直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ 作:夜月詠
英霊。サーヴァント。アヴェンジャー。
そうなった経緯はおそろしく複雑で、とんでもなく雑で、そして万が一、奥が一にでも成立しないような奇跡だった。
単一では成立しえない
その在り方故か、はたまた英霊としてどうしようもなく足りない霊基故か。『カルデア』という組織そのものに所属していた全てを昇華させ、オレは
だから、だろうか。
「魔術工房カルデア天文台、魔術炉心接続。
疑似守護英霊召喚システム・フェイト、召喚式連続起動」
生前とは思考が違う。生前とは決断が異なる。
生前はとろうとしなかった、或いは、最後の手段とした最も合理的な手段に納得する自分がある。
キヴォトスを滅ぼす兵器を本質とする──ただの、ゲーム好きな少女を殺す、その決断に納得してしまう。
これは、オレがアヴェンジャーだからなのか。それとも、『世界を救った存在』だからなのか。
最も合理的に、最もリスクの少ない脅威の抹殺と云う手段をとってしまう。
だから、なのだろう。
「英霊:
召喚に応じてくれない英霊が、何騎も居る。
オレの、オレたちの
「アヴェンジャー、押し通らせて貰うよ……!」
あのカードを使った先生が、血涙を流しながらこちらを見る。
キャスタークラスを最適性クラスとする英霊として、見ただけでもその代償は
あのカードはきっと、寿命だとか、存在だとか、そう云うものを使い潰して奇跡を起こす代物だ。運命力や魔力、体力では無い、本当の──本質的な、時間そのものを食い潰す類のものだ。
「シロコ、ナギサは援護を。ホシノ、マリナは前線で皆を護ってシュンと──えっと、黒いシロコ(仮)はそのまま全力で攻撃を!」
何処か不確かな、シャドウサーヴァントにも似た──けれど、あの影とは異なる確かな実体を持つ少女達が手にした武器の、その銃口をこちらに向けてくる。
先生がカードを使った瞬間に、稲妻の様な発光現象と共に現れた生徒たちだ。
──あぁ、あれは不味い。
その弾丸に込められた神秘は、物理攻撃を無為とするオレたち
アビドスの子達は元からそのレベルだが、初めて見る子たちは元からそうなのか、はたまた先生のカードに強化されているのか。
どちらにせよ、不味い。
アビ・エシュフを纏ったトキさんや、アヴァンギャルド君を操るマスターがミレニアムの生徒を相手にするのとは訳が違う。
オレが戦うのは、優秀な指揮官が指揮するサーヴァント級の実力者だ──!
「先生、駄目なんだ。アリスちゃんは、駄目なんだよ……! あの子の本質は、キヴォトスを滅ぼす兵器なんだ……!」
秩序属性、悪属性の英霊達を中心とした英霊達に指示を飛ばしながら、スキルを行使して行く。オレの
百貌さんは、こんな気分だったのだろうかと、場面違いな思考が浮かんでくる。
「だけど、私の生徒だ! キヴォトスを滅ぼす兵器なんだとしても、それでも、今はゲーム開発部の一員なんだよ、アヴェンジャー! 君なら、君なら分ってくれるだろう!?」
それは、痛いほどに理解できる。
オレが先生の立場で、オレが先生という役割なら、きっと取り戻そうとするだろう。全力で戦って、そうして──。
「……あぁ、そうだね」
そうして──人理の為に、結局は同じ結果に至る。
「でも、他に手段は無いんだよ。
天童アリスの本質は、名もなき神々の王女AL-1S。それは変えようの無い真実だ」
未来永劫彼女を監視し続けるか、或いは完全に破壊してしまうか。そのどちらかだ。前者ならば暴走を封じる為に永遠に監禁する事になり、後者は語るに及ばず。
どちらにせよ、彼女を自由にしてあげる事はできないし、ただの少女として扱う訳にはいかない。
「確かに、あの子にも自由はあってしかるべきだ。あの子にも生きている権利はある。……いや、生きている権利の無いモノなんて居ない。……だからこそ、他の、より大勢の生存の為に──」
救世の魔術師。稀代の虐殺者。その称号は表裏一体。
汎人類史の為に、多くを犠牲にしたのがオレだ。七つの異聞を滅ぼし、その果に始まりの異聞帯すら切除したオレに。
今更──ただ一人の特別扱いなんて、許される筈が無い。
「それは──それは……! きっと、正しい。正しいよ、アヴェンジャー。でも、正しいだけだ。私はやっぱり、あの子にも手を差し出したいと、そう思ってしまうんだ」
「──きっと、どちらも正しいんだよ、先生。
どちらも正しくて、どちらも間違っているんだ」
