誰かを守ることさえできれば……(鬼滅の刃:互いの決意) 作:つねお あきら
月倉兄弟と四霊剣霊会の因縁
朝鮮が建国された際、離散した守護勢力である「四霊剣霊会」は、日本に定着する以前から強硬派と穏健派に分かれていた。
強硬派は「我々が持つ力で、この地の勢力を滅ぼし、我らだけの世界を作ろう」と主張し、穏健派は「我々が持つ力を以て初心を忘れず、この地の弱き者を助けよう。現地の勢力と敵対してはならない」と説いた。
恒吉宇伊花(つねよし ういはな)の両親は穏健派に属していた。一方、後に上弦の壱となる双子の兄弟、月蔵(つきくら)が人間時代に繰り返した「武士狩り」による略奪と殺人の背景には、強硬派である彼らの師の存在があった。師は、かつて侍によって滅ぼされた村で、両親の骸を前にして嗚咽する幼い双子を見つけ、「私に従い、私の剣法を学べば、この地で受ける理不尽な差別や蔑視よりも、より良い生を得られるだろう」と説得し、彼らを最強の武人へと育て上げた。
しかし、放浪の末にある村に定着した師と兄弟にも悲劇が訪れる。他勢力の侍や兵卒が村に襲来した際、師は独りで彼らを全滅させたが、自身も力尽き、幾多の刃を受けた末に「その力でどうにか生き延びろ」という遺言を残して息を引き取った。
これにより月蔵兄弟はさらに堕落し、鬼となる前まで日本の侍家門を悉く滅ぼそうと誓った。ただし、彼らには「子供、老人、女性には手を出さず、強き男性のみを狩る」という特異な矜持があった。後に家門を解体し、簡素な結婚式の末に縁壱の家を去ろうとしていた縁壱と宇伊花に出会うという因縁を持つことになる。
ここで特筆すべきは、宇伊花の家門は13の気運が集う「善であり、情深く、悪を嫌う」最高位の神々の集団であるのに対し、月蔵の師(本名は明かさず「無影(むえい)」と名乗った)は13の気運のうち「魔」属性のみを宿していたという点である。この気運は善き神ではなく、日本の「凶神」たちの気運を取り込み、変容させた属性剣法といえる。
鬼となった後、この双子の血鬼術は、事実上それぞれの凶神の気運を受けた「魔」属性が、より邪悪な方向へと変質したものに他ならない。
元来の「魔」属性(魔紅色)
元始天尊 桓因・霧中の心魔幻障(元始天尊 桓因・霧中心魔幻障)
説明: 精神的な幻覚、幻聴、幻視を誘発して戦闘力を削ぎ、予知力をより鋭利にする。
特殊効果 [心魔易程]: 敵が最も恐れる過去の幻影を見せて攻撃の軌道を乱し、宇伊花の予知眼に映る「未来の糸」をより鮮明に固定する。
1. 兄:月蔵 成成(つきくら なるなり) - 天津甕星(あまつみかぼし)
「魔」属性の変質:心魔と闇、そして抗う邪念
悪神設定: 日本神話全体を通じ、唯一無二、最後まで神々に服従せず抗い続けた「至高の悪神」。夜空の星と漆黒の暗闇を司る。万物を混乱に陥れ、心を揺さぶる呪術的な殺生を宿している。
叙事的結合: 武人に対する凄まじい憎悪に満ちた成成の内面(心魔)と完璧に共鳴する。師・無影の「魔」属性がこの「抗う星の悪神」と結合することで、相手の心の深淵にある孤独やトラウマを物理的な幻想武具(百鬼兵装)として実体化させ、自らの恐怖に押し潰され自滅に追い込む「心魔成業(しんませいぎょう)」の根源となる。
2. 弟:月蔵 勝久(つきくら かつひさ) - 禍津日神(まがつひのかみ)
「魔」属性の変質:幻覚胞子と結合した疫病と腐食の災厄
悪神設定: 神話において、黄泉の国の醜い穢れや死体の腐敗を洗い流した際、その穢れと怨念の中から生まれた「災厄、疾病、悲劇の神」。この神が通り過ぎた場所は、あらゆる生命が腐り果て、狂気に沈むと伝えられている。
叙事的結合: 師の死後、世界のあらゆる秩序を壊したいと願った勝久の狂気と適合する。「魔」属性の幻覚気運がこの「疫病の神」と結合し、華やかな五色の煙や歌舞伎の白粉(おしろい)のような視覚的幻想の中に、実体を持つ致命的なウイルスと細胞を腐食させる毒素を隠して散布する、極悪非道な「逆天成業(ぎゃくてんせいぎょう)」へと歪んだ。
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【あとがき】
この設定は、月倉兄弟の過酷な悲劇と、いずれ避けることのできない継国巌勝・ウイハナ夫妻との宿命の衝突をより深く、より切実なものにするために即興で構成したものです。彼らが単なる「敵」ではなく、理不尽な時代の犠牲者として、そして歪んだ信念を背負った者としての「物語の当為性」を強く込めてみました。この重厚な因縁が、今後の展開でどのような化学反応を起こすのか、非常に楽しみです。