつける!

 

「手を引き剥がせェッ!!」

 

 脳無の懐に滑り込みながら、俺は自慢の跳躍力を横方向への推進力へと変換。独楽(コマ)のように鋭く身体を回転させ、遠心力と体重の全てを乗せた強烈な螺旋の回し蹴りを、脳無の手首に叩き込んだ。

 

『因幡・旋壊』!!

 

 ただの打撃ではない。ぶち当てた瞬間、足の裏から脳無の肉体へ向けて、衝撃のベクトルを「真上」へと無理やり捻じ曲げる発勁を放つ。

どれだけショックを吸収しようが、加えられた力の向き(ベクトル)そのものを操作されれば、巨体と言えど抗えない。

 

「ガ、ギ……!?」

 狙い通り、相澤先生の顔面を押し潰そうとしていた脳無の剛腕が、強制的に上空へと跳ね上げられた。

一瞬の解放。俺はその隙を逃さず、地面に倒れていた相澤先生の襟首を掴み、全力のバックステップで引きずるようにして距離を取る。

  

 「……がはっ……げほっ! てめぇ、は……兎山、か……。逃げろと、言ったハズだ……!」

 

「先生はしばらく寝てください。」

 

安全圏まで下がって確認した先生の顔面は、血塗れではあるものの、原作のような「眼窩底骨折によるリアル崩壊」は免れていた。間に合った……! 首の皮一枚繋がったぞ!

 俺は近くに居た緑谷達に相澤先生を預けた。

 

 向こうでは黒霧と死柄木が話していた。

 「死柄木弔」

「黒霧、13号はやったのか?」

「行動不能に出来たものの散らし損ねた生徒がおりまして…一名逃げられました」

「は?…、黒霧おまえ…おまえがワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ…」

 

 一名逃げられた。それは助けを呼ばれてしまっていることだ。少し時間を稼げばプロヒーローが来てくれる。

 

「さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ、あーあ今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」

 

 どうかそのまま帰ってくださいお願いします。

 

 「けどもその前に平和の象徴としての矜持を少しでもへし折って帰ろう!」

 そう言って鋭い眼光を俺に飛ばしてきた。怖。

 「先生を頼む」

 緑谷は慌てた様子で俺に尋ねる。

 「兎山君はどうするの!?」

そんなもん決まっている

 

「あいつを倒す」

 

 「――おいおい、冗談だろ、コソ泥うさぎ」

死柄木が首をガリガリと掻きむしる手を止め、濁った瞳を大きく見開いた。

その顔に張り付いた「手」の隙間から、狂気じみた笑いが漏れ出す。

 

「倒す? 君が? あの脳無を? あははは! 冗談はステージの難易度だけにしてくれよ! それはオールマイトを殺すために作られた、設定カンストのバケモノだ。ただの一般生徒が、格闘技ごっこでどうにかできる枠じゃないんだよ!」

 

死柄木の嘲笑を背中で聞きながら、俺は一歩、また一歩と脳無に向かって歩を進める。

 緑谷に抱えられた相澤先生が「よせ……兎山……!」と血を吐きながら制止しようとするのが聞こえた。

 

 

 だけど、もう「あいつを倒す」って口に出しちゃったしな。

それに、前世で画面の向こうのヒーローたちに憧れて今、万助さんというリアル理不尽の化け物に地獄の底までシバかれ倒してきた俺のプライドが、ここで尻尾を巻いて逃げることを許さねえんだよ。

 

「ショック吸収に超回復。クソゲーだな」

 

俺は足の裏でトントンとコンクリートを叩き、ステップの感触を確かめる。

 水曜日まで万助さんにノンストップでシバき回され、筋肉痛でバキバキのはずの身体は、不思議と今、驚くほど軽くなっていた。恐怖の限界を超えて、生存本能が細胞の一つ一つを強制的に覚醒させている感覚。万助流古武術の歩法、呼吸、脱力――その全てが、俺の肉体に完全に溶け込んでいた。

 

 

 「脳無」

死柄木が首を掻きむしりながら、冷酷な声を響かせた。

「その生意気なウサギの四肢をへし折れ。死なない程度に、徹底的に分からせてやれ」

「ガ、ギィ……!」

 

 脳無の虚ろな眼光が俺を捉えた。次の瞬間、視界からその巨体が消える。

――速い!

