戦う事が好きすぎるつよつよ中年冒険者おじさん vs剣の 『称号』を持つ激重感情の者達 作:ハンノーナシ
僕はとある組織達の談合。
その中央に縛られながら立っていた。
理由は簡単に言えば、この組織の中の何処かの強そうな構成員に勝負を挑んだら、ボロ勝ちしてしまい……それで恨まれ、関連するボス達に直々にお仕置されかけている。
因果応報、これに極まれり……でも、後悔はしていない。
「ハッハ!!おもろいやんけ!!うちの組織員に喧嘩ふっかけたんかワレ?!」
「どうやら、君の所の人みたいでね……」
「ウチの所は『復讐代行』がモットーやねん、だから復讐相手に選ばれてしもたみたいやなぁ!」
手を叩きながら大笑いする赤髪の女性。
この人は組織でも有数の実力者の様、その『心気』が目に見える。
圧倒的な心気の『圧』があると言うのに軽薄そうで。
笑い終わると、本題に入る様で……彼女は机に足を組んで置く。
「ほんで、誰がコイツの相手すんねん」
「私の組織の関連ではありませんし、関係の無い他人にこんな時間を潰す程暇ではありません」
「んじゃ責任持ってウチが引き取るわ。こんなおもろい馬鹿、うち以外の組織には手に余るわな」
数人は黙ったまま頷くと即時にデータの体を消し、解散する。
唯一生身で居た彼女は僕の背中を蹴ると『立て』と言わんばかりに顎を少し上げる。
「あんたに……ちょっとばかし、おもろい話があんねん。身分調べたら、どうも気になる……元最上位の冒険者やったのに、あまりに格下げされとる」
「僕は仕事に興味がなくてね……戦っていたら、勝手に期待されていただけさ」
正直に伝える。
僕は元とは言え『レッドダイヤモンド』という冒険者の最上位に居た。
戦闘力だけを見てそこまで格上げされたが、戦闘力以外が足りなかった。
まぁ簡単な理由さ、死闘が好きな奴は魔王の居ない平和を求める冒険者ギルドには相応しくなかったってだけ。
「ほぉん、戦うのが好きな奴ってのは聞いとったけど……うちの組織の奴に喧嘩売るんは肝座りすぎてへんか?」
「例えそれで上の者が出てきても、その者はもっと強いんだろう?」
僕は笑いながらそう伝える。
女性は一瞬『は?』と言わんばかりの顔をすると、手を叩いて大爆笑。
「おもろ!!!あんた狂っとるわ!!」
「戦うのが好きなだけさ」
「はぁ、笑った笑った。……せやなぁ、処刑すんのは変わらんけど、あんたに名誉やるわ」
歩き続けて、辿り着いたのは。
虎のような大きな絵巻が飾られた大きな広間。
組織員達に縄を解かれ、僕は解放される。
「ウチと戦う権利、やったる。戦うのが好きなら、せめて戦いの中で死なせたるわ」
女性はサーベルの様な者を取り出すと、クルクルと回しながらこちらに剣先を向ける。
なんとありがたい申し出か!
首を切り落とされて終わりだなんてつまらないよね。
「ウチの名前と称号、教えたる。ウチはモーガン・ランド、『剣噛虎』っちゅうねん。剣の柄噛みながら、牙じゃなく剣で切りかかろうと突進してくる虎っぽいっちゅー不名誉極まりないあだ名やけどな」
「呼び名があるのは凄いことさ!なんたって、強さが大衆に認められてるんだから」
「あんたは心気を纏ってない、やけど……心気って言う内なる魔力を体外に出して強化するって言う技術を知らんとは思えん」
疑問を呈されたのなら、素直に答えるべきだ。
戦いは素直な力のぶつかり合いなら、対話は心のぶつかり合い。
素直に話した方が好意的で相手に信用を与えられるだろう。
「僕はおっさんだから、その最新技術に適応出来てないだけさ!」
「ほぉ〜……ま、底の力がわからんってだけで怖いわな。うちの組織員はあたしに強さを認められた奴しか入って来れん。あんたがボコしたんは、そん中でも最上級の奴やったんやけど……そいつがぶっ飛ばされたとなるなら、血が騒ぐわ」
僕は剣の鞘を掴み、剣の柄をもう片方の手で掴む。
中腰に構え、相手の出方を待つ。
「もうやる気か?随分と血気盛んやん……でも、ええわ。そんくらいのがウチに合っとる」
モーガンはサーベルの柄を両手で掴むと、勢い良くしゃがむ。
その低姿勢は足に全ての力を注いでいる様だった。
一瞬の静寂が流れ……僕は息を飲む。
心気を足に集中させている……襲い掛かり、斬りかかる瞬間は一瞬だろう。
合わせられるか、わからない。
──そんな、刹那。
モーガンの姿は消えていた。
ずっと目はモーガンを捉えていたのだが……それでも、判断が鈍くなる程の速度。
