003のCM騒動は終わらなかった。 むしろ始まりだった。最初の化粧品CMは大成功。次のCMはさらに成功。さらに次もまた成功。広告業界は確信していた。 「本物だ!」 「時代の象徴だ」 「スターだ」 そしてついに芸能プロダクションが動いた。ギルモア邸にて、「映画に出ませんか?」 003は固まった。 「映画?」 「はい!」 担当者の目が真剣で怖かった。 「絶対に売れます!」 「いや、私は女優じゃ……」 「関係ありません!」 「関係あると思うのだけれど」 担当者は聞いていなかった。 「世界中があなたを見たがっています!」 003は困った。だが少し考えた。 「できる範囲なら」 言ってしまった。担当者は歓喜した。
業界中に情報が流れた。 『003、映画出演決定』 その瞬間、一本の電話が鳴った。ある老監督からだった。 「本当か?」 「本当です!」 「今すぐ車を出せ!」 飛んできた。その監督はかつて00ナンバーサイボーグたちを題材にした映画を撮った人物だった。当時から003には特別な魅力があると知っていた。 「ようやく撮れる」 監督は呟いた。 「本当に撮りたかった映画が」 企画は急速に進んだ。舞台はヨーロッパ。ある小国の王女は窮屈な公務に疲れていた。そして偶然出会う一人の青年、二人が過ごす短い休日。ロマン、冒険、笑い、切なさ。まるで名作映画のような物語だった。撮影開始、そしてスタッフ全員が理解した。003は演技をしていなかったのだ。王女役、歩く、微笑む、少し困った顔をする。それだけで絵になった。監督は感動していた。 「反則だ」 公開日の映画館は満席だった。世界中で上映された。観客たちは魅了された。SNS 『泣いた』 『綺麗だった』 『気品が凄い』 『本当に王女に見えた』 『いや実際王女より王女だろ』 評論家も絶賛した。 『古典的ロマンス映画の復活』 『主演003の存在感が圧倒的』 『スクリーンが彼女を愛している』 興行収入は歴史的記録になり映画会社は歓喜した。
一番喜んでいたのは監督だった。 「まだだ。次がある。」 脚本家が嫌な予感を覚えた。 「監督?」 「次回作だ!」 「もう?」 「そうだ」 監督は立ち上がった。 「今度は全員出す!」 監督の目が輝いていた。 「003、009-7、002、004、009!最高だ」 誰も反論できなかった。そして数日後、ギルモア邸に監督本人が来た。003が玄関を開けた。 「こんにちは」 「映画を撮らせてください!」 「え?」 009-7に言った。 「あなたも出てください!」 「私?」 002にも「もちろん出るよな!?」 「おっ、主演か?」 「違う!」 「なんだ違うのか」 004には「あなたは絶対必要です!」 「断る」 「必要なんです」 「断る」 監督は聞いていなかった。最後は009だった。 「君がいないと始まらない」 「なんで?」 「主人公だからだ」 「は?」 009は固まった。監督は興奮していた。 「王女役は003、謎めいた異国の姫君役が009-7、陽気な親友役が002、護衛騎士が004。そして主人公が009!」 「なんで俺?」 監督は即答した。 「世界中の女性が見たいからだ!」 003が吹き出した。009-7も笑った。002は大笑いした。004は顔を覆った。世界中の映画会社が注目する中、伝説の監督による豪華なサイボーグ映画計画が動き始めた。