誰かを守ることさえできれば……(鬼滅の刃:互いの決意)   作:つねお あきら

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第3話 回帰、嗚咽する二人の兄弟、そして母上……彼女との初の邂逅 2編(完)

 

「………………………………」

 

 

 

二人がただ見つめ合うのみの状態で、かなりの時間の静寂が流れる部屋の中、先に沈黙を破ったのは縁壱であった。

 

 

 

「兄上……僕にとりまして、本日賜りましたご厚意は誠に過分なものであり、幸せな半日を過ごさせていただきました。

 

ですが……部屋でお一人で横になられている母上が心配でございます。

 

病んだお体で僕が戻るのを一心に待ちわびておられるでしょうに、僕が兄上と共にあまりにも長い時間、席を離れてしまいました」

 

 

 

母である朱乃へ向けた縁壱の孝心は、幼い歳月においても至極のものであった。

 

 

 

前世において、母の左半身が麻痺していることを知るや、常に母が倒れぬよう寄り添い, 母の頑なな杖となって傍らを護っていた子であった。

 

 

 

厳勝は、そんな弟の健気で愛おしい心根を愛おしそうに見つめ、縁壱の頭を優しく撫でた。

 

 

 

「心配するな、縁壱。お前が僕と城下へ出る前、僕が若当主の権限をもって、母上の部屋にすでに厳重かつ徹底した措置を講じておいた」

 

 

 

「措置とおっしゃいますのは……どういうことにございますか?」

 

 

 

縁壱が清らかな気の宿る瞳をしばたかせて尋ねた。厳勝は胸を張り、堂々と告げた。

 

 

 

「家門で最も医術に秀で、口の堅い医師二人を母上の部屋へと急派した。

 

父上には、若当主の健康を定期的に診察するついでに、母上の気力も共に診させるのだと名分を立てたゆえ、まさか立ち塞がることもできなかったはずだ。

 

また、僕の個人倉庫に保管されていた西域から渡ってきた貴重な薬術の数々と、韓半島の朝鮮人どもが伝えたという霊薬をことごとく母上の湯薬に使うよう指示した。

 

厨房の料理人どもにも命じ、これより母上の膳には毎朝、脂の乗った雉肉の湯と、柔らかき白米の粥を献上するよう厳命を下しておいたゆえ、お前が懸念する悲劇は決しておこらぬ」

 

 

 

厳勝の言葉は事実であった。昼過ぎに弟と城下へ出る前に、最も先に行ったことが、母の逝去を防ぐための家門内における財政の再配置であった。

 

 

 

縁壱は、兄がいつの間にか己と同じく母の病状に気づき、己の権限を動員してそれほどまでに細やかな配慮と医術を施しておいてくれたという事実にも深い感動を覚えた。

 

 

 

兄の配慮のおかげで、己と母の待遇がこれほどまでに陽の当たる場所で公認され、良きものとなったゆえに、縁壱の胸中には兄へ向けた無限の尊敬の念と信頼が深く根を下ろし始めた。

 

 

 

兄の破格の配慮のおかげで、部屋の厳重であった監視が解かれ、滋養に満ちた湯薬の沸き立つ匂いが向こうにある母の部屋にも漂い始めると、縁壱はかえってより一層決意を秘めた眼差しとなった。

 

 

 

「兄上の無限の恩恵のおかげで、僕と母上の息の緒がつながれました。

 

ですが、それゆえに僕は恩恵を賜った分、何倍にもなってこれより一層、黙々と母上の傍らを護り、お支えせねばなりません。

 

父上の目を盗み、母上の左の半身を支えて差し上げるのは, ただ二人目の息子である僕だけの義務にございます。

 

兄上はこれより僕や母上のことをお気にかけず、引き続き家門の跡継ぎとして学問と武芸に専念なさるべきです。

 

さすればこそ、完璧なる家門の主となられることができましょう」

 

 

 

常に病に伏す母を思い、兄の将来を案じる縁壱の肩にのしかかる義務の重さは、その幼き齢を思えばあまりにも重いものであった。

 

 

 

厳勝はそんな弟の揺るぎない覚悟を見つめながら、前世の記憶が重なり、胸の奥が締め付けられるような痛みに襲われた。

 

 

 

前世の己は、あの健気な振る舞いを「跡継ぎの座を狙い、父上と母上の歓心を買おうとする卑劣な策謀」と捉え、

 

 

 

さらには「そのような母上の病状にすら気づけず、弟のせいにしていた己の情けなさと自責」へと変質させ、弟を憎悪していたのだ。

 

 

 

厳勝は縁壱と視線を合わせるため、冷たい畳の上に膝をついて座した。

 

 

 

そして弟の細い両肩をそっと包み込むように抱き寄せ、静かではあるが心からの真情を込めた声で語り掛け始めた。

 

 

 

「縁壱、その義務はお前一人だけのものではない。母上をお祀りし、お世話をするのは、当然この家門の長男であり兄である僕がまず背負うべき義務なのだ。

 

これまで……僕は長男という驕りに酔いしれ、幼さゆえ鍛錬にばかり没頭するあまり、母上の身体が麻痺して苦しまれていることに気づけなかった。

 

いや、あるいは気づいていながらも恐ろしくて傍観していたのかもしれぬ。そのような未熟な兄のせいで、お前にその幼き身で母上の杖とならせ、

 

一人で重い荷を背負わせてしまったのだから……

 

もう一度、この兄が心から謝罪する、縁壱。この腑甲斐ない兄を許しておくれ」

 

 

 

厳勝の目元に、再び懺悔の雫が結ばれた。

 

 

 

己は家門を率いながらも、時が来ればいつの日かその家門を解体せねばならぬ苛烈な運命に従わねばならず……。

 

 

 

弟の悲劇を防ぐためならば手段を選ばぬと、冷徹な心で武装したはずであったのに……。

 

 

 

人として当然なすべき祝言や子孫を残す道を諦めるという、崇高なる義務をも棄て去りながら……。

 

 

 

そのような覚悟を心の中で何度も誓い、強く固めたはずであったのに、一体なぜなのだろうか……。

 

 

 

幼き体ゆえか、目から零れ落ちる涙を抑え込もうとせねばならぬのに……それがどうしても叶いそうになかった。

 

 

 

一方、縁壱は兄の胸の内に秘められた真意に気づかぬまま、己に向けられた心からの涙と謝罪に触れ、胸の奥に密かに残っていた最後の防壁の欠片すらも完全に霧散させていた。

 

 

 

(ああ……兄上は幼かったからではなく、ただ恐ろしかっただけだったのだな)

 

 

 

縁壱は厳勝の胸に頬を寄せ、静かに首を横に振った。

 

 

 

「滅相もございません、兄上……許すだなんて。兄上はこの家門の偉大なる若当主様でございます。

 

そのような兄上が、お忙しい最中にも卑しい僕のために泣いてくださり、周囲から謗られる覚悟で母上までお護りくださったのですから、僕はもうこれ以上望むことなどございません」

 

 

 

ふぅぅぅぅ…………。

 

 

 

厳勝は抱きしめたまま、いつの間にかすすり泣く弟をあやしながら、前世で狂おしいほどに錬磨した『月の呼吸』を密かに吐き出し、

 

 

 

回帰によって身体へより早く蓄積されてゆく柔らかき内力を指先に込め、喜びと悲しみに暮れる縁壱の背を静かに撫でた。

 

 

 

「今日はもう、僕が起居する部屋で寝るがよい。ここで寝るには畳の床が冷たすぎる。

 

近いうちに、この部屋よりも大きな部屋で母上と共に過ごせるよう措置を講じるつもりだ」

 

 

 

「ですが、兄上はどこでお休みになるおつもりですか? 兄上は高貴なるこの家門の長男にございます。ここまでしていただいては、僕が恐れ多くて眠ることなど……」

 

 

 

しかし、弟の言葉を静かに遮った厳勝であった。

 

 

 

「今の体は、あれこれとご馳走やお菓子を口にし、城下を走り、歩き回ったゆえ疲れたであろう? このような時こそ休息が必要な刻なのだ。

 

それに、僕の部屋は常に暖かく心地よい。そのような環境で眠ってこそ、より健やかな体を得られるというもの。

 

健やかな体を得てこそ、僕とも戯れて遊ぶことができ、果ては母上の看病まで任せられるのではないか?