人間は正解を選べない生き物だ。いつだって、後になってからより良い方法を見付け出し、より良い未来を思い描くものだ。
人間は正解を選べない。いつだって、より良い未来を更新するのだから。
「言葉で決着が着く事は無い。互いに譲れないからね。
───さぁ、勝負だ、先生。勝った方に、未来を委ねよう」
多くの人たちとこうして言葉を交わし、多くの人たちと戦ってきた。互いに、誰にも譲れないものを掛けて。
未来を、決断を、意志を。全てを掛けて戦ってきた。
きっと、何度でもこうするんだろう。
「サーヴァント、クラス・アヴェンジャー。
我が契約者の決断の為。オレ自身の決意の為に。
先生、此処に貴方を討ち倒す──!」
此処からが分水嶺。先生の狙いは、おそらくは少数精鋭で此処を突破しての斬首作戦だ。調月会長を打倒し、天童アリスを奪還する。それが彼らにとっての勝利。
ならば、此処を通す訳にはいかない。
「『対獣魔術』、『天体魔術』、『遷延の魔眼』、『修験道』、『黒魔術』、『決戦強化』──!」
この
或いは、これがいつかの罪の形。これこそかつての刑罰なのか。
「ッ、まだ、まだだよ、アヴェンジャー! 追加、でぇ──!」
発光。共に、新たな生徒たちの幻影が現れる。
どこか装いの異なる小鳥遊さんを始めとした、多種多様な格好をした少女達がその銃口をオレに向ける。中には水着やドレス姿の、場違いな格好をした子も居る。
──あぁ、懐かしい。昔、こんな
「
けれど、此処は通さない。
「なっ、弾が勝手に逸れて行く!?」
陣形を組む少女達に、三つの騎影が突撃する。それぞれ、魔槍を手にした霊基違いのクー・フーリン達だ。狙撃手を視界に収める限りあらゆる投擲武具を拒絶する『矢除けの加護』を盾に、少女達が組み上げた陣形を乱して貰う。
「
魔力は潤沢。英霊カルデアの工房を展開した城塞都市エリドゥにある限り、その魔力炉が産み出す莫大な魔力がオレに与えられる。
第一宝具程の規模にはならないが、それでも無数のサーヴァントを召喚使役できる程に。
──だから。先生、オレたちの勝ちだ。
◇
ジリ貧になりつつある現況に、生唾を飲み込む。
握り締めた掌に感じる、じっとりとした湿りと熱。その不快さが、今だからこそ、敏感に感じられる。
遥か高所、ビルの屋上から
前線指揮官として、私など及ぶべくもない熟練だ。指示に無駄がない。的確に、こちらの戦力を削ってくる。
「RABBIT小隊は突撃してきた槍兵を接近戦で対処! スナイパーの子たちはアヴェンジャーを狙撃して攻撃と支援の妨害を!
残った皆であの弓兵達の攻撃を凌ぎながら接近、中距離で制圧する──!」
私に直接攻撃して来ないのは、おそらく、攻撃を当てたら死ぬからだろう。彼らが
公共の利益と生存の為に、合理的に正しい決断として
「────ッ、アロナ、何か逆転の手段はないかい!?」
熱を帯びて痛む頭を押さえながら、小脇に抱えたタブレット画面に声を掛ける。連邦生徒会長が遺したオーパーツ、凡そ大抵の機器にハッキングできる
『──、あり、ません。
あのロボットは直接乗り込んでいるシキさんしか操作できませんし、トキさんのパワードスーツも変なプロテクトが掛かってて制御を奪えないし……ネルさんも、もう戦力には……!』
武器を失い、満身創痍となったネルは後方で回復に専念している。少し見ない間に傷は凡そ塞がり、体力も戻ってきているみたいだが、それでもまだ戦う程の力は無い。
それに、武器が無いのではどうにもならない。流石に彼女でも徒手空拳では、アヴェンジャーとそのサーヴァント達に抗う事すらできないだろう。
「……! アロナ、エリドゥ外壁はどうかな? 変なバリア……あれさえ突破できれば、ミサイルを叩き込んで一気に突破できるだろう?」
物理的な書類を用いた、連邦捜査部S.C.H.A.L.E.によるミレニアムサイエンススクール生徒会"セミナー"が保有する武器類の
決議の場に生徒会長不在、生徒会役員は権限凍結中の為、ミレニアムの生徒たちに対して行った投票により学園の同意は得ている。
半ば無理矢理に生徒会長不在という状況下での決議を行ったが、飽くまでも合法的に武器類──ミサイルの運用権は獲得しているのだ。シャーレの予算を横領じみた使い方をしてしまったが、これも生徒の為だ。
『!! その手がありました! ……外壁、バリア破壊率83%! あと13分42秒耐えられれば、バリアを突破してエリドゥ内部にミサイルによる支援攻撃を要請できます!』
「皆、もうひと踏ん張りだ! 目標を突破次第、爆煙に紛れて此処を突破、アリスの下まで一気に駆け抜ける……!」