だが、万助さんの「前触れのない一撃」を浴び続けた俺の目と皮膚は、その超高速の突進が巻き起こす「空気のうねり」を捉えていた。

正面からまともに受ければ、肉体ごと消し飛ぶ。

 

 俺は一歩、斜め前方へと踏み込んだ。相手の攻撃軌道に対して、あえて懐へ滑り込むように。

「万助流・陰の歩法――『影踏み』」

脳無の丸太のような右拳が、俺の鼻先をかすめて空を切る。すさまじい風圧だけで、頬の皮膚が裂け、血が滲んだ。だが避ければいい。当たらなければどうということはないんだよ!(赤い彗星風)

 

 

 脳無の右ストレートが巻き起こした超烈風が、俺の頭髪を激しく巻き上げる。だが、すでに俺の身体は次の挙動へと移行していた。

一歩で脳無の死角である右脇腹へと滑り込み、俺は両手を敵の強靭な漆黒の筋肉へと密着させる。

 

 ショック吸収? 確かに外側からの生半可な打撃じゃ、お前の肉厚な脂肪と筋肉に全部殺されて終わりだ。だけどな――。

深く、鋭く息を吐き出す。

身体の中心、丹田から突き上げるエネルギーを、拳ではなく「掌」を通じて脳無の体内に直接流し込む。打撃の衝撃そのものを叩きつけるんじゃない。波紋のような、物質を透過する微細な振動を、内臓へ直接浸透させるように。

『因幡・震牙《しんが》』!!

ドォン、と鈍い低音が脳無の体内から響いた。

万助さんに毎日何百回と叩き込まれた、衝撃を表面で散らせず、骨や内臓へ直接届かせる「浸透勁」の極意。

 

「ガ、ア……ッ!?」

 脳無の巨体が、初めて不自然に震え、一歩後退した。

ショック吸収の個性が反応するより早く、衝撃がその強固な外殻を通り抜け、内部の脆弱な器官を直接揺さぶったのだ。脳無の口から、どす黒い血液がドロリと溢れ出る。

「効いて、る……!?」

 

 遠くで相澤先生を抱える緑谷が目を見開く。

「何だ……? 今、何をした……!?」

死柄木の声から余裕が消え、ガリガリと首を掻きむしる速度が上がる。

 

「脳無の肉体はオールマイトのパワーに耐えるように作られてるんだぞ! なんでただの一般生徒の突っ張りが効いているんだ!? バグか!? チートか!?」

 

 俺は追撃の手を緩めない。脳無が体勢を立て直す前に、さらに深く踏み込む。だが、脳無の回復力は文字通り異常だった。内部破壊されたはずの器官が、瞬時に「超回復」によって修復されていく。一歩下がった脳無の目が、再び生気のない凶暴な光を宿し、今度は左腕を横一線に振り抜いてきた。

 

逃げ場のない、圧倒的な面での払い手。

今度は至近距離すぎてかわしきれない。ならば――。

「方向修正《ベクトルシフト》ッ!」

 

 俺は振り下ろされる脳無の豪腕に対し、自分の左手を添えるようにして接触させた。真っ向から受け止めるのではない。激流の川に、斜めに板を差し込むように、その圧倒的な破壊力の「向き」をわずかにズラす。

 

万助さんとの組手で、何度骨を折られながら身につけたか分からない、力の受け流し。

 

脳無の拳は俺の身体のわずか数センチ横の地面を直撃し、コンクリートを爆発させた。凄まじい衝撃波で俺の制服がズタズタに引き裂かれるが、芯へのダメージは最小限に抑えた。

そして、姿勢を崩した脳無の顎の下へと、俺はすでに次の体制へと移行していた。

 

「これでおわりじゃねえぞ、バケモノ!」

 

 右拳を固め、全身の捻りを一点に集中させる。

地面を蹴った反発力を、膝、腰、肩、そして拳へと連動させる。万助流古武術の真髄――全身の力を一切のロスなく伝える「一気通貫」の突き。

『因幡・崩天《ほうてん》』

 

 下から突き上げるような強烈なアッパーが、脳無の顎を正確に捉えた。

浸透の衝撃が、脳無の頭蓋骨を透過し、剥き出しになったショッキングピンクの「脳みそ」へと直接突き抜ける。どれだけ肉体が頑丈だろうが、脳そのものを激しく揺さぶられれば、生物としての機能を一時的に喪失せざるを得ない。

 

 脳無の巨体が、糸の切れた人形のように宙に浮き、そのまま背中から地面へと激しく叩きつけられた。激しい地響きが広場に鳴り響く。

 

