詩織はかなり機嫌が悪かった。大学のカフェテリアの窓際の席。目の前には彼氏。009-7の甥、拓也。本来なら楽しい時間のはずだった。しかし、「こんにちはー」女子学生が来た。 「偶然だね!」 全然偶然ではない。 「隣いい?」 よくない!と詩織は思った。だが、大人だから言わない。女子学生は楽しそうに話し始めた。 「今回のイベントなんだけど」 「うん」 「003さんって本当に綺麗だった?」 「綺麗だったよ」 「いいなあ」 そして十分後にようやく去った。静寂が来た。詩織はむすっとしていた。拓也「怒ってる?」 「怒ってない」 非常に分かりやすく怒っていた。 「ごめん」 「別に」 拓也は困った。最近、女子学生が話しかけてくることが増えたのだ。後輩、サークルの子、別学部の子。理由は009-7の甥だから。003、009、004、002を知っている。面白そう。そんな程度の理由だった。
詩織もわかっているけど面白くなかった。当然だった。帰宅後、詩織はスマホを見た。LINEの連絡先一覧の中に003があった。学園祭の日に交換した。最初は夢かと思った。世界的スター、映画女優、伝説のサイボーグ。そんな人が普通にLINEを使っていた。しかも、返信が早い。妙に親しみやすかった。詩織は少し迷って送った。 『相談してもいいですか?』 数分後『もちろん』 即返信が来た。さらに『どうしたの?』 詩織は少し笑った。そして事情を書いた。女子学生が彼氏に近寄ることが最近増えたこと。浮気する人じゃないことはわかってる。でも、なんとなく嫌。送信。返信は十秒で来た。『分かる』 即答だった。詩織「早い」 さらに『ジョーもそうだから』 詩織「え?」 003から長文が届いた。 『本人は何も悪くないの』 『むしろ気付いてない』 『でも周りが寄ってくる』 『困るの』 詩織は吹き出した。簡単に想像できた。009、あの映画の主人公であのCMの人。世界中の女性に人気。そして天然だった。なんとなく分かった。さらに『でもね』 『少しだけ誇らしい気持ちもある』 詩織は画面を見た。 『だって、みんなが好きな人が私を好きなんだもの』 詩織は少し考えた。そして笑った。なんとなく分かった。確かに面白くないし少し嫉妬もする。邪魔もされる。でも、彼は自分を選んでいる。そこは変わらない。返信『なんか分かる気がします』 003『でしょう?』 詩織『でもやっぱり腹立ちます』 003『それも分かる』 二人は大笑いした。
それから時々LINEで話すようになった。恋愛相談、映画の話、大学生活、料理、ファッション、他愛ない話。数日後のギルモア邸で003はスマホを見て笑っていた。 009「楽しそうだね、詩織ちゃん?」 「うん」 009は少し驚いた。「仲良くなったんだ」 「恋人の悩みが似てるのよ」 「?」 009は理解していなかった。003はため息をついた。 「そういうところ」 「何が?」 分かっていなかった。一方、詩織は機嫌が少し良くなっていた。女子学生がまた彼氏のところへ来た。今回は少し余裕があった。なぜなら、彼氏が女子学生と話しながらも、ふとした瞬間に必ず自分を探していることに気付いたからである。詩織は少しだけ嬉しくなった。