 

お前のその気持ちは、すでに十分に察し、理解している。だが、このような頼みは黙って聞き入れてほしいというのが、この兄의 願いでもあるのだ。

 

今は僕の気遣いを重荷に感じているかもしれぬが……これもまた、お前が年月を経て後々大人になれば、兄の配慮であったと気づく時が来るだろう」

 

 

 

「兄上…………」

 

 

 

そうして厳勝は、感動に浸る弟を己の部屋へと連れて行き、家門で最も柔らかき絹で仕立てられた最高級の布団と、柔らかい枕の上へと横たえた。

 

 

 

「今日一日、城下を歩き回って疲れたであろうから、もう目を閉じて安らかに休むがよい。今回は僕が母上の部屋へ行き、夜通し傍らに付き添うゆえ、お前は何の心配もせず熟睡するのだ」

 

 

 

厳勝は、横たわり疲弊した瞳で己を見つめる弟の傍らに腰を下ろし、前世の記憶の彼方──

 

 

 

数百年前に母・朱乃が自分たちが赤子であった頃に歌ってくれた、この時代の口承子守唄であった『絹の繭の歌』を、低い声で静かに歌い始めた。

 

 

 

「春の日の穏やかな水面に

月光が満ちゆけば

愛おしき子よ、温もりある絹の繭の中で

息を整えるがよい。

 

東の夜風が冷たく吹きすさぶとも

蚕の糸にて命の縄を結びしゆえ

黄泉の使者よ、この部屋を視ることなく

通り過ぎてゆくがよい。

 

暗き夜空の鴉の鳴き声

我が子の魂を呼ぶ声であろうか

木の葉が落ちるがのごとく、この手を放すことなく

目を閉じるがよい。

 

この夜が無事に過ぎ去り朝が訪れれば

純白の繭を破り、蝶となりて舞い立つであろう

ゆえに愛し子よ、黄泉の川のせせらぎに耳を閉ざし

懐の中で眠るがよい」

 

 

 

厳勝の優しき子守唄の声と、部屋を満たす暖かな畳の香ばしい匂いに、縁壱の緊張に満ちていた体が徐々にほぐれ始めた。

 

 

 

厳勝は、そうしていつしか睡魔の気配に勝てず眠りに落ちた弟の頭を優しく撫でながら、込み上げてくる感情を静かに抑え込んだ。

 

 

 

「縁壱、お前がこうして安らかに休んでこそ、これまで父上の冷たき視線と傍観……そして下人どもから受けた無視や侮蔑の中で、無意識のうちに負った心の傷も早く癒えるのだ。

 

若当主としての義務を果たそうと、形ばかり母上を気遣っているのではない。僕は心から母上をお祀りしたいのだ。

 

お前と僕が力を合わせ、一心に孝を尽くすならば、恐ろしき病の毒気すら追い払い、母上の命を数年、数十年と延ばすこともできよう。

 

僕はこれまで、短い時間であったとはいえ、お前はもちろん母上に対しても取り返しのつかぬ罪を多く犯してしまったと思っておる……。

 

どうかこのような混沌とした世にあっても、お前と母上が天寿を全うできるよう、この兄が全心を尽くすつもりだ……」

 

 

 

厳勝は傍らを離れず、部屋に到着した後に下人どもに命じて持ってこさせた、家門で重宝されていた地黄の膏薬を取り出した。

 

 

 

そして縁壱の武服をそっと捲り上げた。痩せこけた脛や腕のそこかしこに、狭き部屋の家具の角にぶつけたか、冷たき床で過ごすうちに生じた痣や擦り傷で満ちていた。

 

 

 

厳勝は指先にひんやりと優しき膏薬をつけ、弟の傷口へと極めて細やかに、柔らかく塗ってやった。

 

 

 

膏薬が肌に染み込むたび、縁壱はかすかな痛みからか身を微かに震わせたが、兄が施す暖かな手つきに、やがて大人しくなった。

 

 

 

…………実は、縁壱は眠ってなどいなかった。

 

 

 

兄が無意識のうちに漏らした言葉と、己の傷を労わってくれる手つきによって、込み上げてくる涙を悟られぬよう──

 

至高の領域である『透き通る世界』の力を極限まで発揮し、息遣いを完璧に整え、床の上で深い眠りに落ちたかのように「眠る演技」を繰り出した。

 

 

 

極致に達した縁壱の完璧な身体制御による演技であったがゆえに、いくら前世の心得を持つとはいえ、

 

まだ武人として完全なる『透き通る世界』を開花させておらぬ七歳の厳勝は、弟がすっかり深い眠りに落ちたものとまんまと騙されてしまった。

 

 

 

厳勝は眠ったふりをする縁壱の額に軽く口づけを交わした後、掛け布団を首元までかけてやった。

 

 

 

「かたじけない、縁壱。よく眠るのだ……僕の愛おしく、大切なる弟よ」

 

 

 

ふぅ……。

 

 

 

厳勝は静かに挨拶を交わした後、部屋の燭台の灯火を消し、夜の帳が降りた母の部屋へと向かって一人足取りを進め始めた。

 

 

 

すぅぅっ──。

 

 

 

引き戸が閉まり、兄の足音が回廊を抜けて遠くへ消え去るやいなや、暖かな布団の上に横たわっていた縁壱の双眸がかっ開かれた。

 

 

 

弟の清らかな瞳には、兄へ向けた心配と深い絆の念が満ちあふれていた。

 

 

 

「兄上……」

 

 

 

縁壱は布団をのけて音もなく起き上がった。

 

 

 

兄は己のために若当主としての威厳を捨てて膝をつき、一人で病に苦しむ母の部屋へと向かった。

 

 

 

万が一にも厳格なる父上が母の部屋で兄を見つけ、打ち据えるような真似をしはしないか、幼き縁壱の心臓は激しく脈打った。

 

 

 

縁壱は『透き通る世界』の気配遮断の能力を極限まで高め、厳勝に悟られぬ絶妙かつ絶妙な距離を保ちながら、兄の暗き影の後ろを音もなく追い始めた。

 

 

 

夜空の紅き夕映えが完全に沈み、冷ややかな月光が二人の兄弟のすれ違う足取りを照らし始め……。

 

.

 

 

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.