「嘘、だろ……」

死柄木が、完全に動きを止めた。その顔に張り付いた手が一瞬、震えたように見えた。

「あの脳無が……殴り倒された……? オールマイト専用の、僕の最高傑作が……こんな、名もないプレイヤーに……!?」

 

 ハァ、ハァ、ハァ……と、俺の口から荒い息が漏れる。

決まった。完璧な手応えだった。脳への直接打撃。いかに超回復があろうとも、脳の神経伝達そのものを狂わせれば、立ち上がるのには時間がかかるはず――。

だが、現実は甘くなかった。

 

「ガ、ガガガガガガガガッ!!!」

ピクリ、と脳無の指先が動いたかと思うと、信じられない速度でその巨体が跳ねるようにして起き上がった。

剥き出しの脳が激しく脈打ち、割れた顎の骨が、メキメキと音を立てて一瞬で元通りに噛み合っていく。その目は、先ほどまでの「操り人形」のような虚無ではなく、明確な、獲物を噛み殺すための悪意に染まっていた。

「チッ……! 脳へのダメージすら、力技で即座に再生させんのかよ……! 本当に化け物だな!」

 

 俺の肉体には、確実に疲労が蓄積し始めていた。

俺はただの人間だ。衝撃を浸透させ、受け流すたびに、俺の筋肉や関節にも莫大な負荷がかかっている。

対して、目の前の脳無は、いくらダメージを与えても一瞬で「新品」に戻る。

圧倒的なリソースの差。これが、設定カンストのクソゲーの現実。

「あはは……あはははは! びっくりした、本当に心臓に悪いよ君は!」

 

 死柄木が再び、狂気的な笑い声を上げ始めた。

「だけど、終わりだ。どれだけ技術があろうが、一発も効かないんじゃ意味がない。お前のスタミナが切れるのが先か、脳無がお前をハエ叩きにするのが先か……言うまでもないよねえ!」

脳無が地を蹴った。先ほどを遥かに凌駕する速度。もはや空気のうねりすら置き去りにするような、純粋な暴力の突進。

 

反応が遅れてしまった。脳無の巨大な手のひらが、俺の視界を覆い尽くす。かわせない。受け流す猶予もない。

せめて、直撃だけは避けるために、俺は瞬時に両腕を交差させ、全身の筋肉を硬直させた。

 

ドゴォォォォンッ!!!

「がはっ……!?」

凄まじい衝撃と共に、俺の身体はまるで大砲の弾のように吹き飛ばされた。

広場の壁に背中から激突し、コンクリートが蜘蛛の巣状に割れる。口から鮮血が飛び散り、視界がチカチカと明滅した。両腕の骨がきしむような悲鳴を上げている。完全に折れてはいないが、ヒビくらいは入ったかもしれない。

「兎山くん!!!」

 

緑谷の叫び声が、遠くの方で聞こえる。

「……お前……逃げろ、と……」

相澤先生が、動かない身体を必死に動かそうと、地面を這っている。その目は、血に染まりながらも、教え子を救おうとする執念に燃えていた。

(クソ……やっぱり、正面からやり合うのは無理があったか……?)

壁に背を預けたまま、俺はズキズキと痛む腕を抑え、迫りくる脳無を見つめた。

 

 一歩一歩、確実に俺を仕留めるために近づいてくる巨体。

前世の知識がある。だから、ここで時間を稼げばオールマイトが来ることも知っている。だけど、ここで「誰かが来るのを待つ」だけの戦いをするのか?

『いいか一真』

脳裏に、あの忌々しくも、圧倒的に強かった万助さんの声が響く。

『技ってのはな、理屈じゃねえ。相手の理不尽を、自分の理不尽で塗り潰すためにあるんだよ。お前がウサギなら、泥水をすすってでも、虎の喉笛を噛みちぎる算段を立てやがれ』

 

 俺は口元の血を手の甲で拭い、不敵に笑った。

まだ、俺の足は折れていない。自慢の跳躍力も、万助流の極意も、まだ全部を使い切っちゃいない。

 

 ショック吸収が完璧なら、吸収できる許容量を超えるか、あるいは「吸収できない形」で力を加え続ければいい。超回復が無限なら、再生が追いつかない速度で、その肉体の構造そのものを破壊し尽くせばいい。

「緑谷、相澤先生。心配すんなって……」

 

 俺は再び、ふらつきながらも両足でしっかりと大地を踏み締めた。

俺の身体から、かすかに熱気が立ち上る。

体内の全エネルギーを、足の筋肉へと集中させる。万助流古武術・瞬身の法。

 「いくぞ、バケモノ。」

脳無が咆哮を上げ、再び俺の命を刈り取るために跳んだ。

同時に、俺も地を蹴った。

 

