「ヤンデレられてみたい」と実はヤンデレだったマスターの前で言ってしまっただけの話   作:藤丸立香”に”ヤンデレられたい

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pixivから流用してきただけの二話目です
今回は序盤はマトモ、中盤はクソボケ、終盤はヤンデレの三段構成でお送りします


ヤンデレにガソリンを投下するクソボケの話

 

「そりゃ『誰かにヤンデレられてみたい』とは言ったけどよ……」

 

 

 我らがマスターにして親友たる少女、藤丸立香のマイルームの隣に配置された自室で、俺は誰に言うでもなくそう口にする。

 

「まさか一番近くにいたあいつがエグいレベルのヤンデレだったとか想像つくかよ……」

 

 好きな女のタイプはヤンデレな俺がその性癖を親友に暴露した先に待っていたのは、その身にドロッドロの感情を秘めていた立香からの熱烈な愛情表現だった。その勢いに流されるままに童貞を卒業したデミ・サーヴァントな俺の日常は、その日から大きく変わってしまった。

 まず、あいつがスキスキオーラを隠さなくなった。事あるごとに俺に引っ付いてくるし、人前でのハグやキスは当たり前。それが周回終わりや微小特異点内なんかでもお構いなしなので、なんというか精神的に疲れる。いや別にあいつのことが嫌いになったとかでは断じてないのだが、俺も思春期の男子だ。女子との身体的接触は心臓がドギマギするし、”そういう感情”だって沸いてくる。しかもあいつはあいつでそれでもいいと思っている節すらあるのだから、本当に手に負えない。

 

「というわけで助けてくださいエミヤさん!このままだと色々暴発しそうで困るんです!」

「そう言われてもな……というか何故私に?」

「この前来た女の方の白波先輩にこういうことには一家言あると聞いたので」

「……まあその件は後で認識を正すとして、今の君は何が不満なんだ?今の状況はある意味君の望んでいたものではないのか?」

「それは……」

 

 それは確かにそうだ。ヤンデレの女の子におっもい愛情を向けられるというこのシチュエーションは、俺が望んでいた展開そのものだったはず。ならば何故今不満とはいかずとも負の感情を抱いているのか。少し悩むとその答えは案外すんなり出てきた。

 

「……今のあいつが、どこか無理しているような気がするからです」

「マスターが無理を?私にはむしろ君への本心を隠す必要がなくなって清々しているように見えたが」

「それも間違ってはないと思いますけど……あいつはきっと怖がってるんだと思います」

「怖がっている?何に対してだね」

「俺が他の女の子になびいてしまうことに、ですよ」

 

 俺も立香も根は同じく一般市民だ。それに対してここに集まっているのは世界中から集められた色んな意味で魅力的な人物たち。であるならば彼女は思うはずだ。「みんなは私よりも素敵だから、智草のことを取られてしまうかもしれない」と。

 

「俺だって始めの内は思ってましたからね。俺なんかよりいい男がここにはいるはずだって」

「マスターも無意識の内に心の何処かでそう思ってしまっているからこそ、ああも過剰とも言える愛情表現に打って出ていると?」

「俺の考えとしては、ですけどね」

「いや、君がそう思うなら間違ってはいないはずだ。なにせ君はカルデアのサーヴァントの中でマスターと最も多くの時間を過ごした男なのだからな」

「……ありがとうございます、エミヤさん。そこでなんですけど、少しやりたいことがあるんです。付き合ってもらえませんか?」

 

 

 

 

 

 

 最近、智草が冷たい。否、つれない。今までだったら私の頼みはほとんど聞いてくれたはずなのに、最近はよく「今はちょっと用事があって」と言われ躱されてしまう。そればかりか、私のいないところで女性のサーヴァントと話していたという話さえ聞こえてくる始末だ。

 やはり本音を晒しすぎたのはよくなかったのだろうか。いくら彼がヤンデレ好きという情報を得たとはいえ、この身に秘めた自分でもどうかと思うくらいの感情を思いっきりぶつけてしまうのは恋愛的には不正解の行動だったのだろうか。そんな思考が脳内を埋め尽くしては、上手く寝れない日さえあった。

 

「別にあの人に限ってそんなことはないと思うけどなあ。というかそもそも智草さんが最近サーヴァントのみんなに聞いてることって……ゴニョゴニョ」

 

 キャストリアはああ言ってくれたけど、智草が本当に私のことを好いてくれているのかはわからない。引かれてしまったのかもしれない。嫌われてしまったのかもしれない。そんなことになったら私は……

 

「これを飲ませれば……智草は私のことを好きなままでいてくれるかな」

 

 気付けば愛の霊薬を持ち出してしまう程に、今の私は私のことを制御できていない。これじゃあ駄目だ。人類最後のマスターとしても、一人の恋する女の子としても。こんなものを使って好きな人の気持ちを都合よく捻じ曲げようだなんて、最低の行為だ。そうわかってはいるのに、こんな手を使ってでもという気持ちを抑えきれない自分がいる。こんなんじゃ廊下ですれ違ったオベロンがすごい顔で見てきたのも当然だ。きっと今の私の頭の中はさぞぐちゃぐちゃになっていることだろう。

 

「あ、やっと見つけた……探したんだぞ、立香。ったく探すと全然見つからねえんだからよ……」

 

 廊下の曲がり角から突然智草が現れた。まずい。咄嗟に愛の霊薬を後手に隠す。そうでなくとも今の表情はきっと彼には見せられないものだ。こんなものまで見せてしまったら言い訳ができなくなる。

 

「な、何かな、智草。もしかして、私に会いたくてしょうがなかった、とか?」

 