 

継国家の奥方であり、双子の兄弟の母である継国朱乃が住まう部屋は、屋敷の最も奥深く、陰々とした西の片隅に位置していた。

 

 

 

病弱な婦人が身を置くには、あまりにも冷え込みが厳しく湿り気のある空間であった。

 

 

 

厳勝が部屋の引き戸を慎重に開けて足を踏み入れると、かすかな湯薬の匂いとともに、薄暗い灯火の下に横たわる母の細い姿が目に入った。

 

 

 

病苦の渦中にあっても湯薬はすべて飲み干したのか、薬器はきれいに空となっており、己が事前に講じた措置のおかげで前世よりは幾分か痩せ衰えずに済んでいた。

 

 

 

1434年の朱乃は、すでに病魔の毒気が左半身全体を蝕んでおり、本来であれば自らの力では起き上がることすら叶わぬ危篤状態であった。現在の彼女の齢は二十二であった。

 

 

 

それでも治療と薬、そして無理のない範囲での栄養補給が功を奏したのか、母の様子を確認した厳勝は心の中で安堵の溜息を大きく吐き出した。そして、横たわる母に向かい深々と頭を下げた。

 

 

 

「母上……継国厳勝がご挨拶に伺いました」

 

 

 

「厳勝……お前がどうして? くっ……!」

 

 

 

「……母上、どうかそのままお横になっていてください。痛むお体で無理に起き上がられては、余計に悪化してしまいます」

 

 

 

ほとんど訪れることのなかった長男の訪問に、朱乃の心は驚きと疑問でいっぱいであったが、それでもほぼ初めて己の部屋を訪れてくれた長男の姿があまりにも嬉しく、起き上がろうと身を乗り出した。

 

 

 

しかし、いまだ身体は万全ではなく、起き上がれぬ身の上を痛烈に惜しみながらも、厳勝の挨拶に静かに頷いた。

 

 

 

厳勝は挨拶を終えて腰を据えるやいなや、母の前に立って衣の裾を整えた。

 

 

 

そして前世のあらゆる罪業と未熟さを洗い流すかのように、自らの措置によって暖かくなった畳の床に向かい、全身を深く折り曲げた。

 

 

 

ゴツン──!

 

 

 

部屋の中が大きく揺れるほどの鈍い破裂音と共に、厳勝は己の額を畳の床へと強く打ち付け始めた。

 

 

 

ポタリ……ポタリ…………。

 

 

 

あまりにも激しく打ち付けたゆえ、七歳の子の華奢な額の皮が裂け、鮮血が床へとぽたりぽたりと滴り落ちた。

 

 

 

朱乃は厳勝の突発的な自傷行為と破格の振る舞いに息を呑み、病苦の最中にありながらも右手を伸ばして布団の脇の引き出しに必死で手をかけ、身を起こそうと身悶えた。

 

 

 

「厳勝! なぜそのような無暴な真似をするのです! 一家を率い、家臣や下人どもの命を預かり護らねばならぬ大切で尊き身でありながら、この母の前で血を流し膝をつくなどと……!」

 

 

 

厳勝は額から流れ落ちる血を拭おうともせず、顔を上げて驚愕する母に向かい、大声を上げて慟哭し始めた。

 

 

 

懺悔の涙が血と混ざり合い、その顔を痛々しく染め上げていった。

 

 

 

「母上! この腑甲斐ない不孝者を容赦なくお叱りください!

 

僕は……僕は『若当主』という見栄えの良い自尊心に酔いしれ、弟である縁壱の天才的な才能と高潔な心を早くから察していながらも……

 

一時の醜い嫉嫉と憎悪に目が眩み、あの子を冷たい奥部屋へと放置していたのです!

 

母上が苦しむお体で一人泣き叫び、縁壱を頼りにされていた時でさえ、僕は己の身の安泰ばかりを気遣い、弟の崇高な行いを幼気(いたいけ)だと……そして臆病者だと見下し、あざ笑っていたのです!

 

母上、どうか……どうかこの卑劣で情けない長男を、決して許さないでください!

 

弟の心を踏みにじった僕に、天罰を下してください!

 

どのような罵倒も! どのような仕置きも! 喜んで受け入れます!」

 

 

 

厳勝は部屋の床を掻きむしり、声が枯れるほどに叫び散らした。

 

 

 

前世において、ついに母の懐に一度として正しく抱かれることもなく、人ならぬ化け物へと成り果てて逝った長男の、無念に満ちた懺悔であった。

 

 

 

そのような姿に朱乃は、長男の口から発せられた凄絶な告白と、弟へ向けられた真心の籠もった愛の懺悔を聞きながら、頬へと熱い涙を流した。

 

 

 

女は麻痺した左半身を無理やり引きずり床の上へと降り立つと、血と涙に塗れた厳勝の小さな体を、砕けんばかりに強く抱きしめた。

 

 

 

「は……母上……」

 

 

 

「厳勝……私の愛おしき子よ……。この家の若当主が、このように軽々しく膝をつき許しを乞うなど、易々と行ってはならぬこと……。

 

父上がお知りになれば、どれほどお怒りになることでしょう?

 

それでも……お前が若当主という権威とプライドをことごとく捨て去り、弟への妬みと未熟さをこれほど素直に明かして反省するのだから……

 

この母は真にお前が愛おしく、健気で、許さざるを得ません。ありがとう、厳勝。お前はついに、真の兄となったのですね」

 

 

 

朱乃は長男の裂けた額を袴の裾で丁寧に拭いながら、優しく宥めた。

 

 

 

厳勝は数十年、いや数百年ぶりに味わう母の温かい懐の中で、実に半茶頃(はんちゃころ)をも超える間、幼子のように再び声を上げて泣きじゃくった。

 

 

 

前世の己がどれほど無神経で残酷であったか。「これからは若当主の権力を尽くし、母上の命を必ずや延ばして幸せに過ごさせてみせる」と心に強く誓い、重ねて誓った。

 

 

 

やがて泣き声が収まり、部屋の空気がほんの少し気まずくなると、朱乃は穏やかな微笑みを浮かべて腰を据えた。

 

 

 

まず朱乃は無言のまま、部屋の脇に置いてあった軟膏を取り出し、血が流れ落ちて固まりかけた厳勝の額の傷口へと塗ってやった。

 

 

 

しばらくの間、母子の間に静けさが流れた後、朱乃は枕元の奥深い引き出しから、漆塗りで精巧に作られた小箱を一つ取り出して開けた。

 

 

 

その中には、家に代々伝わる百年物の絹糸で編まれた霊験あらたかな赤と白金が織りなす絢爛な衣装を纏い、美しき女の姿が描かれた耳飾りのお守りが収められていた。

 

 

 

「母上、これは何でございますか?」

 

 

 

厳勝が涙を拭いながら尋ねると、朱乃は耳飾りにそっと触れながら、愛おしさに満ちた声で語り始めた。

 

 

 

「厳勝……もともと私は、呪術を教える巫女の血筋であった。

 

腹に双子を宿したと知った瞬間、私の薄れゆく神力であっても、この子らが並々ならぬ神の気運を帯びて生まれてくることを直感したのだよ。

 

それゆえ、二つの耳飾りのお守りを夜を徹して心を込めて仕立てたのだ。

 

一つは、太陽神たる『天照大御神』の強烈な紅き陽光が描かれたお守り。それは、いずれ縁壱に授けるつもりであった。

 

あの子は耳が聞こえぬように見えたゆえ、太陽神の力を借りて愛おしき息子の耳を癒やすとともに、

 

世を平穏に導き、その超人的な力をただただ善き人々のために尽くしてほしいという願いを込めた……『縁壱』という名と一脈通ずる、神の証なのだ。

 

後々、縁壱に付けてやる大切な品……。これは後日、もしも私が……死ぬようなことがあれば、遺品としてあの子の耳に掛けてやるつもりなのだ」

 

 

 

母上は、どうやら縁壱の真の姿を知らぬようであった。

 

 

 

本当は弟が己と母、ひいては『他人』に害を及ぼさぬよう、口を閉ざして耳の聞こえぬ『愚者』の振る舞いをしているのだということを……。

 

 

 

朱乃は続いて、箱の中からもう一つの耳飾りを取り出した。

 

 

それは太陽神のお守りと対をなすように、同じ年月を重ねながらも銀白色と眩い薄紫色の絹糸で精巧に刺繍が施された、女の描かれたお守りと比べれば比較的質素な装束を纏う一人の男の姿であったが……

 

 

 

その正体はまさに、夜空を統べる月の神であり、太陽神の弟にあたる『月読命(ツクヨミノミコト)』が描かれた耳飾りのお守りであった。

 

 

 

朱乃は未だ病む身体ゆえに手を震わせながらも、厳勝の両耳にその霊験あらたかな気運の宿る耳飾りをそっと取り付けてやった。

 

