魔法科高校の劣等生の弟(仮)   作:検討使

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入学編2

少年たちは校内の中庭にあるベンチに腰掛け、各々の端末に目を向けていた。

入学式まで、あと30分。人の気配を感じ、端末から目を上げる。

 

「新入生ですね?そろそろ開場しますよ。」

 

入学初日にわざわざこんな中庭に足を運ぶ新入生は珍しいのだろう。。

上級生の女子生徒から話しかけられ、魔法科高校特有の制服が目に入る。

 

この時代、男性の前で女性が肌を露出することは公共の場では極めて稀で、

スカートの場合でも長いロングスカートを身につけることが常識だった。

 

彼女の細い腕には幅広のブレスレット。最新式の小型化されたCADが目立っていた。

Casting Assistant Device(術式補助演算機、通称法機)。

魔法の起動式を保存する現代魔法には必須の補助ツールだ。

 

魔法師はCADが無い状態でも魔法を発動することができるが、

CADの有無に寄る魔法の発動速度には雲泥の差がある。

 

一般生徒は実習及び部活動以外でのCADの携帯を認められていはいない。

ということは彼女は生徒会またはそれに準じる委員会のメンバーなのであろう。と当たりをつけた。

 

「わざわざありがとうございます。すぐに向かいます。」

 

彼女の左上には当然、花冠のエンブレム。

 

「お二人は……ご兄弟ですか?」

片方には花冠のブレザー、もう片方には無地のブレザー。

興味を持たれるのもやむを得ないかと和也は、ちらりと達也に目を向ける。

 

だが、彼女の瞳には二科生を蔑むような色は映っていなかった。

どうやら純粋な興味を隠せていないようだ。

 

「生徒会長の七草真由美です。ななくさと書いて、さえぐさと読みます。

よろしくお願いしますね。」

 

(十氏族か……)

 

いささか唐突ではあったが、相手に名乗られたのであれば礼儀として返すべきだろう。

 

「……俺、いや自分は司波達也です」

「僕は司波和也です。こちらの達也の弟です。」

 

「司波くん……そう、あなたたちがあの司波兄弟妹なのね。」

 

どうせ、新入生首席次席であるの弟妹のおまけ、落ちこぼれの兄という意味だろう。

そう思い、達也は沈黙した。

 

「ふふふ、先生方の間では、あなた方の噂で持ちきりよ。」

 

それはアンバランスな兄弟妹というネガティブな噂だろうか。

だが、彼女からは否定的なニュアンスは感じられなかった。

 

「司波達也くん、入学試験、七教科平均、百点満点中九十六点。

特に圧巻だったのは魔法理論と魔法工学。

合格者の平均点が七十点に満たないのに、両科目とも自由記述を含めて文句なしの満点。

わが校始まって以来の前代未聞の高得点だって。」

 

魔法科高校の生徒会は入試の成績を閲覧できるのだろうか。

と疑問に思ったがあえて口にはださなかった。

 

「……あくまで筆記の成績です。情報システムの中だけの話ですよ。」

そう言って、達也は自分の左胸を指差した。

 

「そんなに謙遜しなくても……。

すごいじゃないですか。少なくとも、私には真似できませんよ?」

彼女は本心から達也のことを称賛しているようだ。彼女の口は止まらない。

 

「妹の深雪さんは実技1位、筆記3位。弟の和也さんは実技2位、筆記2位。

そしてお兄さんは満点に近い、筆記1位。ほんとに凄い兄弟妹が入学してきたって。

実技の評点には係数がかかるから、今回は妹の深雪さんが首席だけど、

例年であれば和也さんが首席でもおかしくないわ。」

興奮も冷めやらぬ彼女はそう一気にまくし立てた。

 

「会長~!!」

彼女を探しているのか、どこからか生徒の声が聞こえてくる。

 

「あら、ごめんなさい。話が長くなってしまったわ。

それではあなたたちも遅れないように会場に入ってね。」

そうして彼女は足早に姿を翻した。

 

-----

生徒会長に足止めされたせいで、

兄弟が式典会場である講堂に入った時には、既に会場の席の三分の二が埋まりかけていた。

 

前半分の席は一科生、後半分の二科生。

誰に指示された訳でもないのに、周囲の空気によるものか、

 

初日から波風を立てる必要もあるまい。そう嘆息し、和也は達也に声を掛ける。

「ここで別れよう。」「あぁ。」

 

達也は後ろ三分の一辺りの中央に近い空き席を適当に見繕って座った。

講堂の演台の端、上部の壁に備え付けられた時計に目をやる。あと十六分。

 

深雪が舞台袖に居ることを感じ、達也は目を閉じた。

 

-----

和也は前半分の後ろ付近まで歩みを進め、隣を挟んで一箇所だけ空いている席を見つけた。

通路側に座っていた生徒に前を通してもらおうと声を掛けるようとする。

 

(いや、せっかくの機会だ。達也の代わりに最前列で妹の勇姿を見届けるか……)

 

足をどかそうとした生徒には目で詫びを入れ、前方を目指した。

こういった式典は、教師の誘導が無ければ最前列はあまり埋まらないものだ。

 

案の定、最前列には僅かだが空席があった。

舞台横に控える生徒会長の真由美と目が合う。特に気にせず、目礼しそのまま着席した。

 

「あの、お隣よろしいですか?」

 

最前列まで来てしまったせいで、

どうやら後ろに戻るに戻れなくなった女子生徒二人から声をかけられる。

 

「えぇ、空いていますよ。」

 

「ありがとうございます!」

女子生徒は礼を言い、着席する。

 

「私は光井ほのかと言います。こちらは幼馴染の……」

元気な(場に沿った声量ではあったが)彼女の声を遮るように、更に隣の少女が続けた。

 

「北山雫です。よろしく。」

一見、ダウナーだが芯の強い声に驚く。

 

「僕は司波和也。こちらこそよろしく。」

短い挨拶を交わし、前を向く。どうやら入学式が始まるらしい。

少女たちも遅れて、前方の演台に目を向けた。

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