 そんなわけないだろうに。最近の彼は私と会うことを拒んでいたのだ。急に私に会いたくなるなんて()()でもない限りありえない。

 

「まあそんなところだ。立香、お前に話がある」

 

 真剣な顔でこちらを向く彼の次の言葉が、私の脳内で勝手に再生される。

 

『俺はやっぱりそこまで重い女の子はちょっと……』

 

 ああ、私はここで振られてしまうのか。でもちゃんと言葉にしてもらった方が諦めが付くものなのかもしれない。そう、この霊薬を使って無理矢理にでも彼に私の方を向かせる踏ん切りが……

 

「俺もお前のことが好きだ、立香」

「……え?」

 

 今彼はなんて言った?私なんかのことが好き?本当に?混乱で頭が上手く動かない。そんな私に彼は追い打ちをかけるように続ける。

 

「俺と……結婚を前提にして、付き合ってくれないか?」

 

 彼が跪くような姿勢で手渡してきたのは、私の髪のようなオレンジ色の花束と小な何かのケース。おそるおそる蓋を開けると、そこには細かな装飾の施された指輪が入っていた。

 

「これ、は……?」

「一応色んなサーヴァントに聞いてお前が喜びそうなシチュエーションを模索してはみたんだが……結局こういうのは王道が一番って結論になってな。ここ最近色々と準備してたんだ」

 

 そういえば、智草が話していたサーヴァントは大体が結婚済みの女性サーヴァントか、私と年代が近しい女の子(それこそキャストリアみたいな)だった。彼は私が喜んでくれるように、最大限手を尽くしてくれていたのだろう。そう思うと、勘違いしていた自分が少し恥ずかしくなった。

 

「あー……それでどうだ?返事を聞きたいんだが」

「そんなの……決まってるよ。藤丸立香は、そのお誘いを喜んでお受けいたします。これからも末永くよろしくね、智草」

「ああ、こっちこそよろしくな、立香」

 

 智草は私のことを愛してくれている。そうわかると、さっきまで感じていた焦りや絶望感はどこかに消えてしまっていた。これからは彼とずっと一緒に……

 

「これで晴れて恋仲ってわけだな。あー、その、だからもう無理にヤンデレの演技をしなくてもいいっていうか……」

「……ん?」

「いやまあああいうのも好きではあるんだが、お前が無理に俺の好みに合わせる必要はないっていうか……ん?聞いてるか?立香ー?」

 

 まて。まてまてまて。今こいつはなんて言った?演技?智草がそういうのを好きだと知った私が無理をして病んでいる人間の演技をしていたと思っているのか?こいつは。あのレフ教授もそこまで節穴じゃなかったぞ?

 

「……んっ」

「ん?今何飲んで……っていうかそれ愛の霊薬じゃ……」

 

 愛の霊薬は飲んだものを魅力的に見せるもの。しかしこれには真に愛する者たちの感情を邪魔するような効果はないとキャスターたちは言っていた。そういう者に対してはただの強めの媚薬としての効果しかないと。なるほど、きっと彼らはこの展開を予見していたのだろう。

 

「……ぷはっ。さて、と。ねえ智草」

「は、はい?」

「今からちょっとマイルームに行こっか。そこで思いっきり()()()()()あげる。私がどれだけあなたを好きなのか。どれだけのものを抱えているのかを、ね?」

「ちょ、ちょっちまってな?実はこの後急用が……」

 

 静かに逃げ出そうとする彼の腕をガシッと掴む。絶対に離さないように、逃さないように、私の本気を思い知らせるように。

 

「い・く・よ?わかった?」

「……あ、ああ」

 

 この鈍感さんには何も考えず全てをぶつける方がいい。私は今日、そう学んだのであった。

 

 

 

 この後めちゃくちゃわからせてあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、その真っ赤なお耳でよぉく聞いてね?私は、智草のことが大・大・だぁい好きなの」

 

「ひゃ、ひゃい……」

 

「だからね?これも演技なんかじゃなくてぜーんぶ本心。君のことをドロドロに溶け落ちるまで愛したいし、私なしじゃいられないようにしてあげたいんだ。わかる?」

 

「わかったぁ……わかったからぁ……!」

 

「わかってない。まだ全然わからせてないもん。私の愛はこんなもんじゃないよ?今からそれを教え込んであげる。まだまだ夜は長いもんね」

 

「や、やめ……「やめない

 

「やめてなんてあげない。私のことを好きって言ってくれたのは智草だもん。私に火を着けちゃったのもね。だから……責任、取ってね?私の心を奪っていった、わるーいサーヴァントさん?」

 

「とる……とるからぁ……はやくきもちぃのちょうだぃ……!」

 

「あは♡いいよ、思う存分可愛がってあげる。私の可愛い使い魔ちゃん♡」

 




智草(ちぐさ)

初召喚は冬木なデミ・サーヴァント
ヤンデレな女の子が性癖だったので性癖がねじ曲がったりはしてない(ガッチガチに固定はされたけど)
立香をここまでオトした経緯は前回参照
立香のことを誰よりもわかっていて、誰よりも寄り添える存在
エミヤ等他のサーヴァントに対しては敬意を持って基本敬語で接するタイプ


藤丸立香

ご存知みんなの主人公にして病み病みに病んでいる女の子
今回智草に拒絶された(と思い込んだ)せいで精神が不安定になりまくったが、告白によってそのモヤモヤは解消された
なおその後の智草のクソボケ発現によって彼女のリミッターはぶち壊された模様



感想とかくれたら存在しない三話目が出るかもしれません
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