 

 

「そして、この月の神『月読』が描かれた耳飾りは……今やこの家の正当なる跡継ぎであり若当主たる、お前に授けよう.」

 

 

 

「僕に……月の神の描かれた尊き品を、僕に授けてくださる理由は何でございますか?」

 

 

 

お守りの形をした耳飾りをつけたまま厳勝が尋ねると、朱乃は厳勝の双方の瞳を見つめ、その両手で優しく包み込みながら語り始めた。

 

 

 

遠い未来、この地に生きる人々が強者たちによって苦しみながら命を落としていく姿……そして、弱者を殺め、奪い、支配する恐ろしい未来が訪れることを直感で感じ取ったのだろうか。

 

 

 

朱乃は深みのある真摯な口調で、己が長年温め続けてきた夢を厳勝の心にそっと植え付けた。

 

 

 

「……月とはな、太陽が沈んだ後、暗闇に包まれた人の世の夜をただ一人照らす、高潔なる天の灯火なのだよ。

 

私がこの耳飾りをお前に授けるのは、いずれ世を濁らせ、無辜(むこ)の人々を破滅させんとする巨大な悪意を持った者や魔物どもが、昼夜を問わずはびこる時が来た時のため。

 

弟よりも一層強くしなやかな兄であるお前が、月の力を受けて弱き者のために戦う見事な侍となり、立ち向かってほしいという願いゆえなのだ。

 

剣を握るとも、決して勝負や勝利に執着し、単純な『強さ』に囚われて化け物となってはならぬよ。

 

また、誰かの才能や力を妬み、奪ったり殺めたりせんと企むのは、武人の歩むべき正しき道ではない。

 

生まれ持った超人的な力を、可能な限り正しき場所のために使えるよう、絶えず努めねばならぬ。最も大切なのは、お前自身が『人』であることを決して忘れず……

 

弟の縁壱をはじめ、世のあらゆる穏やかで心優しき人々を、夜の暗闇に潜む悪しき存在から護り抜く月光の如き『高潔なる守護者』となっておくれ.」

 

 

 

朱乃は、己の言葉にじっと耳を傾ける厳勝の瞳をしっかりと見つめ、なおも言葉を紡いでいった。

 

 

 

「厳勝……もちろん、武家に生まれ剣を握り戦場へと赴くことは、逃れられぬこの地の宿命である。

 

父上は常に、お前に天下を統べ常に勝利する強く苛烈な武人であれと強いるほど、厳しく責め立てておられたな。

 

だが、しかと覚えておきなさい。剣とは誰かを斬り伏せる前に、扱いを誤れば己の心をも真っ先に切り裂いてしまう、鋭利な破鏡の欠片のようなものなのだ。

 

この地に生きた私たちの先祖が語り継いできた強さとは何であったか? 単に目の前の敵を一合で斬り捨てることが強さではない。

 

真の武とは、己の力がもたらす傲慢さを戒め、人の涙を拭うことのできる慈しみから始まるものなのだよ」

 

 

 

朱乃は長男の固く結ばれた唇を見つめ、静かに言葉を付け足した。

 

 

 

「お前がいずれ剣の道を歩み、世にその名を轟かせるようになった時、世の多くの者がお前の力を妬むであろう。

 

あるいは、お前自身もまた他人の才能を仰ぎ見、心の中に炎のごとき嫉妬を抱く日が来るかもしれぬ。

 

それは人であればこそ抱く、あまりにも当たり前で脆い感情なのだ。

 

だが厳勝、決してその嫉妬の炎に己の魂を焼かせてはならぬよ。

 

他者の光を妬み己の剣を汚した瞬間、武人は人の道を外れ、悪鬼の道へと染まってしまうのだから。

 

月は太陽の眩さを妬まぬゆえに、夜空にてただ一人、清らかで高潔な光を放つことができるのだよ。

 

その月の心を持つお前の剣は、誰かに勝つための殺戮の道具となってはならぬ。

 

焦ることなく己の力を信じ、どれほど時がかかろうとも正道を歩まんとし、己の心をもう一度見つめ直す習慣を身につけなさい。

 

それこそが、私の誇り高き息子が歩むべき高潔なる侍の道なのだから」

 

 

 

母のどこまでも優しく、そして鋭い戒めが、厳勝の胸の奥深くにある心を再び根底から揺さぶった。

 

 

 

前世の黒死牟は、月の呼吸をただ弟に勝つための『殺戮の道具』として振るったが、

 

 

 

今しがたの生において、母が授けてくれた月読の耳飾りは、厳勝に『弱き者を救い、夜の悪鬼どもを滅するために月の力を振るう、高潔なる武人の使命』を与えたのだ。

 

 

 

厳勝は耳飾りにそっと触れながら、母の懐の中で「さらに精進し、人として弟と人々を護り抜く」という幼き己の意志を、涙とともに心に誓った。

 

 

 

「重負を感じることはない。ゆっくりと一歩ずつ、立派に歩んでお行き。私の誇り高き息子……私の愛おしい息子……そして頼もしい息子よ……」

 

 

 

朱乃は長男を優しく抱きしめ、その背をトントンとなだめた。厳勝は母の温もりの中で心が洗われていくような深い救いを感じ、笑みを浮かべた。

 

 

 

しかし、二人の睦まじく温かな空気が崩れ去るのに、そう時間はかからなかった。

 

 

 

「うっ……!!」

 

 

 

じわっ……ボタボタボタ……

 

 

 

急ぎ医師らの診療と湯薬を用いた治療が施されたものの、体が完全に薬の力を受け入れきれなかったのか、吐血する朱乃に対し、厳勝は動惑を隠しきれなかった。

 

 

 

長男の尽くした誠意にもかかわらず、今にも明け方の霧のようにすぐ消えてしまいそうなほど急速に弱っていく母を見つめながら、厳勝は再び昔の己をどこまでも反省した。

 

 

 

「母上、大丈夫でございますか! いっそのこと、もう一度医師を――」

 

 

 

しかし、彼の言葉を遮り制する仕草を見せたのは朱乃であった。

 

 

 

「厳勝……さきほどのお前の手配で医師らの診療を受けた際、その者たちからお前が弟の世話をし、待遇を引き上げてくれたという知らせまで聞いたのだよ。この母は真に誇らしい……ゴホッ!

 

今のようにお前たち兄弟が仲良く過ごしている姿を見るだけでも、私はもう思い残すことはない。死して冥府へ赴こうとも、ご先祖様方にお目にかかる顔ができたというものだ」

 

 

 

再び吐血する母を見ながら、厳勝はあらかじめ懐に忍ばせていた手ぬぐいを取り出し、左手で母の口元を押さえながら、同時に右手で母の痩せこけた手を握りしめた。

 

 

 

その手は、まだ己が『透き通る世界』の二段階に至るには遥か遠い状況であるにもかかわらず、すでに生命の温もりが抜け落ちたかのように氷のように冷たかった。

 

 

 

「母上、なぜ……疲れ果てたお体をこれほどまで放置し、私や父上に仰ってくださらなかったのですか? 早くに知っていれば、私がどうにかして方法を探し出しましたものを……!