僕はモーガンの動きを見切れない、ある程度予測と運に任せる。
モーガンの姿勢は低姿勢、ならば。
「下ッ!!!」
モーガンのサーベルは予想通り、僕の頭を顎から裂こうと襲いかかる。
思い切り力を入れ、その瞬間に合わせ……僕の剣で『パリィ』する。
剣戟を弾き返したのなら、攻勢でお返しする。
「ハッ……ようやったな。甘く見たわ」
「運も実力の内とは言うけど、これは見切りたかったな……」
弾き返した剣をそのまま、モーガンに振るう。
モーガンはサーベルの扱いが随分手馴れている様で、反り返った剣身や柄を使って器用にも僕の攻撃を受け止める。
サーベル自体を回す様な防御に絡め取られていく様だった。
「単調やなぁ、やる気あるんか?」
「あるに決まってる!君が強いだけさ!!」
強者には単調に見えるだろう、僕なんかの攻撃は。
彼女は一撃必殺を狙うタイプなのか、はたまた斬り続けるタイプか。
まだわからない……先程の一撃を見たら、前者だと思いたい。
けれど、強者はどちらにも対応可能な事のほうが多い。
「ほな、うちの番か。よっと」
軽い声で僕の剣を絡め取り、弾き返す。
パリィ返しか。本当に強いな。
モーガンはパリィをしたと言うのに、一度引くと体を低姿勢に構え、サーベルを強く握る。
また、運と予測が始まるのか……くぅ、心臓が震える。
「行くでぇ!!!こんくらいで死ぬんとちゃうぞ!おっさん!!」
モーガンは剣に心気を纏わせる。
僕を本気で断ち切る気だ。
「あぁ!!生きてやるさ!!!」
僕は剣を真っ直ぐ構える、全てを受け止める覚悟をする為に。
もう一度……『あれ以上』の攻撃を受け止めるのか。
冷や汗が止まらない、心臓がバクバクと鳴っている。
こんなスリルがあるから、辞められないんだ!!
モーガンの姿が前と同様に消える、
でも……今度はそろそろ。
──目が慣れた。
ガンッ!!!!!!
まるで巨大なマッチを擦ったかの様な火花が舞い散り、剣を鳴らす。
僕の首に据えられたサーベルを直前で受け止める。
「そんままやと、首吹っ飛ぶで!!!」
「わかってるさ!!!!」
モーガンの力は大した物だ、僕の力と同等……それ以上。
でも……──負けられない。
──負けたくない!!!
そんな気合が、僕の力に火をつけたのか。
段々とモーガンのサーベルは押し返され、状況は変わっていく。
僕は自然と大きな声を出していた……気合いを入れる時に、出してしまう癖があった。
そうして、剣を完全に押し返すと……──剣を弾き返す。
──全力のパリィだ。
「ハッ……♡」
「僕もお返ししなきゃね、モーガン!!!!」
僕の力を全力で剣に込め、飛び出す。
そして懐の空いたモーガンの体を。
──全力で切り裂いた。
けれど。
モーガンの体に傷はつかない、心気の保護だろう。
やはり……心気を極めている者に心気無しで戦うのは。
長時間の戦いを要される、でも……それこそ、胸が踊る。
「ハハッ……♡ハァ……♡決めたわ、ウチ」
「僕を本気で殺す事をかい?はは……」
「ちゃうに決まっとるやろ?あんたみたいな心気も無しにあたしと戦おうとする馬鹿は何人も殺してきたけど……あんたは違う」
サーベルを鞘に収めると、こちらに近付く。
本気を使ったからか、体が痺れる……首を切られても仕方がない。
「決めた!!ウチ、あんたの伴侶になったる♡惚れた女に二言は無いで♡」
「はぇ?」
予想外の言葉に素っ頓狂な声が出る。
求婚だなんて……予想外にも程がある。
「こんなおっさんに、君みたいな若い女性が……」
「なんや?怖気付いたか?♡ウチは強い奴が好きなんや♡若いわ強いわ、権力もあるわでウチは優良物件やで♡どや?名前教えろって♡ずぅっと、一緒に戦おうやぁ♡」
こんな状況をどう打破するか……そんな時。
ハッと思い付いた策。
それは……最近新たに覚えた魔法を使う時だ。
「僕は『カイ・レグルス』。冴えないおっさんで……」
「ウチの伴侶、やろ?♡」
「戦う者であり、逃亡者だ!!!」
超絶スピードでフル回転する脳内で魔法の呪文を唱える。
転送魔法は、便利だなぁ。
「ちょ、待てや!!!」
「待てない!!君には未来がある、僕なんかに体を売るべきじゃない!!お互い強くなって、また再戦しよう!!」
──────……
「かぁ〜、逃げられた……でも……」
「もう逃がさん♡カイ・レグルス♡♡♡」
次の相手は誰だ!!!
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