 今度は直線的な突進ではない。広場の壁、床、あらゆる遮蔽物を足場にし、俺は縦横無尽に、まさに「跳ね回る兎」のように軌道を変えながら加速していく。

「なっ、速い……!? どこを見てる、脳無! 正面だ、正面を潰せ!」

死柄木の指示が飛ぶが、俺の速度はすでに脳無の動体視力を狂わせ始めていた。

 

キィィィン、と空気が鳴る。

 脳無の背後に回り込んだ瞬間、俺は跳躍。空中での身を翻し、脳無の巨大な首筋に向けて、渾身の蹴りを放った。

「『因幡・旋壊』連撃ッ!!」

 一発ではない。着地と同時に、跳ね返る力を利用して二発、三発、四発。

 

 脳無のショック吸収が衝撃を殺すよりも早く、全く同じ箇所へ、ベクトルの異なる衝撃を連続して叩き込む。

右へ、左へ、上へ、下へ。

 

脳無の肉体が、加えられる力の方向の乱気流に耐えきれず、激しくブレ始める。超回復が追いつかない。なぜなら、肉体が「どの方向に修復すればいいのか」を、細胞レベルで困惑しているからだ。

 

「ガ、ブ、ギギギギッ!?」

 

 脳無の巨体が、まるでバグったグラフィックのようにガタガタと震える。

ここだ。ここしかない。俺は連続蹴りの反動を利用してさらに上空へと跳ね上がり、脳無の頭頂部、あの剥き出しの脳みその真上に位置取った。

これが俺の、正真正銘最後の全霊。

全細胞のエネルギーを、万助流の呼吸法で限界を超えて練り上げ、右拳に込める。腕のヒビなんて知るか。ここで打たなきゃ、次はない!

 

「沈めぇぇぇぇッ!!!」

 

重力と遠心力、そして己の全存在を乗せた、超高密度の浸透勁。

俺の拳が、脳無の脳頭頂部へと垂直に炸裂した。

ズゴォォォォォォンッ!!!!!

 

 衝撃波がUSJの広場全体を巻き込み、土煙が激しく舞い上がる。

脳無の巨体が、今度こそ完全に地面へとめり込み、クレーターを作り出した。脳の組織が文字通り破裂し、再生の光すら一瞬完全に途絶える。

勝ったか――?

いや、着地した俺の足は、すでに限界を迎えてガチガチと震えていた。

土煙の向こう。

ドロリ、と脳の組織が蠢いた。

 

 嘘だろ。あれだけの致命傷を受けてなお、細胞が、超回復の個性が、再び肉体を無理やり繋ぎ合わせようとしている。脳無の巨体が、執念の塊のように、ゆっくりと、しかし確実に起き上がろうとしていた。

「あは、あはははは! 惜しかったねえ! 本当に凄かったよコソ泥うさぎ! だけどゲームオーバーだ、脳無は死なない!」

死柄木の狂った歓喜の声が響く。

 

 俺の視界が、急速に狭まっていく。

全身の血管が焼き切れるような熱さと、強烈な脱力感。脳無からのダメージ、そして限界を超えた技の反動が一気に押し寄せてきた。

 

 一歩も動けない。指先一つ動かす力すら、今の俺には残っていなかった。

立ち上がろうとする脳無が、その虚ろな、しかし確実な殺意の瞳で俺を見下ろす。

 

ゆっくりと倒れそうになる俺の身体。

脳無の巨大な拳が、トドメを刺すために振り上げられた――その、瞬間だった。

ドンッ!!!!!!

 

 地鳴りのような、圧倒的な爆発音がUSJのドーム全体に轟いた。

入り口の重厚な扉が、凄まじい風圧と共に文字通り粉々に吹き飛ぶ。

凄まじいプレッシャーが、その場にいた全員の肌を刺した。

そこに立っていたのは、いつもテレビで見せるような眩しい、安心させるための笑顔ではない。怒りでその顔を完全に引きつらせ、凄まじい威圧感を放つ、真の「平和の象徴」の姿だった。

 

『もう、大丈夫』

 

その声が響いた瞬間、俺の張り詰めていた意識の糸が、プツリと切れた。

最高のタイミングで現れた、最強のラスボス。あの背中が見えたなら、もう俺が無理をする必要はどこにもない。

『私が、来た』

 オールマイトのその言葉を最後に、俺の視界は完全な闇へと落ちていった。

 

 

 

 




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