 

少しでも早く手を打ち、それこそ家の財力の半ば以上を費やしてでも、より腕の立つ医師と良薬を求めるべきでした。父上を説得してでも、母上を療養へとお送りすべきだったのに――」

 

 

 

母は厳勝の言葉を遮ろうとするかのように、その手にそっと力を込めた。

 

 

 

「家の重荷を減らしたかったのだよ、厳勝。お前たち二人が育っていく姿を見るだけで、私は充分だった。

 

お前たち二人が健やかに育つ姿を見られるだけで、私は充分なのだ。

 

縁壱が毎夜、私の傍らで祈りを捧げてくれることだけで、私はすでに救われていたのだよ。

 

あの子の祈りと孝行が、見ようによってはとうに尽きていたはずの私の命を、僅かなりとも繋ぎ止めてくれていたのだろう。

 

けれど……天から授かった命はあまりに短いゆえ、私はもう長くは生きられぬようだ。高い薬や医師の手をもってしても治せぬことは、私が一番よく分かっている」

 

 

 

厳勝は母を十分に世話できなかったことを深く自責するあまり、唇から血が滲むほど強く噛み締め、同時に声を荒らげた。

 

 

 

「どうして……!! なぜご自身のことをお考えにならないのですか……なぜ!!」

 

 

 

感情を爆発させて憤る厳勝の顔を見つめながら、母は慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、その頬を優しく撫で、そのまま彼を抱き寄せて宥めた。

 

 

 

「お前は……この家の長男であり、この家を率いていくべき者だ。お前の肩には、弟をはじめ、この家に属する数多くの人々の安寧がかかっているのだから」

 

 

 

『母上、あなたは前世でも、この生でも変わられぬのですね。

 

頑ななまでに子を想われる方。私の狭量な心が、あなたのこの崇高な愛を見えなくさせていたのですね。

 

長男という権威の下で私が享受したすべてが、もしかするとあなたの犠牲の上に築かれた城壁であったのだと、今になってようやく分かりました』

 

 

 

込み上げる感情の中で、厳勝は首を振りながら、唇を震わせて語りかけた。

 

 

 

「母上、私が長男としてお約束いたします。縁壱は、私が命に代えても護り抜きます。

 

あの子の持つ才能が呪いとならぬよう、私が盾となってやりましょう。

 

もし家があの子を捨てようとするならば、私が家を捨ててでも徹底して護り抜きます。

 

ですから母上……どうか、もう少しだけ気力を保ってくださいませ。縁壱が育ち、元服を迎える姿までは見届けていただかねばならぬでしょう」

 

 

 

悲しむ厳勝の言葉に、母は慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。蒼白となった顔にも、確かな温もりが宿っていた。

 

 

 

その手に込められた愛があまりにも深く、厳勝の目頭は再び熱く赤く染まった。

 

 

 

「母上……あなたがいらっしゃい出でねば、私たち兄弟が生まれてくることもございませんでした。

 

長男としてほかでもないお願いがございますが、私の双子の弟である縁壱を、どうか大いに慈しんでやってくださいませ。

 

縁壱は真に天の才能を授かって生まれた子にございます。されど、それゆえに温もりある気性を備えており、争うことを恐れもいたします。

 

あるいは私以上に武神の才能を大きく宿しながらも、世に名を残そうという大きな野望もなく、

 

財を得ようとする一点の欲もなく、ささやかでつつましき生を望みながらも、人々と睦み合いたいと願う純粋な子にございます。

 

あの子に勇気を与えてやってはくださいませぬか。気丈で大人びてはおりますが、いまだ七歳の幼き子供にございます。

 

まだあまりにも幼き身で……殊に、母上の愛に飢えている子なのです」

 

 

 

「この母とて、縁壱には限りなく申し訳なく思っておるのだよ……努めてはみるとな……」

 

 

 

痛ましがる朱乃の言葉に、厳勝は母を気遣い、静かに抱きしめた。

 

 

 

「そのようなことを仰らないでくださいませ。私が家督の跡継ぎとして、そして兄として縁壱を護ります。

 

母上はどうか私の言葉を聞き入れてくださり、当面の間は温かい汁物と粥を召し上がり、折を見ては医師の言い付けに従い、治療と薬を必ずやお納めくださいませ。

 

今日は……母上の傍らに私がおりますゆえ」

 

 

 

「縁壱は……」

 

 

 

「愛する弟は、すでに温かく心地よい私の部屋にて寝かしつけました。

 

今日ばかりは長男である私を信じていただき、どうか安らかにお休みくださいませ」

 

 

 

朱乃はいつの間にやら頼もしくなった厳勝を見つめ、微笑みを浮かべたまま深く頷いた。

 

 

 

そうしてしばしの間、月光の下で母子は互いの手を握り締め、言葉もなく温もりを分かち合った。

 

 

 

そしてその微笑みを残したまま、静かに厳勝の懐へと体を預け、薬の効き目と今日起きた出来事による倍の疲れが押し寄せたことで、朱乃はゆっくりと眠りの中へと落ちていった。

 

 

 

厳勝は静かに母の体を、慎重に最高級のものへと改められた温かな敷布団の上へと横たえた。

 

 

 

しばらくの間、慎重に母の顔色を伺っていた厳勝は、今日感じた母の温もりを一生忘れるまいと心に誓った。

 

 

 

『そして私は、あなたが身罷られたならば、この家を出るつもりです……そうでなければ、私の使命を果たすにはあまりにも時がかかりすぎてしまうゆえ……』

 

 

 

わざわざこのような胸の内まで口にすれば、母が余計に案じ、かえって憤って反対するであろうと分かっていたため、深く眠りについた母の傍らで正座し、やがて訪れる未来について思索を巡らせ始めた。

 

 

 

障子のわずかな隙間から差し込む月光が軒端を照らし、遠くから聞こえてくる虫の音が、どこか一層冴え冴えと響き渡っていた。

 

 

 

一方、再び薬の効き目で眠りについた朱乃の傍らで、静かに未来に思いを巡らせる厳勝が佇む部屋――その暗い裏戸の格子の隙間から、一人の少年の小さな影が庭の地面に落ちていた。

 

 

 

その小さな影の正体は、兄の寝床で眠るフリをした後、密かに気配を消して後を追ってきた縁壱であった。

 

 

 

縁壱は戸の隙間越しに、兄が母の目の前で額が割れんばかりに平伏し、かつて自分を傍観していた過去を凄惨なまでに悔い改め、声を上げて泣き叫ぶ一部始終を、最初から最後までその場で聞いていた。

 

 

 

また、母が自分たちのために用意してくれた太陽と月の耳飾りの真実と、兄へ『弟と弱き者を護る月の守護者となれ』と言い渡した崇高な戒めまで、ただの一句たりとも聞き逃すことなく、その脳裏にしかと焼き付けていた。

 

 

 

そして何より……兄の手配にもかかわらず吐血してしまった母の苦痛に満ちた声と、兄の悲痛な哀しみを聞いた縁壱は、己の目に涙が溢れ返っていることに、今更ながら気がついた。

 

 

 

「……」

 

 

 

縁壱の頬を、一筋の清らかな涙が幾重にも伝い落ちていく。

 

 

 

兄と己がどれほど尽力しようとも、母の命が僅かに伸びたところで、結局のところ己が予見していた刻限からそう長くは持たないのだと。

 

 

 

兄弟の苦心にもかかわらず母の病が一向に良くなる兆しを見せないことに、縁壱の胸の奥で、外見の大人びた振る舞いの下に押し殺されていた幼子のような感情が、一気に押し寄せて弾けたのだ。

 

 

 

『これをどうすればよいのだ……誰か、少しでもあのように子へ献身する母の命を延ばしてはくれまいか……天におられる神よ。

 

なぜ善き者は早くに天へ召されてしまうのですか……どうかあなたの慈悲をもって、母上だけでなく、こうして病に苦しむ人々のために救いを差し伸べてくださるよう祈ります……』

 

 

 

縁壱は溢れ出る涙を古びた袖口で必死に拭い去り、夜空を見上げながら合掌の姿勢をとり、母の安寧と、善き人々が苦しむことなく幸せに生きられますようにと長き祈りを捧げた。

 

 

 

相模の国の夜空に浮かぶ銀色の三日月が、今日に限って際立って煌々と、そして優しく祈りを捧げる自分たちを照らしているかのようで、縁壱は涙を収め、静かにその三日月に長く見入っていた。

 

.

 

 

.

 

 

.

 

 

.

 

その日の劇的な和解と母との対面を経て、継国家の空気は急激に変わり始めた。

 

 

 

厳勝は家の正当なる後継者、そして少家主として持つすべての行政的権限を爆발的に行使した。

 

 

 

彼は家の家臣と下人を全員演武場へと集結させると、雷鳴のごとき気魄で命を言い渡した。

 

 

 

「本日この時をもち、母上である朱乃様と、弟である縁壱の処所ならびに処遇を、後継者である私と完全に『同等の扱い』へと格上げする!

 

両名の膳に上る献立、衣服、煎じ薬、果ては護衛の兵力に至るまで、ただ一寸の差別や疎かさも許さぬ。もし怠る者あらば、家規に則り、少家主の名において即刻斬首に処す。ゆめゆめ怠るな!」

 

 

 

家臣たちは『愚者』と蔑まれていた次男の若君に、少家主と同等の特権を与えるという破格の命に激しく動揺した。

 

 

 

しかし、ツクヨミの耳飾りを耳にかけ、幼子とは思えぬほど静かに威圧感を放つ少家主の気勢に気圧され、ただひれ伏すほかなかった。

 

 

 

だが、この知らせを耳にした家の最高権力者であり父、継国正紀(つぎくに まさとし)が黙っているはずはなかった。

 

 

 

――バン!

 

 

 

正紀は物々しい政庁の上座に腰掛け、己を少しの恐れもなく堂々と足を踏み入れてくる厳勝に向かって、長剣の柄を音高く叩きつけながら怒りを爆発させた。

 

 

 

「厳勝! おのれ、少家主の座が早くも家の法度を気ままに揺るがすほど軽いものに見えたか!

 

縁壱なる奴は生まれ落ちた時から禍々しい痣を宿し、家に呪いをもたらす不吉な存在だ!

 

そのような愚者と同等の絹の着物を着せ、貴重な薬材を無駄に費やすとはな。今すぐその愚かしい命を取り下げぬか!」

 

 

 

父はいまだ戦国時代の武家特有の頑なで息の詰まるほどの固執を振りかざし、威圧をかけてきた。

 

 

 

前世の厳勝であったならば、父の苛烈な権威と規律におびえ、従順に頭を下げていただろう。

 

 

 

しかし、今の厳勝は五百年におよぶ前世と、長く長かった最悪の地獄を経験して戻ってきた回帰者であった。

 

 

 

もはや恐れるものなど何一つない厳勝は、微塵の躊躇もなく腰に差した木剣の柄を強く握り締め、父をまっすぐに射抜く毅然とした眼差しで一喝した。

 

 

 

ついに、厳勝は己の後継を象徴する家伝の剣を畳の床へ強く叩きつけ、衝撃の宣言を放った。

 

 

 

「父上、もしこの家が弟という理由だけで血肉を閉じ込め、飢え死にさせるような非人道的で不合理な醜い法度に固執とおっしゃるならば……

 

私は!! このような腐りきった家の少家主の座など、今すぐ土倉に投げ捨てるがごとく返上いたします!

 

今すぐ少家主の職を剥奪し、私を家から追放してくださいませ! そして父上がそこまで憎み嫌う縁壱を連れて立ち去ります!

 

私たち兄弟の力だけでも、食べていくに困ることはございません! このような卑劣で低劣な家を維持するくらいならば!!

 

私は弟とともに最小限の荷だけを携え、新たな夢を求めて家を出ましょう!!

 

後継者とておらぬ武家など、自ら解体の末路を迎えるか……さもなくば周辺の武家勢力に飲み込まれるか!

 

もはや私が気にかける理由はどこにもございません! 選択してください、父上! この事態を収めようという意志が少しでもあるのですか!

 

そのようなくだらぬ迷信や呪いのごときものを信じる家主の下で、どうして配下の者を従え、共に生きていくことができましょうか!!」

 

 

 

長男の衝撃的な発言に、座に侍っていた家臣たちは互いに顔を見合わせ、ただ家主である正紀の顔色を窺うばかりであった。

 

 

 

なによりも、この衝撃の言葉を目の前で突きつけられた正紀の動揺たるや、尋常ではなかった。

 

 

 

「な、何だと……?! 貴様、自分が何を口にしているのか分かっているのか!!!!

 

長子継承の原則を自ら拒むだと! それは貴様が持つべき権限を自ら投げ捨てることだぞ! そのような愚かな手を打つ者がどこにいるというのだ!!」

 

 

 

正紀は、生涯己の言葉に絶対服従し順従するのみであった長男・厳勝の口から飛び出した、あまりにも破格の『後継辞退ならびに家体解体の脅迫』に、心臓が止まるほどの巨大な戸惑いを覚えていた。

 

 

 

もし厳勝が座を辞せば、家の血筋が途絶え、継国家そのものが滅亡の危機に瀕することになる。

 

 

 

父は沸き起こる怒りと屈辱に任せ、厳勝に拳を振るおうと手を震わせていたが、

 

周囲で見守る多くの家臣や下人たちの目があったため、毅然として声を張り上げる息子に暴力を振るうという醜態を晒すわけにはいかなかった。

 

 

 

結局、父は荒い息を吐きながらその場を蹴って立ち去り、厳勝が主張した縁壱に対する処遇の格上げは、家内において誰一人取り消すことのできぬ鉄壁の掟となった。

 

 

 

その日の衝突以降、父・正紀との関係は氷のように冷ややかに冷え切ったものの、厳勝は一片の悔いもなく、黙々と縁壱と母へすべての献身を注ぎ込んだ。

 

 

 

厳勝は毎朝、家の厳しい教育と訓練を終えた後、一人深い竹林へと向かい、前世の五百年の心得を糧として『月の呼吸』の型をまずは七歳の肉体に合わせて精巧に修正し、鍛錬を重ねた。

 

 

 

いまだ縁壱に年齢を問わず『護るべき責任と義務』についてあまりに早く教え込みたくはなかった上に、

 

己と戯れ純粋に遊ぼうとする弟の意志を尊重した厳勝は、敢えて弟に刀を握らせ剣術を教え込むという無理強いはしなかった。

 

 

 

代わりに、家で買い求めた絢爛なサイコロや独楽、凧揚げの道具をどっさりと持ち込み、縁壱が同年代の子供たちのように心ゆくまで遊びを楽しみ、幼少期の幸せを享受できるよう細やかに配慮した。

 

 

 

しかし、武家特有の「双子は家を滅ぼす呪い」という禍々しい風習は、単に屋敷の中にとどまらず、塀を越えた相模の国の領地内の庶民や、他の地域の子供たちにまで根深く広まっていた。

 

 

 

普段、兄と母以外の誰にも口を開かず、黙々と気配を消して歩く縁壱は、

 

一人で独楽を回して遊んでいる最中、領地内の無邪気ゆえに残酷なガキ大将や、荒っぽい農民の子供たちにとっては、格好の「いじめの標的」であった。

 

 

 

ある日の午後、厳勝は演武場で全身汗まみれになりながら、月の呼吸に関わる型の研鑽と身体連動の鍛錬を終え、己が立ち入る部屋へと向かっていた。

 

 

 

いまだ月の呼吸を「使いこなす」域には届いておらず、肉体の成長が追いついていないことを肌で感じていた。

 

 

 

さらに、成人していた鬼殺隊時代に開花させた痣、赫刀、そして「透き通る世界」すらも体得できていない現状では、斬撃の刃など放てるはずもなかった。

 

 

 

それでも厳勝は己を焦らせぬよう頻繁に瞑想を行い、精神の修養によって平静を保ち続けていた。

 

 

 

回帰によって得た数百年の心得は、ただ時間の問題に過ぎず、前世よりも早く至ることができる——そう自身に言い聞かせるように気を引き締め、

 

 

 

部屋へ戻ろうとしたその時、息を切らして駆け込んできた下人が、顔色を蒼白にして告げた。

 

 

 

「若当主様! 大変でございます! 二男の若君が城下の裏手にある竹林の道にて独楽遊びをなさっていたところ、

 

領内でもその年に似合わぬ大柄で乱暴な子供らの群れに囲まれ、嫌がらせを受けておられるとのことにて……!」

 

 

 

「……何だと?! 私が自ら向かう! 恐れ多くも武家の者を害する愚行を犯すとは……私が引き取って始末をつける。お前はこの事実を父上へ伝えよ。

 

いかに父上が縁壱を憎み、頼りなく思い、嫌っていようとも、家の威信を損なう真似を平民の子供らが仕でかしたとなれば……それに伴う責任はその親らが負うのが人の道というものだ。

 

しかと含み置き、急ぎ父上へ報告へ向かえ!」

 

 

 

厳勝の双眸に、一瞬にして鬼の心を抱いたまま数百年の時を重ねた禍々しい殺気が閃いた。

 

 

 

彼は傍らに置かれていた、幼子が扱うにはあまりに重く強靭な白樫作りの木剣をひっつかむと、

 

全身に全集中の呼吸の波動を爆発させ、城下の裏手にある竹林に向かって雷撃のごとく疾走した。

 

 

 

『私の弟の体に傷一つでもつけた者がおれば、命までは取らぬものの……死ぬよりも辛い痛みを味わうまで木剣を振るってやる……

 

幼少のうちに正さぬような過ちは、大人になれば獣へと成り果てるのだからな』

 

 

 

だが、厳勝が息を切らせて竹林へと辿り着いた時、その目に飛び込んできた光景は想像を絶するものであった。

 

 

 

「うわあぁぁん! あの化け物みたいな女が! 助けてくれー!」

 

 

 

ドカッ! バキッ! ズドッ!

 

 

 

「逃げろ! このままじゃあの女に腕を折られる!」

 

 

 

縁壱にいじめを働いていた三、四人の大柄な男児たちが、全身に黒々とした痣と打撃の痕をこれでもかと刻みつけ、鼻水と涙を撒き散らしながら竹林の四方へと蜘蛛の子を散らすように逃げ惑っていた。

 

 

 

厳勝は思いも寄らず凄惨に打ちのめされて逃げていく子供らを見送り、状況が理解できぬといった表情で呆然と立ち尽くし、構えていた木剣をそっと下ろした。

 

 

 

そのような状況の中、子供らが群がっていた現場である竹林の中央、涼やかな春風に竹の葉がサワサワと舞い散るその中心に、一人の少女が佇んでいた。

 

 

 

その少女は、この時代の日本の地では到底お目にかかれぬほど極めて異国風で格調高い、純白の朝鮮式武服を端正に纏っていた。

 

 

 

この時代の関東地方の並の男児よりも頭一つ分は高いすらりとした身の丈であり、一目で武芸を修めていると分かる引き締まった体躯をしていた。

 

 

 

……まるで、日々鍛錬を重ねる己のように。背丈も一見して己とほぼ変わらぬと感じつつ、慎重に少女を見つめる厳勝の双眸は、引き続いて目に飛び込んできた姿に驚愕を隠せずにいた。

 

 

 

漆黒のように濃く艶やかな長い髪は高い位置で結い上げられており、品のある美しい印象を醸し出していた。

 

 

 

澄んで清らかに吊り上がった目元は、幼い年頃でありながら微塵の脆弱さや卑怯さも許さぬといった絶世の美の相であった。

 

 

 

引き締まった唇と滑らかで堅固な顎のラインは、まだ成長しきっていない七歳の少年の視線から見れば、あまりにも威圧的で美しい姿であった。

 

 

 

その子の両手には、朝鮮の伝統様式である鍔の無い重厚な二刀の木剣がそれぞれ握られていた。

 

 

 

少女は己よりはるかに小さく華奢な縁壱を背後にしっかりと庇い立ち、逃げ去る子供らに向けて二本の木剣を突きつけながら、竹林に響き渡る大声で一喝した。

 

 

 

「この卑劣で悪しき者どもめ! かくも大人しく憐れな子を数に任せて囲み、弄び殴ることを戯れとするか!

 

天が恐ろしくはないのか! いかに嫌おうとも、それを暴力でしか表せぬお前たちのごとき捻くれた心根は大嫌いだ!

 

お前たちと親しくなるなど、我が生涯において最も嫌うことだ!! 今すぐ私の目の前から消え去れ!!」

 

 

 

少女の雄大で清廉な一喝が、竹林の空気を一変させた。

 

 

 

華奢で平穏な家で育った少女というよりは、まるで戦場に赴く将軍のごとく凛々しく高潔な背中を見つめながら、背後に立つ縁壱はただ驚きに満ちたまま、澄んだ瞳をしばたたかせていた。

 

 

 

ストン──。

 

 

 

その瞬間、怒りを鎮めながら木剣を収めていた異国の少女が首を巡らせ、折よく竹林の入口に立っていた厳勝と正確に視線がぶつかり合った。

 

 

 

「何だ! お前ももしや私の後ろにいる子を……あ?」

 

 

 

「いや、それは誤解……あ?」

 

 

 

ゴゴゴゴゴ──!

 

 

 

二人の瞳が虚空で交差した刹那、厳勝の胸の奥深くにある魂が大きく振動した。

 

 

 

生涯でただの一度も味わったことのない、心臓が痺れるように痛み、脳内のあらゆる神経網が大噴火する活火山のごとく熱く滾る感情的な共鳴が大爆発を起こしたのだ。

 

 

 

それは前世の鬼として数百年もの間、強さに執着して諦めや諦念に近かった……だが最後まで出会うことのなかった『運命の半身』を見つけ出したかのような、人間としての本能的な惹かれ合いであった。

 

 

 

驚くべきことに、純白の武服を纏った少女もまた、厳勝の顔に刻まれた淡い紫色の瞳と耳に揺れる月の神の姿が描かれた耳飾りを目にした瞬間、雷に打たれたかのような衝撃を受けていた。

 

 

 

全身の筋肉が一時に収縮して心臓が急激に跳ね上がり、顔が朱のように真っ赤に染まった。彼女もまた、頭の中が真っ白に焼け焦げるような強烈な運命の引き寄せを感じたのだ。

 

 

 

二人の子は互いに向けて剣を構えたわけでも、殺気を放ったわけでもなかったが、春の竹林の道の中央で互いに顔を赤らめたまま荒い息を吐き、一言の言葉も掛け合えずに呆然と対峙した。

 

 

 

……いわゆる『互いが互いに一目惚れした』という状況が生じてしまったのだ。

 

 

 

「……その、もしや……後ろの子をいじめようと別の場所から来たわけではないな?」

 

 

 

この状況にあっても少女は己が一目惚れしたという事実を脇に置き、己の後ろにいる縁壱を護ろうと慎重に尋ねると、厳勝は当然のごとく首を横に振って答えた。

 

 

 

「……滅相もない。私はそなたの後ろにいる弟を迎えに来たのだ」

 

 

 

「……そ、そうか?」

 

 

 

「……ああ」

 

 

 

だが、このような状況を初めて経験する二人にとって、この場をいかに取り繕うべきか右往左往するばかりであった。

 

 

 

そして、その後の状況についてどう言葉を交わすべきか気まずくなった少年と少女の間で、互いに一目惚れしたという事実は、彼ら二人だけが知る事実ではなかった。

 

 

 

『……兄上も……この方も……驚くほど全く同じお体の状態だとは……ただただ驚くばかりだな』

 

 

 

まさに少女の後ろにいた縁壱は、『透き通る世界』で目にした兄と少女の肉体と精神の状態に気づいていたのだ。

 

 

 

『これが……互いに惚れ合うということなのか。

 

頭の中で脳が絶え間なく動き……心臓は激しく波打ち……緊張からか汗を流しているのだな……

 

私を救ってくれたこの少女……いや、姉上とお呼びするべきか?

 

それとも……未来の兄上と結ばれるお方?……何とお呼びすればよいか分からぬな』

 

 

 

ひとまずあまりにも気まずくなった雰囲気を和らげようと、じっと兄の顔と少女の顔を交互に見つめていた無口な縁壱が、ついに小さな手で少女の武服の裾をちょんと引っ張り、静かに口を開いた。

 

 

 

「……姉上? あのお方は私の大切な兄上でございます。その……互いに名乗り合えるよう、お手伝いいたします……」

 

 

 

縁壱の静かな言葉に少女はハッと驚き、すぐさま二本の木剣を地面に置くと、赤くなる顔を冷まそうと手で扇ぎながら答えた。

 

 

 

「あ! あ!……うむ!」

 

 

 

「……兄上もただ呆然とされておらず、こちらへおいでくださればと思います。

 

これでも私を救ってくださった恩人でございますのに……そのように立ち尽くされては、こちらの姉上が気まずく思われます」

 

 

 

「……あ! ああ、そうだな。互いに言葉を交わす必要があろう。誤解があるのなら、すぐさま解けばよいのだから」

 

 

 

縁壱の静かだが鋭い一言に、少女の顔を見てしばし呆然としていた厳勝は、そこでようやく張り詰めていた体を緩め、少女と縁壱に向かって歩み寄った。

 

 

 

こうして弟の呼びかけと共に、1434年の爛漫と咲き誇る春の竹の葉が、三人の頭上へ燦然たる銀河のごとく舞い散り、音もなく降り積もっていった。

 

 




───

【後書き】

この彼女との出会いによって起こる出来事が、頭の中で常にまとまらずごちゃごちゃになってしまうため、執筆というものはいつでも難しいものだと感じております。

次回からは彼女の一族に関する逸話や、彼女の一族の……と言い過ぎては面白くありませんので、このくらいにしておきます。

ただ……この物語のプロットをどのように組むべきか、草案は練ったものの未だに完成度が低いため、次回の更新にはさらに時間がかかりそうです。
特に私自身、男女間の恋愛やその手前の甘酸っぱい雰囲気(サム)を描写するのが非常に苦手なため、二人が結ばれていく過程での不自然さにつきましては、どうか温かい目でご容赦いただけますと幸いです。

いつもこの物語を読んでくださる皆様が、常に幸せでありますようにと心から願っております。
疲れた時や辛い時に、私の物語をご覧になって少しでも心が癒やされれば嬉しい限りです。

追記といたしまして、先月「花言葉」について現在連載中の『鬼滅の刃』二次創作を舞台に執筆した小説に関する補足事項がございます。途中で翻訳が不自然な部分がございましたので、こちらはコンテストの審査とは関係なく、改めて翻訳をやり直して修正する予定です。
さらに、この短編小説は韓国の小説サイトの一つである「ノベルピア(Novelpia)」で連載するにはあまりにも時間がかかることを考慮し、この小説のすぐ下に韓国語版として掲載するつもりでおります。

長くなりましたが、後書きまでお付き合いいただきありがとうございました。

次回は本当に……お時間をいただくことになりそうです。彼女の家柄に関する物語や、彼女を護ろうとする十三神についての話を紐解くには……実に多くの調べものと時間が必要となりますので……。
ともあれ……今回はこのあたりで筆を置かせていただきます。

もしこの小説をお読みになる中で気になった点などがございましたら、コメント欄にお寄せいただければ可能な限りお答えいたします。ありがとうございました!



追記といたしまして、ハーメルンをご利用の方でこちらの短編小説をご覧になりたい方は、Pixivにお越しいただいてお目通しされることをお勧めいたします。

【ご意見募集】 『鬼滅の刃』二次創作についてご相談です。「設定が複雑」とのご指摘を受け、1〜17の設定を無くして本文のみで進行するか迷っています。 【期間:1週間】 期日までに多かった方の意見に合わせて決めたいと思います。読者の皆様のご意見をお聞かせください!

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進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……(作者:感謝君)(原作:進撃の巨人)

信じられないと思うが聞いてくれ ▼俺は昨日までしがない大学生としてベッドに転がりながらいつも通り動画を見て惰眠を貪っていたんだ▼別にトラックに轢かれたとか、手違いで殺しちゃったから転生させるね!おじいさんにあった訳でもない▼気付けば俺はだだっ広い平原の真ん中で全裸で突っ立っていて▼鋼のような肉体に転生していたんだ▼……進撃の巨人の世界に……▼


総合評価:5859/評価:7.27/連載:223話/更新日時:2026年08月07日(金) 18:00 小説情報

前世がYAMA育ちな菜月昴の異世界生活(作者:雨天)(原作:Re:ゼロから始める異世界生活)

▼ 菜月昴に転生したオリ主が前世での死の経験から終わりに不安を抱えながらも二度目の人生を順調に歩んでいると、原作通りに異世界に召喚されてしまい、色々吹っ切れた結果人助けしながら異世界で生きて行くことを決める話。▼ 尚、菜月昴の前世はYAMA育ちである。▼ タイトルを改訂しました。旧タイトル『菜月昴成り代わりオリ主』▼ 活動報告はXで行っています。▼ → ht…


総合評価:6226/評価:8.02/連載:12話/更新日時:2026年06月29日(月) 00:00 小説情報

長命種パーティ、命と引き換えに守ったら千年後も病んでる(作者:広路なゆる)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

聖騎士シオンは身代わりになった。自らの意思でパーティ3人を守り死んだ。▼魔女、エルフ、龍族の娘に幸せに生きて欲しかったから。▼それから千年。▼「止まない雨はないの? 明けない夜はないの? 出口のないトンネルは本当にないの? ねぇ、シオン……」▼魔女ミレアルナは禁断の術『死霊魔術』に手を染めていた。※続き書き溜め中※カクヨムにも掲載


総合評価:5195/評価:8.12/連載:5話/更新日時:2026年04月25日(土) 21:11 小説情報

救いのない鬱ゲー世界で主人公御用達の喫茶店をやる(作者:音塚雪見)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

女しか魔法が使えない世界に転生した主人公。▼しかし彼だけは男ながらに魔法が使える。▼──これは俺が主人公ですね間違いない。▼馬鹿みたいな勘違いの末、彼は「世界最強の魔女」と呼ばれるほど実力を高める。▼だが見覚えのあるキャラクターと遭遇し、とある救いのない鬱ゲーに転生してしまったのだと知った。▼──ワッツ!? あかんこのままじゃ世界が死ぬゥ!!▼ということで爆…


総合評価:6985/評価:7.66/完結:53話/更新日時:2026年07月03日(金) 19:46 小説情報

人の生き様大好き系上位存在が蔓延る世界に生まれ落ちた生存本能極振り転生者(作者:せぞんのう)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

その世界には人間の輝きが大好きな悪魔が無数にいた。▼死を経験したことで生存本能に意識を極振りした転生者のルセラは、悪魔を利用してでも生き残ることを画策する。▼しかしその姿は悪魔たちにとって、性癖ど真ん中をぶち抜く行為だった。▼しかも生き残るためにあらゆることをやってのけるこの異常者の行動は悪魔の想像の遥か斜め上を行く所業ばかり。▼やがて、生存本能極振り転生者…


総合評価:10299/評価:8.88/連載:10話/更新日時:2026年05月08日(金) 07:05 小説情報


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